海外観光客を効率的に引きつける、飲食店での集客法。東京大会に備えよう!

2021年の開催が予定されている東京大会。会場は東京に限らず札幌や仙台など各地に設けられ、日本の至るところが観戦客で賑わうと予想されています。多くの海外観光客が押し寄せるこの時期は、飲食店にとっては最高の集客チャンスともいえるでしょう。インバウンド対策はできていますか。

この記事では「まだあまり手がつけられていない」という飲食店舗の経営者に向けて、東京大会前に準備しておきたいこと、訪れた外国人に好印象を抱いてもらうコツを紹介します。

2018年には3,000万人超え!訪日観光客が飲食店で特に困っている場面とは

訪日観光客はここ数年で着々と増加しています。

日本政府観光局の調べによると、観光客の増加を目的としたプロモーション事業「ビジット・ジャパン」が開始された2003年には521万人だった訪日観光客が、2013年には初めて1,000万人を超え、2015年には1,974万人まで増加、さらに2018年には3,119万人まで達しています。同統計によれば訪日外国客のなかで最も多いのは、2018年時点で中国(26.9%)からの観光客、次いで韓国(24.2%)、台湾(15.3%)という結果になっています。また、欧州と北米からの観光客は11.7%の割合を占めています。

参考:
ビジット・ジャパン事業開始以降の訪日客数の推移(日本政府観光局)
インバウンド 訪日外国人動向(JTB総合研究所)

具体的な対策に踏み込む前に、まずは訪日観光客が日本の飲食店で経験する困りごとをみてみましょう。観光庁が5,332人の訪日観光客を対象に2016年に実施した調査によると、以下のような結果が出ています。

・施設等のスタッフとコミュニケーションがとれない(英語が通じない等)
▶︎全体のうち32.9%

・無料公衆無線LAN環境
▶︎全体のうち28.7%

・多言語表示の少なさ・わかりにくさ(観光案内板・地図等)
▶︎全体のうち23.6%

特にコミュニケーションと多言語表示においては、「特に困った場所」のなかで、「鉄道駅・ターミナル」や「美術館・博物館」「宿泊施設」などを抜いて「飲食・小売店」がトップを占めています。この統計を参考にしつつ、東京大会前に準備しておきたい六つのことをまとめました。

参考:「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に 関するアンケート」結果(国土交通省 観光庁)

1. 外国人にもわかりやすいメニューをつくる

前述の調査にもある通り、「従業員のコミュニケーション」は訪日観光客がよくぶつかる壁のようです。もちろん外国語がしゃべれる従業員を雇うに越したことはありませんが、人手不足が叫ばれる中では働いてくれる人を見つけるだけで一苦労かもしれません。そこで円滑なコミュニケーションを生む方法の一つとして、メニューの多言語化が挙げられます。以下が簡単なガイドラインです。

・日本語メニューとは別に英語と中国語のメニューを作成
▶︎アレルギー表記や、ベジタリアン仕様、ヴィーガン仕様、ハラル仕様なのかも記しましょう。記号やイラストを用いるとよりわかりやすいでしょう
・料理の写真を追加する
▶︎写真が追加できなければ、味や使用する食材などを文章で表すと丁寧でしょう

翻訳ツールには、「Google 翻訳」やメニュー翻訳に特化した「SmartMenubook」をはじめとする無料の翻訳ツールもあれば、ネイティブスタッフが翻訳を担当する「翻訳サービス.jp」などの有料サービスもあるので、予算に合わせて選ぶといいでしょう。

注意書きも多言語化
さらに、「当店は前払い制です」「クレジットカードをご利用いただけます」「関係者以外立入禁止」「トイレットペーパー以外のものは流さないでください」などの注意書きが店内にある場合は、多言語の表記に変える、イラストを加えるなどすると、お客様にも伝わりやすくなるでしょう。中国語のPOPづくりにはこちらのPDFを役立ててみましょう。

2. ベジタリアン・ヴィーガンに対応するメニューを開発してみる

日本ではまだ広く親しまれていませんが、海外では給食でもベジタリアンのオプションがあったり、お肉を主に扱うお店でもベジタリアン向けの料理が用意されたり、とベジタリアンやヴィーガンに配慮することが一般的な地域もあります。2019年のトレンドを予想するThe Economist誌の記事によると、アメリカでは2015年時点でベジタリアンとヴィーガンを合わせて人口のほんの3.8%だったところ、記事執筆時点ではミレニアル世代の4分の1が「ベジタリアン、またはヴィーガンである」と回答しているそうで、菜食主義の人口は増加傾向にあるようです。

参考:The year of the vegan (The Economist)

