再開発で街並みが変わりつつある、下北沢。小田急線・京王線の下北沢駅から徒歩3分のところにあるのが、レザーブランド「analogico(アナロジコ)」の工房兼ショップだ。10年近く前に末吉隼人さんが1人で立ち上げた革工房は、代々木から下北沢に場所を移し、国内外のお客さまから愛されるブランドへと成長した。
analogicoでは、店舗でのキャッシュレス決済をはじめ、オンラインショップでのクレジットカード決済や在庫情報の連携にSquareを活用している。今回は、オーナーの末吉隼人(すえよし・はやと)さん、広報の末吉美紗子(すえよし・みさこ)さん、システム担当の末吉陽一(すえよし・よういち)さんに、導入の経緯から日々の利用について聞いた。
業種 | 小売店 |
業態 | 革製品の製造・販売 |
使用しているサービス | Square リーダー、Square スタンド、Square ターミナル、Square POSレジ、Square API |
- 好きなものづくりを仕事に
- 永く使える革製品を作る
- 持ち運べる端末と翌営業日入金の両方はSquareだけ
- 実店舗もオンラインショップもSquareに統一
- 在庫を統一したことで商品回転率が向上
- 手書き・手入力から脱却し、ものづくりに集中できる環境を作る
- Squareが実現したこと
好きなものづくりを仕事に
昔からものづくりが好きで、独学で革製品を作っていた末吉隼人さん(以降、隼人さん)。ものづくりを仕事にしようと、鞄工房を構えるおばに相談したところ、自分の工房では人を雇う余裕がないからもう少し大きなところで修行するようにすすめられた。そこから老舗の革鞄工房に入り、鞄作りを一から十まで教わった。製造だけでなく、営業や店舗での接客、イタリアでの革の買い付けといったこともひと通り経験したという。年に4、5回とイタリアに通ううち、あるタンナーの革が隼人さんの心に刺さった。
「この革はすごく魅力的だなと思いました。こういう革を使って製品を作ったらどれだけ素敵だろうという思いが湧いてきて、そこから独立して、今はその革を使って製品を作っています」
イタリアのトスカーナ州には多くのタンナー(製革業者)がいる。隼人さんが出会った革はどこが違っていたのだろうか。
「ナチュラルで革の素の表情がありのまま出ているんですね」
均一な商品として世に出すために、表面の模様が見えないように塗装を施されることが多い革製品。ただ、隼人さんが使いたかったのは、キズやシワ、デコボコを隠さず、野生的で自然なままの革だった。
「こういうナチュラルな革ってすごく少ないんですね。日本のタンナーもイタリアのタンナーも数多く見てきましたが、これだけ自然な表情を作れるところは本当にないです」
▲人気商品の手帳カバー
10年間の修行を経て2015年に独立すると、おばが代々木に持っていた工房スペースを引き継いだ。独立直後は注文数も少なく、顧客開拓のためにイベントに出店しつつ、試作品を作ったり、ミシンを教える教室を開いたりもしていた。
2017年には妻の末吉美紗子さん(以降、美紗子さん)がanalogicoに合流し、Instagramでの発信やオンラインショップの運営を担当するようになる。
▲スタッフのアイデアから生まれた商品を説明する美紗子さん
「コツコツと毎日1投稿は絶対すると決めてずっとInstagramで発信していたら、マンションの地下にあって外からは見えないアトリエだったにも関わらず、ちょっとずつ『インスタを見て来ました』というお客さまが増えていきました」(美紗子さん)
美紗子さんの地道な発信活動が実を結び、お客さまもスタッフも増え、2020年には工房兼ショップを下北沢に移した。
永く使える革製品を作る
下北沢のショップを訪れると、小銭入れといった革小物から、ビジネスバッグやサイズ違いのトートバッグまで、商品数の多さに驚く。お客さまは7対3で、女性が圧倒的に多い。同じアイテムを色違いで購入したり、新作が出るたびに買いそろえたりと、リピーターも少なくない。
「永く使える革製品を作るというコンセプトがもともとあって、革が十分主張してくれるので、デザインに関してはなるべくシンプルに仕立てようと思っています。デザインを構成するのって直線と曲線ですよね。ぼくの作るものはちょっと丸みがあるものが多いので、そこが女性に響いているのかもしれないです」(隼人さん)
木・金・土と週3日オープンするショップには、国内外からお客さまが訪れる。なかでも、その場で一人ひとりのサイズに合わせて作るベルトは、海外の観光客に特別なお土産として人気だという。
ショップでの支払いに使われているのが、Squareの決済端末だ。お客さまの8割ほどがキャッシュレスを選ぶ。
持ち運べる端末と翌営業日入金の両方はSquareだけ
隼人さんがSquareを導入したのは、2018年頃。イベントによく出店していたので、外でも使える決済端末を探していた。
「とにかく持ち運べるポータブルな決済端末がほしかったのと、決済して入金が翌日なのが助かりました。革も高いですし、売り上げはすぐにほしいという気持ちがあったので、この2点がマッチしたのがSquareでした」(隼人さん)
「2点とも唯一無二でしたよね。スマホのイヤホンジャックに挿して決済する端末(※)はSquare以外ではどこも出していなかったですし、翌営業日入金もSquare以外やっていなかったですよね」と話すのは、自分の会社を経営しながらanalogicoのシステム全般も請け負う兄の末吉陽一さん(以降、陽一さん)だ。
※現在は発売しておりません。
創業当初は売り上げを手書きで記録していたが、Squareの導入に合わせてiPadを購入し、Square POSレジアプリを使ってデジタル管理するようになった。
現在はSquare スタンド(第1世代)とSquare ターミナルを使っている。特に、POSレジの操作もレシートの出力もできるSquare ターミナルはイベント時に役立っているという。
▲Square ターミナル
実店舗もオンラインショップもSquareに統一
独立時に立ち上げたオンラインショップにはWooCommerce(ウーコマース)というECサイト構築サービスが使われている。WooCommerce自体に決済機能はないため、他社の決済システムと連携させるかたちでクレジットカード決済を受け付けていた。数年前、Squareがオンライン決済でもJCBの取り扱いを始めたのをきっかけにSquareとの連携に移行した。
WooCommerceとSquareを連携させる大きなメリットは、オンラインショップの売上情報が自動的にSquareに取り込まれる点だ(※)。analogicoでは、実店舗でもオンラインでもSquareを利用しているため、Squareの管理画面を開けば両方の情報が確認できる。陽一さんも「決算時にはそれぞれのシステムから売上データを出力してましたし、入金のタイミングも違いました。ややこしい部分を統一できたのはよかったです」と話す。
※WooCommerceとSquareの連携について詳しくはこちらをご確認ください。
統一したのはここだけではない。実は今年に入って、別々にしていた実店舗とオンラインショップの在庫も統一した。
在庫を統一したことで商品回転率が向上
下北沢に引っ越した2020年6月から昨年末まで、1階はショップ、地下1階は工房と、2フロアに分かれて営業していた。両方を地下1階に集約させることになり、物理的に在庫数を減らす必要があった。そこで思い切って、別々に管理していた実店舗とオンラインショップの在庫をひとまとめにしたのだ。
「物理的に工房とショップを一つのスペースに集約するにあたって、2店舗分の在庫を持つとなると在庫数がすごく増えてしまうんですね。狭い空間で管理しなければいけないので、思いきって在庫の統一に踏み切りました。オンラインショップにSquareが組み込まれていて、同じシステム上で管理できるのも大きかったです」(美紗子さん)
WooCommerceとSquareを連携させると、在庫情報の同期も可能になる。そのため、システム面の問題もクリアできた。集約した結果、「すごくよかったです。もう分けられない」と美紗子さんは話す。
▲工房兼ショップの入口
それまでは「この商品は店舗用に2個、オンラインショップ用に3個発注しよう」と、常に2店舗分の在庫の増減を気にしなければいけなかった。また、オンラインショップに在庫がない商品については、「店舗にはありますか?」というお客さまからの問い合わせも多かった。在庫管理の負担が大きく、お客さまにも不便をかけていた。
「統一したことで、オンラインショップに在庫があればすぐに買えるし、なければオンラインショップにも店舗にも在庫がないので、受注生産ということになります。お客さまにもそれをアナウンスしたので、オンラインショップからいつでも在庫状況が分かるようになり、在庫に関する問い合わせが来ることもなくなりました」(美紗子さん)
店舗と比べると、オンラインショップのほうが売り上げでは2倍、ときには3倍になることもある。ただ、店舗にはサンプルも兼ねてできるだけ、各商品、各カラーをひと通り置くようにしている。
「店舗では頻繁に売れない商品もオンラインだと動くことがよくあります。今は在庫を一緒にして、店舗にある商品を常にオンラインからも買えるようにしたことで、遠方のお客さまも欲しいものがすぐに買えるようになり、在庫の回転がはやくなりました」(美紗子さん)
「在庫を多く持つってことは、時間と労力をかけて作ったものが滞留して売り上げにならないということなので、なるべく少なく持って回すのが一番ベストな方法です。Squareのキャッシュフローもそうですよね。すぐに入ってくるから、新しい革の仕入れなど、すぐに次の投資に使える」(隼人さん)
