【ROUND SQUARE】イベントレポート ー 数字に現れない「価値」を求めるために「数字」を追いかける

ROUND SQUAREとは、商売の「START」「RUN」「GROW」を応援するSquareが主催するローカルイベント。リアルな学びを共有し合い、横のつながりや『化学反応』、コラボレーションが生まれるきっかけをつかむ場です。これまで東京、福岡、金沢、広島で開催し、2017年3月はFabCafe TokyoとMTRL KYOTOで開催となりました。

イベントレポートはFabCafeのプロデューサーである小原和也さん(弁慶さん)がお届けします。

alt text

今回は、吉祥寺と京都でコーヒーショップを経営する川野優馬さんと東京・根津で九州のオーガニックな野菜の販売を営む杉本恭佑さんにゲストとしてお越しいただきました。

まず、FabCafe自慢の厳選した豆でつくるシングルオリジンの水出しコーヒー4種類でお出迎え。コーヒーもテーマの一部とあって、コーヒー好きの方のテイスティングでカウンターは賑わっていました。

alt text

また、今回のイベントに参加いただいた皆さんには、FabCafeのギフトカードのROUND SQUAREバージョンを特別に作成し、特典としてお配りしました。

alt text

こちらは、FabCafeで提供しているFab機材である「UVプリンター」を活用して製作しています。FabCafeではこんなオリジナルなカスタムデザインも可能です。すでにSquareのギフトカードを活用していらっしゃる方は、更に特別なカードをデザインしにFabCafeにいらしてくださいね。

alt text

イベントは、Squareの長谷川さんから本企画に込めた想いの説明から始まりました。この場がみなさんなりの「次の一歩」を踏み出すためのきっかけとなれば、とのメッセージ。参加者の方のSquareの導入比率は、すでに店舗で導入している方と、これから導入しようと検討されている方が半々、というところでした。

alt text

次はアイスブレイクをかねて、2つの島に分かれて自己紹介。なぜこのイベントに参加したのか、みなさんがいま抱えている「こんなことに悩んでいる」「こんなことに挑戦したい」をシェアしました。自己紹介もそこそこに、早速ゲストのお二人に鋭い質問を投げかけるみなさんでしたが、一旦本題に戻って、ゲストによる実際のデータ「活用」講座が開始しました。

バリスタと「数字」の関係

alt text

まずは川野さんの出番。川野さんは、学生時代に出場したラテアート全国大会での優勝経験などから、コーヒーの味に目覚め北欧やロンドンへ渡り、理想のコーヒーの味を求める中で、2014年に吉祥寺にLIGHT UP COFFEEをオープンされました。川野さんのコーヒーに対する強い想いとして、「農作物」であるコーヒーの「素材」の風味を伝えたい、という点があるそうです。「苦くて渋い」が当たり前だったコーヒーから、「素材としての味」をふんだんに味わうために、豆の特徴を活かした焙煎方法などを探求してきました。

alt text

そんな川野さんが使う「数字」はというと、コーヒー1杯を入れるために厳密に設計された「数字」でした。具体的には粉の量とその抽出量でコーヒーの「濃さ」を豆の特徴に合わせて調整し、抽出秒数や粉の挽き目などからコーヒー成分をどれだけ取り出すかという「抽出率」を組み合わせるというもの。そんな緻密な数字管理の中で、1杯の美味しいコーヒーができあがるとのことでした。具体的な数字は公開できませんので、是非みなさん吉祥寺の店舗でその味を確かめてみてくださいね。

1杯のコーヒーの抽出を「感覚」に頼ってしまうのではなく、しっかりと「数字」に残すことで、再現性や調整などができるようになるのだそうです。毎回「美味しい!」を繰り返せるように、感覚に依存せず、問題を見つけ修正できるように1杯のコーヒーに対しても「PDCA」を回し続けることで、美味しいコーヒーができあがる、それがLIGHT UP COFFEEの人気の秘訣のようですね。

カフェオーナーが使う「数字」

alt text

バリスタであると同時に、カフェオーナーでもある川野さんは、オーナーとして店舗の「数字」も追いかける日々を送っています。お店では「何が売れているか?何を売るべきか?季節での変化があるか?どの時間帯が混むか?」このようなデータからしか見えてこない共通点から仮説を立て、改善を繰り返していくことで、カフェの営業を回していくのだそうです。そのデータのトラッキングに川野さんはSquareを使いこなしているのだそう。

alt text

川野さんは日々の売上げはもちろん、Squareの売上管理の画面を外部サービスなどと独自に連携させて、コーヒーが売れるたびに、自分のスマートフォンにプッシュ通知で販売通知がくるようにカスタマイズしているのだそうです。その使いこなしっぷりにはSquareの長谷川さんも驚きを隠せないようでした。