海外観光客を引きつける方法の一つとして、今からベジタリアン・ヴィーガン向けのメニューを練ってみてはいかがでしょうか。「ベジタリアン・ヴィーガン向けのメニューあり」などと書かれたPOPを店先に貼り出しておけば、来店の決め手にもなるかもしれません。ベジタリアンとヴィーガンの基準に関しては、NPO法人日本ベジタリアン協会が公開している資料も参考にしてみてください。

3. 海外の飲食系サイトに店舗情報を掲載する

日本でいう「食べログ」や「ぐるなび」にあたる海外の飲食店紹介サイトに情報を掲載し、海外観光客に店舗を見つけてもらいやすくするのも、集客には大切な対策でしょう。代表的なものとしてあるのは、「TripAdvisor」や中国の「大衆点評」でしょう。

たとえばTripAdvisorは、早ければ数分で掲載の申請ができるので、正確な営業時間や住所などを登録して、海外観光客に存在をアピールしましょう。

【プラスアルファの対策】Google マップの情報が正しいかを確かめる

Google マップに飲食店舗の位置登録はできていますか。

もしかしたら「登録作業は行なっていないけれど、店舗の位置がすでにGoogle マップに表示される」という飲食店舗も多いかもしれません。実は、Google マップは自ら住所登録をしなくてもGoogleの自動登録や、第三者からの登録により簡単に登録できてしまう仕組みになっています。しかしながら情報が正確に登録されていないことも多く、お客様がGoogle マップの情報をもとに店に向かったところ、「営業時間外だった」というケースもなきにしもあらずのようです。

「訪れてみたい!」と思う訪日観光客に正しい情報を提供するためにも、「Google マイビジネス」にビジネスオーナーとして登録し、正しい営業時間や定休日などを掲載しましょう。登録申請は数分で行なえます。

4. Wi-Fi環境を整える

観光庁がまとめた調査から、訪日観光客が二番目に困っているのは「無料公衆無線LAN環境」であることがわかりました。

参考:「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に 関するアンケート」結果(国土交通省 観光庁)

Wi-Fi環境を整えるには毎月コストがかかることになりますが、Wi-Fiを提供することは集客アップにつながる一つの対策でもあります。なかには初期費用無料、かつ3,000円ほどの月額費用で50台ほどを同時に接続できるルーターもあるので、予算に合わせたものを見つけてみましょう。

ただWi-Fiを用意しても、通信速度が遅いと、逆にお客様をがっかりさせてしまう可能性があるので注意しましょう。訪れたお客様が円滑にインターネットに接続できるよう、店舗のWi-Fiルーターを選ぶ際には下記の点を押さえておきましょう。

1, 通信速度
▶︎「3x3」「4x4」などストリーム数が高いものを選びましょう
2, 電波の届く範囲
▶︎障害物に邪魔されにくい「2.4GHz」と、周りに電波が飛んでいても安定しやすい「5GHz」の両方を飛ばせるルーターであると接続もスムーズでしょう
3, 同時に利用できる台数
▶︎席数分の台数を接続できるルーターであると安心でしょう
4, 安全性
▶︎最新のセキュリティー機能が搭載されているルーターで不正アクセスなどを防止しましょう

なお、店舗のドアなどに貼れるJapan.Free Wi-Fiのシンボルマークを利用するには、観光庁への申請が必要です。申請する時間が作れない場合にも、入り口に「Free Wi-Fi!(Wi-Fi無料で使えます)」などと書いたPOPを飾り、Wi-Fiが使用できることをアピールしましょう。

5. クレジットカード決済に対応する

多くの先進国でキャッシュレス化が進んでいることは「意外と知らない、世界のキャッシュレス事情」でも紹介しました。

このような背景から、レストラン選びには「クレジットカードの取り扱い有無」を重要視する訪日観光客も少なくないかもしれません。

さらに、日本円の入手が難しいことも、クレジットカードの使用を促進しているのかもしれません。ビザ・ワールドワイド・ジャパンの2015年の調査結果からは、「支払いと日本円の入手」が交通アクセスや通信環境、食事、コミュニケーションといった滞在に関わる項目のうち、最も悪い評価とされています。そのうえ、観光庁の調査からも不満に感じた点として「ATMがどこにあるのかを見つけにくい」「外国のカードから現金を引き出せるATMが少ない」「クレジットカードが利用できるATMが少ない。場所もわからない」などが挙げられています。

参考:
訪日外国人による、東京の魅力と課題を徹底分析(2015年1月7日、ビザ・ワールドワイド・ジャパン)
外国人旅行者に対するアンケート調査結果について(国土交通省 観光庁)

