個人事業主やフリーランスの人の中には、会計処理をする中で難しい会計用語に戸惑ったことがあるという人も少なくないでしょう。経常利益についても「経常的」という単語は日常生活で頻繁に使うものではなく、字面からは難しい印象を受けるかもしれません。ただし、一つ一つ単語の意味をきちんとおさえていくと、誰にでも理解できる用語であることがわかります。
本記事では、経常利益について、経常利益とは何かから始め、経常利益の計算方法、営業利益や純利益との違い、経常利益に関連する注意点をわかりやすく説明し、最後に個人事業主やフリーランスの人に役立つSquareのサービスを紹介します。
目次
経常利益とは
経常利益の厳密な定義について触れる前に、まずは経常利益がどのようなものか、概要を把握しましょう。経常利益とは、企業や個人事業主、フリーランスの人が事業によって経常的に得た利益のことです。
「経常的」とは、「一定間隔、一定頻度で発生する様子」を表す単語で、経常利益は、一過性が強い臨時の特別損益を除いた、事業全体から得られた利益です。たとえば、商品を販売する店舗の場合、経常利益には事業の売り上げから原価や販売に関わる費用を引いた利益や、毎期得られる銀行口座の利子などは含まれますが、災害によって店舗が被害を受けたといった場合に発生する特別損失は経常利益には含まれません。
厳密な経常利益の定義
経常利益は、特別損益を除く「事業全体」から得られた利益です。この「事業全体」には、本業以外の事業も含まれ、経常利益には本業以外の事業から得られる利益も反映させる必要があります。本業以外の事業の一例として、資金運用や投資などの財務活動があります。一方で、前述の通り、臨時で発生した特別損益は経常利益には含まれません。
経常利益からわかること
経常利益からは、本業とその他の事業を合わせて総合的にどのくらいの利益を上げているかがわかり、特別損益が含まれないため、通常の経営状況を把握できます。
経常利益の計算方法
ここでは経常利益の計算方法をみてみましょう。経常利益は、営業利益に、営業外収益から営業外費用を引いたもの、つまり本業以外の事業による利益を足して算出されます。計算式にすると次の通りです。
経常利益= 営業利益 + (営業外収益 - 営業外費用)
計算式の中に出てくる個別の要素について、それぞれ説明します。
・ 営業利益: 売り上げから原価と営業活動にかかる費用を差し引いた金額。本業からの利益。
・ 営業外収益:財務活動など本業以外で得られた収益。
・ 営業外費用:財務活動など本業以外で発生した費用。
営業外収益から営業外費用を引いた金額は、本業以外で得られた利益です。これと営業利益を足したものが経常利益で、先に説明した経常利益の定義と合致していることがわかります。
経常利益とその他の利益の違い
会計用語の中には経常利益のほかにも末尾に「利益」のつく用語があります。ここでは「営業利益」「純利益」について、どのような利益なのか、経常利益との違いは何なのかを説明します。
営業利益とは
営業利益は、本業でどれだけの利益を上げているのかを表し、売り上げから原価と営業活動にかかる費用を差し引いて計算します。たとえば、商品の販売をしている人であれば、売上高から仕入に使った金額(原価)を引いて、販売のための人件費や広告費といった営業活動にかかる費用を差し引いた金額が営業利益になります。
営業利益と経常利益の違い
営業利益は本業から得られた利益ですが、経常利益には先述したように財務活動など本業以外の経常的な利益も含まれます。営業利益と経常利益の差分は、本業以外の経常的な利益です。このため、営業利益と経常利益を比較することで、本業と、本業以外の利益のバランスを知ることができ、経営状況に問題がある場合には、本業と本業以外の事業のどちらに原因があるのか特定するための判断材料になります。
決算書を見てみると、広く知られている本業ではなく、実は財務活動による収益が多い企業もあります。どのようなバランスがよいか一概にいうことはできず、健全に本業とそれ以外の事業が営まれているか個別に事業の状況を分析する必要があります。
純利益とは
純利益には「税引前当期純利益」と「税引後当期純利益」の二つがありますが、一般的に純利益というと税引後当期純利益を指し、臨時の利益や損失を含む税引後の最終的な利益を表します。
税引後当期純利益を計算するには、まず税引前当期純利益を計算します。税引前当期純利益の金額は、経常利益に特別利益を足し、特別損失を引いて計算します。
