受け取り拒否の​商品、​送料は​誰が​負担?​ネットショップの​正しい​対応、​法的措置は?

ネットショップが​発送した​商品が​受け取り拒否を​された​場合、​返送にも​送料が​発生してしまいます。​受け取り拒否を​した​購入者に​送料を​請求する​ことは​可能なのでしょうか。​代金引換​(代引き)​や​後払い​決済に​よる​取引で​起こる​可能性が​ある​受け取り拒否の​問題の​対策や​法的措置に​ついて​解説します。

目次



受け取り拒否の​6パターン

配送業者に​より​「受け取り拒否」の​結果が​記録され、​商品の​返送に​至る​ケースには、​大きく​分けて​六つの​パターンが​あります。

  • 出荷ミスで​届いた​商品を​届け先が​受け取り拒否
  • 購入者が​長期不在、​再配達依頼なし
  • 購入者の​家族などが​誤って​受け取り拒否
  • 購入者が​注文を​キャンセルする​ために​受け取り拒否
  • 購入者が​間違って​届いた​商品と​勘違いして​受け取り拒否
  • 悪質ないたずらに​よる​受け取り拒否

受け取り拒否が​発覚した​場合、​まず​ネットショップ側の​出荷ミスが​なかったかを​確認する​必要が​あります。​ネットショップの​不手際に​より​誤った​届け先住所への​配送、​誤った​商品の​出荷などの​ミスが​起きていた​ことが​わかれば、​受け取り拒否が​起きた​原因は​明らかです。​この​場合、​ネットショップが​返送時の​送料も​負担します。

ネットショップ側の​出荷ミスが​ない​ことが​確認された​場合は、​購入者と​連絡を​取り、​受け取り拒否の​背景を​確認しましょう。​送料は​最終的に、​購入者に​請求できる​ことが​ほとんどです。

長期​不在や​家族に​よる​受け取り拒否は、​購入者自身は​商品を​必要と​している​ものの、​手違いなどで​結果​的に​受け取り拒否に​なってしまった​ケースです。​また、​購入者が​発注後に​考えを​変え、​注文をを​キャンセルしたくなり、​ネットショップに​注文キャンセルの​連絡を​する​代わりに​受け取り拒否を​する​ことも​あります。​さらに、​商品パッケージが​リニューアルした​ことや​サブスクリプション型商品である​ことを​知らずに、​「自分が​注文した​商品ではない」と​判断して​受け取り拒否を​する​ケースも​珍しく​ありません。

中には、​購入者側の​ミスや​勘違いに​よる​場合だけでなく、​ネットショップへの​いやがらせなどで​故意に​受け取り拒否を​して、​送料負担などの​損害を​発生させる​場合も​あります。​悪質な​ケースでは​法的措置を​講じる​ことも​検討に​入れなければならない​可能性が​あります。

受け取り拒否の​際の​対応方法

受け取り拒否が​発覚したら、​まずは​自社の​ミスが​なかったか​確認し、​次に​購入者に​連絡を​取りましょう。

連絡を​する​際には、​受け取り拒否と​なった​理由の​確認と、​送料負担などの​ネットショップの​返品条件の​説明です。​購入者が​意図せず、​不在や​家族の​誤解などで​受け取り拒否と​なった​場合は、​再送の​手続きを​取る​可能性も​あります。​再送分の​送料、​商品代金の​支払い​方法、​受け取り可能な​配送日など、​しっかり​確認してから​手続きしましょう。

購入者の​認識不足で、​キャンセルの​代わりに​受け取り拒否を​した​場合も、​送料や​代引き手数料の​負担に​ついて、​ネットショップの​返品条件を​説明し、​自社の​銀行口座への​振り込みなど​支払い​方法や​支払い​期限を​提示しましょう。​もちろん、​悪質ないたずらに​よる​受け取り拒否の​場合も​同様です。

