これまで飲食店の経営に興味がある方に向けて、飲食店オープンに必要な資格や届出についてや、店名の決め方について紹介をしてきましたが、今回は店舗づくりに役立つポイントを紹介します。
居抜き物件、既存の店舗をリノベーションしたい
居抜き物件の場合、前の店舗が飲食店ならそのまま内装や厨房設備、什器などを引き継ぐので、コストを抑えて飲食店を開店できることもあります。ただ、一方で以前の設備だとスペックが足りない、内装のコンセプトが合わないこともあります。また、既に飲食店を経営していて、既存店舗の内装やメニューを変えてリニューアルオープンしたいと考えている経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このような場合、まずは建築家や工務店などの専門業者に希望を伝え、現場調査を行い、設計プランと見積もりを出してもらった上で、予算と照らし合わせて実際にリノベーション工事を行うかどうか決断に踏み切ることが多いようです。
見積もりはできれば数社から取り、現場調査にも同行することをおすすめします。
見積もりの金額だけで業者を決めることもできますが、書類だけではわからない部分もあります。例えば、お店のコンセプトや経営者の想いをどれくらい理解しようと努力しているのか、無理のあるリクエストをした時に突っぱねることなく検討をしてくれるのかなど、設計者や工事担当者の姿勢も大切です。
なるべくコミュニケーションを取る機会を持ち、信頼して工事を任せることができるかどうかも判断材料の一つに入れるようにしましょう。
見積もりの見方
工事契約を結ぶ前に出てくるのが、概算見積もりです。概算見積もりでは「厨房設備一式」「外装工事一式」などのように一式で金額が提示されるので、数社から見積もりを取っている場合それぞれの違いがあまり分からないと感じることも多いかもしれません。
個々の会社によって事情が異なりますが、同様の工事の実績があるかどうか、建材などを安く仕入れることができるかどうかがある程度影響するようです。
工事内容によっては見積もりの額が予想よりも高くなることがあります。具体的には、どのような工事にお金がかかるのでしょうか。
まずは、水回りです。特にキッチンは飲食店にとっては心臓部とも言える場所です。既存のキッチンを変えたい、キッチンの配置自体を変更したいと考えることも多いのではないでしょうか。キッチンの設備だけを変更する場合は、シンクやガスコンロ、食器洗浄機等の設備そのものにかかる費用に加えて、設置工事費用がかかります。設備を一部取り替えるのか、全部取り替えるのか、中古にするのか、リースにするのかでトータルのコストも変動します。加えて、キッチンの場所を変えたい場合は配管の位置そのものを変更しなければいけないため、予想よりもコストが跳ね上がることになります。
次に天井や壁を壊す場合です。天井を壊して梁や配管が露出した工場のような雰囲気にしたり、壁を壊してキッチンをオープンキッチンにしたりするなどの工事を行う場合、お店のイメージは一変します。一方、コストも上がります。まずは、天井や壁の解体費用、廃棄費用がかかります。例えば、天井を解体した時に現れる梁や配管を、他の空間にマッチするように塗装をする場合は塗装費用もかかります。壁を解体した場合は、天井や床に壁の痕が残っているので、補修費用がかかります。
他にも、例えば什器などを完全にオーダーメイドする場合は既製品を購入するよりもコストが上がりますし、床や壁に天然素材を使う場合もそれなりに金額がかかります。
コストを下げるには
コストを下げるには、水回りや天井、壁を変更せずに、オーダーメイドで什器を作らないことです。しかし、せっかく飲食店を開きたい、リニューアルオープンをしたいと考えているのに、コストを気にしすぎて消極的になってしまうのは勿体ないことです。
コストを下げる最初の一歩として、まず優先順位を決めることです。天井が低く圧迫感があるので天井はどうしても解体したい、キッチンの使いづらさが料理の提供時間にも影響しているのでキッチンの位置変更だけはどうしても行いたいなどの要望の中から今後の収益にどれくらい影響するのかを考慮しながら優先すべき工事を決めましょう。
他にもコストを下げる方法として施主支給があります。工事に使う建材などを施主が購入し、工事業者に支給する方法です。例えば、厨房設備や照明器具、床材や壁紙を工事業者よりも安く仕入れることができる場合に使える方法です。一方で、施主支給をあまり好まない工事業者もいます。実績のない設備や建材の工事をあまり行いたくなかったり、工事後にトラブルなどがあった際に責任の所在が不明になったりすることがあるので、施主支給を一切受け付けない業者もいます。もし、どうしても施主支給を行いたい場合は、契約をする前に確認をしましょう。
また、経営者や従業員で工事を行う方法もあります。例えば、壁の塗装は比較的かんたんにできる上に、アクセントとして壁の色を変えるだけで手軽にお店のイメージを変えることができます。
ターゲット別店舗設計のポイント
飲食店の内装はコンセプトやタイプによって千差万別です。ターゲットごとにポイントを紹介します。
若者の利用が多い場合
例えば、繁華街や学生街に位置する若者向けのカフェを経営するなら、写真映えする内装かどうかが重要になってきます。ここ数年トレンドになっているのが、「ブルックリンスタイル」です。アメリカのブルックリンに多く見られる、工場をリノベーションしたようなインテリアのスタイルです。梁や配管がそのまま露出している天井、古いレンガを使った壁、スチールやアイアンの家具に、工場にありそうな照明器具などが特徴です。若者がターゲットの場合、ドリンクや食事メニューの値段を上げることは難しいかもしれませんが、ブルックリンスタイルにはピカピカの新品の家具や高級感のある家具はマッチしない分、中古の家具を使うことで上手くコストを抑えることができるかもしれません。
長時間滞在するお客様の利用が多い場合
例えば、打ち合わせをしたり、パソコンを持ち込んで仕事をしたり比較的長時間滞在するお客様が多い場合、同じお客様が週に何回も利用することが考えられます。キッチンが見えるカウンター席を設けたり、シェアして使うような大きなテーブル席を作ったり、窓際の眺めの良いソファー席を作ったり、同じ店内でも常連客が飽きてしまわないように、ある程度席にバリエーションをもたせてみてはいかがでしょうか。
女性客の利用が多い場合
一概には言えませんが、食事の前に手を洗ったり、お店を出る前に身だしなみを整えたり、男性に比べて女性の方がトイレを利用する回数が多いのではないでしょうか。トイレがきれいなら、その分お店の印象もよくなります。しかし、上記でも触れたように水回りのリノベーションはお金がかかる部分です。大きな工事ができない場合、便器を最新モデルのものに交換したり、洗面ボウルを少しオシャレなものにしたり、鏡や照明の位置を変更することでトイレの雰囲気が変わります。また、トイレのにおいが気になるなら、消臭効果のあるタイルを試してみるのも良いかもしれません。
お店づくりには莫大な費用がかかる上に、専門家でないと分からない点も多いです。専門家の手を借りながら、集客効果も考慮し慎重にお店づくりを進めてみてください。
執筆は2017年10月4日時点の情報を参照しています。
当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
Photography provided by, Unsplash