プラスチックごみを削減するため、レジ袋有料化への動きが加速しています。原田義昭環境相は、2019年6月3日に行われた記者会見で、スーパーなどの小売事業者に対してレジ袋有料化(無料配布の禁止)を法令で義務化する考えを示しました。
開始される時期について、環境相は「東京五輪に遅れないよう、今年か来年くらいに」と述べており、スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、百貨店などのレジ袋を扱う事業者が一律に対象となりそうです。現在レジ袋の無料配布を行っている小売業者は、早急な対応が求められます。
参考:レジ袋有料の義務化「来年までに」 環境相が意向(2019年6月3日、朝日新聞)
ここでは、レジ袋有料化について、世界や日本の最新事例を紹介します。有料化の具体的な時期はまだ検討段階ですが、早めの対策をすすめ、他社との差別化をはかりましょう。
目次
レジ袋有料化の背景
レジ袋有料化は、世界各国で進んでいる大きな流れです。その背景にあるのは、プラスチックごみの増加による「ごみ処理コストの増大」と「地球環境への悪影響」です。
プラスチック廃棄物の処理問題
レジ袋を含めたプラスチック廃棄物の廃棄やリサイクルには多額の費用がかかります。
国内で処分が難しかったプラスチックゴミは、海外へ輸出して対応していましたが、最大の受け入れ先であった中国が2017年末にプラスチックを含む24種類のゴミ受け入れ禁止を発表しました。プラスチックごみの処分は日本にとっては大きな課題であり、今後はさらなる削減に取り組む必要があります。
参考:なぜ減らせない?プラスチックごみ(2018年10月22日、NHKクローズアップ現代+)
地球環境への影響
プラスチックごみが地球環境に悪影響を与えていることは報道などで知っている人も多いかもしれません。国連環境計画(UNEP)が2018年に発表したレポート「Single-use plastics: A roadmap for sustainability」によれば、人口一人あたりでは、日本はアメリカに次いで多くのプラスチック容器を廃棄しています。
プラスチックごみを処分するうえで排出される二酸化炭素は地球温暖化の原因となります。さらにプラスチックによる海洋汚染も深刻化しています。増え続けるプラスチックごみは、地球環境に悪影響を与え、長期的に見ると私たちの生活にも大きな影響を及ぼします。
日本での義務化に向けた動き
一人あたりプラスチック容器包装の廃棄量を比較すると、日本人のそれは米国に次いで多いという現状があります。世界にはプラスチックごみの削減に関して以前から具体的に取り組んでいる国もあります。2020年の東京大会で世界から選手・観客を迎える立場となることも踏まえ、環境への取り組みを世界にアピールするためにも、義務化に向けての動きが加速すると予想されます。
環境相は2019年から2020年にかけてのレジ袋有料化に向けて、法令の整備を進めていく方針です。無償での配布を禁じ、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、百貨店などが対象となる予定です。レジ袋がどうしても必要な人には有料で販売し、売り上げは原価を除いて環境対策に使われる考えが発表されています。
参考:原田大臣記者会見録(令和元年6月3日(月)17:00~17:49 於:環境省第1会議室)
プラスチックごみ全体を考えると、レジ袋有料化によるゴミの削減量はわずかかもしれませんが、それに付随して「マイバックの持ち歩きが習慣化される」「レジ袋をもらえないため、家庭でのゴミ袋も購入する必要が出てくることで、ゴミを少しでも減らすようになる」など、ゴミ自体の削減につながることが期待されています。
世界でのレジ袋廃止の事例
世界では、レジ袋廃止をはじめプラスチックごみの削減に向けての取り組みが具体的に進んでいます。アジアだけでも、レジ袋に課税・有料化している国に韓国、ベトナム、インドネシアがあります。また、製造販売を禁止している国にバングラデシュ、ブータン、中国、台湾、インド、モンゴル、スリランカがあります。有名な事例をいくつか紹介します。
台湾でのプラスチック規制の動き
台湾は、段階を分けて使い捨てのプラスチックストロー・プラスチックバッグ・使い捨て容器を禁止する方針です。2020年には無料のプラスチック製ショッピングバッグ(いわゆるレジ袋)・使い捨て容器・使い捨て器具を提供することに制限がかかり、2030年には完全に使用禁止になることが予定されています。
参考:台湾で脱プラスチックの動きが加速(JETRO、2019年6月5日)
レジ袋有料化でレジ袋の総数が半減したイングランド
イングランドでは、2015年にレジ袋が1枚5ペンスに有料化されました(従業員250人以上の小売業者が対象)。有料化導入から4年後の2019年には、同国の大手スーパーマーケットで販売されたレジ袋の総数が、2018年に比べて約半分に減少したそうです。
2014年のレジ袋購入数が買い物客一人あたり140袋だったところ、2019年には10枚にまで減っています。
参考:英イングランドのレジ袋販売数が激減、前年の半分に 有料化から4年(2019年8月5日、BBCニュース)
小売店がレジ有料化に向けてできること
レジ袋有料化の動きに向けて事業者ができることは何でしょうか。具体的な取り組みは、義務化が決定してから……と考えている事業者も多いかもしれませんが、早めに準備をしておくことに越したことはありません。
レジ袋有料化には、経営上のメリットもあります。まず、環境問題に積極的に取り組んでいるお店としてお客様からの評価が高まることが期待できるます。また、配布するレジ袋の数が減ることで、コスト削減にもつながります。
急にレジ袋有料化に踏み切るのは抵抗があるという場合は、「マイバッグ利用のお願い」など、お客様への呼びかけから始めるという方法もあります。レジ袋有料化が義務されるまでに、マイバッグ持参が習慣化されていれば、新しい制度への移行もスムーズに行きます。
義務化という方針は決まっているものの、まだ具体的な指針(有料化の範囲、料金設定、有料配布の方法)はこれから検討するという段階です。スウェーデンに本社をおく衣料品店「H&M」では、ショッピングバッグを1枚20円とスーパーなどと比べて高い値段で有料化し、順次プラスチック製を廃止して紙袋に変えていく方針を2018年に打ち出しました。
参考:H&Mが買い物袋を有料化 紙製に変更して20円で(2018年11月13日、WWDジャパン)
「レジ袋を有料化しなくてはならない」という方向で考えるのではなく、「プラスチック製品をどのように減らしていくか」という方向で考えると、自店舗なりの対策が見つかるかもしれません。
レジ袋有料化への対応を進めよう
他店に遅れを取らないためにも、義務化が決まった際に慌てないためにも、一度レジ袋の配布数を減らすための対策を考えてみてはいかがでしょうか。
東京大会開催を前に、有料化の議論は急速に進展していくことが予想されます。今後の政府の動きに注目し、レジ袋有料化の動きに上手く対応できるよう、情報収集も欠かさないようにしましょう。
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執筆は2019年8月21日時点の情報を参照しています。
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