税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 – 特別損失
特別利益とは、不動産を売却して得られた利益(固定資産売却益)など、その期にだけ発生した利益のことです。一方、特別損失とは、災害損失など、その期にだけ発生した損失のことです。
税引後当期純利益は、税引前当期純利益から法人税など各種税金を引いて計算します。
税引後当期純利益 = 税引前当期純利益 – 税金
純利益と経常利益の違い
純利益には、経常利益に含まれないその期のみに発生した特別利益と特別損失が含まれます。また、経常利益は税金を差し引いた利益ではありませんが、税引後当期純利益であれば、税金を差し引いた最終的な利益である点も経常利益と異なります。
純利益だけを見るのではなく、経常利益を比較することで、企業の損益が臨時のものなのか、経常的なものなのか、損益の種類を特定できます。たとえば、取引先の業績が下がっていることに気づいたとしても、それが特別損失によるもので、経営に大きな影響を与える規模のものでなければ、来期には業績が回復する可能性があります。このように異なる種類の利益を比較することで、冷静に経営判断を下せるようになるでしょう。
経常利益について個人事業主が注意すべき点
経常利益に関する一般事項については、ここまでに説明した通りですが、ここでは特に個人事業主やフリーランスの人が注意したい点について説明します。
個人事業主は所得金額が営業利益に相当
所得とは、収入から必要経費を差し引いたものです。たとえば、フリーランスでライターをしている人であれば、原稿料が収入にあたります。取材にかかった費用や、資料として購入した書籍の費用の合計が必要経費です。個人事業主やフリーランスの人の場合、所得金額が営業利益にあたることを知っておくとよいでしょう。
受取利息や配当金は営業外収益
「金融投資はしていないし、利息や配当金とは無縁」と考えている人もいるかもしれませんが、金融機関に普通預金口座を開設していれば、預金に対して利息が支払われています。超低金利時代といわれる中、大きな金額の利子を受け取ることは稀ですが、受取利息も会計処理の対象です。また、株式などに投資しているという人は、配当金についての処理も必要です。これらの受取利息や配当金は本業からの収益ではないため、営業外収益として事業収入と分けて処理しなければなりません。
経常利益が課税対象、必要経費をしっかり計上しよう
個人事業主やフリーランスの人の場合、経常利益を課税対象として、所得税を計算します。先に説明したように、個人事業主やフリーランスの人の経常利益は「収入から必要経費を差し引いた所得」で、差し引く必要経費が多くなれば経常利益は少なくなり、所得税の金額も少なくなります。
日々の支出について記録をこまめに残して、必要経費として認められる支出をしっかり経費として計上することをおすすめします。ただし、節税しようと何でも経費にしようとしてはいけません。税務処理は正しく行いましょう。
何を経費にしてよいかわからないという人は、「個人事業主必見。経費になるものとならないものを把握しよう」の記事を参考にしてください。特殊なケースや、専門家の意見をもとに安心して必要経費を計上したいという人は、会計士や税理士に相談するのも一つの手です。
事業用資産と個人資産をきちんとわけよう
個人事業主やフリーランスの人の場合、事業用資産と個人資産が曖昧になりがちです。たとえば、事業用に購入した乗用車を私用の車として利用しているといった場合です。会計処理をせずに資産を転用してはいけません。事業用資産を個人資産にしたり、個人資産を事業用資産としたりするなど転用は可能ですが、会計処理が必要で、特に課税事業者が事業用資産を個人資産にするには、消費税の処理も必要になります。
参考:No.6317 個人事業者の自家消費の取扱い(国税庁)
事業用資産と個人資産を明確にわけていないと、想定外の会計処理や費用が発生する可能性があります。普段から事業用資産と個人資産のどちらに当たるのか切り分けて資産を管理しましょう。資産を適切に管理することで経営状況を正確に把握でき、適切な税務処理につながります。
たとえば、神奈川県には「個人版事業承継税制」という制度があり、個人事業者の事業承継を目的として、期間限定で個人事業主の事業用資産の贈与税や相続税の猶予を認めています。事業用資産が明確になっていると、このような制度を利用しやすいでしょう。