クレジットカードが使えないことを理由に行き先の候補から外されてしまわないためにも、クレジットカードへの対応はインバウンド対策には欠かせないといえるでしょう。最近ではスマートフォンやタブレット端末につなげて使えるモバイル決済端末も多く誕生しています。たとえばSquareであれば、初期費用は端末代の7,980円のみ。POSレジアプリはアカウントを作成するだけで、無料で使用ができます。

もう一つ重要なのは「We accept credit cards(クレジットカード使えます)」などと書かれたステッカーやPOPを店先に貼り出しておくことです。ビザ・ワールドワイド・ジャパンが行なった調査によると、「店先にクレジットカードが利用可能であると書かれていない飲食店では、クレジットカードが使えないと思い込んでいた」と回答する人が6割にも及んだそうです。このような思い込みを生まないためにも、店先の目立つところに「クレジットカード利用可」のメッセージを飾り、安心して入店してもらいましょう。

参考:おもてなし「ニッポンのココが残念」 外国人100人に聞く(2014年2月16日、NIKKEI STYLE)

海外観光客に好印象を抱いてもらうコツ

海外旅行客の心を掴むような工夫は試みていますか。ここでは、訪日観光客に好印象を抱いてもらうためにできることを三つ紹介します。

1. 食べ方を丁寧に教える

日経MJは、100人の訪日外国人を対象に行なった調査を基に「訪日外国人によるおもてなし不満ランキング」を2014年に発表しています。

参考:おもてなし「ニッポンのココが残念」 外国人100人に聞く(2014年2月16日、NIKKEI STYLE)

ここで4位にランクインしたのは「飲食店で食べ方を教えてくれない」でした。2013年に「ユネスコ無形文化遺産」に登録されている和食ですが、食べ方を知らない訪日観光客も少なくなく、なかには「卵をとかずに白身に浸けてすき焼きを食べた」「刺身にソースをつけた」などの行動に出る人もいたそうです。結果として「楽しみにしていた和食があまりおいしくなかった」という感想があがることもあるそうです。

参考:「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました!(農林水産省)

提供する食事をおいしく食べてもらえるよう、食べ方がわかりにくい食事に関しては身振り手振りで説明をする、あるいは食べ方を記したパンフレットなどをあらかじめ作成しておく、などの対策を打つことでお客様の印象に残る食体験へと昇華させましょう。

2. フレンドリーな店づくりを心がける

前述の調査では3位に「飲食店の食券システムがわからない」がランクインしました。そんななか、従業員は気にするそぶりも見せず、ロボットのように仕事を進めていた様子がさらに不満を募らせたという声も上がりました。たとえ英語がしゃべれなくても、説明をしようとする姿勢や、助けようとする姿勢が大切だといえるでしょう。

参考:おもてなし「ニッポンのココが残念」 外国人100人に聞く(2014年2月16日、NIKKEI STYLE)

3. 周辺の観光地や地域の食などをおすすめしてみる

英会話レッスンを展開する企業が飲食店のサービスについて訪日観光客を対象に調査を行なったところ 「店員からおすすめを提案されるのが好き」と回答した人が88% いることがわかりました。理由としては下記が挙げられています。

・観光で訪れた町ではわからないことが多いから
・おいしいものを教えてもらうのはありがたい

参考:なぜ外国人観光客は 言葉の通じない日本の飲食店で「自国の飲食店よりも接客の質が高い」と感じるのか?(2018年08月30日、訪日ラボ)

たとえば会計時に「この辺りは◯◯がおいしいですよ。もう食べられましたか?(The 「料理名」is great here. Have you tried it yet?)」「ここの近くだと、ここが地元民に有名ですよ。もう行かれましたか?(The locals here love going to the「観光名所の名前」. Have you been yet?)」などと会話してみるといいでしょう。英語に不安がある場合は、地域のおすすめスポットが掲載されている英語の雑誌などを店内に用意し、一押しの場所を指しながら身振り手振りで相手におすすめしてみるのも一つの手でしょう。熱心に伝えようとしている姿勢が、訪日観光客に好印象を与えるかもしれません。海外観光客によく読まれている日本のガイドブックには「Lonely Planet」や「Monocle」などが挙げられます。

インバウンド対策にまだ着手できていない飲食店舗にとって、2020年の東京大会は対策を試みる絶好のチャンスです。立ち寄りたい店づくりや心に残る体験を提供するためにも、今回紹介したヒントをぜひ参考にしてみてください。

▶︎▶︎▶︎小売店でのインバウンド対策

(1)飲食店ができるインバウンド対策
(2)小売店ができるインバウンド対策
(3)宿泊施設ができるインバウンド対策
(4)地方自治体ができるインバウンド対策

執筆は2019年10月25日時点の情報を参照しています。2020年2月25日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash