潤沢な資金が用意しづらい場面が多い中小企業や個人事業において、有用な資金調達手段の一つとして補助金や助成金が挙げられます。
今回は、経営者として知っておきたい補助金や助成金についての基本情報とともに、主だった補助金の内容や最新の動向について紹介します。
補助金・助成金とは
補助金や助成金は、国や自治体が産業振興や雇用の推進、地域活性化などに貢献する事業に対して交付する資金のことを指します。
補助金は、主に経済産業省や自治体が創業や事業の推進などのために支給するものです。助成金と比べると額が大きいことが多い点が魅力ですが、審査を通らないと受給できません。
一方、助成金は、主に厚生労働省が雇用の促進や人材の育成のために支給するもので、補助金と比べて少額になることが多いですが、条件に適合すれば受給可能となっています。
申請に関しては、補助金の場合は募集期間が限定されていることがほとんどですが、助成金の場合は通年受け付けていることが多いという特色があります。補助金と助成金、いずれも融資と違って返済を行う必要はありません。
政府のおもな補助金・助成金
経済産業省・中小企業庁
経済産業省と中小企業庁では、地域の活性化や起業の促進による経済振興を目的とした補助金を公募しています。小規模事業者向けの補助金も充実しているので、起業を考えている人にもオススメです。最新の情報を中小企業庁のウェブサイトでこまめにチェックしておきましょう。
参考:平成31年度予算関連事業/平成30年度補正予算関連事業(中小企業庁)
事業継承補助金
事業継承をきっかけに、経営革新や事業転換にチャレンジする中小企業を応援する補助金です。2018年度からは事業継承の方法によってⅠ型とⅡ型の2タイプに分かれ、Ⅰ型は後継者承継支援型の「経営者交代タイプ」、Ⅱ型は事業再編・事業統合支援型の「M&Aタイプ」となっています。
・Ⅰ型(経営者交代タイプ)
補助率:2/3以内(個人事業主や小規模事業者が対象)、1/2以内(前記以外の事業者が対象)
補助上限:最大200万円(事業所の廃止、既存事業の廃止・集約を伴う場合は、廃業費用として最大300万円上乗せ)
公募期間は2018年の実績では一次募集が4月27日から6月8日(郵送、電子申請とも)、二次募集が7月3日から8月17日(郵送の場合)、8月18日(電子申請の場合)、三次募集が9月3日から9月26日(郵送のみ)となっています。
・Ⅱ型(M&Aタイプ)
補助率:2/3以内(個人事業主や小規模事業者が対象)、1/2以内(前記以外の事業者が対象)
補助上限:最大600万円(事業所の廃止、既存事業の廃止・集約を伴う場合は、廃業費用として最大600万円上乗せ)
公募期間は2018年の実績では一次募集が7月3日から8月17日(郵送の場合)、8月18日(電子申請の場合)、二次募集が9月3日から9月26日(郵送のみ)となっています。
参考:事業承継補助金(平成29年度補正)(事業承継補助金事務局)
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者の事業の持続的発展を後押しするための補助金で、小規模事業者が商工会・商工会議所の支援を受けて作成した経営計画に沿って取り組む販路開拓などを支援するものです。ホームページの制作や看板、チラシの作成など、事業を立ち上げたあとの新規顧客の開拓に要した費用の一部に充てることができます。
補助率:補助対象経費の2/3以内
補助上限額: 50万円
100万円(賃上げ、海外展開、買物弱者対策)
500万円(複数の事業者が連携した共同事業)
公募期間は2018年の実績では3月9日から5月18日となっています。
参考:平成29年度補正予算「小規模事業者持続化補助金(小規模事業者支援パッケージ事業)」の公募を開始します(中小企業庁)
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
中小企業・小規模事業者による生産性向上に貢献する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資などの一部を支援する補助金です。
補助率:1/2から2/3以内
補助上限額: 原則1,000万円
補助率や補助上限額は支援対象となる事業によって異なります。
2019年の募集から早期審査プロセス(ファストトラック)の導入や申請書類の簡素化、Fintechとの連携など運用面の改善が行われています。2019年度の公募期間ですが、第一次の締め切りは過ぎており、第二次の締め切りは5月8日となっています。
参考:平成30年度補正「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の公募について(全国中小企業団体中央会)
IT導入補助金
IT導入補助金は、IT導入補助金ポータルサイトによると「自社の置かれた環境から強み・弱みを認識、分析し、把握した経営課題や需要に合ったITツールを導入することで、業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図っていただくことを目的」とした、中小企業や小規模事業者向けの補助金です。
業種ごとに対象となる業者の資本金や従業員数に規定があるので、詳細はIT導入補助金のウェブサイトで確認してみてください。
補助率:1/2以内
補助上限額:50万円
補助下限額:15万円
公募期間は2018年の実績では一次公募が4月20日から6月7日、二次公募が6月20日から8月3日、三次公募が9月12日から12月18日となっています。
参考:IT導入補助金ポータルサイト(一般社団法人 サービスデザイン推進協議会)
厚生労働省
厚生労働省では、働く環境の整備や職業の安定、人材育成の推進を目的とした、さまざまな助成金を提供しています。これから従業員を雇う場合、増やそうと計画している場合はぜひチェックしてください。
トライアル雇用助成金
職業経験、技能、知識不足などによって安定した就職が難しい求職者を試行的に雇用する事業主に向けた助成金で、最長3カ月支給されます。事前にハローワークや地方運輸局、職業紹介事業者にトライアル雇用求人を提出する必要があります。
助成金額:最大5万円(母子家庭の母または父子家庭の父の場合)
最大4万円(上記以外の場合)
参考:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)(厚生労働省)
キャリアアップ助成金
非正規雇用労働者の正社員化など、企業内での処遇改善やキャリアアップを促進するための助成金です。目的に応じて七つのコースがあり、事前に「キャリアアップ計画」などを作成し、提出する必要があります。
雇用調整助成金
経済的な理由などで、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員を解雇せずに、休業・教育訓練または出向などの一時的な雇用調整を実施して従業員の雇用を維持した場合を対象とした助成金です。
助成金額(中小企業の場合)
休業の場合:休業手当の2/3(上限8,250円)
教育訓練を実施した場合:賃金相当額の2/3+1,200円(一人1日当たり)
出向を行った場合:出向元事業主の負担額の2/3
地方自治体の補助金・助成金
地方自治体や公益財団法人でも数多くの補助金や助成金が用意されています。事業を行っている地域や適用される内容などが多岐にわたるので、次に挙げるウェブサイトを利用して目的に合ったものをみつけてください。
J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト(中小機構)
中小企業基盤整備機構が開設している中小企業向けのビジネス支援サイトです。自治体による助成制度の検索サービスが提供されています。
ミラサポ 未来の企業★応援サイト(中小企業庁)
中小企業庁からの委託によって運営されている、中小企業や小規模事業者のサポートサイトです。サイト内にある「施策マップ」のサービスを利用して、自治体が提供している施策の検索ができます。
国や自治体から、数多く提供されている補助金や助成金による支援ですが、ほとんどの場合、事後に振り込まれることが多いので、タイミングに注意して資金繰りを行い、利用するようにしてください。
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執筆は2019年3月17日時点の情報を参照しています。
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