開業届が受理されるまでの流れ、必要書類と出し方を解説

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

個人で事業を始めようと考えている人の中には、「開業届」について聞いたことがあるものの、どのような届け出なのか詳しくは知らない、どのように提出すればよいか知りたいという人もいるのではないでしょうか。

本記事では、開業届とは何かから始め、提出するメリットとデメリット、提出のステップや注意点を解説します。合わせて、忙しくなりがちな開業時に用意しておきたい役立つツールも紹介します。

📝この記事のポイント

  • 開業届は事業開始から1カ月以内に税務署へ提出する法定の届出で、手数料は不要
  • 事業用口座開設、融資・補助金申請などで開業届の提出は大きなメリットになる
  • 2025年1月以降は控えへの収受日付印が廃止され、e-Taxの受信通知などが証明書類として利用できる
  • 開業届が受理されない原因には記入不備や納税地の誤り、開業日の設定ミスなど
  • 開業後の事業運営には、ウェブサイトやキャッシュレス端末、予約サイトなどのツール準備も重要
目次


開業届とは

開業届とは、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」のことです1。開業届は所得税法第229条に定められた手続きで、新たに事業所得の生じる事業を開始したときに、事業者は納税地を所轄する税務署に開業届を提出することになっています。

開業届を提出するにあたって手数料はかからず、提出期限は事業の開始日から1カ月以内です。

居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。
– 所得税法第229条2

開業届は税務署が管轄地域で営まれている事業を把握するためのものです。所得税法で提出が求められている手続きですが、期限までに提出しなかったからといって、罰金などの直接的な罰則が科されるわけではありません。 ただし、次で述べるようなデメリットが生じる可能性があります。

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開業届を提出するメリットとデメリット

メリット

開業届を提出しておくと、個人事業主としての事業開始が明確になり、事業運営のさまざまな場面で役立ちます。

まず、開業届と青色申告承認申請書をあわせて提出しておくことで、最大65万円(または55万円)の特別控除や損失の繰越、少額減価償却資産の特例といった青色申告の税制面の恩恵が受けられます。

また、開業届は事業開始の証明書類として広く使われ、屋号付きの銀行口座の開設や事業用クレジットカードの申し込みがしやすくなるほか、融資申請、店舗や事務所の賃貸契約、キャッシュレス決済サービスやECサービスの審査などでも重要な書類として扱われます。

補助金や各自治体の創業支援制度でも開業届の提出が求められることが多く、事業の選択肢を広げるためにも提出しておくと安心です。

さらに、開業届を出すことで事業開始日が明確になり、開業前にかかった費用の整理や確定申告の準備がしやすくなるなど、経理面でもメリットがあります。事業の基盤を整える上で開業届は実務的にも精神的にも大きな役割を果たす手続きといえるでしょう。

デメリット

開業届を提出するメリットがある一方で、デメリットがあることも知っておきたいところです。

失業中で失業保険を受けている人の場合、原則として開業届を提出した時点で「失業状態」ではなくなるため、失業保険(基本手当)の受給資格を失います。 一方で、まだ具体的な事業活動を開始していない準備段階など、例外的に受給が認められるケースもあるため、詳細は必ず事前にハローワークへ相談しましょう。

また、年間の合計所得が一定額未満で扶養の対象となっている人でも、開業届を出すと健康保険組合によっては扶養から外れてしまうことがあります。実際には、「開業届の有無」だけで判断する組合もあれば、「年収130万円未満」などの収入基準を満たしていれば扶養継続を認める組合もあり、取り扱いはまちまちです。開業を検討している場合は、事前に加入している健康保険組合に確認しておくと安心です。

開業届が受理されるまでの流れ

開業届の提出から受理までがどんなステップで進んでいくか、実際の手続きをイメージしておきましょう。

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開業日を決める

開業届には「事業を始めた日」を意味する開業日を記入する必要がありますが、店舗営業の開始日やオープン告知日など、どの日を開業日とするかは自由に決めることができます。

