会社員として働いた職場を無事に退職し、不安と期待が入り混じるなか迎えるフリーランス1日目。今後の金銭管理は、他の誰でもなく自分で行わなければいけません。なかでも面倒な印象を抱かれがちなのが、確定申告においても欠かせない帳簿づけです。しかしながら取り組み方次第で作業はぐっと削減できるので、まずは効率をあげる方法を身につけておくことが大切でしょう。この記事では、会社員からフリーランスになる人に向けて、金銭周りの管理をラクにするために踏みたい5つのステップを紹介します。
1. 印鑑をつくる
契約書や見積書、請求者、領収書、各種届出や確定申告の書類など、フリーランスになると印鑑の出番も増えてくるでしょう。法人の場合は事業用の印鑑が必須となりますが、個人事業主のうちに含まれるフリーランスは、実質個人名の実印でも対応は可能です。ただし実印として活用するには、住民登録をしている市役所で登録申請をする必要があることを留意しておきましょう。屋号を入れた事業用の印鑑をつくる場合は、二種類の印鑑を用意するのが一般的とされています。
(1)角印
彫られるのは、屋号名のみです。認印として使われることが多く、見積書や請求書、領収書や納品書など対外的なやりとりで使われます。
(2)丸印
屋号名と代表者名が彫られます。契約書など重要な場面では、丸印での捺印が一般的です。
開業届に屋号を記入したうえ、今後屋号名で仕事を受注していくのであれば、この二種類を用意するといいでしょう。
2. 事業用の銀行口座を開設する
毎月の売り上げや経費などの帳簿づけも自分の仕事の範囲内となる、フリーランス。面倒な帳簿づけを効率化するには「個人用の口座とは別で、事業用口座を開設する」という手段があります。メリットとしては下記が挙げられます。
・帳簿づけがスムーズになり、確定申告がラクになる
帳簿づけの作業時間を削減するうえで活用したい、会計ソフト。多くの会計ソフトには、口座と連携させることで資金の出入りを自動的に記帳できるという便利な機能がついています。一つの口座でプライベートと事業の資金を管理してしまうと、後々どの支出が仕事でどの出費がプライベートかを自ら精査しなければいけなくなり、せっかくある会計ソフトの便利機能を有効活用できません。一方で事業用の収入・支出だけの口座を会計ソフトに紐づけておけば、帳簿づけだけでなく確定申告の書類作成も円滑に行なえるのでおすすめです。会計ソフトについては後ほど詳しく説明します。
・万が一の税務調査の対応も円滑になる
事業用と個人の収入・支出とが一つの口座に混在していると、「個人的な出費を事業用として計上しているのでは」と疑われる可能性もなきにしもあらずです。厄介なトラブルを避けるためにも、事業用の口座を開設して最初から分けておくと安心でしょう。
事業用銀行口座の開設を決めたなら。通常口座と屋号入り銀行口座、どっちがおすすめ?
事業用口座には、通常口座、あるいは屋号入り銀行口座のいずれかを開設することになります。
開業届を提出した際に屋号を記入している場合は、屋号入り口座の開設が可能です。二つの口座を開設するうえでの違いは、下記の表から確認しましょう。
通常口座 | 屋号入りの口座 | |
---|---|---|
申し込み方法 | ネット、郵送、窓口での申し込みが可能 | 申し込みは窓口のみで可能 |
開設できる支店 | 自宅や事務所の最寄りの支店 | 自宅や事務所から一番近い支店のみで口座の開設が可能 |
開設までにかかる時間 | 最短で1日から開設が可能 | 最短で一週間から開設が可能 |
開設に必要な書類(※) | 本人確認書類、印鑑 | 本人確認書類、印鑑、開業届、屋号確認資料 |
※銀行により異なる場合がありますので、開設される際には各銀行へお問い合わせください。
また、「屋号入りの口座」と聞くと「個人名を伏せて、屋号名だけで口座を開設できる」と思われがちですが、広く認められているのは、「屋号+氏名」での口座開設であると留意しておきましょう。
最後に、屋号入りの口座を開設するメリットを見ていきましょう。
・信用度向上
なかには個人名の口座への入金を不安に感じるクライアントもいるかもしれません。このような不安を取り除くことに加えて、屋号付きの口座は「遊びや片手間ではなくビジネスをしている」ということをクライアントに伝える最適の方法でもあります。
・新たなビジネスを立ち上げるときに便利
屋号付きの口座であればどの口座がどの事業と紐づいているのかがひと目でわかるので、金銭管理をするうえで混乱を招きにくいのも特長の一つです。また、新たなビジネスを立ち上げる、となった場合に屋号ごとで口座を管理できると帳簿づけも行いやすいでしょう。
開業届に屋号を記入しているのであれば、信用度向上などの理由から屋号入りの口座を持つことが好ましいかもしれません。いずれにしても、ムダな作業を削減するうえで個人用と事業用の口座は分けて管理することが好ましいでしょう。
2. ビジネスカードをつくる
事業用の口座が開設できたら、次はその口座に紐づけてビジネスカードをつくりましょう。
口座の開設と同様に、帳簿づけを考慮したうえで、プライベートの支出と分けたビジネスカードの作成が好ましいでしょう。その他にビジネスカードを作成するメリットには、下記が挙げられます。
- ビジネスカードの年会費は経費として計上できる
- 個人カードよりも限度額を高く設定できる
- 法人に向けたサービスが充実している(クラウド会計ソフトとの連動、オフィス用品がビジネス向け価格で購入できるサービス、出張費削減を目的とする法人向けの安価な旅行プランの提供、など)
