駐車場経営は儲かるのか?初期費用や収入モデル、成功のポイントを解説

土地活用の方法の一つとして、駐車場経営があります。所有している土地を駐車場にして、駐車料金から収益を得ることです。駐車場経営はアパート経営などとは違い、初期費用を抑えられる点が特徴です。

ただし、駐車場にも種類があり、それぞれ特徴や経営を始めるまでの流れが異なります。駐車場経営を始めるメリットや開業ステップについて詳しく解説していきます。

目次


駐車場経営のメリット

駐車場経営というビジネスには、アパートや店舗物件の賃貸とは異なるメリットが多く存在します。

初期費用が少なくて済む

何もない土地の上にアパートやマンションを建設するより、駐車場を作るほうが格段に初期費用は安く抑えられます。一時貸し駐車場では料金精算システムなどの導入が必要ですが、月極駐車場ならさらに安価に経営をスタートさせることが可能です。

狭い土地・変形地を活用できる

宅地や店舗営業などに適さない広さ、形の土地であっても、駐車場なら経営できるというケースもあります。15坪前後の狭い土地でも、形次第で約3台分の駐車スペースを確保できます。使い勝手ゆえに利用できず遊休状態になっている土地があるなら、駐車場経営は土地を有効活用する一つの手段といえるでしょう。

自然災害の影響が少ない

地震や洪水などの影響が及んでも、駐車場なら再舗装を施すだけで経営を続けることができます。これがアパートや店舗物件なら再稼働までに長い時間がかかり、その間の収益が得られず、また再建にかかる費用も莫大です。

営業を開始できるまでの期間が短い

賃貸物件の建設と異なり、駐車場は施工が砂利を敷くかアスファルト舗装だけというケースもあります。工事に着手してから最短で2〜4週間ほどで駐車場経営をスタートできることから、土地の遊休期間が短くて済むこともメリットです。

土地を別の用途に切り替えやすい

駐車場経営のための施工はシンプルなので、もし駐車場をやめて土地を別の用途に使いたくなったり、売却したりしたくなったときにも便利です。たとえば、所有する土地に住宅を建設するまで数年以上にわたり固定資産税を払い続けるというプランなら、その間に駐車場を作って収益を上げるという方法も考えられます。

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駐車場経営のデメリット

数多くのメリットがある一方、駐車場経営にはデメリットも存在します。十分に検討したうえで経営を始めましょう。

賃貸住宅に比べて税金の負担が大きい

土地の固定資産税や相続税の減税・優遇措置がある戸建てや集合住宅の場合と比較すると、駐車場の場合は対象外です。ただし、遊休地のままにするより駐車場にして収益が出れば、税金の分をカバーし、さらに利益を得られる可能性もあるため、一概にデメリットばかりとは言い切れません。

収益性が低い

アパートやマンションなどが空間を立体的に使えることと比べて、一般的な駐車場は土地の面積分のみの平面利用となり、坪あたりの収益性は低いことになります。とはいえ、収益性には初期投資額やビジネスとしての稼働率などが影響するため、収支を総合的に考えたうえで土地の用途を決定するのが望ましいでしょう。

駐車場の種類

駐車場は大きく分けて「一時貸し駐車場」と「月極駐車場」の2種類があります。それぞれの特徴や経営の注意点をチェックしてみましょう。

一時貸し駐車場について

一時貸し駐車場は、コインパーキングをイメージすると分かりやすいです。つまり、30分や1時間の単位で駐車スペースを貸し、貸し出し時間に応じて料金が発生する仕組みです。一時貸し駐車場を経営に着手する前に、次の3点を理解しておきましょう。

  • 一時貸し駐車場として収益性があるかどうか
  • 運営や管理を委託するか、自分で経営するか
  • 委託先をどう選定するか

一時貸し駐車場はコインパーキング設備などの導入を要するため、月極駐車場と比較して初期費用がかかります。駐車設備は初期投資費用としては大きな金額であるため、施工部分を自分で負担する場合は金融機関から借入れをして設備費用をまかなうことが多いです。

一方、土地をまるごと駐車場運営の委託会社に貸し出し、施工部分から運営までのすべてを委託会社が担当する場合は、地主側に一定額が毎月支払われます。また、施工は自己負担で行い、運営だけを委託会社に任せる方法の場合は、会社から収益を受け取りつつ委託手数料を支払います。

一時貸し駐車場の経営方法のタイプは、以下のようにまとめられます。

  • 個人経営:施工から運営まですべて自分で行う
  • 管理委託:施工は自己負担で行い、運営のみ委託
  • 一括借上:土地を貸し出し、施工から運営まですべて委託会社が行う

駐車場経営を委託すると必然的に委託手数料が発生しますが、経営ノウハウがなくても駐車場として稼働させることができます。

一時貸し駐車場の収益シミュレーション

一例として、駐車区画10台分、1時間300円のコインパーキングを管理委託で経営する場合、どのような収支になるか考えてみましょう。1日あたり各区画6時間の稼働を想定して計算してみます。

