タッチ決済の国際基準とされているのは、NFC(Near Field Communication)と呼ばれる非接触のデータ通信技術です。頭文字をとっているNear Field Communicationは、数センチほどの近距離でカード、または対応機器をかざすとデータの通信ができる「近距離無線通信規格」を意味します。NFCは「NFC Type-A」、「NFC Type-B」そして「Felica(NFC Type-F)」の大きく三つに分かれており、タッチ決済はもちろんのこと、カードキーや証明書などにも採用されています。
なお、タッチ決済においては「NFC Type-A」と「NFC Type-B」の両方に対応する「NFC Type A/B」と「Felica(NFC Type-F)」の二つが使用されています。
「あまり見かけたことがない」と思う人もいるかもしれませんが、マクドナルドやローソン、TSUTAYAなどがNFC Type A/Bに対応しています。NFC Type A/Bが広く普及している海外に比べると加盟店数はまだ少ないですが、訪日観光客の増加が予想される東京大会に向けてさらなる拡大が見込まれます。
2. FeliCa(NFC Type-F)
FeliCaは、ソニーが日本で開発したType-Fとしても知られる非接触型ICカード技術です。名称には至福や歓喜を意味する「Felicity」と「Card」の二つの単語を組み合わせており、「至福をもたらすカード」という意味合いを持つそうです。NFC Type A/Bに比べて通信速度が2倍近く速いことから、国内ではFeliCaが広く採用されています。しかしながら海外ではNFC Type A/Bが一般的とされており、FeliCaはほとんど採用されていないのが現状です。
代表的な導入例としてあるのが、国内初のタッチ決済となったEdy(現在は楽天Edy)とSuicaです。そのほかにもFeliCaチップを搭載しているカードや機器であれば、専用リーダーとの通信が可能です。FeliCaはNFC Type A/Bと同様、決済だけでなく、幅広い用途で使えるようになっています。
タッチ決済の勢いは加速するばかりで、次に、前述のNFC Type A/Bを搭載したクレジットカードのタッチ決済が世界に広まり始めました。Visaのタッチ決済に関しては、2011年頃からオーストラリアでの普及が広まり、いまでは世界200カ国で導入されています。ビザ・ワールドワイド・ジャパンの調査では、オーストラリアやイギリス、シンガポールやイタリアではクレジットカード利用の5割以上がタッチ決済だと発表されています。
携帯電話(スマートフォン)、ICカード、クレジットカード……これらに続いて、近年タッチ決済機能が使えるようになったのは、ウェアラブルデバイスです。日本では2016年に発売されたスマートフォン市場の代表格、Appleの「Apple Watch Series 2」にFeliCaが搭載され、Suicaの使用が可能となり、「Apple Watch Series 3」からはApple Payでの決済もできるようになりました。今ではFossilやGARMIN、Fitbitなどのスマートウォッチにも決済機能が備わり腕時計一つで決済が叶うようになっています。