※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
領収書は「いつ・誰に・いくら支払ったか」を証明する重要書類であり、簡単に再発行されるものではありません。とはいえ、領収書を紛失してしまった場合はどうすればよいのでしょうか?また、再発行を依頼された側は、どのように応じるのがベストでしょうか?
この記事では、領収書の再発行について、領収書の発行側と受け取り側、それぞれの対応方法を解説します。さらに、領収書の紛失や再発行の依頼を防ぐ方法、そしてインボイス制度の影響もまとめているため、ぜひ参考にしてください。
📝この記事のポイント
- 領収書は初回発行に義務があるが、再発行に応じる義務はない
- 再発行は経費の水増し計上などのリスクがあるため慎重に対応を
- 再発行できない場合は「支払証明書」や振込明細などの代替手段が有効
- 領収書を紛失した場合は、出金伝票や関連書類を保存して経費計上を補強できる
- 電子レシートを導入すれば、紛失防止と再発行負担の軽減につながる
目次
- 依頼された場合、領収書の再発行義務はある?代替方法も紹介
・領収書の再発行は義務ではなく、リスクが伴う
・領収書再発行の代わりに「支払証明書」で対応できる場合も
・領収書の再発行に応じざるを得ないときは? - 紛失した場合、領収書は再発行してもらえる?難しい場合の対応
・まずは領収書の再発行を依頼しよう
・領収書の再発行が難しい場合は、出金伝票に記録しよう - 領収書の紛失・再発行依頼を防ぐ方法
・電子レシートを発行する・受け取る
・領収書なしで支払いを証明する - 2023年10月から仕入税額控除にはインボイスの発行・保存が必須に
- よくある質問 (FAQ)
・領収書を再発行する場合も収入印紙は必要?
・領収書を紛失しても経費として計上できる?
・領収書の保管義務は何年? - まとめ
依頼された場合、領収書の再発行義務はある?代替方法も紹介
まずは領収書発行者の視点から、領収書にまつわるルールや再発行のリスク、依頼された場合の対応を押さえましょう。
領収書の再発行は義務ではなく、リスクが伴う
基本的なルールとして、金銭の受け取り側には、支払い側の求めに応じて領収書を発行する義務があります。ただし一度対応すれば、その後再発行を求められても応じる義務はありません。一つずつ解説します。
(1)領収書には発行義務がある
金銭のやり取りが発生した際に、支払い側から領収書を求められた場合、受け取り側はその場で発行しなければなりません。
弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる
– 民法第486条
ただし、「現金の受領事実を証明できるもの」であれば、必ずしも領収書という名称である必要はありません。たとえば受取書、レシート、預かり書、「代済」「了」などと書かれた請求書や納品書なども、税務上の受取証書として認められます。
この受取証書は書面に限らず、当事者間の合意があればデジタル形式にすることも可能です。なお、支払い側から「紙と電子の両方を交付してほしい」と求められた場合でも、法律上は双方を提供する義務まではなく、また電子提供が不相当な負担になる場合には拒むこともできます。
(2)再発行は慎重に
金銭の支払い側から領収書の再発行を求められた場合、応じるかどうかは発行者の裁量に委ねられています。安易な再発行は税務上のトラブルのもとになる可能性があるため、十分な注意が必要です。
というのも、同じ領収書が2枚存在すると経費の水増し計上などに悪用されるリスクがあるからです。そうした目的を知らずに親切心で再発行に応じたとしても、不正が発覚した場合は事業者も責任を問われる可能性があります。
そのため、最初に領収書を発行する際に「再発行には応じかねます」と一言記載しておくなど、安易な再発行には応じない姿勢を示すとよいでしょう。
領収書再発行の代わりに「支払証明書」で対応できる場合も
金銭の受領事実を証明する書類は、領収書に限りません。そのため、お客さまから領収書の再発行を求められた場合は、代替書類を案内するという手があります。
たとえばカードや電子マネーで支払われた場合は利用明細、納品書に「了」と記載したもの、銀行の振込履歴などが代替書類にあたります。
また、「支払証明書」を発行するのも一つの方法です。これは「すでに支払われたこと」を証明する書類であり、支払先、日付、但し書き、支払金額の4項目を記載すれば、税務上の証憑として認められることが多いでしょう。押印は必須ではありませんが、受領側が作成した旨を示すために発行事業者の社判や代表者印を押しておけば、客観的な書類としての信頼度が増すでしょう。
領収書の再発行に応じざるを得ないときは?
