【ROUND SQUARE】広島イベントレポート ーつづく商いのつくり方

商売に挑戦したい人・している人がリアルにつながることで、化学反応やコラボレーションが生まれ、新たな商いにつながる。そんなきっかけづくりの場として、東京、福岡、金沢、そして今回の広島と回を重ねている「ROUND SQUARE」。

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2月24日に広島市にあるコワーキングスペース「ShakeHands」にて、「ROUND SQUARE in Hiroshima」が開催された。今回のテーマは「つづく小商いのつくり方」。商いを始めることの難しさに加え、商いを続けていくために必要なことについて、モデレーターやゲストを交えてさまざまな職業や立場の参加者たちが思い思いに意見を交わす場となった。

多彩な職業の参加者

冒頭、Squareの長谷川が「テクノロジーを使って商いを応援する」というSquareの想いを共有し、モデレーターの三宅紘一郎さんにバトンを渡してトークがスタートした。

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三宅紘一郎さん

モデレーターの三宅さんは過去にTOWN SQUAREにも登場している。広島県呉市出身。学生時代から右肩下がりの日本酒業界に問題意識を持ち、2015年にナオライ(株)を設立。瀬戸内海に浮かぶ三角島で育つレモンを使ったスパークリング日本酒「MIKADO LEMON」を開発しブランド化を進めている。

ゲストの一人目は(株)3CO代表取締役・市川育夢さん。広島県広島市出身。2013年11月に広島初のコワーキングスペース「ShakeHands」をオープン。開業のきっかけは、つながりを求めて交流会やボランティアに参加する中で、イベント以外で日常的につながる場所が少ないと感じていたこと。そんな時「コワーキングスペース」を知り、自分で手がけることを決心した。

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市川育夢さん

「広島県内でも同業種は増えていますが、コワーキングという概念自体がまだ世間で浸透していません。同じような場所が増えることで認知が高まりますし、今は競合するというよりは、一緒に文化をつくっていく時期だと考えています。開業前は、儲からないからやめておけとたたきのめされることもありましたが、僕は価値があると信じて踏み出しました。最終的に判断するのは自分。否定の言葉もバネにして、絶対つぶさないぞ! という強い気持ちが、小商いには必要なのかもしれません」(市川さん)

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下野弘樹さん

二人目は全国リトル商店街ネットワーク主宰・下野弘樹さん。長崎県出身。「未来の発明家」というユニークな肩書きで、福岡を中心に小商いに関わるプロジェクトを企画し活動中。ほかにも「全国リトル商店街ネットワーク主宰」「ふくおか小商い部部長」など多彩な顔を持つ。

「自分一人でできることは限られているので、いろいろな人の力を借りながら参加型のコミュニティーを構築しています。好奇心旺盛で、人が思いつかないような切り口や視点で物事を考えるのが僕の持ち味。さらに、周りにはいろいろな人がいる。そんな人たちとチームで活動しています。」(下野さん)

参加者同士もグループに分かれて自己紹介を行った。グラフィックデザイナー、金融関係、起業支援、農家、トレーナー等、多彩な職業の参加者が集まる中、一人ひとり自己紹介が進むにつれ、至る所で会話のキャッチボールが弾み会場は一気に活気づいた。

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「価値ある情報は積極的に拾うか交流しないと得られない」や「事業を起こすにはまず何から手を付ければいいのか」など、具体的な悩みや課題も話題に上がった。

続けるために心がけていることは

ゲストの二人がそれぞれがどのような思いで事業に取り組んでいるのか、そして続けるためにどのようなことを心がけているかについて話を聞いた。

市川さんからは、事業を続けるために必要なのはお金とハート、経営者としてのモチベーションを維持するには仲間づくりという意見が上がった。

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「なるべく自分と価値観が近くて、怒ったり怒られたりできる経営仲間など、自分にとって意義のあるコミュニティーに属しておくことは、一つのセーフティーネットになるのでは」(市川さん)

続けることも大切だが、期限を決めることも必要だという。

「興味を持っても、自分がどこまで関われるか、自分じゃないとダメなのか、冷静に考えることも大切です」(市川さん)

下野さんからは自分ならではの価値を提供できるかどうかがポイントという指摘が。

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「大切なのは、自分ならではの価値の深掘り。最初は欲しがる人が少数でも、その少数に対してきちんと価値を提供すればつながっていくのでは」(下野さん)

