海外では当たり前?タッチ決済における、世界の現状

▶この記事では、世界各国におけるタッチ(コンタクトレス)決済の現状について説明します。

日本では「あまり親しみがない」という人も少なくないものの、いまや海外では日常的な決済方法となりつつあるタッチ決済。デビットカード、またはクレジットカードを専用リーダーにかざすだけで支払いが完了するタッチ決済は、何をきっかけに各地で広まり、どのような場面で使われているのでしょうか。今回は「Tap and Go(タップ・アンド・ゴー)」や「Tap to Go(タップ・トゥー・ゴー)」としても親しまれているタッチ決済の海外の現状に迫ります。

タッチ決済が海外で広まる背景

タッチ決済が海外で広まる理由の一つとして考えられるのは、現金を使用しないキャッシュレスの比率の高さです。クレジットカードを含めて現金を使用しない支払いを主流とする国が増えており、なかにはキャッシュレス決済比率が現金での決済比率を上回る国もあります。

一般社団法人キャッシュレス推進協議会が2019年に発表している「キャッシュレス・ロードマップ 2019」を基に、各国のキャッシュレス比率を表で見ていきましょう。

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※2016年時点の決済比率です

このように各国のキャッシュレスへの取り組みが進むなか、キャッシュレス決済をより快適にしてくれるのが、タッチ決済です。決済額によっては暗証番号の入力も必要ないため、現金でのやりとりに比べてスピーディーに支払いを完了させることができます。タッチ決済のそもそもの定義についてはこちらで説明しているので、合わせてご確認ください。

タッチ決済には各主要国際ブランドが対応していますが、なかでもVisaのタッチ決済は、すでに200カ国で利用できるようになっています。さらには2020年までに世界で発行されているVisaカードの約半数がタッチ決済に対応すると予想されています。

また、欧州ではすでにイギリスやスペイン、イタリア、カナダ、そしてアジア・オセアニアではオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、台湾での対面決済のうち、約5割をタッチ決済が占めています。

参考:キャッシュレス・ロードマップ 2019(一般社団法人キャッシュレス推進協議会)

ここからは、普及が進んでいる国でタッチ決済が導入されたきっかけや、どのような場面でタッチ決済が使われているかについて見ていきましょう。

オーストラリア

スーパーでの導入が火付けに

RFi Groupの2016年の調査によると、世界でタッチ決済がもっとも利用されているのは、オーストラリアだそうです。Australian Payments Councilの2019年に発表した資料では、消費者の82%が「最低週1回はタッチ決済を使う」と回答しています。

このようにオーストラリア内で広く親しまれているタッチ決済が広がり始めたのは、2011年以降。国内の2大スーパーマーケットとして知られるColesとWoolworthsがタッチ決済の導入に踏み込んだことが大きな起因として挙げられています。

暗証番号の入力なしに決済できる上限が100ドルに定められていることもあり、タッチ決済が好まれるのは、リーズナブルな価格で済ませられる食事の場面のようです。オーストラリアの4大銀行の一つであるウエストパック銀行が2017年に行った調査によると、タッチ決済の比率はファストフード飲食店で98%、通常のレストランで96%、スーパーで93%、と食に関連する決済は全て9割を超える利用率であることが発表されています。

また、ニューサウスウェールズ州の交通機関(Transport for NSW)でもタッチ決済が主流となっており、地下鉄や電車だけでなくフェリー、そして2019年8月からはバスでの利用も可能になっています。

参考:
Australian Payments Council 2019 Consultation(Australian Payments Council)
Latest data shows contactless payments approach saturation point(Westpac Banking Corporation)
MEDIA RELEASE: Aussies are global leaders in contactless card payments(RFi Group)

ヨーロッパ

【イギリス】2012年のロンドン大会をきっかけに利用シーンが拡大

イギリスでタッチ決済が広まるきっかけとなったのは、2012年のロンドン五輪。会場内でのキャッシュレス決済が全てVisaカードと、VisaのpayWaveによるタッチ決済とされ、五輪をきっかけにバスや電車、タクシーなどの交通機関にも導入されました。