参考:個人事業者の事業用資産の贈与税・相続税を”ゼロ”に!中小企業経営承継円滑化法個人事業者向け手引き(神奈川県)
事業継承や法人化のためにしっかり経常利益を算出しよう
事業継承にあたって、経常利益は重要な指標です。期ごとの経常利益が安定して出ている事業は魅力的で、事業継承されやすいでしょう。このため、すぐに事業継承の予定がなくても、経常利益を毎期しっかり算出しておくと、将来への備えになります。
個人事業主やフリーランスの人の中には、事業を成長させて将来的に法人化を目指している人もいるかもしれません。法人化を検討するときには、経常利益をもとに税金面で法人化するメリットがあるか判断することが少なくありません。経常利益は所得税を計算するときの課税対象で、正確な判断を下せるようにしておくためにも、毎期ていねいに経常利益を算出することをおすすめします。法人化と税負担については「個人事業主が法人化するメリット・デメリットや必要な手続きについて」の記事でもふれていますので、参考にしてください。
個人事業主・フリーランスの人におすすめのSquareサービス
経常利益やそのほかの利益について理解を深めて、きちんと算出しておくと、経営状態を把握しやすくなります。Squareの無料アカウントを作成し、各種サービスを活用すると、経常利益の計算など、会計・税務処理を格段に効率化でき、本業に専念できます。
ここでは、個人事業主やフリーランスの人の業務をサポートするSquareのサービスを紹介します。
Square 請求書
個人事業主やフリーランスの人の中には請求書の発行を手間に感じている人もいることでしょう。特に請求書の発行件数が多い物販などの事業を営んでいる場合は、請求書の発行をオンラインで行い、お客様にスムーズに決済してもらい、リアルタイムで支払い状況を把握したいところです。
Square 請求書を使えば、請求書だけでなく見積書もオンラインで発行でき、簡単にお客様に共有できます。毎月決まった日にちに自動的に請求書を送付するといった指定もできます。支払い状況はリアルタイムで更新され、正確な経営状況の把握につながります。
会計ソフトウエアとの連携
Squareのサービスを利用して蓄積されたデータは、マネーフォワードをはじめとする大手会計ソフトウエアに取り込めます。手作業で帳票を作成したり管理したりする手間がかからず、手作業で発生しがちな入力ミスを防げ、確定申告作業の負担を軽減します。将来的な事業継承や法人化に備えて正確なデータを残すことにもなります。
Square データとSquare データアプリ
Square データはリアルタイムで売上情報など事業に関するデータを把握するための機能で、無料アカウントを作成すると利用できます。リアルタイムのデータだけでなく指定期間のデータを参照したり、前週や前年といった過去のデータと比較したりできます。また、どの商品がどれだけ売れたのかカテゴリー別の売上高を表示できるため、すばやく売れ筋商品を発見できます。リアルタイムのデータを身近な端末から参照できることで、売れ筋商品を追加で仕入れるなど、迅速な経営判断につながります。
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本記事では、経常利益とは何なのかから始め、その他の利益との違い、経常利益について個人事業主やフリーランスの人が注意すべき点を説明し、最後に会計・税務処理に役立つSquareのサービスを紹介しました。
「経常的」という単語を日常で使うことは少なく、「経常利益」がどのようなものか、会計処理をしたり、経常利益という用語を見聞きしたりするたびに調べ直していたという人もいるかもしれません。「経常的」という単語の「一定間隔、一定頻度で発生する様子」という意味を確認してから、経常利益がどのようなものか定義と計算式とともに見直してみると理解しやすかったのではないでしょうか。
経常利益は、今すぐではなくても将来的に事業継承や法人化する上でも重要な指標となります。本記事をきっかけに理解を深め、Squareのサービスを利用して会計・税務に欠かせないデータを蓄積し、活用してください。
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執筆は2023年5月10日時点の情報を参照しています。2024年3月1日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash