音楽や動画の配信サービス、野菜の定期便など、私たちの生活に浸透しつつあるサブスクリプション(サブスク)型のサービスや商品販売。月ごと、隔週など定期的にお客さまから料金を徴収し、サービスや商品を提供するビジネスモデルです。サブスクと似たサービスに定額課金がありますが、これらの違いは何なのでしょうか。サブスクの仕組みや定額課金との違い、決済方法や導入の注意点を考え、メリットとデメリットを比較してみましょう。サブスクに便利な決済サービスも紹介します。
目次
サブスクとは?
「サブスク」の通称で知られるサブスクリプションとは、定額料金で商品やサービスを一定の期間利用することを指します。従来のサブスクの例として、新聞や雑誌の定期購読、スポーツジムの月額会員などがあります。最近では食品の宅配やクリーニングなど、日常生活の隅々まで多様なサブスクが提供されています。さらにオンラインを利用したサブスクも目立ちます。音楽の聴き放題サービスやソフトウェアなどのデジタルサービスをはじめ、衣服、車、家具などをレンタルするサブスクも登場しています。
近年のサブスクの傾向として、人々が物を「所有すること」から「利用すること」に対してお金を払うように変化してきたことが挙げられます。映像コンテンツのサブスクなら、ビデオやDVDを購入して所有するのでなく、観たいときに観て、なおかつ物が増えないので収納の心配も不要で、自由な利用体験が得られます。衣服のサブスクでは、長く着るか不明な服を所有するより、トレンドの服を試着感覚で短期間利用したいというニーズに応えています。
サブスクの仕組み
サブスクの場合、お客さまは最初に決済方法や利用頻度などを指定すれば、あとは毎回購入を検討するのでなく、決められた範囲内で商品・サービスを固定価格で継続的に利用することが可能です。利便性の高さは、お客さまにとってのサブスクの魅力といえます。
また、音楽の聴き放題のサブスクのように、シングルCD1枚程度の月額費用で利用できるサービスであれば、お得感も大きくなります。新しいコンテンツがどんどん追加されるサブスクは継続利用への訴求力も高く、1年分まとめて決済すると割引される仕組みなども継続利用を促進します。
サブスクのサービス提供する事業者は、サービス内容を設定して適正な価格を付けたら、決済方式を決定し、提供を開始します。定期決済を自動化しておけば毎月手動で請求する手間はありませんが、継続利用や上級プランを訴求するマーケティング施策は、適切なタイミングで実施する必要があります。
サブスクと定額課金の違い
サブスクと定額課金は、同じ意味で使われることが多々あります。定額課金は、特定の商品やサービスの継続利用に対して、月や年単位で定額の金額を支払うものです。サブスクのなかには、定額課金のものもあれば、利用料に応じて請求料金を変える従量課金を採用しているものや、定額課金と従量課金を組み合わせたものもあります。
サブスクの市場規模
株式会社矢野経済研究所の調査結果によると、2021年度のサブスクの国内市場規模は、消費者支払額ベースで、前年度比約11%増の9,615億円超となりました。「衣料品・ファッションレンタル」「外食サービス」「生活関連サービス」「多拠点居住サービス」「デジタルコンテンツ」「定期宅配サービス(食品・化粧品類)」の6市場すべてにおいて成長しています。
参考:矢野経済研究所、サブスクリプションサービス市場に関する調査の結果を発表(2022年6月8日、日本経済新聞)
サブスクのメリット
サブスクを導入する前に、事業者にとってのメリットを考えてみましょう。
1. 売り上げの継続・安定につながる
サブスクは一度契約が結ばれれば、継続して売り上げが入ってきます。サブスクの契約件数が増えることでビジネスが安定しやすくなるため、お客さまが継続したくなるサブスクを目指しましょう。
2. 新規顧客を獲得しやすい
初めて買うジャンルの商品でも、低額で始められるサブスクなら気軽にトライできるのも特徴です。サブスクを入り口として客層を拡大し、まずは継続して利用してもらえるよう訴求し、やがて上級プランや他の商品を提案するなど、新規からリピーターへと育てていける可能性もあります。
3. 認知の高まりがサブスクを後押し
近年、さまざまなタイプのサブスクの登場により、サブスクというサービス形態の認知が高まってきました。お得感やトレンド感など、サブスクへのポジティブなイメージが消費者の利用を後押ししてくれます。
4. データを集めて活用できる
サブスクを通じて集積された顧客データは事業者にとっての資産といえます。年齢などの顧客の属性データと、商品の好み、利用のタイミングといった情報を分析すれば、サブスクのサービス内容のブラッシュアップや、他の商品開発にも役立ちます。
5.さまざまな業態で導入できる可能性がある
ここ数年、さまざまなジャンルにおいてもサブスクサービスが提供されてて、急成長しているようです。家具・家電のサブスクサービスを展開する株式会社クラスの調査では、2020年4月の緊急事態宣言以降、テレワークの推進や自宅で過ごす「おうち時間」の増えたことよって、ミレニアル世代を中心に、自社の貸出点数が急増したと報告しています。このほかにも、洗濯や管理が面倒な布団や、インテリアの雰囲気を気軽に変えられるアート作品、ブランドものの洋服やバッグ、アクセサリーなど、ユニークなサブスクサービスが提供されています。アイディア次第では、自社の商材を使ってサブスクを導入に、多くのお客さまに利用してもらえるようになるかもしれません。
参考:【今サブスクが熱い!】CLAS創業3周年!ミレニアル世代を中心に、サステナブルな『持たない』家具の利用が急成長~“購入”に代わる新しい利用方法として定着の兆し~(株式会社クラス)
サブスクのデメリット
事業者にもお客さまにもメリットの大きいサブスクですが、運営の面では以下のようなデメリットも存在します。
1. 売り上げの安定に時間がかかる
継続的に利用されればショップの売上安定に貢献するものの、継続的な顧客が増えるまでにはサブスクのマーケティングのための時間とコストがかかります。
2. 継続する価値のあるサービスが必要
サブスクは、お客さまが「継続する価値がある」と感じるものでなければ売り上げになりません。サービス設計や価格も含め、顧客目線で検討してみましょう。
3. 価格競争のリスクがある
同分野のサブスクを複数利用することは考えにくいため、コンセプトの似たサブスク同士は価格競争に陥ることがあります。サービス内容やプランの種類で差をつけるなど、選ばれるための工夫が必要です。
4.ある程度のコンテンツ・商品数が必要
お客さまに飽きずに利用し続けてもらうためには、ある程度のコンテンツや商品数が必要になるサブスクのサービスもあります。たとえば、電子書籍のサブスクであれば、読める本の数が少なければ、お客さまは別のサービスに乗り換えてしまうかもしれません。洋服やバッグ、家電などのサブスクにおいても同様のことがいえるでしょう。
サブスクで利用される決済方法
サブスクでよく使われる決済方法は、以下の三つです。いずれも未回収のリスクが低く、毎回の決済の手間も小さいことが特徴です。
- クレジットカード決済
- ID決済(Amazon Pay、PayPay、楽天ペイなど)
- キャリア決済(携帯電話料金と合算して支払う)
クレジットカードは、オンラインショッピングで最も多く使われる決済方法なので、ぜひ対応しておきたいところです。ただし、決済手続きの際にカード番号などを入力することに抵抗感を持つ人もいること、カードの有効期限切れ時にはデータを更新してもらう必要があることなど、注意点もあります。
ID決済は、Amazonや楽天などの会員情報(ID)とパスワードのみで決済手続きを済ませることができる手軽な方法です。各サービスを利用するユーザーとの親和性が高いのが特徴といえます。PayPayや楽天ペイなどは、銀行口座の残高から好きな金額をチャージすることもできるので、クレジットカードを持っていない人でも手軽に利用できます。
キャリア決済は、クレジットカードを持っていない人も利用でき、各キャリアの認証だけで決済可能です。キャリア決済では利用限度額が設定されている点に注意が必要です。
この他、新聞販売やスポーツジムのような対面サービスでは現金決済の場合もあります。ただし、対面サービスでもクレジットカードの継続課金などを導入すれば月々の決済が自動化されるため、決済の手間やミスを大幅に減らすことが可能です。
決済方法の選び方
サブスクを導入するにあたって、どのような決済方法を選択するのかは、重要なポイントです。お客さまが希望する決済方法が利用できない場合、商品やサービスを気に入っていてもサブスク登録に至らないかもしれません。お客さまにとっては、決済方法の選択肢が多いほど利便性は高くなりますが、事業者側での管理が煩雑になることも考えられます。決済方法の選び方のポイントを紹介します。
1.お客さまの年齢層
総務省の発表した2020年度の情報通信白書によると、オンラインショッピングの際に利用する決済方法では、クレジットカード払いが約80%と最も多い結果となっています。また、2020年に株式会社ジェーシービーの調査では、オンラインショッピングでクレジットカードを利用する20代から50代では、男性よりも女性の方が利用率が高く、特に30代女性のクレジットカード利用が多いことがわかっています。しかしながら、学生などの若い世代はクレジットカードを持っていない場合もあるため、サービスの内容によってはID決済やキャリア決済なども検討した方がよいかもしれません。
参考:
・令和2年度情報通信白書(総務省)
・クレジットカードに関する総合調査 2020年度版(株式会社ジェーシービー)
2.決済の契約方法
