【ROUND SQUARE】イベントレポート ー 経営者たちが学びや本音をシェアし、化学反応を生みだす場へ

「あらゆる人が簡単に商売をできるようにする」−というミッションのもと、クレジットカード決済POSレジアプリ、クラウド請求書などのサービスで、10万件を超える加盟店の商いのサポートをし続けてきたSquare。先日、日本でサービスリリースしてから3周年を迎えた。”You Grow. We grow.”という言葉が表すように、さまざまな「商い」を応援する想いがそこにはある。

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▲日本らしく暖簾をモチーフに「ROUND SQUARE」のロゴが生まれた

そんなSquareは、これまで「TOWN SQUARE」を通じて、加盟店の商いのストーリーや哲学を発信するなかで、彼らの商いにこそ学びがあると気づかされた。そこで、加盟店同士が集まり、それぞれの商いを共有する場として初となる、オフラインイベント「ROUND SQUARE」が6月20日に蔵前のチョコレートファクトリー&カフェ「ダンデライオン チョコレート」にて開催された。

「円」から生まれる、学びと出会い、化学反応を

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円を囲むように参加者が座り、会はゆるやかにはじまった。最初に今回のイベントの企画責任者であるSquareの鳥井から「ROUND SQUARE」の趣旨について紹介。

「イベント名をROUND(丸い、円形の)と名付けたように、Squareのユーザーである経営者同士が横並びになりながら、一方的なレクチャー方式ではなく、対話やつながりが生まれる場をつくれたら、と考えています。

これまで、『商いのコト』でさまざまな経営者のお話を伺ってきました。なぜ起業したのか?失敗は?そこから得たものは?などの話を聞くことは、彼らをサポートする私たちにとっても学びの連続でした。

記事でご紹介できていない経営者たちの知見にも、そういった学びがきっとある。そう考えていたので、Squareを通じての出会いが経営者同士を刺激し合いながら、良い化学反応が生まれてほしいです」

早速、「なぜ起業へと一歩踏み出すことになったのか?」という理由を添えながら、これまでにTOWN SQUAREに登場した三人のゲストの自己紹介でトークがスタートした。

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▲ゲストの宮崎晃吉さん(左)、山田司朗さん(中央)、渡邉知さん(右)

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▲山田さんの紹介付きで、Far Yeast Brewingのビールを試飲するシーンも

英国の大学院時代の生活を通して、本場のビール文化に触れた山田司朗さん。「日本におけるビール文化を豊かにしていきたい」という想いから「Far Yeast Brewing」という屋号でビール造りを始めた。

2011年の震災を機に学生時代から住んでいた建物が取り壊されることとなり、壊される前に「ハギエンナーレ」というイベントを行った宮崎晃吉さん。そのとき、場所の価値を再発見したことで、その家を改修して、最小複合文化施設「HAGISO」として運営することに。いまでは谷中のスポットとして、地域のハブとなっている。

株式会社Fireplaceを立ち上げ、オフラインコミュニティの場づくりを行う渡邉知さん。「ライフスタイルやワークスタイルは自分の外の人とつながって可視化される。オンラインで顕在化できることが増えた時代だからこそ、たまたま隣にいる偶然性こそがオフラインの価値で、そこでの会話が人生を変えるかもしれないと考えています」

それぞれの商いについて紹介するなか、三者ともが口にしたのは「手探りでやってることだらけで、自分も商いについて教えてほしいくらい」ということ。自己紹介もそこそこに、参加者も交えた和気あいあいとしたオープンディスカッションのような流れに。

仮説から検証まで、スピーディなものづくりが武器

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▲NIRAME.COの上野さん。他にもお米屋さん、コールドプレスジュースバー、美容室などの個性豊かな経営者が集まった

オリジナル洋服の製造・販売を行う参加者から出た、「ターゲットを決め、消費者にどのように届くようにしていったのか?」という質問に対して、山田さんは大企業との違いがポイントだと話す。

「大手と僕らみたいな規模の事業の最大の違いは、アクションを起こすまでのスピード感。例えば大手の商品開発は、データ収集、プロトタイプ開発、幾度もの会議、上層部の承認がなければスタートできないことが多い。僕らの場合は、リスクは背負いつつも、自分たちの仮説だけでスタートできる利点がある。KAGUAのときも、和食の高級店の木のカウンターで楽しめるビールとは何なのか、を考えながら商品をつくりました。

まずは商品を出してみて、検証するしかやりようがない。大手とは違うスピード感でものがつくれるのが、ぼくらの唯一の武器。そうした仮説と徹底的な検証を繰り返していくことですね」

逆に、時間もお金もかけられないからこそ、仮説から検証までをスピーディに行い、商品の品質、ターゲティングの精度を上げるための機動力が必要だという。

強みを活かし、どのように協働するのか

トークの途中には、ゲスト三人による「シミュレーショントーク」も。リアル経営会議とも言えるような形式で「1日限定のイベントをするとしたら、どんなコラボレーションができるか?」というお題が鳥井から三人に投げかけられた。