八百屋に必要な「数字」

alt text

次は、杉本さんの出番。杉本さんは、九州のオーガニックな野菜をインターネット販売するサービス『ベジオベジコ』を運営しています。『農家さんをハッピーに』という理念のもと、農家さんの顔や想いがしっかりと伝わる流通づくりを目指し、宮崎からスムージー用の野菜セット販売するサービスと都内で1時間以内に宮崎野菜が届くデリバリーサービス『ベジリー』を展開しています。また、先月、ベジオベジコ初のフラッグシップストアとなる八百屋の1号店『ベジオベジコ 根津』を東京・根津に出店しました。

alt text
写真提供:vegeovegeco

具体的なべジオベジコのビジネスモデルはというと、宮崎の農場に出向き、農家さんから直接(なんと、言い値で!)野菜を買い取り、そこからユーザーに届けるという形を取っているそうです。そのため、スーパーなどに出回っている野菜よりも、流通コスト、鮮度の面で一般的にかかるコスト(数字)よりも安く提供することが可能になっているそうです。また、中間の業者がベジオベジコしか存在しないので、農家さんにもより多くのリターン(数字)が可能になっているのだそうです。

alt text
写真提供:vegeovegeco

そんなビジネスモデルが軌道に乗りはじめ、最近になってビジネスにとって必要な数字がやっと揃い始めたと杉本さんは言います。できるだけ農家さんへのリターンが大きくなることを前提に、原価率を下げたり、ロスを減らしたり、客数を増やす中で、宮崎の野菜の価値をあげていくために設定した「数字」に追いつけ追い越せ!の日々を送っているのだそうです。

数字に現れない「価値」を求めるために「数字」を追いかける。

alt text

経営に必要な「数字」を追いかけるだけが彼らの仕事ではありません。ベジオベジコでは、すべての販売方式において、宮崎野菜の「味と栄養」「九州産の野菜の豊かさ」「農家さんとの出会い/エピソード」「野菜の食べ方/選び方」がしっかりとお客様に伝わるように意識したコミュニケーションを取っているそう。そんな想いが一番伝わると考えた中でできたのが、根津の八百屋(実店舗)でした。
根津の店舗の代表である杉本さんは、最近ベジオベジコにいて一番うれしかったことがあったと言います。それは店舗にいらしたお客さんが「今日は○○さんの野菜入ってきてますか?」と言ったことだそう。お客様が求める基準が、野菜の値段や種類ではなく「誰がつくった野菜なのか」ということが価値になったこの瞬間、「僕がやりたかったことこれだ!」と確信できたのだそうです。

alt text
写真提供:vegeovegeco

alt text

そんな話のさなか、川野さんも「僕も、コーヒー豆の農家さんをハッピーにしたい!というところから始まっているんですよね。だからこそ直接農園を巡って、その素材の良さを知るために努力を怠らないし、自分たちがその素晴らしさの代弁者であるべきだと思います。」というところでふたりは意気投合。目を輝かせて盛り上がる二人をみて、会場の雰囲気も和やかなムードとなりました。

しっかりとビジネスを成功させるために、様々な数字を追いかけることはもちろん重要です。しかし、「商い」を成功させるうえで、自分たちが身体で体験してきた「感動やストーリー」をいかにして伝えるか、その共感をいかに伝えるかということの大切さが浮き彫りになってきました。

「数字↔体験/価値」の反復運動こそが「商い」を回すコツ

今回のイベントの肝が見えてきましたね。私たちは、何かビジネスを始める際に持った「強い想い」から出発するのは当たり前ですが、その「想い」を測る指標として「数字」を追いかけることの重要性、そしてその「数字」を検証し、課題を微修正しながら、結果につながることでその想いも更に強くなる…。そんな繰り返しこそ、ビジネスを成功させるコツなのかもしれません。

alt text

「数字↔体験/価値」の反復運動を促進するためのツールとしてSquareを活用していただければ、と最後に長谷川さんから具体的な活用方法に関してのレクチャーがありました。
参加者のみなさんのビジネスにおける課題を可視化するための「数字」である、売上高、請求書、来店数、客単価…私たちの「商い」に欠かせない評価指標である「数字」を見たい状況に合わせて自分なりにカスタムし、見たいカテゴリが全てひとつの管理画面で見ることができるなど、これから自分たちの「商い」を加速させたい方々にとって便利な情報が伝授されました。
Squareでは「店舗ごとの”支払い方法別”の売上げをみたい」などのカスタムにも対応。他にも、SlackやIFTTTという外部サービスを経由することで、決済情報をリアルタイムに通知できるような設定も可能というように、みなさんが見たい「数字」がいつでも見れるようなお手伝いがSquareなら可能なのだそうです。みなさんの熱い想いを陰ながら支えるツールとして、Squareを使いこなさない手はなさそうです。

FabCafeのキッチンから始めるOpen Kitchen企画始動!

alt text

最後は、今回のイベントをきっかけに、みなさんが自分たちなりの「商い」を開始できるような企画をわたくし弁慶から発表させていただきました。その名も、「ROUND SQUARE Open Kitchen @FabCafe Tokyo」今回のイベントをきっかけに、自分でも何かを「はじめたい!」と思った方も多くいるはずです。でも場所がない、いきなり大きくは始められない…という方向けに、FabCafeのオープンキッチンを活用して、まずは自分なりの「商い」を始めることができるというプログラムが発表させていただきました。イベント後のネットワーキングの場ですでに企画として実現できそうな話題が2、3盛り上がりました。いろんな方とコラボレーションの幅が広がるので、FabCafeとしても嬉しい限りです。このイベントに参加したみなさんが、FabCafeから始める「商い」をみなさんも是非要チェックしてみてくださいね。

文:FabCafe MTRL プロデューサー 小原 克也(弁慶)