動ける手順書の作り方と運用ポイント。宿泊施設・飲食店のトレーニングやトラブル対応にも! 

新型コロナウイルス感染症の影響により、新しい形での従業員の働き方やサービス提供のあり方が求められるようになるなか、手順書の必要性がより一層高まっています。

手順書があれば、業務への理解や業務経験が少ない従業員でも一定水準の行動をとることができます。手順書は新規採用や異動で入ったばかりの従業員への業務説明だけでなく、新しいシステムを導入したときに全従業員へ行うトレーニングにも活用することができます。

目次



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動ける手順書とは

手順書は、業務フローやタスク内容、行動のポイントを明確にしたものです。組織によっては、業務マニュアルや実施要領などと呼ばれることもあります。本当に現場が活用しやすい「動ける手順」にすることが重要です。

手順書には何を書くといいの?

手順書の基本は「5W1H」を明確にすることがポイントです。誰が(Who)、どこで(Where)、何を(What)、何を使ってどのように(How)については、部門別だったり職位別だったり、役割別にタスクを明らかにしていく必要があります。

また、動ける手順書にするために重要なのは、その行動をいつ(When)行うかのタイミングや判断の基準です。業務には必ずフロー(流れ)がありますから、業務フローと開始・終了のタイミングを明確にしておきます。

さらに、業務の状況をすべて洗い出していると作成に時間がかかるうえ、重要なポイントがわからなくなってしまいます。手順として共通する重要なフローを軸に、その行動がなぜ(Why)必要なのかを明確にしておくと、類似したケースが出てきたときの判断材料になり、応用力が高まります。

どのような形態がいいの?

手順書には、印刷して使う紙ベースのものと、スマートフォンやタブレット、パソコンなどで操作するデジタルベースのものがあります。

紙の場合は、特別な操作が不要で、書き込みがしやすく、停電や通信がない状態でも確実に参照できます。全体的な把握や俯瞰、一覧確認にも長けていて、貼り紙やカード、チェックシートなど、使い勝手に応じたかたちができる利点もあります。

デジタルの特長は検索のしやすさ、集計や分析の自動化や、参照リンク、動画や音声読み上げ、翻訳など多機能な活用が可能です。印刷・配布の時間が要らず、更新しやすいという特長もあります。

誰が何のために手順書を活用するのかによって組み合わせていくとよいでしょう。

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手順書はなぜ必要か

本当に使える手順書を作るため、手順書を活用するメリットをみていきながら、手順書をなぜ作る必要があるのか、目的を理解しておきましょう。

平常時の活用

手順書の活用としてまず考えられるのは、新しく採用した従業員のトレーニングです。中途採用も一般的になり、シフト勤務だと出社時間もまちまちです。毎回個別に説明していると、同じ説明を何度も繰り返さなければならず、教え方にムラが出てしまいます。手順書というベースがあれば、仕事をこなしながらのトレーニング(OJT)も容易です。

異動時の引き継ぎや定年後の再雇用でも、「わかっているつもり」「知っているはず」という思い違いを防ぐことができます。グループ全体で共通の手順書と現場別の手順書を組み合わせるとより効果的にノウハウが蓄積できるでしょう。

もう一つ、手順書を作成する際には業務内容や業務の流れを「見える化」することによってムダな作業や曖昧な作業が明らかになるメリットもあり、手順書をベースに業務の効率化やサービス向上を図るなどの改善にもつながります。

非常時の活用

手順書があると、突然の災害やトラブルが発生した場合などの非常時にも的確な判断や行動がとりやすくなります。

たとえば、突然人員が不足したときにも手順書があれば応援に駆けつけた従業員が参考にすることができ、管理職不在時に急なトラブルが発生した際も、手順書に行動のポイントが記載されていれば、ある程度判断して動けるようになり、組織として責任ある行動がとれるようになります。