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「営業とプロデュース、『この指とまれ』で人を集めるのが得意です」と話す渡邉さんは、「人がつながるツールとして、ビールは最強ですよね」と山田さんの強みに触れる。設計・デザイン・運営まで、エリア特化型の総合的な業態に携わっている宮崎さんは「今の時代は、場所や土地の文脈を意識した場作りをどうデザインしていくかがポイントですよね」と話す。

場所と文化を切り口に、山田さんが英国・大学院時代に体験したヨーロッパ中の大学院で行われる運動会の話に。そこから「廃校舎を使って、BBQやキャンプを組み合わせた運動会はどうか」というアイデアや、「ビール好きのための結婚式はどうか」など、参加者からの声もトークに重なっていく。

かつては協働するためのつながりが希薄な時代もあったが、それぞれの異なる職能をもとにお互いを活かし合いながら、商いを育てることができる環境だからこその共創をどう作っていくか、そのためのさまざまなアイデアが飛び交った。

いま持っているものをどう評価していくか

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カキモリの広瀬さんからは、「ポートランド化を目指そうとして、うまくいかない地方創生モデルもあるなか、異なる立場やジャンルの人たちで組めば、うまいかたちで地域を盛り上げられるんじゃないか」という提案がなされた。そこで宮崎さんが、今の時代ならではの商いについて触れた。

「今は、海外にあるものを模倣するような、高度経済成長期にあった憧れモデルが成り立たない時代になってきています。憧れるよりも『今持っているものをどう評価するか』というマインドをつくるほうが大事。真似たり、どこかから借りてきて、自分たち自身の手で生み出していない状態は危うく感じます。

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例えば、谷中にある昔ながらの銭湯も、海外から来る人からすれば、特別な体験ができる施設になります。どこかを真似てみんな同じものになってしまうよりも、そこでしか味わえないもの、そこでしか出会えないものをつくれたほうがいい。そのためにも、人のマインドを変えるほうが早いと思うんです」

仕事をつくるための素材がどこに転がっているのか、視点の持ち方を捉え直す言葉も出てきた。

なんのために働くのか —「旅するパン屋」から学ぶ、商いの選択肢

家族写真を撮影している参加者から、「専用スタジオを持つかどうか、持つならどこにするか、検討中なんです」という質問が出る。それに対して、渡邉さんが「旅するパン屋」を運営する知人のエピソードから、場所の意味を考える話へ。

「その知人は、理想のパンを焼くために、窯の置ける物件を都内で探していましたが、家賃が高く、その家賃に合わせてパンの値段も設定して…と計算したら、『私は、不動産のためにパンを売りたかったんだっけ?』と壁にぶつかりました。その傷心旅行でたまたま立ち寄った丹波篠山で、ご縁から物件を手に入れたんです。ただ、近所にパンを買う人はいない。

そこで売り場をオンライン、つまりECに舵取りしました。そして、各地を旅しながらパンの素材となるさまざまな生産者とつながり、彼らがつくる食材をパンに使って、一緒に食材やその地域のストーリーも伝えながら販売する”旅するパン屋”として商いを始めました。このエピソードからも強く感じたのですが、場所をどこにするか、以前に、徹底的に自分はなにをやりたいのかを突き詰め、そしてその根っこの部分からブレないことが重要だと思います」

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山田さんは「儲かるやり方はいくつかあるはず。大事なのは、自分がなにをやりたいか、そのためになぜ設備や場所が必要か、ですよね」と伝える。宮崎さんも、違った考え方を紹介してくれた。

その場所と自身の特別なストーリーを積み上げいくことが大事。今は、物質的なものが余っている時代に、所有をどう捉えるかを考える必要があるかもしれません。

所有しなくても、それらを活かせる技能や能力を持った人のところに、自然とものが集まっている状態になれるかどうか。物件も同じで、その場所の使い方を考えて、価値を変えられること自体が、独立した仕事にもなるし、今求められている仕事の領域だと思います」

場所を持つ、持たないだけでなく、自身としてどのような商いをしていくか、その想いをどう形にしていくことができるか。その選択肢は限りなく広げられるからこそ、自身の原点や軸に立ち返るべきだという気付きが生まれ、全体のセッションは終了した。

最後は「みなさんが持つ、商いの経験や哲学こそが資産。このコミュニティの中で共有し、広げていってもらえるとうれしいです」という鳥井の言葉で、初となるROUND SQUAREの会は閉じた。

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▲終了後の懇親会では、名刺交換を始め、感想や質問の共有など、参加者同士の交流が広がっていく

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▲お土産として、ダンデライオンの特製チョコレートが配られる

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▲ダンデライオンもSquare加盟店であり、そのご縁から今回の会場を提供してもらえることに

今回の参加者の声を反映させながら、次の企画づくりを進めているROUND SQUARE。次は、どんな経営者が集まり、どんな商いトークが広がり、人と情報が混ざり合うのだろうか。期待は高まるばかり。

この日に生まれたつながりが、それぞれの商いを育みますように。実は、すでに動き始めているコラボレーションもあるとか…?

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文:大見謝 将伍
写真:鈴木 渉