たとえば、クレジットカード決済の場合、各クレジットカードブランドと個別に直接契約する方法と、決済代行会社と契約する方法があります。これはID決済もキャリア決済も同様で、個別に契約するか、決済代行会社を通して複数ブランドを一括で導入するかを選択できます。個別に契約する方法では、それぞれに交渉が必要だったり、導入後の入金サイクルも異なっていたりするので、事業者の負担は少なくありません。決済代行会社と契約し、複数の決済方法を一括で導入する方が、事業者にとっても売上管理などの事務作業の手間が少なくなります。
3.決済サービスの使い勝手
サブスクの決済方法にはクレジットカードへの継続課金や、銀行口座からの引き落とし、請求書の発行など、さまざまな方法があります。同じ決済代行会社であっても、決済方法で手数料が変わることがあります。また、無料お試し期間を設けることができるか、サブスクの解約があった時にすぐに対応が可能かどうかもチェックしましょう。
4.決済サービスのコスト
決済方法を導入するうえで検討したいのが、初期費用、決済手数料、月額利用料などのコストです。決済代行会社を利用する場合も、各社で初期費用や決済手数料、入金手数料が異なります。どのようなコストが発生するのか、事前に比較検討しておくのがよいでしょう。
5.入金サイクル
利用する決済サービスによって、入金のサイクルは異なります。決済の翌営業日に入金されるサービスもあれば、月末締の翌月入金というサービスもあります。キャッシュフローの観点からも、入金サイクルについてはチェックしておきたいところです。
サブスクの決済にはSquareがおすすめ
サブスクを提供する場合、まずサービス内容と価格を決定します。サブスクは一度決定した価格を改定しにくいサービスであることを踏まえ、お客さまへの提供価値と自社の利益を慎重に検討してサービスを設計しましょう。
次に、決済方法を検討します。クレジットカードを利用した継続課金は、お客さまと事業者双方にとって便利な手段ですが、お客さまのクレジットカード情報などを預かって定期的に請求することになるため、安全な情報管理が求められます。
たとえば、決済代行会社のSquareでは、サブスクにぴったりな以下の決済方法を提供しています。
Square 請求書
Square 請求書は、お客さまのメールアドレス宛に送ることができる請求書です。「定期送信機能」と、「カード情報保存機能」を組み合わせることで、お客さまのクレジットカードから自動で料金が引き落とされます。必要なのは、決済ごとの手数料のみで、導入費用や月額費用はかかりません。Square 請求書を使ったサブスクの方法について、詳しくはこちらをご確認ください。
Square リンク決済
Square リンク決済の機能を使うと、数ステップでサブスクの決済手続きを行うことができます。SNSやメールなどを通して、お会計用のリンクをお客さまに共有する方法で、一つのリンクを複数のお客さまに共有することができます。具体的なサブスクの設定方法はこちらをご参照ください。
どちらの機能も事前にSquareのアカウントを作成し、加盟店審査を完了する必要がありますが、導入費用や月額費用は無料なので初期費用をかけずにサブスクを始められます(※1)。さらにSquareなら、最短翌営業日入金で振り込み手数料も無料です(※2)。
※1.決済ごとに決済手数料がかかります。決済手数料について、詳しくはこちらをご確認ください。
※2.申込時に、三井住友銀行・みずほ銀行を登録した場合、決済日の翌営業日に振り込まれます。それ以外の金融機関口座を登録の場合、毎週水曜日で締め、同じ週の金曜日に合算で振り込まれます。
このように、サブスクに対応した決済サービスを導入すれば、複雑な手続きなしでサービス提供を開始できます。サブスクの内容とそれに対応した決済方式、そして決済サービスの導入はセットで用意すると考えておくといいでしょう。
サブスクの注意点
サブスクを始める際の注意点は、ターゲットを絞り込んだ上での「ニーズの把握」と「適切な価格設定」です。
宅配弁当のサブスクなら、ターゲットが子どものいる家庭か、働き盛りの世代か、高齢者かをまず絞り込み、その上でターゲットの持つニーズを分析し、マッチするサブスクを提供します。決済方式やマーケティング方法も、ニーズを持つターゲットのペルソナに合わせたものが求められます。加えて、ターゲットの利用状況に見合う価格で提供することで、継続利用する顧客、つまりリピーターを獲得することが可能になります。
まずはニーズをとらえてサブスクのサービスを設計し、決済方式の決定や決済サービスの導入など、準備を進めていきましょう。
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執筆は2021年12月22日時点の情報を参照しています。2024年7月5日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash