企業経営の軸として世界的に注目を集めている、SDGs。日本でも認知度は高まってきているものの、経営に取り入れている企業はまだまだ限られています。SDGsを取り入れることで、新たな事業領域の開拓や他社との差別化につながると考えられます。
今回は、SDGsを経営に取り入れるメリット・デメリットや、具体的な取り入れ方のヒントについて説明します。
世界に広がる「SDGs」とは
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語では「持続可能な開発目標」と呼ばれています。2015年の国連サミットで採択された2016年から2030年までの国際的な目標です。「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」など、持続可能な世界を実現するための17のゴール、169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さないことが誓われています。すべての国に通じる目標で、もちろん日本でも政府や企業、市民による積極的な取り組みが期待されています。
参考:SDGsとは?(外務省)
2019年2月に電通が行なった生活者調査によると、SDGsの認知度は全体で16%と少ないものの、SDGsの認知度を職業別に見ると経営者が32.7%と特に高いことがわかっています。一方で、SDGsを家庭や企業で実践するときの障壁として「具体的に何をすればいいのかわかりにくいものが多い」を選んでいる人も多く、知っていても具体的なアクションにつながらない層が多くいることが推測されます。
参考:第2回「SDGsに関する生活者調査」を実施(株式会社電通)
グローバル展開を考える企業も多い中、世界共通の目標として「SDGs」にどう取り組むかは、そのまま企業の評価にも影響を与えかねません。戦略的に企業経営の軸に取り入れることで、ブランド価値向上や新事業開拓の機会にもつながると考えられます。
SDGsを経営に取り入れるメリット
SDGsを経営に取り入れるメリットとして、主に次のような点があります。
新規事業や市場の開拓
SDGsを達成するためのビジネス(製品やサービス開発)を考えることで、新たなビジネスチャンスにつながります。ビジネス&持続可能開発委員会の2017年報告書「より良きビジネス、より良き世界」によると、SDGsによってもたらされる市場機会の価値は年間12兆ドルと想定されています。SDGsの示す2030年までの目標が現在の社会の姿と大きなギャップがあるということは、その差分を埋めるためのビジネスチャンスが大きく広がっているということでもあります。
SDGsの目標達成に向けて動く姿勢が投資家に評価される可能性も高いです。一方で、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったESG投資が普及する中、SDGsへの取り組みに消極的な姿勢が、企業評価の低下につながる可能性もあります。
ブランド価値の向上
SDGsに積極的に取り組む企業姿勢は、CSR活動と合わせて消費者にポジティブなイメージを与えます。ブランディング施策の一つとしても有効です。また、従業員のモチベーションにも良い影響を与えるでしょう。
将来のリスク回避
SDGsに定められているのは、世界全体で解決すべき課題の数々です。細かく内容を見ていくことで、自社の企業活動に影響を与える項目も見つかるはずです。先回りして将来のリスクに気づくことができれば、回避策を考えることもできます。長期的視点を持って経営課題を考えることは、企業の活動を続けるためにも重要な観点なのです。
人材の確保
前述の電通の調査では、学生のSDGs認知度が24.8%と平均より高く、若い世代が強い問題意識を持っていることが明らかになりました。SDGsへの姿勢を就職活動時の企業選びの軸に据える学生もいることでしょう。優秀な人材を確保し、従業員のモチベーションを高めるためにも、取り組み姿勢を積極的に伝えていきましょう。
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具体的なアクション
SDGsを企業活動に取り入れるためにはどうすればいいのでしょうか。SDGsが関係するのはグローバルなビジネス展開に限られません。企業の事業活動はもちろん、社員の福利厚生やリサイクルの推進など、企業活動で発生するすべての行動をSDGsに結びつけることができます。
環境省による「SDGs活用ガイド」ではSDGsの具体的な取り組み手順や事例を使ったケーススタディがまとめられています。このガイドに記載されている内容をベースに、SDGsへの取り組み手順を紹介します。
参考:すべての企業が持続的に発展するために - 持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド -(環境省)
話し合いと考え方の共有を行なう
SDGsを進めるにあたって、最も重要ともいえる「方向性の決定」を行ないます。いきなりSDGsに踏む込む前に企業理念を改めて捉え直し、2030年時点の自社の姿を考え、社内でビジョンを共有します。今後のSDGsへの取り組みを積極的に行なっていくために、担当者を決めたりチーム結成したりしておくのもおすすめです。
事業活動を洗い出し、SDGsと紐付ける
自社の事業内容を洗い出し、SDGsの目標と照らし合わせてやるべきことを探します。まずは事業内容や社会貢献活動の内容をリストアップし、それらがもたらす環境や地域社会への効果や影響を整理します。そして、それぞれがSDGsのどのゴールやターゲットに関連するか紐づけていきましょう。事業内容だけに限らず、省エネ、節電、節水、簡易包装、高齢者雇用、働き方改革、地産地消、防災などの活動もSDGsに関連させることができます。
何に取り組むかを検討し、その目的、内容、ゴール、担当者を決める)
小規模なビジネスの場合、SDGsに割ける人員や予算は限られているので、実際に導入する内容を決める際には「自社にとってメリットとなり、社内協力が得られやすい内容」から始めるのが続けるためのポイントです。たとえば、「コスト削減」という目的を果たすために「従業員の省エネ意識を高め、簡易包装に取り組む」、「女性の活躍」という目的のために「性別問わず家庭と仕事を両立できる制度や仕組みを作る」などが考えられます。
取り組みを実施し、その結果を振り返る
取り組みを行なう際は、後で振り返りができるように写真で記録を残したり、数値面のデータを把握しながら行ないましょう。SDGsのゴール・ターゲットの中にも、「持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する」という項目があります。取り組みに関するレポートを定期的に作成し、振り返るという流れを作ってください。
取り組みの内容を整理し、外部へ発信する
上記のレポートの内容などを、ホームページなどを使って外部に発信します。先進的な取り組みを行なっていることが評価され、ブランディングや信頼性の向上に役立ちます。注目を集めることで、新たなビジネスチャンスにつながるかもしれません。
具体的な取り組みを考えていく上では、他社の取り組みを分析するのも有効です。外務省ウェブサイトでは、多数の日本企業のSDGsに関する取り組みがまとめられています。
どんなことから着手していいかわからないとお悩みの方は、すでに取り組みを始めている他社を分析することから始めてみてはいかがでしょうか。
できることからSDGsの観点を取り入れよう
「国連で採択されたSDGsを経営に取り入れる」と考えると、なんだか難しくて大ごとのように感じるかもしれません。しかし、あくまで企業活動の一環として、できる分野について対応を進めていくと考えましょう。SDGsがカバーする範囲は広いですが、その分自社の事業や活動に近い分野の目標もあるはずです。小さなことからでもSDGsに関する取り組みを始め、それは社内外にアピールしていくことで、自社の成長につながります。
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執筆は2019年5月15日時点の情報を参照しています。
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