手順書の作り方

動ける手順書をつくるには、前述の5W1Hを整理し、探しやすく読みやすい形、書き込みや記録しやすい形などに気をつけてまとめていくことが重要です。

手順書を作成するにあたって決めておくこと

業務手順書は、すべての従業員が理解し、活用することで効果を発揮します。このため、手順書を作成する際には、「誰の権限でその手順を決めているのか」「誰がその手順書を使うのか」を明らかにしておく必要があります。

まず、手順書を使う従業員の範囲と業務の範囲を決めましょう。対象となる従業員の職位が現場の担当者であれば細かなタスクの手順、管理職であれば大きな業務フローが中心といったように、職位によっても手順書の詳細さが異なります。

また、その手順書を活用することにより、業務がどのような状態になっていることを目指すのか、目的や目標をはっきりさせておきましょう。手順書に記載のない状況になったときでも応用させやすくなります。

次に、手順書を使うシーンを想定し、紙がよいのかデジタルアプリがよいのかなど形態を決め、おおまかな目次構成をつくりましょう。手順書の全体ボリュームと、いつまでに完成させてどのくらいの予算がつけられるのか、大きな見通しを立てます。また、手順書が形になってきたときの最終承認者を明確にしておくことも重要です。

手順書の具体的な作成方法

(1)役割分担の整理: はじめに、誰がどこまで何を行うのか、業務の目的を達するために必要な役割と業務範囲を整理します。

(2)業務フローの整理: 役割別に業務の流れを整理します。大きな流れとなる軸を決めてから個別に業務を深堀りする方法と、実際に行っている業務を洗い出してから骨組みとなるフローを整理する方法とがあります。業務の内容によって整理しやすい方法で始めるとよいでしょう。実際の行動には時間の流れがあるため、時間軸で考えると整理しやすくなります。また、行動を起こすタイミングや判断基準を示しておくと使いやすいでしょう。

(3)個別タスクの整理: 業務フローがある程度整理されたら各フローの個別タスクを整理していきます。細かさは手順書の目的や従業員の職位によって異なりますが、手順書全体を通じて同じようなレベルにしましょう。部分的に詳細すぎるところは別の手順書として独立させて参照する形にすると使い勝手がよくなります。

(4) ツールの整理: 各タスクにチェックシート入力フォーム、参照資料、操作マニュアルなどのツールを紐付けしておくと使い勝手がよくなります。

手順書を現場で定着させるコツ

手順書は作っただけでは活用されません。手順書を確認しながら動くことに慣れるための機会をつくる必要があります。

現場でカスタマイズできる余地を残す

手順書を細かなところまで作り込みすぎると従業員が自ら考えながら行動する力を奪ってしまいます。業務の基本を整理することで現場の自由な工夫がしやすくなることも伝え、現場目線でのカスタマイズを従業員自身でやってもらいましょう。業務へのモチベーションを高める効果も期待できます。

ただし、現場で自由に変えてよいところと組織として統一させたままにするところは明確にしておきます。

定期的に更新するしくみをつくる

業務内容の具体的なノウハウは、社会状況や顧客の動向によって変化します。手順書に固執してお客様への対応が遅れては本末転倒です。定期的に手順書を見直すしくみが必要です。現場は頻繁に変更できるよう、たとえば毎月のミーティング時に手順書の見直しを盛り込むと実行性が上がります。全組織で統一した見直しは、年1回など、期ごとに行うとよいでしょう。

手順書の活用に慣れる機会を作る

絵に描いた餅にならないようにするには、実際に手順書どおりに使って見直しを図る必要があります。業務に慣れた従業員も含め、読み上げ確認などを行って手順書の内容と実際の行動にずれがないかを確認するとよいでしょう。手順書を使い、トラブル状況を想定したシミュレーション訓練を行うこともおすすめです。緊張感も出て、重要な業務が何か、どのように対応するとよいかなどを自ら考える機会にもなります。

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執筆は2020年8月20日時点の情報を参照しています。
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