著作権の理解は事業を展開する上で大切だとは分かっているが、どのような点を押さえておけばいいのか分からない人も多いのではないでしょうか。
今回は、経営者が知っておきたい著作権についての基礎知識、押さえておくべきポイントなどを説明します。
著作権とは
概要
著作権とは、知的財産権のひとつで、著作物に関して発生する権利のことをいいます。著作物は、思想または感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものがあてはまります。
支分権
著作権は、次の12種類の権利(支分権)に細分化されています。
・複製権
複製というのは、いわゆるコピーのことです。著作権者は、著作物を複製する権利を専有しています。つまり、第三者に著作物を無断で複製されることはありません。
・上演権および演奏権
著作権者は、公衆に直接見聞きしてもらうことを目的に、上演および演奏する権利を専有しています。この権利は、たとえば演劇、音楽などを第三者によって無断で公に上演、演奏されることはないことを意味します。
・上映権
著作権者は、著作物を公に上映する権利を専有しています。たとえば、映画などを第三者が無断で公に上映することはできません。
・公衆送信権
著作権者は、著作物について公衆送信を行う権利を専有しています。公衆送信には、テレビやラジオ、ケーブルテレビ、インターネットなどさまざまなメディアが含まれています。たとえば、写真やイラストなどを第三者が無断でホームページに掲載することはできません。
・公衆伝達権
公衆送信される著作物を、テレビ、ラジオなどの受信装置を用いて公に伝達する権利です。
・口述権
著作物の内容を、公に口述する権利です。たとえば、小説などを第三者によって無断で公に朗読などされることはないことを意味します。
・展示権
美術の著作物、またはまだ発行されていない写真の著作物について、原作品で展示する権利です。この権利は、第三者によって無断で、写真や美術の著作物を展示されることはないことを意味します。
・譲渡権
映画の著作物を除き、著作物をその原作品または複製物の譲渡により公衆に提供する権利です。この権利は、第三者によって無断で、著作物をこうした形で譲渡されないことを意味します。
・貸与権
映画の著作物を除き、著作物を複製物の貸与により公衆に提供する権利です。この権利は、第三者によって無断で、著作物の複製物を貸与されないことを意味します。
・頒布権
映画の著作物について、複製物により頒布する権利です。頒布とは、複製物を公衆に譲渡し、または貸与することをいいます。この権利は、第三者によって無断で、映画の著作物を頒布されないことを意味します。
・翻訳権および翻案権
翻訳により、新たな著作物(二次的著作物)が生まれます。また、翻案は、編曲・変形・脚色といったことを指し、これらによっても、二次的著作物が生まれます。こうした二次的著作物を創作する権利は、著作権者が専有しており、第三者によって無断で二次的著作物を創作されることはありません。
・二次的著作物の利用権
二次的著作物がある場合、元の著作権者は二次的著作物の利用に関し、二次的著作物の著作権者と同等の権利を有しています。つまり、第三者によって無断で二次的著作物を利用されることはありません。
著作者人格権
著作権には、精神的、人格的な利益を保護するという面もあります。著作者の名誉や作品への思いを守る権利で、これを著作者人格権といいます。著作者だけが持つ権利であり、譲渡や相続はできません。著作者人格権は、「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」の3つに分けられます。
公表権:著作物を公表するかどうかということや、公表する場合に、その公表の方法や時期などを決定できる権利です。
氏名表示権:著作物に著作者の氏名を表示するかどうかということや、表示する場合は実名か別の名前にするかといったことを決められる権利です。
同一性保持権:著作者の意に反して著作物が無断で修正されない権利です。
著作権の保護期間
著作権が保護される期間には限りがあり、原則として、著作者の死後50年までとされています。著作権の種類によっては、例外もあります。
参考:著作権の保護期間はどれだけ?(公益社団法人著作権情報センター)
著作者の許諾なく著作物を利用できる場合の例
私的使用
家庭内など営利以外の目的のために使用する場合、著作者の許諾を得ずに著作物を複製することができます。この場合、複製だけでなく、翻訳その他の改変を加えることもできます。なお、映画館などで上映中の映画や、試写会で上映中の映画については、こうしたことは認められていません。
試験問題
採用試験などの問題として使用する場合、著作者の許諾を得ずに著作物を複製することや、インターネット上で試験を行う際に著作物を公衆送信することができます。また、翻訳することも可能です。ただし、著作権者に不当に経済的な不利益を及ぼすおそれがある場合は認められません。
引用
著作権法に定める引用に該当する場合は、著作者の許諾を得ずに著作物を利用することができます。引用に該当するためには、以下の要素を満たす必要があると考えられています。
1, 引用が公正な慣行に合致するものであること
2, 報道、批評、研究など引用の目的上正当な範囲内で行われること
3, 引用される部分が従、それ以外の部分が主という関係にあること
4, 出所を明示すること
これらの要素を満たすかどうかは、個々の著作物ごとに判断されます。そのため、どのような場合であれば満たすのか、また、その逆はどうかについては一概にはいえません。
ただし、たとえば3については、いわゆるコピーアンドペーストは引用に当たらないといえます。また、4については、「●●(著作物の名前)より」などと記載する必要があるということになります。
著作権侵害への対応
著作者の許諾が必要であるにもかかわらず許諾を得ないで利用したり、無断で複製されたものであると知りながらこれを頒布したりするなどの行為は、著作権の侵害となります。
民事上の請求
まず、侵害を受ける前、権利者は侵害行為をやめるように請求することができます。また、侵害を受けた後、権利者は損害賠償請求、不当に得た利益の返還請求、名誉回復などの措置を請求することも可能です。
刑罰
著作権侵害は犯罪でもあり、これに対しては刑罰が科されます。たとえば、著作権の侵害に対しては、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金などが定められています。
事業を展開するにあたり、著作権についての理解を深めることは重要です。不明な点や自信がない点がある場合は、弁護士などの専門家に確認するようにしましょう。
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執筆は2018年8月8日時点の情報を参照しています。
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