・1日あたりの売り上げ:300円×6時間×10台=18,000円
・月あたりの売り上げ:18,000円×30日=540,000円

一時貸し駐車場の経営のランニングコストとして、管理委託費は「満車状態の売り上げの5〜10%」が一般的なので、仮に10%として計算します。土地の固定資産税は年間12万円として、1カ月あたりの金額をコストとして計上します。

管理委託費(月):216,000円
固定資産税(月):10,000円
月あたりのランニングコスト:226,000円

以上の想定で月あたりの収支を計算すると、収益は以下のようになります。

売り上げ(540,000円)− ランニングコスト(226,000円)=314,000円/月

また、一時貸し駐車場を始める初期費用として、初期投資としてアスファルト舗装、電気工事、ロック板、精算機、防犯カメラ、看板などの設備導入が必要です。これらの初期費用は10台分で300万円ほどが想定されます。

一時貸し駐車場の注意点

一時貸し駐車場の運営委託会社を選定する際には次の点に気をつけましょう。

1.提案内容を確認する:何台の車をどのように駐車するかという区画割りの提案を複数の会社に依頼してみて、効率の良い区画割りを提案した委託業者を選びましょう。
2.他の駐車場の状態を確認する:他に管理をしている駐車場の状態もチェックしましょう。駐車場の稼働具合だけでなく、設置している機器の状態や駐車場全体がきれいに整備されているかの確認も重要です。
3.費用の確認:委託先に対して委託費用を支払う必要があります。委託費用と、提案内容や他の駐車場の質を加味した上で委託先を選びましょう。

また、一時貸駐車場は収益が立地に影響されやすいのも注意点の一つです。次の2点を十分に検討し、開業の判断材料としましょう。

1.駐車場に向く土地か:土地と道路の間に大きな高低差があったり、敷地内に高低差があったりする場合は、駐車しにくく駐車場に向いていない可能性もあります。その場合、高低差の解消に盛土や切土などをして整地をする必要があるため、莫大な費用がかかります。駐車場に向いてる土地かどうかの判断が付かなければ、専門家に見てもらうという選択肢もあります。

2.一時貸し駐車場の需要があるかを調べる:たとえ駐車場に適した土地であっても、駐車場の需要がないエリアだと経営は難しいです。そのため、周辺に一時貸し駐車場があるかどうかと、金額設定を確認しましょう。土地があるのに一時貸し駐車場が見当たらない場合は、そもそも需要がない可能性もあります。また、収益が土地の固定資産税よりも低ければ採算が合いません。事前にある程度自分で調べておきましょう。

月極駐車場について

月極駐車場は、月単位で貸し出す駐車スペースのことです。駐車場利用者と賃貸借契約を結び、月々決まった金額を利用料金として徴収します。毎月決まった料金を利用者から徴収するので、ニーズがあれば月極駐車場の方が安定収益につながりやすいといえます。

一時貸し駐車場の場合は駐車や料金徴収のための設備が必要ですが、月極駐車場は駐車区画の整備だけで開業できるので、整地済みならロープで区画を指定して番号を振るだけで準備は完了です。

月極駐車場は、周辺の不動産業者に手数料を支払って利用者の仲介や管理を依頼する経営方法が多くみられます。完全に自分で経営する場合は、不動産業者に支払う仲介手数料などのコストがゼロになるメリットの反面、自分で駐車場利用者を探す集客コストと手間がかかることがデメリットです。

月極駐車場の収益シミュレーション

駐車区画10台分の月極駐車場を例に、収支を試算してみましょう。月極駐車場の平均賃料は都道府県や立地により異なりますが、東京都で2万円強、地方部では5,000円台と幅広いのが実情で、稼働率もまちまちです。

今回は1台あたり月8,000円の月極駐車場で稼働率100%、不動産業者に仲介・管理を依頼するケースとして計算します。

月あたりの売り上げ:8,000円×10台=80,000円

月極駐車場の経営のランニングコストとして、不動産業者に支払う仲介管理費は「満車状態の売り上げの5〜10%」が一般的なので、仮に10%として計算します。土地の固定資産税は先述の例と同様に年間12万円として、1カ月あたりの金額をコストとして計上します。

・管理委託費(月):8,000円
・固定資産税(月):10,000円
・月あたりのランニングコスト:18,000円

以上の想定で月あたりの収支を計算すると、収益は以下のようになります。

売り上げ(80,000円)− ランニングコスト(18,000円)=62,000円/月

月極駐車場は一時貸し駐車場に比べて少ない初期費用で済むことになりますが、何年かけて投資を回収するかで長期的な収益率が違ってきます。立地などによる駐車場稼働率の見込みによっても長期的な収益率は異なるため、専門業者に相談するのも良いでしょう。

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月極駐車場の注意点

月極駐車場の経営では、不正駐車への注意が不可欠です。賃料を支払っていない車両に駐車場を勝手に使われてしまうと、契約利用者からのクレームになる可能性もあります。また、ゴミの不法投棄などにも注意し、定期的なチェックを欠かさないようにしましょう。防犯カメラや不正利用への罰則を呼びかける看板などの設置も有効です。