経験に基づいた実感のこもったコメントに参加者たちはうなずきながら、熱心に聞き入っていた。

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これから事業を立ち上げようとしている人にも、すでに事業を展開している人にも欠かせない「続ける」をキーワードに、再びグループに分かれて参加者同士で意見を交わした。

3つの「ション」『パッション(情熱)』『アクション(行動)』『インフォメーション(情報)』

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「大前提として、事業を続けるには好きじゃないとダメ。でも、当然、好きなことだけやって食べていけるほど甘くはないので、いかにしんどいときに前に進むか。そのために大切な3つの「ション」を考えました。『パッション(情熱)』『アクション(行動)』『インフォメーション(情報)』です。情報収集する場所にどんどん飛び込んでいくことが大切だと思います。」

「会社でもフリーランスでも、形にこだわらず、今この場所で何ができるか、今持っているものや自分の技術を活用できないか、自分にできることを考えて進んでいくことが大事」

「信念、仲間作り、独自性、生産性、楽しくワクワク続けることが大切」

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「熱意を持って起業を志すのに、周りに相談すると、やめた方がいいなど慎重派の意見を聞くこともありモチベーションが下がってしまう。起業するまでは先のことまであまり考えすぎず、背中を押してくれる意見をたくさん聞いて熱意を失わないことも必要。数年後に自分がこんなふうになっていたいというモデルを見つけるのも、熱意をキープする一つの方法。不得手な部分は専門家に任せるという選択肢もあるし、ノウハウのある人とつながって知識を得る努力も大切」

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日頃なかなか話せない悩みが一気にあふれ出したかのように打ち明ける人、それに対して熱心にアドバイスする人、大きくうなずいて共感する人。立場は違えど共有できる感覚や、立場が違うからこその視点。多様性が交わり合う、熱気あふれる時間となった。

悩むこと自体が主体的に取り組んでいる証

最後にゲストのお二方から感想を聞かせてもらった。

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「今僕がこの仕事を続けている一番の理由は、自分の人生を面白くしたいから。サラリーマン時代に自分の行く末が見えて、そこから抜け出したくて、広島で起きていることを自分ごとにしたいと考えるようになりました。事業を続けていると悩みも尽きませんが、悩むということは、それに対して自分が主体的に取り組んでいる証。ぜひ、今日こうして集まったみんなで応援し合ってほしいと思います。自分の得意分野で誰かを支える。それで自分も潤う。そんなサイクルが生まれるはずです。そして僕にも還元してください(笑)」(市川さん)

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「すごく楽しい時間を過ごせました。パッションというキーワードが出ましたが、僕は明らかなパッションはないけれど、呼吸をするように自然なこととして持っていると思います。最初から明確にやりたいことを言葉で表現できたわけではなく『今』をブラッシュアップしながら今日にたどり着きました。皆さんも、モヤモヤしながらも、とりあえずやりたい! と言うのはタダ。言わなきゃ始まらないこともあります。スモールステップは自分でつくるしかないんです。皆さんを応援しながら、僕も一緒に頑張りたいと思います」(下野さん)

最後に参加者から「やりたかった事業を夏までに実現します!」という力強い起業宣言が出る場面も。

ゲスト二人の言葉には商いを続けるヒントが散りばめられていた。すでに歩み始めている人、これから一歩踏み出そうとしている人、参加者がそれぞれの立場から今後に活かせる点を見つけた会になった。

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今回の会場「ShakeHands」は、堅苦しくもなく、かといってくつろぎすぎない、「カジュアルなオフィス感」が心地いい空間である。オーナーの市川さんは他県の同業者とも積極的に交流しながら、多様な働き方をサポートし、情報が集まる場所、交流が生まれる場所のあり方を追求しているという。

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「私自身、コワーキングオーナーになって以来、いろいろな方と出会い、情報を得ることができています。そこからさらにつながりが生まれ、自分自身の幅を広げることができました。このような体験をもっと多くの利用者の方に提供できるように、何か挑戦したいという方のきっかけづくりができるように、これまで以上に精力的に活動していきたいです」(市川さん)

コワーキングスペースShakeHands
〒730-0031 広島市中区紙屋町1-4-5 ウィニーズ紙屋町3F
082-246-1340

文:加藤 祐子

写真:木下裕介

つなぐ編集部