限界利益とは?目的・役割・計算方法をわかりやすく解説

商品やサービスをお客様に提供するビジネスは、どんな種類であっても、利益を出して事業を継続させていく重要性は共通しています。適切に利益が出ているかを見極め、このままの方法で商売を続けてよいかを判断する指標として活用したいのが「限界利益」です。

本記事では、戦略的なビジネス展開にあたり、経営方針を定めるための重要な判断素材となる限界利益について、算定する目的や計算方法、限界利益の数値が示す三つの役割、他の種類の利益との違いを説明します。また併せて、限界利益率と損益分岐点の算出方法を読み解きながら、限界利益を活用した健全経営の方向性を打ち出すポイントを紹介します。

限界利益を正しく理解することによって経営状態が可視化され、売り上げアップや経営の改善を図ることができます。

目次



限界利益とは?目的と計算方法を理解しよう

はじめに、限界利益が何を指す言葉なのかをみていきましょう。

限界利益は、商品やサービスを売り上げた額から、その売り上げを得るために支払った費用のうち固定費以外の額(変動費)を差し引いて残った利益を指します。

限界利益には「限界」という名称がついているものの、限度(limit)を示す意味合いはありません。英語で限界利益は「marginal profit」といい、直訳すると「利ざやの益」、つまり、原価と売価の間にどのくらいの開きがあるのかを求めたものを限界利益というのです。

限界利益を算出する目的

限界利益は、企業が事業を進めていくための方向を見定める指標として用いることができます。限界利益を計算して収支の概況をつかむことにより、事業としての収益力が見えてくるのです。

また、「赤字」か「黒字」かの境目をはっきりさせる「損益分岐点」を把握する際に重要となる数値も、限界利益により明らかにできます。

限界利益の計算方法

限界利益の算出方法は式にすると、「限界利益」=「売上高」−「変動費」とシンプルで、簡単に収益力の概況をつかむことができます。

限界利益 = 売上高 − 変動費

「変動費」とは、特定の商品やサービスを売り上げた際、売り上げの多寡に応じて支払い額が変わる費用をいいます。たとえば、小売業では商品の仕入れ原価や商品の輸送費用、販売にかかった手数料などがあります。製造業であれば原材料費、外注費などが挙げられます。その他、サービスを提供する際に使った消耗品費や個別に売り込みをかけた広告費なども変動費に含まれます。

これに対して「固定費」は、売り上げが多かろうと少なかろうと関係なく定量的に発生する費用を指します。たとえば、店舗の地代家賃や水道光熱費、通信費、固定資産税といった場所の維持に関わるものや、機械のリース代や減価償却費など設備に関するもの、従業員の給料や保険料など人に関するものなどがあります。

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なぜ限界利益が重要?三つの役割を理解しよう

限界利益では変動費を重視します。実際の事業では固定費も無視できず、変動費と固定費の両方を差し引いた営業利益も重要な数値なのですが、あえて変動費のみで収益の状況をみる限界利益が必要とされているのにはわけがあります。

たとえば、ある商品・サービスの営業利益がマイナスとなって「赤字」だったとします。その際に、変動費のみを差し引いた限界利益ではプラスの「黒字」だった場合、固定費が足を引っ張って黒字のはずの事業の良さが生かせていないだけなのかもしれません。

このように、自社が展開する商品・サービスのポテンシャルを事業別に測る指標が限界利益です。どの事業を伸ばし、あるいは切り離していけばよいのかを見極めるための重要な判断材料になるもので、大きく分けると、限界利益は次の三つの役割をもっているといえます。

(1)事業存続の判断材料とする

まずは単純に、その事業を続けるべきかどうかを判断する指標として限界利益を用いることができます。

限界利益が赤字の場合、売るほどに赤字が増えますから、改善しても黒字に転換できそうになければ撤退する必要があるでしょう。

変動費のみを引いた限界利益は黒字で、固定費をさらに引いた営業利益が赤字の場合、固定費の削減などの工夫により事業を継続させていける可能性があります。

限界利益も営業利益も黒字の場合はそのまま事業を継続させることができます。事業ごとに限界利益の多寡を精査すると、どの事業を伸ばしていくとよいかの検討もできるでしょう。

(2)最適な価格の決定に活用する

限界利益が売り上げに締める割合(利益率)から算出される損益分岐点を活用することにより、商品・サービスの「黒字になる価格のポイント」がわかります。価格は高すぎると市場での優位性が下がり、安すぎると利益がなくなるため、どのあたりの価格が適正なバランスになるかを、限界利益を駆使して探っていくことができます。

(3)予算の作成に活用する

ビジネスであれば、どの商品・サービスにも売上目標を掲げているでしょう。固定費は経営全体にかかるもので、個別の商品・サービスには直接関係しないため、売上目標に対して費用がどの程度必要になるかを考える際には変動費に着目する必要があります。

限界利益であらかじめ変動費のコストと利益の額をみておくことにより、どの程度の規模で事業を進めていくことになるのかを把握できます。実現可能な予算立てにするには、これまでの実績を踏まえた上で目標とする限界利益率を想定し、必要となる変動費を把握していくとよいでしょう。

限界利益と他の利益は何が違う?