ただしフライヤーの印刷費や備品の購入費などは、開業日前にかかった費用の場合、経理処理上「開業費」という科目で計上できます。開業費は原則60カ月(5年)で均等に償却できますが、「任意償却」とされており、支出した年に全額を経費計上することも、数年に分けて計上することも可能です。事業の利益状況を見ながら償却方法を検討することで、節税にも役立ちます。

提出書類を入手する

開業届の届出書は正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、税務署で入手できるほか、国税庁のウェブサイトからダウンロードもできます。書き方を説明したPDFファイルも公開されているので、記入前に目を通しておきましょう。

なお、e-Taxを使い、紙ではなくデジタルで開業届の手続きを行うことも可能です。

提出書類を書く

届出書に提出先、納税地、氏名、住所、屋号、事業内容などの項目を記入します。書き方に不明な点があれば、税務署に対面や電話で確認すると安心です。

ダウンロード版の届出書を使用する場合は、パソコンの画面上で入力したものを印刷することもできます。

開業届を提出する

開業届の提出方法は、所轄の税務署への持参、郵送、e-Taxの3通りです。

以前までは、提出用と控え用の2通を持参・郵送すると、控え用には収受日付印が押されましたが、国税業務のDXの一環で2025年1月より税務署に提出されるすべての文書に関して、収受日付印の押なつが廃止されています3。そのため、持参・郵送するのは提出用の1通のみです。持参・郵送で手続きする際には念のため記入した開業届のコピーを手元に保存しておくと安心でしょう。

e-Taxでの手続きの場合は紙の書類の提出は不要です。

開業届は事業の開始から「1カ月以内」の提出が求められます。事業スタート前に開業届を受理してもらうことはできません。

開業届が受理される

e-Taxで手続きした場合、受付の日付が記された「受信通知」がe-Taxサイト内のメッセージボックスに届きます。この通知が開業届を提出したことの証になるので、印刷するなど保存しておくと後で役に立ちます。また、受信通知から電子申請等証明書を請求することも可能です。請求は無料で、提出日から3年間請求できます4

持参・郵送で手続きした場合、前述の通り、控えへの収受日付印の押なつは廃止されています。当分の間の対応として、持参した場合にはリーフレットに収受した日付や税務署名を記載したものが希望者に交付されます。郵送も、返信用封筒を同封した人には同じリーフレットが返送されます3

開業届が受理されない原因

「開業届を提出したものの受理されない」というケースもあります。次のような原因に心当たりがないか考えてみましょう。

受理されない原因

提出方法に関わらず、開業届が受理されない理由は次の4つが考えられます。

  1. 記入内容・提出書類に不備があった
  2. 納税地ではない税務署に提出していた
  3. 開業日の書き方に問題があった(業種による)
  4. 再提出時に記入内容に食い違いがあった

税務署での対面の手続きの場合は不受理の理由をその場で確認することができるため、「1」の場合はポイントを指摘してもらえます。

「2」については、開業届に記入した「納税地」を管轄する税務署以外に届出書を提出しても、受理してもらうことができません。該当の税務署を調べ、手続きをやり直しましょう。

「3」は、ビジネスに不可欠な免許や許認可、登録などの取得日より前に開業日を設定していると、開業届が受理されないというケースがあるようです。

「4」は何らかの手続きの不備で届出書を再提出する場合に、最初に提出した届出書の記入内容と異なっていると受理されないことがあります。手元にあるコピーを元に、食い違いがないかしっかり確認しながら再提出しましょう。

開業届を修正するには

提出済みの開業届の内容に変更があり、修正したいということもあるかもしれません。基本的に提出した内容の修正はできませんが、必要に応じて開業届を再提出することは可能です。ただ、屋号や事業概要、納税者の姓などの変更は開業届に反映させることが必須ではなく、確定申告の際に正しい最新情報を記載すれば良いことになっています。

唯一、事務所の移転に伴って納税地が変わるときは、1カ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を移転前の納税地を所轄する税務署に提出することが定められています5

開業届の控えの管理

2024年末までに開業届を提出した場合、開業届の控えが手元にあるという人も多いでしょう。控えはいつまで保管すべきか、控えの紛失時はどうすべきか、気になる情報を整理してみます。

開業届の控えの保管は必要?

