算定基礎届とは?経営者が押さえておくべきポイントと提出方法

算定基礎届の提出は、社会保険の計算を行う上で必要な作業です。しかし、人事や総務の業務についてあまり詳しくない起業したての事業主にとっては、「何をしたらいいのか」「いつまでにやればいいのか」と不明な点も多いのではないでしょうか。

今回は、算定基礎届の基本的な知識ややるべき作業について分かりやすく説明します。

算定基礎届とは

算定基礎届とは、社会保険の被保険者の標準報酬月額を決定するために年金事務所に届け出る書類のことです。ここで決定された標準報酬月額は、社会保険料の計算の基準になるだけではなく、従業員が将来受け取る年金額にも関わってきます。忘れずに、正確に届け出る必要があります。

社会保険料の計算を行う上で、「標準報酬月額」が重要な意味を占めています。保険料は、「標準報酬月額 × 保険料率」という計算式で決まるからです。その月に支払われる給与額で決まるのではなく、固定の標準報酬月額が1年間使われます。

会社が支払う毎月の給与を「報酬月額」といい、これを等級表に当てはめたものを「標準報酬月額」といいます。健康保険の場合は50等級まで、厚生年金保険の場合は31等級まで区分されていて、被保険者資格取得時の他、随時、定時で改定が行われます。この「定時改定」に用いられるのが算定基礎届です。算定基礎届で届け出た毎年4月から6月の3カ月間の平均給与額をもとに、その年の9月から1年間使われる標準報酬月額が決まります。

算定基礎届の提出は、1年に1度の大切な業務なので、責任を持って対応しましょう。

算定基礎届の対象となる人
算定基礎届の対象となる人は、「その年の7月1日時点で在籍している人」です。休職中の人、産前産後休業や育児休業、介護休業でお休みの人、海外駐在中で国内には不在の人も算定基礎届の対象となります。

年金事務所や健康保険組合から算定基礎届の用紙が送られてきたときに、退職者の情報が反映されている場合もあります。その際は、退職者の名前を二重線で消して対応しましょう。

在職しているが、算定基礎届の対象とならない人
6月1日以降に入社し、社会保険に加入した人はその年の算定基礎届の対象にはなりません。資格取得時に翌年8月までの標準報酬月額が決まっているからです。

また、昇給などで大きく月額報酬が変わる人で、7月改定の月額変更届を提出する人も算定基礎届の対象とはなりません。

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「報酬月額」の考え方

算定基礎届を提出する際には、一人ひとりの報酬月額の計算が必要です。標準報酬月額は、4月から6月の報酬総額を3で割った報酬月額がどの等級に当てはまるかによって決まるからです。

日本年金機構のガイドブックによると、「報酬」は以下のように定義されています。

標準報酬月額の対象となる報酬とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与などの名称を問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのものを含みます。また、金銭(通貨)に限らず、通勤定期券、食事、住宅など現物で支給されるものも報酬に含まれます。ただし、臨時に受けるものや、年3回以下支給の賞与(※年3回以下支給されるものは標準賞与額の対象となります。)などは、報酬に含みません。

単純に支払われる給与だけが報酬に含まれるわけではないという点がポイントです。

報酬の対象になるもの・ならないもの

報酬となるもの・ならないものの一例は以下のとおりです。

・報酬となるもの(金銭で支給されるもの)
基本給(月給・週給・日給など)、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、扶養手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金、年4回以上の賞与※など

※支払われた賞与の合計額を12カ月で割った額を各月の報酬に加えます。

・報酬となるもの(現物で支給されるもの)
通勤定期券※、回数券、食事、食券、社宅、寮、被服、自社製品など

 ※3カ月または6カ月単位でまとめて支給する場合、1カ月あたりの額を算出して報酬として考えます。

・報酬とならないもの(金銭で支給されるもの)
大入り袋、見舞金、解雇予告手当、退職手当、出張旅費、交際費、慶弔費、傷病手当金、労災保険の休業補償給付、年3回以下の賞与など

・報酬とならないもの(現物で支給されるもの)
制服、作業着、見舞い品、食事(本人の負担額が2/3以上の場合)など

参考:算定基礎届の記入・提出ガイドブック(日本年金機構)

標準報酬月額には、給与だけでなく通勤手当や早出残業手当も含まれます。そのため、算定基礎届に関わる4月から6月の期間にたくさん残業して手当が多くつくと、標準報酬月額が高くなり、保険料も高くなる可能性があります。

労働日数が短い場合の考え方
入院による欠勤など、4月から6月の中で労働日数が極端に少なくなっているケースもあるかもしれません。給与計算の対象となる労働日数を「支払基礎日数」と呼びますが、この数は17日に満たない場合は標準報酬月額の計算から除外します。たとえば、4月の出勤数が10日しかなかった場合は、5月と6月の報酬を合計し、それを2で割るという方法で報酬月額を決定します。

算定基礎届の提出から適用までの流れ

算定基礎届の提出に関する具体的な手続きを解説します。

提出期間
事業主は、算定基礎届を7月1日から10日までの間に提出する必要があります。例年6月頃に事業所あてに算定基礎届の用紙が送付されるので、用紙に必要事項を記入した上で提出します。退職している人は削除したり、異動や入社があれば追加したりという調整を行います。

提出書類
算定基礎届に加えて、事業所に在籍する被保険者数を確認するための「総括表」の提出も必要です。総括表は、6月1日以降に資格取得した人など算定基礎届の対象とならない人についても記載します。

提出方法
算定基礎届の提出方法には、大きく三つの方法があります。(1)窓口持参、(2)郵送、(3)電子申請の三つです。

(1)(2)の場合、届出用紙の提出のほか、電子媒体(CD・DVD)での提出も可能です。従業員数が多くて管理が大変な場合などは、電子媒体を上手に活用しましょう。

(3)の電子申請は、e-Gov(イーガブ)という電子政府の総合窓口を使って行います。CSVファイルを添付する形式で申請が完了し、郵送や窓口持参の手間を省くことができます。夜間や休日でも対応でき、24時間提出できるのが特徴です。利用にあたっては電子証明書の取得、パソコンの環境設定などの作業が必要ですが、一度設定してしまえば次回以降もスムーズな申請ができます。

算定基礎届の流れ
時系列で、算定基礎届の実務について解説します。

まず、6月前後に事業所あてに算定基礎届の用紙が送付されます。提出までの時間が短いので、書類を受け取ったら準備を始めましょう。

7月1日から10日までの期間に、作成した書類を提出します。提出方法は、先述の通り窓口持参、郵送、電子申請の中から選びます。

提出が完了すると、「標準報酬決定通知書」が封書で届きます。その内容をもとに、毎月の給与計算を行ってください。なお、適用は9月1日からです。通常は翌月給与から天引きするので、10月支給分から給与計算を行うことになります。

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年に1度の業務なので、忘れずしっかり対応を

算定基礎届の提出は、年に1回の業務ですが、保険料の計算に必要で、従業員の将来の年金額にも関わる重要な作業です。提出期間も限られているので、対象となる従業員や報酬に含まれるものの考え方を理解し、スムーズに対応できるよう準備しましょう。

執筆は2019年11月8日時点の情報を参照しています。
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