事業のどこをチェックするのかによって、着目する利益が変わります。それぞれの「利益」がもつ意味や算出の目的の違いを明らかにしておきましょう。

売上総利益

売上総利益は、売上高から商品・サービスを提供する際にかかった原価(主に変動費)を差し引いて得られるおおまかな企業の利益を表します。粗利益(あらりえき)や粗利(あらり)と呼ばれることもあります。

売上高に対して売上総利益が締める割合を売上総利益率といい、売上総利益率を他社と比べることにより、自社の競争力を把握することができます。

営業利益

営業利益は、売上総利益から、営業活動にかかった経費として販売費や固定費を含む一般管理費を差し引いて得られる利益です。

営業利益率は、営業利益が売上高に対しどの程度あるのかを示したものです。営業利益率により、事業全体での収益性を測ることができます。

税引前当期純利益

税引前当期純利益は、経常利益と、営業外の収入から得られた利益(特別利益)を足し、そこから貸倒損失などの特別損失を差し引いて残る利益をいいます。

当期純利益

当期純利益は、税引前当期純利益から、税金などすべての支出を差し引いた後に残る利益をいいます。最終的な企業としての儲けを純粋に示した利益です。最終利益、当期利益、税引後利益ともいわれます。

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限界利益率と損益分岐点に注目し、経営状態をチェックする

限界利益から導き出される損益の分かれ目によって、経営状態の健全性を測ることができます。ここからは、限界利益が売上高に占める割合を求める「限界利益率」の算出方法や、限界利益率から得られる赤字・黒字のターニングポイントとなる「損益分岐点」の求め方と活用法をみていきましょう。

限界利益率の計算方法

限界利益率は、売上高のうち限界利益がどのくらいあるかを割合で示したものです。限界利益率は、「限界利益」を「売上高」で割ることで求められます。

限界利益率 =限界利益 ÷ 売上高

限界利益率は、25%以上を確保することが望ましいといわれています。ただ、この数字はあくまでも目安です。事業内容によっては固定費がほとんどかからない場合もあるはずで、実際のところは固定費の大きさにかかってくるといえるでしょう。

損益分岐点の計算方法

限界利益率が高ければ、それだけ利ざやが確保できているということですから、できるだけ多くしたいところです。とはいえ、変動費を削減するにも品質確保の面などで問題が生じますし、やみくもに商品・サービスの価格に上乗せすると市場での競争力が下がってしまいます。

損益分岐点は、市場での競争力を保ちながら収益を上げるための最適解を求める出発点となるもので、赤字と黒字の境目を明らかにします。

損益分岐点の計算式は、「固定費」を「限界利益率」で割ったものです。損益分岐点をプラス側に超えた利益は黒字となり、マイナス側だと赤字となります。

損益分岐点 =固定費 ÷ 限界利益率

限界利益率から損益分岐点を読み解く

損益分岐点は、固定費に対する限界利益の割合です。損益分岐点を把握することにより、その商品・サービスをどの程度売り上げれば営業利益を黒字にすることができるか、事業者が最低限確保しなければならない売上高を示しています。

損益分岐点を改善して利益を上げるには、固定費・変動費のいずれかを減らすか、売り上げを増やすかといった画策が必要です。

損益分岐点と併せて自社で展開する事業ごとに限界利益率を一覧化し、全体を俯瞰した利益と並行して事業ごとにチェックしてみましょう。商品・サービスのもつポテンシャルで事業継続を見極め、変動費の削減を目指した効率化を図るのか、固定費の削減を目指して営業関連の効率化を測るのかなど、改善点をクリアにしていくことができます。

三つの役割別の限界利益の活用方法

ここからは、前半で紹介した限界利益の三つの役割ごとに、収益性を上げるために何をすべきか、限界利益率や損益分岐点の活用方法をみていきましょう。

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事業存続の判断を行うための活用方法

損益分岐点を下回る商品・サービスでも、限界利益率が高いものであれば、事業としてのポテンシャルは高いといえます。できるだけ早く固定費を回収できるよう、製造・販売の効率化を図って変動費を削減しつつ、効果的に商品をアピールして売り上げを増大させる計画を立てるとよいでしょう。いわゆる商品・サービスを「育てる」状態です。

損益分岐点を上回り、限界利益も赤字でない場合は、限界利益率をさらに上向きにするよう、改善点を確認し、工夫を重ねることにより、市場での位置づけを確実なものにしていくことが望まれます。商品・サービスを「開花させる」状態といえるでしょう。

損益分岐点を下回り、限界利益率の向上も見込めない事業については、売るほどに赤字がかさむ「足手まとい」の状態です。ほんとうにその事業を提供する意義があるのか、あるとすれば現場の方法が理にかなったものなのかを再検討し、撤退や全面リニューアルを含めた商品・サービスの「生まれ変わり」を検討する状態といえます。

最適な価格を決定するための活用方法

損益分岐点を大きく超えようとして価格を引き上げすぎると、市場での価値が下がってしまい、かえって売り上げを落としてしまう可能性があります。かといって、市場での認知を高めて浸透を図ろうと価格を引き下げると、限界利益が一気に下がってしまうでしょう。

価格の設定時には、異なる商品・サービスの比較もできるよう、相対的な限界利益率を算出して検討します。その際に、価格変動を行う前後の変化、つまり限界利益率の下落率・上昇率を確認しておくのがポイントです。

たとえば、売上高が10,000円、変動費6,000円の商品・サービスがあったとします。売り上げを増やそうと割引を行うと、限界利益率は次のように変化します。

• 割引前:限界利益=10,000円-7,000円=3,000円(限界利益率30%)
• 1割引後:限界利益=9,000円-7,000円=2,000円(限界利益率22%)
• 2割引後:限界利益=8,000円-7,000円=1,000円(限界利益率12.5%)
• 3割引後:限界利益=7,000円-7,000円=0円(限界利益率0%)

商品の価格が10%下がっただけでも限界利益率は22%まで落ちて、健全な限界利益率のラインとされている25%を割り込んでいます。2割引にすると、限界利益率は元の価格の半分以下になり、3割引だと利益がなくなってしまっています。このような計算により、最適な価格がどのあたりになりそうかを試算することができます。

予算の作成のための活用方法

場所代や人件費、営業などにかかる費用はほぼ変動しないとすると、売上目標が変わった際に変動するのは、製造や販売に直接関わる変動費です。このため、目標とする売上高に応じて変動費を見積もって予算をたてておくことが重要になります。

今後必要となる変動費は、限界利益率から見積もることができます。たとえば、売上高の目標を1,000万円とし、固定費が200万円だったとすると、限界利益率を使って計算することによって、変動費の予算や最終的な営業利益の目安が次のように変化します。

限界利益率30%:限界利益=1,000万円×30%=300万円、変動費=1,000万円-300万円=700万円、営業利益=300万円-200万円=100万円(営業利益率10%)

限界利益率25%:限界利益=1,000万円×25%=250万円、変動費=1,000万円-250万円=750万円、営業利益=250万円-200万円=50万円(営業利益率5%)

限界利益率が高くなると、使える変動費は少なめになりますが、営業利益を確保することができ、収益は上がります。上の例でみると、目安といわれている限界利益率25%では、最終的な営業利益は5%にとどまってしまいます。全体の事業規模や固定費と並行して限界利益率から割り出すことにより、売り上げにかけられる予算(変動費)がどの程度あるかを的確に把握できるようになるでしょう。

「飲食店」「小売店舗」「サービス業」など店舗運営者にとって重要な限界利益

ここまで、限界利益を軸に、事業を展開する際に重要となる利益や利益率、損益のポイントなどを整理してきました。大きくまとめると、次のような要素が見えてきます。

  • 限界利益を理解し、活用することにより、「売り上げはあるのに利益が出ない」「売れば売るほど赤字になる」といった経営を回避することができる。
  • 限界利益率を比較することにより、商品・サービスの中の「儲けられるもの」と「改善が必要なもの」「撤退すべきもの」が明らかになり、効果的な対策が打てる。
  • 損益分岐点と限界利益率を活用し、商品・サービスが市場で通用するための最適な価格を設定することができる。
  • 限界利益と営業利益のバランスをみることにより、利益を効果的に最大化するための事業の強化ポイントがわかり、適切な予算編成が可能になる。

限界利益は、営業利益と比べると馴染みが薄いかもしれませんが、このように事業を継続・発展させるための要ともいえる重要な観点を与えてくれるものです。

特に、飲食店や小売店、サービス業など、店舗や人件費といった固定費と、毎日の仕入れや販売、原材料の変動費が大きく関わってくる経営では、限界利益をものにすることで、的確な収支の感覚を磨き、経営判断を鋭くしていけるでしょう。収益の管理の際に限界利益を取り入れて、日頃からの運営に活用していくことをおすすめします。

飲食店向けのSquareサービス

限界利益をはじめとする毎日の収支の管理を効率的に行うには、データが整っている必要があります。日々の店舗運営をこなしながら、数字の管理まで行うのは簡単ではありません。手書きの伝票や現金管理があると、スタッフにかかる負担も大きくなり、計算にも時間がかかるため、タイムリーな収支の把握ができなくなるかもしれません。

Squareでは、こうした事務作業の負担を軽減し、スタッフが本来業務の専念できるサービスを提供しています。

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キャッシュレス決済

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店舗では、現金の取り扱いが減り、スタッフの管理の負担も軽減します。さらには、無料で使えるPOSレジアプリへ自動的に記録されるため、売上データの一括管理が可能になります。

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執筆は2022年11月14日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
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