会社を設立してビジネスを始めたいと思った時、必ずやらなければいけないのが「会社登記」という手続きです。ここでは、現在個人事業主として働いている、あるいは起業を目指して準備している人に向けて、会社登記までの手順や必要な書類、申請方法などの基礎知識を紹介します。
登記の手引は分かりにくい言葉が出てくることがあるので、ついつい難しそう……という気持ちになってしまう人もいるかもしれませんが、この記事で最低限理解しておきたいポイントを中心に解説しています。
会社登記とは
会社登記とは、法務局に会社に関しての内容を登録することをいいます。法人登記、会社設立登記ともいいます。詳しい登記の手続きは後述しますが、簡単にいうと「会社の住所、代表者名、資本金、役員の情報などを法務局へ登録する」作業を行います。会社登記をすることで、一般の人が会社の情報を知ることができます。
会社登記をすることで得られるメリットは、
- 社会的信用を得られる(ビジネスの種類によっては、法人であるかどうかが信用を左右する場合があります)
- 節税できる(個々の状況にもよりますが、所得税よりも法人税の税率が低いことがあります)
- 資金調達がしやすくなる
- 決算月を自由に決められる(個人事業の場合は1月から12月に限定されますが、会社の場合、自由に決められます)
などがあります。
会社登記で行う作業の流れ
会社登記をすることを決めたら、必要書類を準備し、法務局に提出することになります。会社登記のためにやるべき作業を時系列で見てみましょう。ここでは、一般的な「発起設立(※)」の場合を例として説明します。
※発起人のみが資本金を出資する方法。反対は、「募集設立」で、設立前に株主を募る必要があるため手順が複雑になります。
(1)会社についての基本的な内容を決定する
(2)定款を作って認証を受ける
(3)資本金の払い込みをする
(4)印鑑証明書を取得する
(5)登記書類を作成する
(6)登記申請をする
それぞれ詳しく補足します。会社登記は、法務局に書類を提出するだけではありません。公証役場への定款認証や資本金の払い込み、印鑑証明書の取得など、やるべき作業が多岐にわたるので、余裕を持ったスケジューリングで準備を進めましょう。
(1)会社についての基本的な内容を決定する
まずは、会社の概要を決めます。法人の名前(商号)や住所、取締役、事業目的、事業年度などを明らかにします。
会社法では、「同一所在地に同一商号の禁止」(商業登記法第27条)が定められています。同じ名前の会社やサービス名と似ている会社があると将来的に不都合がある可能性もあるので、念の為類似商号の調査を行いましょう。商号が決まったら、法人用の印鑑(実印、銀行印、角印など)を準備してください。
参考:オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について(法務省)
登記する際に悩むことが多いのが、資本金額です。今は1円から会社設立ができます。といっても、安くてもいいのではなく、資本金の額は公開される情報なので慎重な検討が必要です。
(2)定款を作って認証を受ける
定款とは、会社の基本原則のことです。定款には「絶対的記載事項」として必ず書かなくてはならない項目が決められています。この項目が欠けると定款が無効になってしまうので注意しましょう。
作成した定款は、公証役場にて認証を受ける必要があります。認証のない定款は無効です。
(3)資本金の払い込みをする
法人登記の際には、出資金の払込証明書が必要です。そのため、定められた資本金の払い込み手続きを行います。この時点ではまだ会社名義の口座はないので、発起人の個人口座に振り込みます。振り込みがあったことを証明するため、銀行通帳の表紙・表紙の裏・入金を記帳したページのコピーをとり、払込証明書を作成します。
なお、資本金は現物で払い込む「現物出資」という方法もあります。
(4)印鑑証明書を取得する
法人登記の際に必要なので、あらかじめ準備しておきましょう。発起人に加え、設立時の取締役全員分が原則として必要です。
(5)登記書類を作成する
登記申請に必要な書類を作成します。書類作成が難しい場合は、司法書士などに依頼する場合もあります。
会社登記に必要な主な書類は、次のとおりです。
- 設立登記申請書(法務局のウェブサイトから最新の様式をダウンロードして作成しましょう)
- 定款の謄本
