『熱狂的なファンを作る。』首都圏を中心に22店舗を展開するカスタムサラダ専門店「CRISP SALAD WORKS」(以下、CRISP)が掲げるミッションだ。2014年の創業から8年間で売り上げと店舗数は20倍にまで拡大。年間で提供するサラダの数は150万食、スタッフ数は400人超、さらに4回以上来店しているリピーターは6割に上る。
こうした順調な成長を支えているのが、テクノロジーのちからである。CRISPを利用するお客さま、そこで働くスタッフ、一人ひとりに愛情を持って本気で向き合うからこそ、テクノロジーを利用した課題解決に徹底的に取り組んでいる。
そんなCRISPが決済パートナーとして選んだのがSquareだ。全店舗に導入している自社開発のセルフレジ「KIOSK」にはSquare リーダーが使われており、さらにSquare POS APIから取得したリアルタイムの購買データはスピーディーな意思決定に生かされている。
今回は、CTOの和田洋樹さん、営業本部長の小川典之さん、マーケティング部部長の西村和紘さんに、具体例を交えながらSquareの活用についてたっぷりと話を伺った。
目次
業種 |
カスタムサラダ専門店 |
店舗数 |
22店舗(2023年8月時点) |
利用しているサービス |
Square リーダー、Square スタンド、Square POSレジ、Square POS API |
導入を検討した理由 |
・セルフレジの開発にあたって、自社のデザイン理念に合う決済端末と、API連携が可能な決済事業者を探していた |
Squareが役に立っている点 |
・店舗のデザインに合う決済端末をセルフレジに組み込むことができた ・リーズナブルかつ簡単に決済手段を入手できるため、コストとリードタイムを気にすることなくレジを増設できる ・ほぼ100%に近いお客さまがキャッシュレス決済を利用するため、お会計に手間を取られることなく、スタッフがお客さま一人ひとりに対して目を配れる ・POS APIから取得した購買データが、各部署で短期・長期の両方の意思決定に貢献している ・レジ締めや本社への売上報告業務がない分、店舗で働くパートナーの負担軽減になっている |
課題解決をテクノロジーに任せる
CRISPが1号店を東京・麻布十番にオープンしたのは2014年12月のこと。アメリカ生活が長かった代表の宮野浩史さん(以下、宮野さん)には、現地で食べていたボリュームたっぷりで栄養価も豊富なサラダを日本でも提供したいという思いがあった。当時サラダ専門店はまだ珍しい存在だったが、開業と同時に多くのお客さまから支持を受け、想定の5倍の売れ行きになった。
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繁盛は喜ばしいことのはずが、宮野さんは強い違和感を持った。お客さまを待たせることが増え、十分な接客ができていなかったのだ。パートナー(※)も目の前の作業をこなすことで精一杯になっていた。
※ CRISPではスタッフのことをパートナーと呼んでいる
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「会社の成長に合わせて、提供する顧客価値も高まっていくべきではないか」と考えた宮野さんは、お客さま一人ひとりにきめ細かな対応ができるよう、目の前にある課題をテクノロジーを使ってとことん解決していこうと考えた。その一つがお金のやり取りだ。
キャッシュレス比率は96%
「現金のやり取りに、お客さまとの本質的なコミュニケーションは存在しないと思います。それよりも、サラダのトッピングに迷っていそうだな、オーダー方法が分からなさそうだなというところに、お客さまとのコミュニケーションポイントがあります。そこにこそ集中できるよう『KIOSK』を導入しました」(和田さん)
KIOSKはCRISPが自社開発しているセルフレジだ。2017年から導入を開始し、現在では第3世代が運用されている。
▶セルフレジへのSquare導入については「自社セルフレジにSquareを導入 ー CRISP SALAD WORKS」の記事でも紹介しています。
お客さまは注文から決済までをKIOSKで行う。KIOSKを導入したことで、今では現金を扱うことはほとんどなくなり、キャッシュレスによる支払いが96%を占める。
「お店を見ていても、KIOSKに並んでいるお客さまが財布を持っていないんですよね。やっぱりセルフレジの利便さを1度体験してしまうと、もう現金には戻れないというお客さまが多いのではないかと思います」(小川さん)
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「KIOSKのようなセルフレジを導入するとお客さまとの接点が減ってしまうという懸念がありますが、お客さまの動きがちょっとでも止まっていたらパートナーから声をかけるというのが大前提としてあります。お客さまとのタッチポイントを維持しつつ、セルフレジの冷たさをしっかりカバーしていく努力をしています」(小川さん)
このKIOSKに使われているのが、Square リーダーである。