たとえば、得意先から再発行を依頼された場合など、今後の取引関係を考慮すると断りにくいこともあります。
再発行すると同じ領収書が2枚存在することになります。そのため、「再発行」とスタンプを押したり、メモ書きをしたりするなどして、再発行であることを明確にしましょう。

紛失した場合、領収書は再発行してもらえる?難しい場合の対応
次に、領収書を受け取る側の視点で、一度発行された領収書を紛失した場合の対応方法を整理します。
まずは領収書の再発行を依頼しよう
領収書の紛失が確認されたら、まずは再発行の依頼をしましょう。たとえば、新幹線代や飛行機代など高額の交通費は利用日の半年から1年以内ならインターネット上の手続きで再発行できる場合があります。また、医療機関によっては再発行の申請に応じてくれるところもあります。各支払先に問い合わせてみましょう。
しかし、すべての支払先が領収書の再発行に応じるわけではありません。再発行を依頼する理由が「紛失によるものなのか」「経費の水増し計上が目的なのか」の区別ができないからです。そのため、「経費の水増し計上による脱税に加担したのでは」と税務署から誤解を受けることを恐れ、領収書の再発行に消極的な企業や団体もあります。
領収書の再発行が難しい場合は、出金伝票に記録しよう
領収書の再発行を受けられず、支払証明書などにも対応してもらえない場合は、出金伝票を作成しましょう。出金伝票とは、交通費、祝儀および香典、自動販売機で購入したドリンク代など、少額の支出で領収書やレシートが発行されない場合に取引を記録する伝票です。
出金伝票を作成する際は、次の4項目を記録します。
| 🏢 支払先 | 社名や屋号 |
| 📅 日付 | 支払った日 |
| 📝 内容(但し書き相当) | サービス内容や購入した品名など |
| 💴 支払金額 | 税込金額 |
ただし、出金伝票は自己申告式の書類であるため客観性に乏しく、税務署から経費として認められるとは限りません。業務日報や出張などの報告書、打ち合わせ記録など、関連する書類とあわせて保存することで架空の出費ではない旨を証明できるようにしましょう。
また、出金伝票はあくまでも少額の支出のための補助的な手段であるため、むやみに使うことは避けましょう。あまりに頻繁な場合や、記載した金額が高額なケースでは、税務調査の対象となる可能性があります。
なお、領収書がない支出に対しては、税務署が支払先に対して支払いの事実を確認する「反面調査」を行うことがあり、そこで支払いの事実が認められない場合はペナルティの対象になります。出金伝票を作成する際は、あやふやな記憶を頼りにせず、反面調査が行われた場合に税務署が支払いの事実を確認できるよう記録することがポイントです。

領収書の紛失・再発行依頼を防ぐ方法
領収書の発行側も受取側も、工夫次第で紛失のリスクを回避し、保存の負担を減らすことができます。ここでは、領収書の紛失や再発行の依頼を最小限に抑える方法を紹介します。
電子レシートを発行する・受け取る
メールアドレスや電話番号宛に送れる電子レシートなら、発行者は再発行の手間を省け、受領者は紛失リスクを減らせます。たとえば、無料で使えるSquare POSレジでは紙のレシートを印字することも可能ですが、電子レシートの発行もできます。お客さまに電子レシートの利用を促せば、レシート印字にかかるコストを削減でき、再発行を依頼される可能性も減ります。
領収書なしで支払いを証明する
領収書は保存義務がありますが、それは支払先から受領した場合に限ります。つまり、領収書が発行されなければ、そもそも保存義務は生じません。
たとえば、外注先への支払いは銀行振込にすれば、通帳に取引履歴が記録されます。クレジットカードでの支払いも同様に履歴が残ります。
このように、銀行口座やクレジットカードを最大限に活用し、受領する領収書を増やさない仕組み作りが紛失を防ぐことにつながります。
2023年10月から仕入税額控除にはインボイスの発行・保存が必須に
2023年10月に始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、領収書の取り扱いにも影響します。
消費税の納付額は、原則として「売り上げに伴う消費税額」から「仕入れにかかる消費税額」を差し引いて計算します。この差し引きを仕入税額控除といいます。インボイス制度が始まったことで、仕入税額控除の対象は、原則としてインボイスを受け取った支出に限られるようになりました。
インボイスは適格請求書とも呼ばれますが、必要事項が記載されていれば請求書に限らず、領収書や納品書も有効なインボイスとして扱われます。一方で、支払証明書や出金伝票はインボイスとして認められないため注意しましょう。
領収書がインボイスを兼ねる場合、それは「金銭の受領事実を証明する書類」というだけでなく、「仕入税額控除の対象額を証明する書類」にもなります。この点を踏まえて、領収書の発行側と受け取り側、それぞれの立場で気をつけるポイントは次のとおりです。
【領収書の発行側】
インボイスを発行するには、まずインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)としての登録が必要です。登録を終えてインボイス発行事業者番号が発行されたら、領収書をインボイスに対応させましょう。
インボイスには、次の項目を記載します。
- 発行事業者の氏名または名称
- 取引年月日、内訳、金額
- 税率毎に区分して合計した対価の額(税込または税抜)
- 軽減税率の対象品目である旨の記載
- インボイス受領者の氏名または名称
- 登録番号
- 適用税率
- 税率毎に区分した消費税額
小売業や飲食店業など、不特定かつ多数の人に対して事業を行う場合は簡易インボイスが認められています。この場合は受領者の氏名など一部の項目を省略することが可能です。
- 発行事業者の氏名または名称
- 取引年月日、内訳、金額
- 税率毎に区分して合計した対価の額(税抜または税込)
- 軽減税率の対象品目である旨の記載
- 登録番号
- 税率毎に区分した消費税額または適用税率
インボイス発行事業者は、発行したインボイスの写しを原則として申告期限の翌日から7年間保存しなければなりません。なお、電子的に発行したインボイスは電子帳簿保存法に基づいて電子データのまま保存することが求められています。
【領収書の受け取り側】
課税事業者が仕入税額控除を受けるには、インボイスの受領と7年間の保存が必要です。インボイスを兼ねた領収書を紛失しても、支払証明書などで支払った事実を証明できれば経費として認められる可能性はあるものの、消費税の仕入税額控除を受けることはできません。
なお、受け取ったインボイスも原則として7年間の保存が必要です。データで受け取った場合はデータのまま保存しなければならず、プリントアウトした状態での保存は認められていないため注意が必要です。
上で紹介したSquareでは、インボイス制度に対応したレシート、電子レシート、領収書、請求書の発行が可能です。詳しくはこちらをご確認ください。
よくある質問 (FAQ)
最後に、領収書の再発行に関するよくある質問をまとめました。
領収書を再発行する場合も収入印紙は必要?
はい。再発行した領収書も印紙税の課税対象(第17号文書)となります。記載金額が5万円以上の場合は収入印紙を貼らなければなりません。
「一度貼っているので不要なはず」と考えて収入印紙を貼らなかった場合は過怠税の対象となり、収入印紙額の3倍の金額を課されるため注意しましょう。なお、電子領収書の場合は収入印紙は不要です。
領収書を紛失しても経費として計上できる?
領収書を紛失した場合でも、支払先が金銭を受け取ったことを証明できる書類があれば経費として計上できます。支払証明書のほか、レシートや「代済」などと書かれた請求書や納品書で代用しましょう。また、銀行振込の場合は振込明細書や通帳、クレジットカード決済の場合は利用明細などが有効です。
いずれの書類も用意できない場合は、支払伝票を作成しましょう。場合によっては経費として計上できる可能性があります。
なお、これらの書類はあくまでも経費計上のためのものであり、消費税の仕入税額控除を受けるには要件を満たした領収書や請求書などのインボイスが必要です。
領収書の保管義務は何年?
領収書の保管期間は以下のとおりです。期間は確定申告書の提出期限の翌日からカウントされます。
- 法人:7年間
- 青色申告の個人事業主:7年間(前々年の収入が300万円以下の場合は5年間)
- 白色申告の個人事業主:5年間
なお、PDFやメールで発行された領収書は電子取引に該当するため、原則として電子帳簿保存法に定められた要件を満たした状態で電子データのまま保存することが求められます。
まとめ
電子レシートに対応すれば、受け取り側が領収書を紛失するリスクを大きく下げられるだけでなく、発行側が再発行依頼に対応する手間や時間も省けます。記事で紹介したSquare POSレジは初期費用や月額利用料が不要で、解約料もかかりません。興味のある人は気軽に試してみるとよいでしょう。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2018年3月13日時点の情報を参照しています。2025年9月15日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash

