個人事業主においては、事業収入からどれだけ経費を差し引けるかによって、納付する税額が左右されます。
この記事では、事業所得と経費の関係性、青色申告・白色申告、個人事業主の経費として認められる・認められないものについて解説します。
目次
節税にもつながる?事業所得と経費の関係性
個人事業主として事業を行っている場合、その年にどのくらいの収入を得たかを「確定申告」という手続きによって申告し、所得税などの税金をいくら納めるかを確定する義務があります。
所得には10種類ありますが、個人事業主が確定申告で申告するのは、主に次の所得です。
- 事業所得
- 雑所得
- 不動産所得
など
「事業所得」とは、事業から得られる総収入から経費を差し引いた金額です。「経費」とは、事業の収入を得るために使った費用のことで、正確には所得税法上の用語で「必要経費」といいます。
確定申告には青色申告と白色申告がある
確定申告は、いくら控除を受けられるかで3種類の違いがあります。
「控除」とは、税金をいくら納めるかを計算するベースとなる所得金額から、一定の金額を差し引くことで、控除額が大きければそれだけ納付する税金も少なくなります。
節税のうえで非常にお得な「青色申告」を行うには、次の条件を満たすことが必要です。
- 個人事業主であり、事業所得・不動産所得・山林所得のどれかの所得を得ている
- 青色申告をしたい年の3月15日まで(新規開業時は開業日から数えて2か月以内)に、青色申告承認申請書を提出する
上記にあてはまらないケースは、すべて白色申告となります。
節税につながる、青色申告のメリットは主に次の点です。
- 複式簿記に従った記帳をすれば、65万円の控除が受けられる
- 事業の赤字(損失)を最大3年間繰越が可能
- 家族に支払う給料の全額を経費化できる(青色事業専従者給与)
- 家賃やガソリン代などのプライベートと兼用しているものに関する経費(家事関連費)を、按分により何割かを経費化できる
- 備品などの固定資産代を30万円未満なら全額を経費化できる(少額減価償却の特例)
事業所得を得ている個人事業主なら、期限内に申請書を提出して複式簿記による記帳を行えば65万円の控除を受けられるため、青色申告を申請したほうが節税につながります。
経費として認められる条件とは
「何でも経費にできそう」と勘違いしてまいそうですが、個人事業主がある費用を経費計上するには、次の条件を満たすことが必要です。
事業と直接関係している、かつ、事業に必要である
何でも経費にできるわけではなく、事業と無関係の費用は経費計上できません。
たとえば、事業と全く関係のない友人との食事代は、経費計上できません。しかし、友人が単なる友人ではなく、取引先や同業者など事業の関係者であり、事業に必要な打ち合わせをするために食事の場を設けたのであれば、経費として認められます。
さらに、その費用が事業に必要であるかどうかについては、誰が見ても事業に必要と認識されるレベルの客観性が必要です。
収入に対して経費の金額が大きすぎない
事業に関する収入や規模に対して、経費の金額が大きすぎない点も大切です。たとえば、事業所得が200万円程度の個人事業主が、年間50万円を交際費として支出していたら明らかに不自然でしょう。経費として認められるには、金額が妥当で、回数も常識の範囲内に収まる必要があります。
個人事業主の経費として認められるものとは
個人事業主の経費として認められる主なものを、確定申告で使用する「収支内訳書」の経費における勘定科目順に紹介します。
- 給料賃金 : 従業員に対する給与や賞与(事業主個人に対する給与などは不可)
- 外注工賃 : 仕事を外注した際に発生した下請け料などの費用
- 減価償却費 : 一つあたり10万円以上の物品に対しては、固定資産として計上後に、法定耐用年数に応じて計上
- 貸倒金 : 売掛金などのうち回収不能になった損失分
- 地代家賃 : 事業用に使う自宅を家事按分した家賃や、店舗などの賃貸料など
- 利子割引料 : 事業用に使う自宅の住宅ローンや借入金などの支払利息
- 租税公課 : 印紙税、自動車税、固定資産税といった税金(所得税や住民税など事業主個人にかかる税金は不可)
- 荷造運賃 : 宅急便・郵送料などの運送費や梱包材料費など
- 水道光熱費 : 電気・水道・ガス代
- 旅費交通費 : 電車賃などの交通費や駐車場代、出張における宿泊費など
- 通信費 : 電話代やインターネット代など
- 広告宣伝費 : 広告やポスティングなどに使った費用、パンフレット・名刺制作費など
- 接待交際費 : 仕事相手との会食費や中元・歳暮代など
- 損害保険料 : 事業用の自動車や建物にかかる保険料(事業主個人にかかる保険料は不可)
- 修繕費 : 事業用の建物などにかかる修繕費
- 消耗品等 : 一つあたり10万円以下の消耗品
- 福利厚生費 : 従業員にかかる健康診断費や忘年会などの福利厚生費(事業主個人にかかる福利厚生費は不可)
自宅を事務所にしている場合は家事按分を利用
自宅を事務所にしているケースでは、自宅にかかる家賃・水道光熱費・通信料・駐車場代などの一部を「家事按分」によって経費計上が可能です。
たとえば家賃では、住居全体の床面積のうち事業向けに利用している面積分にかかる家賃を、通信費や水道光熱費は、全体の使用日数・時間のうち事業向けに使用している時間分などにかかる費用を計上します。
個人事業主の経費として認められないものとは
上述したように、事業と無関係の費用は、個人事業主の経費として認められません。認められないもののうち、主なものを紹介します。
福利厚生費など、事業主個人にかかる費用
法人なら、オーナーの給与を役員報酬という名目で損金参入できますが、個人事業主ではできません。また、福利厚生費は会社の従業員のための経費のため、個人事業主には適用できないのです。このように、次のような事業主自身のための費用は、経費として認定されません。
- 事業主個人に対する給与
- 健康診断費・スポーツクラブ料金など、事業主個人にかかる健康管理費
- 所得税や住民税など、事業主個人にかかる税金
- 事業主個人にかかる、生命・損害保険料、国民健康保険、国民年金など(経費にはならないが控除の対象にはなる)
家庭に対する費用
上述したように、自宅で仕事をしている個人事業主は、家事按分により事業用として使用している家賃や電気代などを経費計上できます。しかし、家庭用として使う分については、経費として認定されません。
住宅ローンの元金・借入金
事業用としても使うために住宅ローンを組んでマンションなどを買った際、住宅ローンの元金を経費計上したいのはやまやまですが、実際には計上できません。住宅ローンの元金や借入金は、費用ではなく「負債」だからです。
しかし、住宅ローン(家事按分した事業用分)の支払利息や、借入金の支払利息については、資金調達(借入)のために支払う費用として、経費計上が認められます。
生計を同じくする家族への支払
個人事業主と生計が同一の家族・親族に対する給与や家賃などの支払は、経費として認定されません。個人事業主自らへの支払が経費計上できないため、生計が同じケースでは家族でも事業主自身とみなされるからです。
ただし、青色申告を行えば、家族への給与全額を経費計上できます(青色事業専従者給与)。
10万円以上のもの
一つにつき、購入金額が10万円以上の車両・建物・機械などは、一旦「固定資産」として計上が必要です。その後、法定の耐用年数に従って減価償却費として計上する手続きを踏みます。
個人事業主の経費として認められるかどうかの大きな基準は「事業に関係する費用であるか」です。税務署で指摘されても客観的な回答ができるよう、裏付けや根拠を整理したうえで計上するようにしましょう。
執筆は2020年1月10日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash
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