正確な在庫数を把握するために行う、棚卸し作業。小売業、製造業、サービス業など、幅広い業種にとって自社の在庫や資産を理解するために重要な作業である一方、時間がかかるため1回の棚卸しだけでも一苦労です。
今回は、年末や決算期を迎える前に知っておきたい棚卸し作業を効率的に進めるためのポイントについて説明します。
棚卸しの種類
棚卸しを簡単にいうと、今持っている商品や原材料、資産在庫を把握することです。棚卸しには「帳簿棚卸」と「実地棚卸」の2種類があります。
帳簿棚卸とは、帳簿に記録する形で在庫の管理を行うことです。入出庫が発生した際、作業を行った人が管理表に入出庫の数字を記入することで、商品の在庫を把握します。毎回全商品を数えて在庫を管理しようとすると大きな労力が必要ですが、帳簿棚卸であれば、その都度記録すればいいので時間がかからないのが一番の特徴です。
ただし、あくまでも入庫ベース、出庫ベースでのカウントとなり、実際にカウントすると帳簿棚卸と数が異なる事態が発生する可能性もあるため注意が必要です。
実地棚卸は、実際に店舗や倉庫にある在庫をすべてカウントするというものです。いくら帳簿棚卸で在庫をカウントしていたとしても、差異が出てくることがあります。そのため、最終的には実地棚卸によって正確な数字を把握します。
ただ、いつも実地棚卸を行うのは時間もコストもかかってしまいます。普段は帳簿棚卸でおおよその数字を把握し、期末など一定のタイミングで実地棚卸によって正確な数字を把握するなど、それぞれを使い分けることが大切です。
棚卸し作業の基本的な手順
実地棚卸をする場合のおおまかな手順について紹介します。
最初の準備内容としては以下のようなものが挙げられます。
・商品別の管理表
・倉庫内の見取り図の準備
・倉庫の整理整頓
・タイムスケジュール、配置の決定
まず、作業時に在庫記録を記入する管理表を用意します。管理表に記載する項目としては、「商品名」「単価」「個数」「合計金額」などが挙げられます。
次に、倉庫内のどの場所にどの商品があるのか、見取り図を作成します。また、倉庫によっては、商品の置き場がバラバラになっている可能性もあるため、事前に整理整頓を行っておきましょう。
そして、当日のタイムスケジュールと、どこに誰を何人配置するのかといった人員配置、棚卸の順番などを考えます。また、棚卸し当日の入出庫商品の扱いに関しても事前に確認しておくのを忘れないでください。
当日は抜け漏れがないように2人1組でチェックするようにしましょう。すべての確認作業が終わったら管理表を集めて集計作業です。集計の結果、帳簿棚卸と同じ数値が出れば問題ありませんが、差異があった場合は理由を調べなければいけません。
注意点
棚卸し作業はどうしても作業量が膨大になってしまうため、ちょっとしたミスが大きな問題になりかねません。続いては作業を行う際の注意点について説明します。
主な注意点としては以下のようなものが考えられます。
・棚卸し手順を明確にする
・カウントのダブルチェック
・時間の管理
棚卸し作業を行うにあたっては手順を明確に周知しておく必要があります。もし手順を認識しておらず、間違った方法で確認をしてしまうと、最悪の場合作業のやり直しといった事態にもなりかねません。
また、2人1組でチェックをしたとしても間違いが発生する可能性はあります。そのため、できれば別のペアが再度チェックするダブルチェック体制で臨む方がミスを防ぐことができます。
そして、作業の時間を管理することも大切です。場合によっては入出庫に影響が出る可能性もあります。万が一予定時間を過ぎても作業が終わらないとなると、お店の営業や工場の稼働などにも影響が広がってしまいます。また、入出庫作業のない深夜などに行っている場合は人件費が高くなるため、やはり予定を過ぎてしまうことはコストの面を考えると望ましいことではありません。
効率化するにあたってのポイント
棚卸し作業をミスなく、より効率的に行うにはどうすればいいのでしょうか、最後に効率化のためのポイントについて紹介します。
自社に適した方法を選択する
棚卸しには主に二つの方法があります。一つは「一斉棚卸」と呼ばれるもので、一度の棚卸しですべての在庫をカウントするというものです。一斉に行うため作業効率はいいですが、在庫が多いと、1日では作業が終わらず数日間にわたって行う、休日出勤して行うといったことになる可能性があります。
もう一つは「循環棚卸」と呼ばれる方法で、商品ごと、倉庫のエリアごとなど小分けにして行います。この方法だと在庫の数が多くても1回の作業にかかる時間はそれほど長くはなりません。一方で、すべての棚卸が終わるまでには時間がかかってしまいます。
ツールの検討
棚卸しというとすべての商品を一つひとつ手作業で数えるイメージがあるかもしれません。しかし、商品をカウントするためのツールを活用する方法もあります。
たとえば、ハンディターミナルを用いて商品を管理するバーコードをスキャンする方法であれば、スキャンしたデータが自動的にパソコンに送られるため、集計作業が楽になります。また、近年ではICタグで商品を管理するケースもあり、商品をいちいちスキャンしたり、動かしたりすることなく、一括で商品データを読み込むことができます。
また、棚卸しを専門としている業者に外注することも一つの方法です。
日頃の準備
日頃からの準備も大切です。商品を整理整頓して棚卸し時にわかりやすくしておく、帳簿棚卸をする際の記入間違い気をつける、など日々の行動の中から意識していくことが大切です。
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執筆は2018年12月3日時点の情報を参照しています。
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