「ひと粒たりとも豆を無駄にしない」という気持ちと、お客様への感謝を込めて、この名前にしました

「Gramercy Coffee」は2014年5月に開業。厳選した豆を仕入れ、その産地の特性を引き出せるようにいちばんおいしい淹れ方を提案してくれます。カウンターという舞台でバリスタを演じるのは木村真由美さん。身近で居心地のいい空間で、日々お客様とコーヒーの話題に花を咲かせています。

証券会社勤めからコーヒーショップへ転身

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 まさか自分がコーヒーショップを経営するとは想像もしていませんでした。私はかつて証券会社に勤めていて、漠然といつか何かしらのお店を持ちたいと思っていました。
 きっかけは、ニューヨークに20年以上住んでいた主人の弟にあります。彼がロサンゼルスを訪れた際、アメリカ西海岸にはコーヒーの「サードウェーブ」が到来していました。開放的で快適な空間で飲むシングルオリジンのコーヒーは、フルーティでワインのよう。これまで経験したことがない風味に衝撃を受け、彼は「これだ!」と、コーヒー業界へと転身を決めるのです。ロサンゼルスのコーヒーショップに務め、バリスタとしての経験を積みます。「とにかく美味しいコーヒーを毎日飲みたい」という自分たちのシンプルな思いから、日本でスタートしようと、私も会社を辞める決心をしました。
 ニューヨークのグラマシーパークはファッショナブルなエリアであり、南青山と雰囲気が似ています。大通りから路地を入った場所に出店を決めたのは、ビジネスマンやショッピングに訪れる人だけでなく、住宅地が近く、地域に根づいている生活感があるから。地域密着が大切だと思っていましたから、ここはうってつけの場所でした。

豆とお客様に対する感謝の気持ちが店名に

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店名はグラマシーパークに由来するのですが、フランス語で感謝を表す「グランド・メルシー」という意味も込められています。一杯のコーヒーを提供するまでに、コーヒーチェリーの摘み取りからはじまるだけでなく、私たちの店が開店するまで、いろいろな人がかかわってきました。「豊かな今日のために最高の一杯を作りたい」という思いと、お客様への感謝を込めて、この名前にしました。
 エスプレッソマシンへのこだわりもひとしおで、LA MARZOCCO社のリニアPBという最新モデルを日本で初めて導入しました。義弟が修業していたコーヒーショップで使われていて、慣れていることもあったのですが、入荷が遅れたために開業を1カ月遅らせたほどです。このマシンなしでのオープンは考えられませんでした。

泡のレインボーカラーが豆の新鮮さの証し

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コーヒー豆は複数のロースターから、焙煎されたいいものだけを仕入れています。焙煎してから日にちが経ってしまうと、豆の周りについている油分が酸化して、雑味に変わります。毎週水曜日に焙煎された豆が金曜日に届くのですが、保存法にも気を配り、日数が経ったものは使いません。湿気や匂い移りを防ぐため、入荷したらすぐにガラス製のメイソンジャーに入れて真空にします。温度差がなく、陽の当たらない場所に置いて保存。日付を入れて管理し、テイスティングして味が変わったらもう使いません。

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 グアテマラ産の豆は入荷した直後からが飲み頃ですが、他の豆は少し置いたほうが風味が安定し、おいしさが引き出されます。
 豆を挽いてドリップするとき、お湯を入れると泡が出てきます。このキラキラ光る虹色の泡が新鮮さの証しなのです。焙煎して1、2カ月経ってしまうと、この泡は出てこなくなります。

会話をしながらいちばんおいしい淹れ方を提案

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 私たちが目指すコーヒーは、深煎りではなく、酸味、苦味、甘味がとがらずに丸くなるようにすることです。栽培された農園や入荷するタイミングによって味が異なるため、どの淹れ方がいちばんおいしいかを追求して、お客様に提案します。エスプレッソ以外に、抽出法はペーパードリップ、フレンチプレス、エアロプレスという3種類から選択。同じ豆でも淹れ方によって味は変わります。お客様と会話しながら、どの方法がおいしく、望みにかなうかを判断して淹れることを心がけています。
 カウンター越しに会話する距離を近づけるために、カウンターの幅や高さは1㎝単位まで考え抜きました。淹れている様子が見えるようにすることも、安心・安全なことを伝えるのに大切な要素だと考えています。また、お客様同士が自然にコミュニケーションできるよう、テーブルやチェアを配置しています。毎日ふらりと立ち寄って、いろいろな人とコーヒーについての会話が弾む店。そうなれたら理想だと思っています。

本記事は2015年3月現在の情報です。