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▲セルフレジKIOSKにはSquare リーダーが組み込まれている
決済端末はSquareの一択
CRISPでは社内にエンジニアチームとクリエイティブチームを抱え、デジタル広告から店舗設計まで、顧客体験にまつわるすべてを自社でまかなっている。『熱狂的なファンを作る。』というミッションを達成するには、細部への配慮が欠かせないという思いがあるからだ。
セルフレジ専用端末ならさまざまなメーカーが提供しているが、CRISPにとっては自社開発以外に選択肢はなかった。もっと言えば、そのセルフレジに組み込む決済端末もCRISPの理念にしっくりくる選択肢はSquareしかなかったという。
「国内の決済サービスが提供している決済端末はいかにもメカニックな外観のものが多く、店員用の端末がそのままお客さまの方に向いているんですよね。私自身そこに違和感がありました。Squareの端末はミニマルなデザインなので、どのように設置しても店舗にうまくマッチします」(和田さん)
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Square POS APIとのデータ連携
CRISPでは決済端末に加えて、Square POS APIを使って、どの商品がいつ・どの店舗で売れたのか、決済毎の単価はいくらかなどのデータを取得している。こうしたデータは「METRICS」と呼ばれる社内のデータシステムに集められ、各場面での意思決定に活用されている。
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▲売り上げや注文数、注文単価といったMETRICSの一部は、CRISPのウェブサイト上で公開されている。
Squareは決済端末だけでなくAPIも提供している点が、常に進化を続けるCRISPにとっては重要だった。
「SquareにはPOSレジなどの完成されたアプリが元々あるので、小規模な飲食店でもすごく気軽に導入できる点がメリットだと思います。かつ、同様のサービスと絶対的に違うのが、API群がしっかりと揃っているところです。CRISPのような徐々に高度な活用を進めていきたい会社にとっては、それぞれのフェーズに沿ったシステム展開がやりやすいです。国内含めて世界の決済事業者の中でも、群を抜いている部分だと評価しています。弊社もさらに活用を進めて行きたいと思っているところです」(和田さん)
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POS APIとの連携は、Squareが提供している開発者向けドキュメントなどを参考に、特につまづくこともなくスムーズにできたという。第3世代への移行時、QA(機能や仕様の確認・評価)を含めて開発にかかった期間は1カ月程度だそうだ。
購買データを活用した課題解決
POS APIから取得した購買データを含めて、METRICSに集められたデータはさまざまな場面に活用されている。
マーケティングキャンペーン、商品開発でのデータ活用
たとえば、ほぼリアルタイムでデータが見れるので、「雨の日プロモーション」や「友達紹介キャンペーン」など、天候やイベント、店舗毎の売れ行きなどに合わせたスピーディーな施策を柔軟に打つことができる。
また、2022年11月から創業初となるシーズナル商品の展開を始めているが、商品開発時の価格設定やネーミングにも購買データは利用されている。もちろん売れ行きも確認できる。新商品の発売日にはお客さまの反応が気になって、「15分ごとにデータがリフレッシュされるので、どの店舗でどれだけ売れたのかをずっとウォッチしてました」と西村さんは話す。
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▲左から小川さん、西村さん、和田さん
顧客動向に基づいた経営判断
ふだんから店舗を回り、お客さまやパートナーの視点に立って課題に対処することが多い小川さんも、データを常時参考にしている。
「基本的には対前週との比較データがリアルタイムで出るので、前週と比べて売れていない場合、なぜ売れていないのだろうと深掘りをしていきます。そこから、マーケティング側になにかブーストになるような施策ができないかと依頼することもあります」(小川さん)
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一方、売れ行きが順調なお店に関しても、KIOSKの台数が足りているか、パートナーの人員配置が適切かを確かめるために実際に見に行く。
「最近みなとみらいに新店舗がオープンしたのですが、そこにはKIOSKを2台設置していました。ランチタイムだと2台では足りないとパートナーから聞いて、増設できないかと社内で相談したら、1週間でレジが1台増えました」(小川さん)
「経営会議で『導入しよう』と決まった瞬間に、Squareのサイトで端末を注文してましたね。2、3日くらいで必要なものは用意できました」(和田さん)
「Squareのおかげでレジがすぐに増設できましたね」(西村さん)