Evening Standard紙によると、2018年の時点で、ロンドンの交通機関の乗り降りの約半分がタッチ決済で支払われているそうです。さらに乗車賃を現金で支払う選択肢がある日本とは一変、ロンドンのバスは2014年夏以降キャッシュフリーとなり現金の取り扱いをしていません。このような動向もタッチ決済に拍車をかけたと考えられます。

英国カード協会の統計によると、2016年時点で全国のうち62%の店舗がタッチ決済を導入しており、タッチ決済は全決済のうち22%を占めています。

参考:
Half of all London Tube journeys are now made using contactless payments(2018年4月24日、Evening Standard)
キャッシュレス・ロードマップ2019(一般社団法人キャッシュレス推進協議会)

カナダ

クレジットカードの対面決済のうち、約5割がタッチ決済

カナダでタッチ決済が広まり始めたのは、2014年頃です。2014年10月17日以降、事業で新たなPOSレジを導入する、あるいはPOSレジを最新のものに切り替える場合、タッチ決済の対応端末を導入することが国全体で義務付けられたことが大きく影響していると考えられます。

2016年時点では主要小売店の76%がタッチ決済対応端末を導入していると発表されており、カナダの決済代行会社であるMonerisの調査によると、2019年4月から6月で発生したクレジットカード決済のうち52.5%がタッチ決済であることがわかっています。

参考:
Q2 2019 Moneris Metrics (Moneris)
‘Tap and go’ credit card purchases are surging in Canada(2015年10月29日、Global News)
An Overview of Contactless Payment Benefits and Worldwide Deployments (Smart Payment Association)

アジア

タッチ決済対応が進んでいるのは、シンガポールと韓国

アジアではシンガポールが2019年に交通機関でのタッチ決済を開始しており、同年3月に導入されたMastercardに加えて、6月にはVisaでのタッチ決済も可能となりました。2019年時点では、全国でのVisaの対面決済のうち、8割をタッチ決済が占めていたそうです。

参考:Visa contactless cards can be used to pay train, bus fares from June 6(2019年5月16日、The Strait Times)

一方でキャッシュレス比率がもっとも高い韓国は、クレジットカードでのタッチ決済が普及している他国とは異なり、NFC Type A/B規格を採用した事前にチャージをして使うICカード「T-moneyカード」でのタッチ決済が親しまれています。

このように、キャッシュレスへの取り組みが各国で進んでおり、その一つの手段であるタッチ決済が導入される場面も少しずつ増えています。以前は、海外旅行前に小切手や現地の通貨を用意するため銀行に立ち寄る必要がありましたが、行き先によってはクレジットカード一つで移動から食事、買い物が完結するようになりつつあります。なかでもスウェーデンは2023年には完全にキャッシュレスになると予想されており、シンガポールは2025年までに国全体をチェック(小切手)フリーにすることを掲げています。このような流れもあることから、今後海外旅行に出かける際には旅行先のキャッシュレス事情を把握しておくと、現地での決済がより円滑に進むかもしれません。

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今回はタッチ決済の世界の動向についてカバーしてきましたが、タッチ決済において日本国内ではどのような動きが見られているのでしょうか。次回は日本でのタッチ決済の現状に迫ります。

続けて読もう!「海外との違いを知ろう!国内でのタッチ決済の今と未来

▶︎タッチ決済については、以下の記事でも詳しく説明しています。

(1) タッチ決済とは?歴史と成り立ちを知ろう!
(2) 海外では当たり前?タッチ決済における、世界の現状
NEXT▶︎(3) 海外との違いを知ろう!国内でのタッチ決済の今と未来
(4) 今後の端末選びには「タッチ決済対応」が肝?タッチ決済の決済端末3社を比較!