収受日付印が押された控えがある場合、紛失しないよう保管しましょう。開業届の控えには、開業日や開業届を提出した日付など、大切な情報が記載されています。

国税庁は金融機関や行政機関に対して、「令和7年1月以降は、各種の事務において収受日付印の押なつされた申告書等の控えを求めない」ように通知をしています。そのため、収受日付印が押された控えの提出を求められる場面は少ないと考えられます。ただ、開業日を記載する際に「いつだったっけ……?」とならないように、控えは保管しておくと安心です。

開業届の控えを紛失したら?

先述の通り、2025年1月以降に開業届を提出した場合、控えは発行されません。e-Taxでの提出なら、受送信通知、あるいは電子申請等証明書が開業届を提出した証明として利用できます。

控えをなくした場合、あるいは2025年1月以降に税務署への持参・郵送で提出した場合は、以下のような方法が控えの代わりに利用できます3

保有個人情報の開示請求

税務署で個人情報の開示請求手続きをすることで、提出した書類の写しを発行してもらえます。この手続きはe-Taxを利用してオンラインで行うことも可能です。情報の開示・非開示については、請求から30日以内に通知されます。費用はオンラインなら200円、郵送や窓口なら300円の手数料がかかります6

税務署の窓口での閲覧

開業届に記載した内容を確認したいだけなら、税務署の窓口で自分が過去に提出した書類を閲覧することができます。開業届のコピーを取ることはできませんが、写真を撮ることは可能です7

開業届を提出する上での注意点

ここまでに説明してきたように、開業届の提出自体は複雑な手続きではありません。ただし、開業届を提出する上でいくつか注意したいこともあります。ここでは開業届を提出する上での注意点を個別に詳しく見てみましょう。

開業届提出のデメリットを理解する

開業届を提出するにあたって、すでに開業届のデメリットとして触れた「失業保険を受け取れなくなる可能性がある」「扶養から外れてしまう可能性がある」点には注意が必要です。これらのデメリットがあることを理解した上で、失業中や、扶養控除の対象で家族がいる場合には、きちんと説明した上で開業届を提出しましょう。

事業を廃止するときの手続きも知っておく

「これから開業届を出そうというのに、事業の廃止のことを今から考えるなんて……」と思う人もいるかもしれませんが、事業を廃止するときにも手続きがあるので、念のためどのような手続きが必要なのかおさえておきましょう。

開業届と同じ「個人事業の開業・廃業等届出書」を納税地を所轄する税務署に提出します。青色申告をやめる場合、消費税の課税事業者で廃止する事業以外に所得がない場合には、それぞれ「青色申告の取りやめ届出書」と「事業廃止届出書」も提出します。

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開業時に用意しておきたいツール

ここまでで、開業届の提出についてイメージをつかめたのではないでしょうか。個人事業を始めるにあたって、開業届と合わせて用意しておきたいツールがいくつかあります。これらのツールは、事業を始めることに気を取られて後回しにしてしまいがちです。開業後は日々事業に忙しくなかなか時間を割けないでしょう。開業後すぐ、できれば開業前までに、以下の4つを用意することをお勧めします。

  • 名刺
  • ウェブサイト
  • キャッシュレス決済端末
  • 予約サイト

続いてそれぞれについて詳しく見てみましょう。

名刺

名前と連絡先が書かれた名刺は、自分自身と事業内容を相手に手軽に伝えられるため、どの業種で開業する場合でも用意しておきたいビジネスアイテムです。

デジタル化が進んでオンラインでのコミュニケーションが増えたとはいえ、印象的な名刺を渡されたら相手の記憶に残ることでしょう。相手に覚えてもらうことで、将来的なビジネスにつながるかもしれません。