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現場の声を丁寧にヒアリングし、課題はすぐに社内持ち帰り、エンジニアやデザイナー、マーケティング担当者と連携して迅速に解決する。これがCRISPでは当たり前のことだという。
地球に優しい取組におけるデータ活用
より長期的な視点に立った施策にもデータは使われている。地球に優しい取り組みとして、CRISPではウェットティッシュ、プラスチックカップやストローを使ったドリンクの廃止を行ってきたが、その一環として持ち帰り用の紙袋も有料化した。
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持ち帰りを利用するお客さまが多い分、紙袋の消費量は年間70万枚にもなっていたが、有料化に踏み切ったことで消費量の70%を削減できた。こうした数字も購買データから得られたものだ。有料化に対するお客さまの反応には不安もあったが、蓋を開けてみたら好意的な声が多かったそうだ。
そもそも、この地球に優しい取り組み自体もお客さまからの声を受けたものだ。データを重視しているが、けっしてデータだけを見ているわけではない。その視線の先には、常にお客さまの存在がある。
パートナーが働きやすい環境を作る
キャッシュレス決済比率が100%に近いこともあり、店舗ではレジ締めを行う必要がない。購買データがリアルタイムで自動的に集計されるため、閉店後に本社に売り上げを報告するといった業務もない。21時にお店を締めた場合、レストランマネージャーを含めたパートナーは21時10分には帰宅できる。
「原点はパートナーが働きやすい環境づくりです。ファンを増やすためには、パートナーの負担を減らしていくことが大事だと考えているので、お店で働くパートナーからのフィードバックをいかに実装していくかというところを重視しています」(西村さん)
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▲レストランマネージャーと話す小川さん
和田さんがこんな例を教えてくれた。
「CRISPで人気のトッピングにアボカドがあるのですが、調理工程の関係で最後に乗せるので、入れ忘れが発生しやすかったんですね。そこでどうしようと考えて、後乗せのアボカドと別添えのサルサソースだけ、キッチン用の伝票で文字が白黒反転で印刷されるようにしました」(和田さん)
「忘れないように」と注意することもできたかもしれないが、パートナーの心理的な負担を増やすことなく、テクノロジーでスマートに解決するのがCRISPらしいところだ。
タッチポイントはすべて内製
「CRISPが人と向き合うところのタッチポイントには、すべて内製のアプリを用意しています」と話す西村さん。具体的にはどのようなアプリを開発しているのだろうか。
「一番お客さまから見えるのが、セルフレジの『KIOSK』です。あとは、お客さまが自身の端末にインストールして使うオーダー用アプリ、キッチンで注文の確認からお渡しまでの進捗を確認できるオペレーション用のアプリ、それから個々のパートナーがシフト申請や打刻を行う『WORKPLACE』と呼ばれるアプリがあります」(和田さん)
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既存のものを使わず、シフト用アプリまで自社開発してしまうところが徹底している。シフト調整に時間がかかるのは、飲食店共通の悩みだろう。CRISPでも同様に、各パートナーから希望を聞き、毎月のシフトを決めていくという業務がレストランマネージャーには大きな負担だった。それが、売上予測データに基づいてシフトを公開し、パートナー自身がWORKPLACEアプリ上でシフト申請する仕組みに変わったことで、パートナーもレストランマネージャーも負担が大きく減った。
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▲シフト用アプリ「WORKPLACE」の画面(画像提供:CRISP)
テクノロジーのちからを借りて成長し続ける
「ミッションが『熱狂的なファンをつくる。』ことなので、何かプラスワンお客さまにできることはないか、何か小さなコミュニケーションが生まれないかというところを大事にしています。お客さまを大事にするためには、パートナーが働きやすい環境も欠かせないので、その両軸でテクノロジーのちからを借りながら企業として成長しています」と、話す西村さん。
今後のビジョンについては、「CRISPの目指す『パーソナライズされた新鮮で栄養価の高い食事』をいつでもどこでも食べられるよう、店舗展開含めていろんなことに挑戦し続けていきたいです」と教えてくれた。
CRISPのミッションには、代表である宮野さんの『自分たちが信じるものに手を抜かずに、働く仲間に、お客さまに、お店に、そして商品に愛情をもって本気で向き合うことが飲食にとって一番大事なことで、忘れてはいけない本質だ』という思いが込められている。和田さん、小川さん、西村さんの話からも、この思いが随所に感じられた。
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