株式会社やNPOなどの法人を設立する際には、関係各所にさまざまな届出を行う必要があります。その中の一つに税務署に提出する法人設立届出書というものがあります。
今回は、法人設立届出書を作成、提出するにあたって、知っておきたい基本情報やヒントなどを紹介します。
法人設立に必要なもの
まず、法人を設立する際にはどのような手続きや書類が必要となるでしょうか。株式会社の設立を例としてみていきます。
基本事項の決定
まず、株式会社の基本的な事項について決定しておかなくてはなりません。具体的には、「商号」「本店所在地」「目的」などがあり、法務局で登記登録を行う際に必要となる「定款」に記載することになります。
会社の印鑑
提出書類を作成するにあたって会社の印鑑が必要となります。設立時に必要なのは法人実印だけですが、のちに銀行印や社印なども必要となるので併せて作っておくとよいでしょう。印鑑については、トラブルにもつながる?署名や印鑑について徹底解説も参考にしてみてください。
定款の作成と認証
定款は、会社を運営していくうえでの基本的な規則を定めたものです。作成には専門的な知識が必要となる部分があるので、中小企業診断士や弁護士、行政書士、司法書士などの専門家に相談しながら進めるのが安心です。作成後は、公証人役場で認証を受ける必要があります。
資本金の払い込み
定款の認証後、資本金を発起人個人の口座に振り込みます。発起人が複数いる場合は、発起人総代の口座を使用します。その際、誰がいくら払ったかが分かるように「預け入れ」ではなく「振り込み」にするように注意してください。
法務局への登記申請
資本金を払い込んだら、法務局で登記を行います。以下の書類を用意するとともに、会社の実印も持参しましょう。
・登記申請書
・定款
・発起人の同意書
・代表取締役、取締役、監査役の就任承諾書
・印鑑証明書
・本人確認証明書
・資本金の払込証明書
・登録すべき事項を保存したCD-R
登記の完了をもって会社の設立となりますが、設立後にも税務署や自治体の役所、年金事務所などに届け出なくてはならない事項がいくつかあります。その一つが法人設立届出書です。
法人設立届出書とは
法人設立届出書は税務について届け出る書類であり、国税に関するものと地方税に関するものがあります。
国税に関するものは本店所在地を管轄する税務署へ、地方税に関するものは都道府県税事務所と市町村の税務担当の窓口に提出します。
提出期限は、税務署提出のものが設立の日から2カ月以内、都道府県税事務所や市町村の税務担当の窓口に提出するものについてはそれぞれの自治体で異なっています。なかには税務署の提出期限よりも早い場合があるので、よく確認しておきましょう。記載内容はいずれも同じなので、以降は税務署に提出するものを基準にして説明をします。
法人設立届出書記入の際のポイント
まず、法人設立届出書の用紙ですが、国税庁のウェブサイトからデータをダウンロードして使用することができます。
以下、各項目の書き方や注意点を紹介します。
本店又は主たる事務所の所在地
登記した本店所在地の住所を記入します。
納税地
一般的に「同上」で構いません。
法人名
登記した商号を記入します。
法人番号
法人番号は、登記完了から約1週間後に郵送るので、その番号を記入します。国税庁の「法人番号公表サイト」で調べることも可能です。
代表者氏名
代表者の氏名を記入するとともに、印とある箇所に会社の実印を押印します。
代表者住所
代表者の住所を記入します。
設立年月日
平成もしくは令和の該当する方を丸で囲み、登記簿謄本にあるとおりの年月日を記入します。
事業年度
定款で定めた会計期間の年月を記入します。
設立時の資本金又は出資金の額
登記簿謄本の「出資金の額」欄にあるとおりの金額を記入します。
消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日
資本金1,000万円以上で設立した場合、平成もしくは令和の該当する方を丸で囲み、設立年月日を記入します。
事業の目的
定款に記載してある目的を記入しますが、多すぎて書き切れない場合は主なものだけを記載します。(定款等に記載しているもの)(現に営んでいる又は営む予定のもの)の両方が同じ内容になっても構いません。
支店・出張所・工場等
設立の段階で該当するものがある場合には、登記してある・ないに関わらず名称と所在地を記入します。存在しない場合には空欄のままで構いません。
設立の形態
該当するものを選び、数字を丸で囲みます。個人事業からのいわゆる「法人成り」の場合は1を丸で囲み、個人事業時の管轄だった税務署名と整理番号を記入します。新規で法人を立ち上げた場合は5を丸で囲み、「新規で事業開始」と記入します。
設立の形態が2~4である場合の適格区分
設立の形態が2から4である場合、その合併、分割または現物出資が、法人税法第2条第12号の8(適格合併)、同条第12号の11(適格分割)、同条第12号の14(適格現物出資)に該当する場合には「適格」を丸で囲み、該当しない場合 には「その他」を丸で囲みます。
事業開始(見込み)年月日
設立年月日と同じで構いませんが、事業の開始がまだ先である場合にはその予定日を記入します。
「給与支払事務所等の開設届出書」提出の有無
該当する方を丸で囲みます。自分自身にも給与の支払いがある場合には「有」を丸で囲みます。
関与税理士
契約している、または契約することが決まっている税理士がいれば、その氏名と所在地、電話番号を記入します。決まっていない場合は空欄で構いません。
添付書類
添付して提出する書類の番号を丸で囲み、必要に応じて空欄に記入します。新たに会社を設立する際には、「定款等の写し」「株主名簿」「設立時の貸借対照表」を添付書類として提出するのが一般的です。資本金が1億円以上の場合には「定款等の写し」は2部必要になります。以前は、これに加えて「登記事項証明書」の提出も必要でしたが、平成29年度税制改正によって手続きが簡素化され、「登記事項証明書」の提出は不要となりました。
法人設立届出書提出の際は2部用意しておき、1部は受付印をもらって手元に保存しておくようにします。
参考:法人設立届出書等について、手続が簡素化されました(国税庁)
法人設立届出書以外にも、税務署へは「青色申告の承認申請書」「給与支払事務所等の開設届出書」「源泉所得税の納金の特例の承認に関する申請書」「棚卸資産の評価方法の届出書」「減価償却資産の償却方法の届出書」などの提出すべき、または提出した方が良い書面があります。
また、労働基準監督署へ労災保険に関する届出を、ハローワークへ雇用保険に関する届出をしなくてはならないうえに、年金事務所で社会保険加入の手続きをする必要もあります。何かと忙しくなる法人設立のタイミングですが、届出や手続きの期限にそれほど余裕がないものもあるので、前もって書面や添付書類を用意しておくなど、しっかりと計画を立て、必要に応じて専門家に相談しながら準備を進めるようにしましょう。
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執筆は2019年6月28日時点の情報を参照しています。
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