オンラインで完結できる仕事が増え、開業届を提出する人の中には、ウェブデザインやライティングなど、オンラインで主にやり取りする事業を始めるという人もいるかもしれません。そのような人もいつ急に対面でのミーティングがあるかわかりません。また、ネットワーキングの場で突然名刺が必要になるといったこともあります。

ウェブサイト

ウェブサイトは名刺のデジタル版ともいえます。名刺と同様にどの業種でもウェブサイトは必須といってよいでしょう。

ウェブサイトをSNSで代用している人もいるかもしれませんが、時系列でコンテンツが流れてしまうといった問題があり、SNSとは別に、事業主や事業内容、事業所の住所、単価などについて詳細に記載したウェブサイトを持っておくことをおすすめします。

ウェブサイトは誰にでも簡単に作れるようになりました。Square オンラインビジネスを使えば、グローバルスタンダードのシンプルで使いやすいウェブサイトを無料で作成できます。ITの専門知識は不要です。

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キャッシュレス決済端末

キャッシュレス化が進む中、キャッシュレス決済端末は、お客さまに商品やサービスを提供し、対面で対価を受け取る小売業や飲食業といった事業ではなくてはならないビジネスツールです。

一昔前まではクレジットカード決済を導入するというと、費用面や手続き面で大きな負担が避けられませんでした。近年では、Squareを始め、さまざまなキャッシュレス決済サービスが登場し、キャッシュレス決済の導入のハードルが格段に下がりました。

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業種を問わず、店舗販売をする人に加えて、普段は対面決済の機会がない事業を営む人でもイベントへの出店など屋外での決済が発生する可能性がある場合はキャッシュレス端末の導入を検討してみるとよいでしょう。

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開業にあたって資金が限られているという場合でも、基本的な機能を利用できるフリープランがあります。フリープランで利用を始めて、事業の成長と共に、機能の充実した有料プランに移行するとよいでしょう。

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まとめ

本記事では、開業届とは何かから始め、開業届を提出するメリットとデメリット、提出するときのステップ、注意点について説明し、開業と合わせて用意しておきたいビジネスツールを紹介しました。

個人事業を始めるにあたって開業届の提出を最初の難関と考えていた人もいるかもしれません。具体的な手続きを見てみると、シンプルなもので、本記事で紹介した開業届提出のステップを実行していけば、開業にこぎつけられることでしょう。開業届の提出自体はシンプルなものですが、開業にあたって用意しておきたいツールの準備も忘れずに。いざ事業が始まるとなかなか時間がとれないものです。

よくある質問

開業届は提出しないとどうなりますか?

提出しなくても罰金などの直接的な罰則はありませんが、補助金・融資、事業用口座の開設などで不利になる場合があります。事業開始日が曖昧になり、開業費の処理や確定申告にも影響する可能性があります。

開業届はいつまでに提出すればよいですか?

所得税法により、事業開始日から1カ月以内の提出が求められます。

開業日(事業開始日)はどのように決めればよいですか?

店舗オープン日や実際の取引開始日など、事業を実質的に始めた日を記入します。許認可が必要な業種では、許可取得前の日付を開業日にすると受理されないケースがあるため注意してください。

2025年以降、開業届の控えがもらえない場合はどう証明すればよいですか?

e-Taxの場合は「受信通知」や「電子申請等証明書」が証明として利用できます。紙で提出した場合は、税務署発行のリーフレットや、保有個人情報の開示請求(200〜300円)で提出記録の確認が可能です。

開業届の内容を変更したい場合はどうすればよいですか?

開業届そのものを修正することはできませんが、必要に応じて再提出できます。屋号・事業内容・氏名などの変更は確定申告で反映すれば足り、再提出は必須ではありません。納税地が変わる場合のみ、1カ月以内の届出が必要です。


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執筆は2023年2月21日時点の情報を参照しています。2025年12月17日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。