毎月の駐車料金の徴収も頭を悩ませる点かもしれません。毎月の請求書送付や振込確認などは、意外に時間や手間がかかります。

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駐車場経営にかかる費用

一時貸しと月極駐車場の経営収支モデルをみてきましたが、費用項目を整理すると初期費用、管理費、税金に大別できます。金額は、土地の広さや立地、駐車区画数、賃料設定などにより異なります。

初期費用

  • 月極駐車場:整地、舗装(アスファルト、砂利など)、看板など
  • 一時貸し駐車場:整地、電気工事、精算機などの設備導入、照明、看板など

※ただし、土地を貸し出す「一括借上」の場合は初期費用なし。

管理費

  • 月極駐車場:仲介管理費(満車状態の売り上げの5〜10%)
  • 一時貸し駐車場:管理委託費(満車状態の売り上げの5〜10%)

※ただし、業者を利用せず完全に個人で経営・管理する場合は管理費なし。

税金

駐車場の形態にかかわらず、土地の固定資産税・都市計画税や、ビジネスに対しては個人事業税などが発生します。また、事業所得が所得税や住民税の金額に影響することも覚えておきましょう。

駐車場開業までの流れ

駐車場の開業は、次の五つのステップで進めていきます。

1.土地が駐車場に適しているか調査する

まず、土地自体の状況と周辺環境についてリサーチします。土地の高低差や立地、道路との接続状況などを確認することで、土地の造成や工事にかかる費用の目安になります。また、周辺の一時貸し駐車場、月極駐車場の数や利用状況、価格などについて調べておくと、競合の様子などが分かるので安心です。

2.経営する駐車場の種類を決める

一時貸し駐車場か月極駐車場かを決める際は、立地や周辺環境などが参考になります。また、開業までにかかる初期費用に充てる予算も加味して検討しましょう。

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3.委託会社に相談する(委託する場合)

自主経営と委託経営のシミュレーションを行い、コストや利益、または手間の面で委託のほうが効率的と判断した場合は、委託会社に問い合わせて相談してみましょう。複数の事業者と相談・見積もりなどを行うと安心です。

4.駐車場を施工する

駐車場の施工は、整地や舗装だけの場合なら工事開始から2〜4週間で完了します。コインパーキング経営のための設備を導入するには、さらに1〜2カ月を要します。いずれも施工業者のスケジュールにもよるため、余裕のある開業計画を立てましょう。

5.利用者を募集する

工事が完了したら、いよいよ駐車場利用者の募集です。駐車場に看板を立てるだけでなく、委託・仲介業者を利用して利用者を募るのが効率的といえます。月極駐車場なら、オンラインの駐車場情報サイトなどに掲載する方法もあります。

駐車場経営のポイント

ここまで見てきた情報から分かるように、駐車場経営の成功にはいくつかのチェックポイントがあり、どのポイントにおいても慎重かつ手堅い下調べが鍵です。

立地や周辺環境を考慮して「駐車場の種類」を決める

駐車場の稼働率を上げるには、地域のニーズと合う駐車場を作る必要があります。ニーズがなければ、せっかく初期投資をして作った駐車場が使われないリスクもあります。駐車場経営に踏み出す前に、どのタイプの駐車場を作るか慎重に判断しましょう。

周辺の相場を考慮して適切な「賃料」を決める

駐車場経営においても、価格設定は稼働率を左右するキーファクターの一つです。同じ地域に安い駐車場と高い駐車場があれば、前者を使いたい人が多いのは自然なことといえます。ただし、相場を考慮してただ安くすればいいということではなく、駐車場の設備や立地、利用しやすさなど、サービス面を効果的に値段に反映させることができます。

「収益予想」はリスクを考慮して保守的に計算する

理想はすべての駐車区画が常に利用されている状態ですが、現実は必ずしも理想通りになるとは限りません。周辺の住宅事情やビジネスの去就によって、まちの様子が変わればイメージ通りの駐車場経営になるか分からないのが難しいところです。

そこで、事業計画を立てる際の収益の予測は、最大の期待値でなく、リスク要因を加味して保守的な数字を計上しておきましょう。保守的な収益予想に基づいて堅実な初期費用の予算を立てることが、経営の成功につながる可能性があります。

利回りは「実質利回り」で計算する

投資額に対する収益率を意味する「利回り」は、「実質利回り」という考え方で計算すると、駐車場経営のリスクを減らすことができます。

(満車時の年間収益-ランニングコスト)÷(土地価格+初期費用)✕100=実質利回り(%)

駐車場経営の実質利回りは平均4%前後といわれます。ただし既に土地を所有し、新たに購入費用がかからない場合はもっと高い実質利回りになると考えていいでしょう。実質利回りをあらかじめ計算しておくことで、経営形態をより正しく判断しやすくなります。

以上のように、駐車場経営は初期費用の予算などに応じて幅広い経営スタイルを選べるビジネスです。周辺環境や土地の特徴、経営者がかけられる手間などに適した経営スタイルを選択することで、駐車場経営を成功させましょう。駐車場経営を始める際は、Squareのように低コストで利用可能なビジネス効率化のツールもぜひ導入してみてください。


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執筆は2017年11月17日時点の情報を参照しています。2023年9月21日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash