法人といえば、株式会社や有限会社をイメージする人が多いのではないでしょうか。他にも、合同会社という形があります。
起業や法人成りを目指しているなら、合同会社についても知っておくことをおすすめします。今回は、合同会社の特徴、設立のメリット・デメリット、設立の手順などについて詳しく説明します。
合同会社とは
合同会社は、2006年に施行された新会社法で導入された比較的新しい法人のかたちです。日本版LLC(Limited Liability Company)とも呼ばれています。
合同会社の特徴は、会社の出資者と経営者が一致する点です。社員が出資者であり、負債などが発生したときは出資した範囲で責任を負います。責任の範囲が限られているので、有限責任社員と呼ばれています。反対に無限に責任を負う場合は、無限責任社員と呼ばれ、時には自分の資産を切り崩して責任を果たす必要があり、リスクが大きい制度といえます。
また、出資額に関係なく利益の配分について自由に定められる点も特徴といえます。
参考:Q0523.有限責任と無限責任について教えてください。(中小企業ビジネス支援サイト)
株式会社との違い
合同会社が「出資者=経営者」であるのに対し、株式会社は経営者と出資者が異なります。出資者はいわゆる株主のことで、株主総会で取締役を選出して経営を委任し、間接的に事業をコントロールします。有限責任であり、株を発行することでより多くの資金を調達できるなどのメリットがあります。反面、意思決定には株主の合意が必要なため、スピーディーな経営が難しいというデメリットもあります。
合同会社は出資者と経営者が同一であるため、柔軟な意思決定ができる点がメリットです。
合同会社のメリット
東京商工リサーチによる調査だと、2017年に新設された法人のうち合同会社が初めて全体の2割超を占めました。具体的にどのような点が魅力的なのか、みていきましょう。
参考:2017年「全国新設法人動向」調査(東京商工リサーチ)
一つ目は、設立にかかるコストが低いことです。会社設立時の登記の際には、登録免許税の納付が求められます。株式会社の場合は、登録免許税が最低15万円かかりますが、合同会社は最低6万円となっています。また、社内の法律ともいえる定款は、株式会社では公証役場での定款の認証が必要ですが、合同会社は認証の必要がありません。認証は1件あたり5万円程度の手数料がかかるため、合同会社の方が低コストといえます。
二つ目は、出資者全員の同意のもとで利益の配分を自由に決められることです。三つ目は、決算の公告義務や会計監査人の設置義務などがないことです。
合同会社のデメリット
前述のメリットがデメリットになることもあります。決算公告の義務がないことで、スピーディーな経営ができる半面、第三者によるチェック機能がないことがマイナスに働く可能性があります。また、利益配分を自由に決められることは、社員同士の対立を生むことも考えられます。
合同会社における出資者は経営者と同一であるため、退職時には出資額の払い戻しが必要となるケースがあります。多額の出資額を払い戻すことになれば、資本金が減少し、経営影響するリスクがあります。
参考:Q0532.持分会社の出資の払戻しとはどのような制度ですか?(中小企業ビジネス支援サイト)
合同会社設立の手順
設立にかかる主な費用と手続きを紹介します。
設立条件
社員 : (出資者)1名以上
資本金:社員(出資者)×1円以上
必要な費用
定款用の収入印紙代:40,000万円
※電子定款の場合は不要
登記手続きの際の登録免許税: 資本金の1,000分の7
※60,000円に満たないときは、申請件数1件につき60,000円
設立時にかかった費用は後に経費に算入できます。
手続き
・商号、事業目的などの基本事項を決める
・会社の印鑑を作成する
実印、銀行印、社印、ゴム印など
・定款を作成する
株式会社と異なり、定款は認証を受ける必要がありません。
・資本金の払込
代表者の口座に資本金を入金します。払込者の名前が確認できるように注意しましょう。
・登記書類の作成、提出
登記書類を作成し、法務局で登記を行います。
登記に必要な書類は以下のとおりです。
1, 登記申請書
2, 定款
3, 代表社員の就任承諾書
4, 資本金の払込証明書
開業の届け出
税務署や都道府県などに開業を届け出ます。
参考:
国税庁「印紙税額一覧表(平成30年4月1日以降適用分)」等を公表(国税庁)
商業・法人登記の申請書様式(法務局)
設立後の注意点
会社の設立登記を完了し、実際に事業を始めることになれば、法律や金銭面、経営上などさまざまな課題にぶつかる可能性があります。一人で解決しようとせずに、各分野の専門家に相談することも大切です。弁護士や税理士、社会保険労務士、司法書士、公認会計士など各分野の専門家のサポートを受け、円滑な事業経営を行いましょう。
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執筆は2018年12月14日時点の情報を参照しています。
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