- 登録免許税納付用台紙(登記申請には、収入印紙が必要です。一般的には、株式会社の場合15万円の収入印紙が必要です。法務局内にも販売所があります。購入した収入印紙を、A4サイズの紙の中央に貼ります)
- 発起人同意書
- 代表取締役、取締役、監査役の就任承諾書
- 代表取締役の印鑑届出書
- 本人確認証明書
- 出資金の払込証明書
- 登記すべき事項を記録した記録媒体(CD-Rなど)
作成した登記書類は、製本する必要があります。印鑑証明書と記録媒体以外を重ねて、ホチキス留めするのが一般的です。
(6) 登記申請をする
必要書類を準備したら、法務局に申請を行います。申請先は、会社の本店所在地を管轄する法務局です。会社登記の申請は、直接行く方法だけでなく、郵送申請やオンライン申請も受け付けてもらえるので、自社にあった方法を選んで対応しましょう。
オンライン申請の場合、法務省の「登記・供託オンライン申請ステム」から行います。専用ソフトをダウンロードして申請します。
なお、登記申請書を提出した日が会社設立日になります。郵送の場合は、書類が法務局に到着した日が設立日になります。
特別な日に設立しようと考えている場合は、日付を間違えないようにご注意ください。
会社登記後に必要な行政への手続き
無事に登記が完了したら、各種行政への手続きを進めます。
その際に必要になるので、会社設立登記が完了したらまず印鑑証明書の交付と、登記簿謄本の取得を行いましょう。何度も取得の手続きをするのは時間がもったいないので、まとめて数枚準備しておくのがオススメです。
会社設立の際に届け出が必要な書類・届出先は、以下のとおりです。
税務署に提出する書類
- 「法人設立届出書」を設立から2カ月以内に
- 「青色申告の承認申請書」を設立から3カ月以内か、最初の決算日のいずれか早い日までに
- 「給与支払事務所等の開設届出書」を設立後1カ月以内に
- 「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を適用を受けようとする月の前月までに
- 「消費税課税事業者選択届出書」を最初の決算日までに
都道府県に提出する書類
- 「法人設立等届出書」を設立後1カ月以内に
市町村に提出する書類
- 「法人設立届出書」を設立後1カ月以内に(市町村によっては異なる場合があります)
年金事務所に提出する書類
ほとんどの法人は、社会保険への加入が義務付けられています。忘れずに対応しましょう。
- 「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を会社設立から5日以内に
- 「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を事実の発生から5日以内に
- 「健康保険被扶養者(異動)届」をその都度
公共職業安定所に提出する書類
従業員を雇った時に加入する雇用保険に関する書類です。
- 「雇用保険適用事業所設置届」を会社設立時から雇う場合は設立日の翌日から10日以内、後日雇う場合は雇用した日の翌日から10日以内に
- 「雇用保険被保険者資格取得届」を新しく従業員を雇用した時、雇用した月の翌月10日までに
労働基準監督署に提出する書類
従業員を雇った時に加入する労災保険に関する書類です。
- 「 保険関係成立届」を従業員を雇用した日の翌日から10日以内に
- 「労働保険概算保険料申告書」保険関係が成立した日から50日以内に
1つずつ丁寧に進めれば、会社登記も難しくない
会社登記のためにやらなくてはならない作業は多いですが、一つひとつはあまり難しい書類ではないので、時間に余裕を持ち、落ち着いて進めましょう。書類作成をする自信がない、時間を掛けたくないという人は、司法書士や税理士など専門家の手を借りるのも一つの方法です。アウトソーシングする場合でも、大切な自分の会社のことですから、一通り作業の流れを把握しておくようにしましょう。
会社登記は、ビジネスを始めるスタートラインです。しっかりと準備して、スムーズにビジネスを開始しましょう。
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執筆は2020年4月1日時点の情報を参照しています。
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