事前に​ネットショップ側で​返品条件を​定め、​購入者に​わかる​形で​ネットショップなどで​明確に​提示している​ことが、​受け取り拒否の​対応を​する​場合の​鍵と​なります。

受け取り拒否で​ネットショップに​起きる​問題

いかなる​理由で​あれ受け取り拒否が​発生すると、​ネットショップには​以下のような​損失が​生じます。

  • 梱包材
  • 発送手続きに​かかった​時間
  • 購入者との​やりとりの​手間
  • 返送に​かかる​送料
  • 全作業に​かかる​人件費
  • 商品自体

代​引きや​後払い​決済で​あれば、​受け取り拒否が​起きた​時点では​購入者からの​代金を​受け取っていないため、​受注から​返送までに​かかった​人件費、​梱包費、​送料など、​全コストが​無駄に​なってしまいます。​さらに、​受け取り拒否された​商品を​返送して​もらう​送料も、​購入者が​支払わない​限りネットショップが​負担する​コストとなります。​1件ごとの​送料は​高額ではないとしても、​受け取り拒否が​何件も​発生すれば、​往復送料は​決して​少額では​済みません。

食品や​季節商品など、​返送されてきた​頃には​再販できない​商品で​あれば、​仕入れに​かかった​コストを​回収できないままと​なり、​受け取り拒否に​よる​損害は​さらに​大きくなります。​受け取り拒否が​複数あると、​時に​ネットショップの​利益率を​下げる​ことにもつながるのです。
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受け取り拒否の​ための​五つの​対策

受け取り拒否を​発生させず、​無駄な​送料などの​コストを​使わずに​済めば、​ネットショップは​損失を​防ぐ​ことができます。​受け取り拒否を​未然に​防ぐために、​ネットショップ側は​以下の​五つの​点を​把握し、​対策を​必ず​講じて​おきましょう。

1. 受け取り拒否は​正式な​契約解除ではない

購入者の​中には、​受け取り拒否を​する​ことで​売買契約が​解除されると​考える​購入者も​いますが、​注文確定を​もって​成立した​売買契約は、​購入者から​解約したい​旨を​ネットショップへ​申し入れ、​ネットショップが​それを​承諾する​ことで​解約が​成立します。

そのため、​受け取り拒否だけを​した​時点では​売買契約は​まだ成立しており、​購入者の​一方的な​都合に​より​商品の​受け取りを​拒否した​ことになる​ため、​返送料は​購入者に​請求可能です。​しかし、​この​約束事が​前もって​提示されていなければ、​購入者の​合意を​取り付ける​ことが​難しくなります。​したが​って、​受け取り拒否を​すると​購入者に​送料や​代引き手数料の​負担が​発生する​ことを、​あらかじめネットショップの​注文ページなどに​明記しておく​必要が​あります。

参考:【消費者トラブル注意報】受け取り拒否の​落とし穴​(熊本市消費者センター)

2. 発送後の​キャンセルは​不可

購入者が​注文を​確定し、​ネットショップに​注文情報が​届いてから、​発送情報の​処理や​商品の​梱包を​経て、​商品は​発送されます。​商品が​ネットショップに​ある​時点では、​購入者からの​キャンセルを​受け付ける​ことが​可能です。​一方、​商品発送後は、​送料が​発生し、​配送を​止める​ことが​難しく、​注文自体の​キャンセルが​できなくなります。

つまり、​購入者に​発送を​知らせる​連絡が​届いたら、​キャンセルは​不可。​注文ページや​注文受付の​メール、​発送完了の​メールなど、​複数箇所に​その旨を​わかりやすく​記載しておくと​良いでしょう。

3. 受け取り拒否時の​請求内容を​ネットショップに​明記

受け取り拒否が​起きた​場合に​送料などの​コストを​誰が​負担するかを、​事前に​ネットショップ内に​明記しておく​ことも、​トラブル防止や、​受け取り拒否の​抑止に​効果が​あります。