以前までは分割払いやリボ払いができないことがビジネスカードの弱点として挙げられていましたが、最近では一括払いに限らないカードも増えているようです。ただし年会費がかかるものが多いので、特徴などを吟味したうえで決めましょう。
3. 会計ソフトを準備する
誤りがないよう税理士に経理業務や確定申告などを依頼するフリーランスもなかにはいるでしょう。しかしながら顧問料は数万円が相場とされていることから、自分一人でやりたいと考える人も少なくありません。そこで個人が帳簿づけを簡単に行なう方法といえば、会計ソフトの活用です。
また、青色申告の最大のメリットとされる65万円の控除を受けるのであれば、賃借対照表や損益計算書の作成を必要とする「複式簿記」が求められます。青色申告では「簡易簿記」を選ぶことも可能ですが、その場合、控除額は10万円にまで減少してしまうので注意が必要です。しかしながら、メリットが大きい「複式簿記」は作成方法がややこしく、自ら作成するとなると途方に暮れる作業でもあります。そこで会計ソフトの力を借りると、銀行やクレジットカードのデータを取り込んで自動仕訳してくれるものも多く、膨大な時間を割かずに確定申告の書類が用意できます。
最近ではスマートフォンなどからでも入力ができ、シンプルかつ使いやすいことを特長とするクラウド会計ソフトも多く登場しています。代表的な会計ソフトには下記が挙げられます。
月額費用はそれぞれ異なるので、まずは無料体験を活用したうえで、今後使用していく会計ソフトを決めてみてもいいかもしれません。
4. 使用したい請求書や見積書のツールを見つける
仕事を受注する際に必要となる見積書と、報酬を受け取る際に欠かせない請求書は、フリーランスが頻繁に作成する書類です。最近ではパソコンやスマートフォンなどのデバイスから、必要項目を入力するだけで簡単に作成できるクラウド見積書・請求書サービスも多く存在します。使用するツールはあらかじめに決めておくと、仕事の受注から支払いまでが円滑に進むでしょう。見積書や請求書の作成には下記のサービスが挙げられます。
Square | Misoca | freee(フリー) | |
---|---|---|---|
特徴 | ・月額費用なし ・ワンクリックで見積書を請求書に変換可能 ・メールでの送信可能 ・継続課金サービスへの切り替えも可能 ・自動リマインダー機能あり ・請求書上の売り上げと対面で受け付けた決済と合算して全体の売り上げを計算できる |
・月額0円から利用可能(無料プランでは、月5通まで請求書の発行が可能) ・有料プランであれば請求書の郵送も可能 ・カレンダーと連携すれば入金予定日をカレンダーに自動登録できる |
・月額980円から利用可能 ・売掛金を自動で計算 ・会計経理業務にも対応 ・スマートフォンからでも操作可能 ・確定申告の書類作成も可能 |
利用方法 | (1)Squareで無料アカウントを作成する (2)Square 請求書アプリをモバイル端末(iOS, Android対応可能)にダウンロードしてアクセス、またはSquareのウェブサイトからもアクセス可能 |
(1)Misocaのアカウントを作成する(2)Misocaのウェブサイトからログイン、またはモバイル端末(iOS, Android対応可能)にアプリをダウンロードしてアクセス | (1)freee(フリー)のアカウントを作成(2)freee(フリー)のウェブサイト、またはモバイル端末(iOS, Android対応可能)にアプリをダウンロードしてアクセス |
上記クラウド見積書・請求書サービスで書類を作成すると、クライアントに書類をメールで送信できます。ただし、なかには書類の郵送を希望する顧客もいるかもしれません。このような要求にもスムーズに対応できるよう、封筒や切手は前もって準備しておくと安心でしょう。
5. キャッシュレス決済を導入する
たとえばヨガインストラクターや整理収納アドバイザーなどは、固定の店舗やスタジオを持たずにさまざまな場所で毎回新しいお客様を相手に仕事をすることもあるでしょう。請求書などで事前払いを受け付けることも可能ですが、当日の現金支払いを受け付ける人も多いようです。しかしながらお釣りを用意したり、現金を持ち運んだりするのには手間や精神的負担がかかるものです。
このような現金の煩雑さから解放してくれるのが、キャッシュレス決済が受け付けられるモバイル決済端末です。たとえばSquareの決済端末はコンパクトで簡単に持ち運べるところが特長です。そのうえ、スマートフォンやタブレットなどにつなげて使用をするため、4GやLTEなどのモバイルネットワーク環境が整っていれば、クレジットカードや電子マネーでの決済を受け付けることができます。もちろん手持ちのWi-Fiから接続することも可能です。お客様から直接料金をもらうビジネスでフリーランスを始めるのであれば、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
金銭管理も自ら行うこととなるフリーランス。帳簿づけや確定申告など、ややこしいように思えるものの、きちんとしたツール選びで作業も簡易化できるでしょう。金銭管理における負担をできるだけ軽減し、ムダな作業を省くうえでも上記ツールを揃えてみてはいかがでしょうか。次回はオフィス環境を整えるうえでのコツを紹介します。
▶︎▶︎▶︎オフィス環境を整えよう
(1)退職前後に必要な手続き
(2)金銭管理を万全にしよう
(3)オフィス環境を整えよう
執筆は2019年11月13日時点の情報を参照しています。2020年2月25日、2020年8月4日に記事の一部情報を更新しました。
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