▲右から隼人さん、美紗子さん、陽一さん
手書き・手入力から脱却し、ものづくりに集中できる環境を作る
analogicoには、ふだんはリモートで担当業務をこなし、工房に来るのは週に2回だという陽一さんを含めてもスタッフが全部で6人しかいない。小規模な人数で、お互い仕事をかけもちしながら、日々たくさんの革製品を生み出している。一人ひとりが自分の仕事に集中できるように、なるべく手書き・手入力をなくし、ミスやトラブルの発生を防いでいる。手書き・手入力をなくすうえで役に立っているのが、業務の自動化だ。その一端を覗かせてもらった。
システム開発を担当する陽一さんが見せてくれたのは、タスクを管理するスプレッドシート。オンラインショップから注文が入った商品のうち、受注生産品は製作タスクとして隼人さんを含む職人たちに伝えなければいけない。こうしたタスクは一つのスプレッドシートにまとまっている。
スプレッドシートを開けば、注文番号やお客さま名、商品、金額に加えて、在庫品なのか、革の切り出しからしなければいけない商品なのかが一覧できるようになっている。製作期間や発送期限、担当者名も記載されているので、自分の名前でフィルターをかければ担当タスクがひと目で分かる仕組みだ。
お客さまの氏名や注文の詳細など、細々とした情報を手入力するとなると、時間がかかるうえに、ミスも発生しやすい。そこで陽一さんはWooCommerceとGoogleのスプレッドシートを連携させ、オンラインショップに注文が入ると自動的にスプレッドシートにその情報が送信されるように設定している。おかげで、タスクを手入力する機会はめったにない。美紗子さんがanalogicoに入ったばかりの頃は、タスクをカレンダーに手書きで記載していたというから、その進化に驚く。
▲ボタン一つで入庫が管理できるシステムも使われている
タスク管理のスプレッドシートをはじめ、入庫管理や売上管理など社内のさまざまな業務が自動化されている。自動化にはSquareが提供しているAPI(※)も役立っているようだ。
「SquareはさまざまなAPIを開放していて、レファレンスもちゃんとある。あと、テスト環境もあるのがありがたいですね。たいへん助かっていますし、フル活用しています」(陽一さん)
※API(Application Programming Interface)は異なるソフトウェアやアプリ間で情報を共有する仕組みのことです。Squareが提供しているAPIについて詳しくはこちらをご確認ください。
隼人さんの職人としての技術と経験、ものづくりへの情熱、美紗子さんが工夫を重ねながら続けてきた発信、陽一さんによるものづくりに集中できる環境作り。この三者のバランスこそがanalogicoの成長を支えているのかもしれない。
Squareが実現したこと
持ち運びできる決済端末
analogicoがSquareを導入したきっかけは、イベント会場でも使える持ち運べる決済端末を提供していることでした。Squareでは4種類の決済端末を提供しており、そのうち2種類(Square リーダーとSquare ターミナル)が持ち運び可能です。どちらもインターネット環境さえあればキャッシュレス決済を受け付けることができるので、店舗でもイベント会場でも使う場所を選びません。
▲右からSquare リーダー、Square ターミナル
最短翌営業日入金でキャッシュフローに影響しない
analogicoがSquareを導入したもう一つの大きな理由は入金サイクルのはやさです。Squareでは、みずほ銀行・三井住友銀行を登録している場合は翌営業日に入金、その他の金融機関の場合は週1回入金されます。入金サイクルがほとんど現金を取り扱うときと変わらないことから、キャッシュフローに影響することもありません。
実店舗とオンラインショップの決済・在庫情報の連携
実店舗ではSquareの決済端末とPOSレジを使って支払いを受け付け、オンラインショップではECサービスのWooCommerceとSquareを連携させています。オンラインと実店舗の両方にSquareを使うことで、決済や在庫などの情報が一つのプラットフォーム上にまとまり、管理しやすくなります。
自社システムに役立つ豊富なAPI
analogicoでは、独自の自社システムを構築し、注文や在庫、売り上げの管理といったさまざまな業務の自動化を推し進めています。こうした自動化に使われているのが、異なるソフトウェア間での情報のやり取りを可能にする「API」です。Squareは決済をはじめ、さまざまなAPIを公開しており、analogicoの自社システムにも使われています。
*記事に掲載されている店舗情報 (商品内容、価格、営業時間など) は2024年10月時点のものです。