たとえば、​「受け取り拒否や​発送後キャンセルの​場合、​往復送料、​代引き手数料、​梱包資材料の​実費を​購入者に​請求いたします​(送料無料の​場合も​含む)」と​いった​文言が​あれば、​購入者は​それに​納得した上で​ショッピングを​する​ことに​なります。​同時に、​気軽な​気持ちでの​受け取り拒否の​抑止に​も​つながり、​故意か​否かに​関わらず​迷惑行為を​減らしやすくなります。

以上​1から​3の​内容は、​消費者庁に​よる​「通信販売に​おける​返品特約の​表示に​ついての​ガイドライン」も​必ず​読んだ上で、​受け取り拒否や​返品の​際の​対応方法を​サイトに​記載して​おきましょう。​ポイントは、​購入者に​伝わる​形で、​必ず目に​留まるように​情報を​記載する​ことです。

4. 悪質ユーザーと​して​顧客情報を​残す

ネットショップ上に​注意書きを​記載する​以外の​対策と​して、​顧客情報の​データベースに​受け取り拒否の​記録を​残しておく​ことが​有効です。

受け取り拒否の​経緯や、​送料負担を​承諾までの​やりとりなどを​まと​めておくと、​再度​同じ​購入者からの​オーダーが​入った​際に​記録を​確認する​ことができます。​悪質ではない​受け取り拒否で​あれば​再発の​可能性は​低いと​考えられますが、​万が​一、​明らかに​悪質な​購入者であると​判断できる​場合は、​再オーダーの​拒否を​検討しても​良いでしょう。

モール型ECの​一部では、​モール側に​悪質ユーザーと​して​通報する、​取り​引きに​よって​購入者が​得た​モール共通ポイントを​失効させる、と​いった​対応が​可能な​場合も​あり、​ネットショップの​ページに​その旨が​明記されています。

5. 法的措置を​検討する

悪質な​受け取り拒否で​ネットショップが​被害を​受ければ、​法的措置を​講じる​ことも​視野に​入ってきます。

購入者と​連絡を​取ろうとしても​度々​無視されるなど、​受取拒否に​よる​損害の​請求が​メールや​電話などの​手段では​難しいと​判断した​場合、​内容証明郵便を​利用する​方法が​あります。​内容証明郵便に​よる​請求にも​応じて​もらえない​場合には​簡易裁判所で​支払督促を​申し立てると​いう​方法も​考えられます。​同時に、​警察に​被害届を​提出する​こともできます。

内容証明郵便や​支払督促などの​手続きには​費用も​時間も​かかります。​事業主への​精神的な​負担も​大きい​ことから、​実際に​このような​手続きに​踏む​こむケースは​少ないようです。

参考:支払督促​(裁判所)

法的措置を​行う​場合の​費用

あまりにも​悪質な​受取拒否に​対して​法的措置を​講じる​ことを​検討している​場合、​必要に​応じて​行政書士や​弁護士などの​専門家に​相談しましょう。

受け取り拒否に​まつわる​送料などの​コストを​請求する​過程では、​以下のような​費用が​発生します。​これらの​費用も、​受け取り拒否が​発生した​場合の​注意事項と​して​前もって​ネットショップ内に​記載して​おきましょう。

内容証明の​手数料

内容証明郵便は、​送った​内容、​送った​人、​受け取った​人、​発送日、​受け取り日などを​郵便局が​証明する​サービスで、​支払いの​督促や​損害賠償請求などの​文書を​送る​際に​使われます。

内容証明を​使うと、​普通郵便や​電話での​督促とは​異なり、​相手は​「請求書を​受け取っていない」などの​言い​逃れが​難しくなります。​同時に、​ネットショップ側の​請求の​意思を​書面上で​示すことにもなり、​心理的な​プレッシャーに​より​回収が​行いやすくなる​効果も​期待できます。

内容証明を​初めて​作成する​場合や、​作成に​自信が​ない​場合は、​専門家に​依頼して​作成して​もらう​ことを​検討しましょう。​たとえば、​行政書士に​内容証明作成を​依頼する​手数料は、​5,000円から​2万円ほどです。​弁護士、​司法書士に​作成を​依頼する​ことも​可能です。

内容証明の​発行料

内容証明は、​基本料金と​一般書留料金、​内容証明の​加算料金​(440円)を​合計した​金額で​送付する​ことができ、​郵便局の​窓口で​申し込む​ことができます。​内容証明の​ページが​1枚を​超える​場合、​2枚目以降は​1枚あたり260円が​加算されます。

参考:内容証明​(日本郵便株式会社)

簡易裁判の​手数料、​代理人手数料

もし、​内容証明を​送っても​指定した​期日までに​支払いがなされず、​簡易裁判所に​支払督促を​申し立てる​場合、​申立手数料が​かかります。​その他にも、​60万円までの​請求額の​場合に​利用できる​少額訴訟と​いう​制度が​あり、​原則1回で​審理と​判決が​行われ、​通常訴訟と​比べて​手続きが​容易である​ため弁護士などの​代理人を​立てずに​行う​ことができます。​少額訴訟の​代理人を​弁護士や​司法書士に​依頼する​ことも​可能です。​その​場合、​相談、​訴状作成、​交通費、​手続き代行などを​含め、​10万から​20万円ほどの​費用が​かかる​ことを​理解して​おきましょう。

参考:簡易裁判所の​「支払督促」手続を​ご存じですか?​(政府広報オンライン)

代引きでの​「受け取り拒否」に​対する​請求メールの​文例 

受け取り拒否が​起きた​場合に​送料などを​請求する​メールの​テンプレートを​あらかじめ作成しておくと、​いざと​いう​時に​慌てずに​済みます。​以下、​代引き商品が​受け取り拒否と​なった​場合を​想定した、​請求メールの​サンプル文面を​参考に​してください。

◯◯様

ネットショップ◯◯の店長◯◯と申します。
当店でのご注文をありがとうございました。

ご注文の商品(代金引換)をご指定の住所へ発送したところ、
お受け取りいただけず、商品が当店に返送されてきてしまいました。

つきましては、大変恐れ入りますがお客様のご都合による返品として
既に発生した往復送料、代引き依頼手数料、事務手数料の実費を
当社の返品特約に基づき、ご負担をお願いいたします。
ご注文情報と請求内容は以下の通りです。

オーダー番号:◯◯◯◯
注文日時:◯◯◯◯年◯月◯日
ご注文者名:◯◯◯◯
商品名:◯◯◯◯
決済方法:代金引換

【請求明細】
往復配送料:◯◯◯◯円
代金引換手数料:◯◯◯円
返品事務手数料:◯◯◯円
請求合計額:◯◯◯◯円

【お支払い先】
◯◯銀行 ◯◯支店
普通講座 ◯◯◯◯◯◯◯◯

※払込手数料は請求額に含まれません。ご負担をお願いいたします。

【お支払い期限】
◯◯◯◯年◯◯月◯◯日

※期日までにお支払いが確認できない場合、再度ご連絡の上、法的措置を取らせていただくケースがございます。

誠に恐れ入りますが、当メールを受け取り次第、確認のご連絡をいただけますと幸いです。
至急ご対応のほど、よろしくお願い申し上げます。

-----(店舗署名、連絡先、営業時間など)-------

このように、​受け取り拒否が​発生しても​感情的にならず、​対応プロセスに​沿って​手続きを​しましょう。​合わせて、​受け取り拒否の​発生防止の​仕組みを​作り、​再発を​防止する​ことで、​スムーズに​ネットショップを​運営していきましょう。

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執筆は​2021年6月30日​時点の​情報を​参照しています。​2023年6月​2日に​記事の​一部を​更新しました。​当ウェブサイトから​リンクした​外部の​ウェブサイトの​内容に​ついては、​Squareは​責任を​負いません。​Photography provided by, Unsplash