小売需要予測、売り上げを最大化し、リスクを最小化するには

本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

小売業の成功は、どの時期に何が求められているかを予測する力にかかっています。とはいえそれは、絶えず変化する天候を予測するようなもの。さまざまな要因が絡み合ううえ、市場の状況は常に変化します。需要を過大に見積もれば過剰在庫を招き、貴重なリソースを無駄にするかもしれませんし、需要を過小評価すれば顧客の期待に応えられず売り上げも減る可能性があります。夏の暑い日に冷たいドリンクの屋台を出したものの、買い求める人の列が延びた頃に売り切れるなんて、想像するだけでも嫌でしょう。そんな事態を避けつつ無駄を抱えない鍵は、正確な需要予測です。

目次


需要予測とは

需要予測とは、短期的・長期的に商品がどれくらい売れるのか、将来の売り上げがどの程度になるのかを予測することです。過去の売上データ、市場トレンド、その他の関連要因を分析して、特定の期間中に特定の商品またはサービスの需要がどのくらい見込まれるかを把握します。

需要予測を行うメリットは多岐にわたります。たとえば在庫管理では、適切な在庫量を把握できるようになるため、在庫過多や在庫切れといったリスクを減らせます。また、需要予測に基づいてマーケティングやプロモーションの戦略を立案すれば、売上アップにも効果的です。さらに、需要の変動に合わせた効率的な人員計画が可能になり、繁忙期の人手不足や、閑散期の過剰な人員配置を避けられます。それだけでなく、発注量を正しく管理できるため、むやみに値引きを行う必要がなくなるでしょう。

最近では、AIを活用した需要予測にも注目が集まっています。

需要予測の方法

需要予測の方法は、事業の目的やデータの有無によって異なります。ここからは、定量的な方法と定性的な方法に分けて見ていきましょう。

定量的な需要予測

この方法では、過去のデータから売り上げに影響するパターンや傾向、関係性を特定し、将来の需要を予測します。手元に過去2年分以上のデータがある場合に向いている方法です。

定量的な需要予測の手法は数多くありますが、最も始めやすいのは時系列分析(トレンド予測またはトレンド分析とも呼ばれます)です。時系列分析は、過去の実績を分析し、そこから得られる知見をもとに将来の意思決定を行う手法です。

たとえば、あるアパレルショップが過去2〜3年間さまざまな商品の売り上げを毎日記録しているとします。そのデータを時系列にして、売り上げの変化を日次、週次、月次で確認すると、特定の季節やイベントの際に売れる服の種類など、パターンがつかめるかもしれません。

また、年次での売上推移のおおまかな傾向も見えてくるでしょう。年を追うごとに売り上げが増えているのか、それとも同じくらいなのかがわかれば、事業のトレンドを理解するのに役立ちます。さらに、気温が下がってきた頃に冬用ジャケットが売れ始めるなど、毎年同じ時期に共通する変化にも気づくでしょう。

定量的な方法で需要を正しく予測するには、信頼できる売上データを長期間集めなければなりません。といっても実は難易度はさほど高くなく、適切なツールを使えばむしろ簡単です。たとえば、Square リテールPOSレジなら、小売業にとって重要なデータを自動的に収集して蓄積するため、定量的な需要予測を行うハードルがぐっと下がります。

Square リテールPOSレジの分析機能を使って把握できるデータは以下のとおりです。

  • 過去の売上データ:過去の売上データは、定量的な需要予測の土台です。毎日、毎週、毎月など、特定の期間ごとの売上実績を確認すれば、パターン、トレンド、季節性の特定に役立ちます。
  • カテゴリ別の売り上げ: 商品カテゴリごとに収益を把握すれば、どこが好調で、どこの価格やマーケティング、在庫管理を改善すべきかが見えてきます。
  • 在庫消化率: 取引先から入荷した在庫に対して、どのくらい販売できたかをパーセンテージで表す数字です。一般的に消化率が高いほど売れ行きが好調で、逆に低いほど在庫過多や売り上げの不振を示します。

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定性的な需要予測

定性的な需要予測では、より考える力が問われます。過去のデータがほとんど(またはまったく)ない新規事業や、信頼できるデータがない場合はこの方法がメインとなるでしょう。具体的な手法としては、次のようなものがあります。

  • 市場調査:調査、フォーカスグループ、インタビューを通して潜在顧客の意見や好みを収集し、予測に生かします。
  • シナリオ計画:将来起こりうるシナリオやストーリーをいくつか作り、需要への影響を評価します。この手法は、想定しうるさまざまな事態に備えるのに役立ちます。
  • 専門家の意見: 業界の専門家や市場の知識が豊富なプロの意見は、業界の動向に関する洞察を得るうえで有益です。
  • デルファイ法: 専門家の集団から匿名で意見を集めて回答を整理し、得られたフィードバックに基づいてさらなる意見を求める手法です。このプロセスは全員が合意できる着地点が見つかるまで繰り返します。不透明あるいは複雑な問題、または未来のための意思決定を行うのに向いています。

需要を適切に予測するポイント

1. 目的と範囲を定める

需要予測を行う理由、または達成したいゴールは何でしょうか。まずはこうした問いを立てて、需要予測の目的を明確にしてください。必要なのは短期予測なのか長期予測なのかを見極め、対象となる商品や期間を定めます。

2. データの有用性を判断する

過去のデータの有無とその質を確認します。定量的なアプローチは過去のデータによって左右されるため、手元にある情報の完全性と信頼性を判断するステップが欠かせません。Square リテールPOSレジなどの自動的にデータを収集できるツールを使っている場合は、完全かつ正確な記録が残っているので安心です。

3. 商品の特徴を理解する

季節商品、定番商品、消費者の好みが変わりやすい商品など、商品ごとの特徴を押さえましょう。商品の需要パターンをつかみやすくなります。

4. 市場の動向を考慮する

市場の動向も需要に影響する可能性があります。競合の状況、テクノロジーの進化、経済状態、規制の影響などの外部要因を理解し、需要予測の際に考慮しましょう。経済産業省が定期的に発表する小売業に関する統計データも役立つでしょう。

5. 定量と定性の両アプローチをうまく組み合わせる

状況に応じて、複数の方法や手法を組み合わせましょう。数値データに加えて専門家の意見、市場調査、主観的な洞察を得るのが最適な場合もあります。特に、小売業界の課題に対しては、定量的なデータ分析と定性的なアプローチを組み合わせることが重要です。

たとえば、家電量販店がスマートフォンの新モデルの需要を予測するとします。この場合、外部要因の影響を無視できず、定量的方法だけではその需要を十分に測れません。そのため、過去の売上データだけでなく、市場の反応について知見のある人々(業界の専門家など)の意見も参考にしましょう。ほかにも、SNSでその新モデルに関する話題を追ってトレンドまたは感情分析を行う手もあります。

6. 継続的なモニタリングと調整を行う

需要予測は継続的なプロセスです。定期的に予測の精度をチェックし、市場の状況、商品の特徴、その他の要因に何か変化があった場合に手法を調整できるようにしておきましょう。

効果的な小売需要予測は、目的を定め、商品の特徴を理解し、市場の状況を正しく把握することにかかっています。適切に実施できれば、余剰在庫コストの削減、キャッシュフローの改善、顧客満足度の向上、そして全体的な業務効率の改善まで望めるでしょう。


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執筆は2024年9月3日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。