念願のフリーランスになる前に!退職前後で必ず済ませておくべき手続きとは

数年の修行を経てメイクアップアーティストや写真家として独立、コツコツと勉強を重ねてエンジニアとしてフリーランスに転身……その他にもライターやデザイナー、美容師、整理収納アドバイザーなど、今ではさまざまなアプローチからフリーランスという働き方が選べるようになりました。業務内容は人それぞれですが、共通するのはフリーランスデビュー前に行わなければいけない準備です。今は会社勤めだけれど、近いうちにフリーランスの道を歩む人に向けて、この記事では退職前後に行うべき手続きについて説明します。

目次



そもそもフリーランスとは?

フリーランスとは会社や組織に属さず、仕事を請け負う働き方を指します。

「個人事業主とは何か違いがあるの?」 と疑問に感じる人もいるのではないでしょうか。店舗経営や移動販売などの販売職から、レッスンの指導やレンタルビジネスなど、個人事業主にあたる業種は幅広いですが、定義としては法人を設立しておらず、開業届を提出していることが挙げられます。そのため、開業届を提出していれば、フリーランスも個人事業主とみなされます。「開業届の提出は必須なの?」という点については、後ほど詳しく触れます。

フリーランスへの道を歩むとなると、会社勤めのように場所や時間に縛られない分、生活もガラリと変わるでしょう。自由な生活に憧れて一歩踏み出す人も少なくないものの、会社を離れる前に準備しておかなければいけないことは抜かりなく確認しておきましょう。

審査が必要なものは、会社員のうちに完了しておこう

信用を必要とする契約の審査は、フリーランスになると通るのが難しくなる傾向にあります。たとえば「新たにクレジットカードを作成したい」「ローンを組んでおきたい」「仕事場として部屋を借りたい」という場合は会社員であるうちに完了しておくのが賢明でしょう。

退職後に進めたい手続き

無事退職を迎えたら、以下の5ステップを踏みましょう。

ステップ1. 厚生年金から国民年金へ切り替える

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覚えておきたいこと:

  1. 退職日が証明できる書類は忘れずに会社から取得しましょう
  2. 国民年金の支払いが難しい場合は、猶予してもらうことが可能です
    ▶︎フリーランスになってすぐに安定した収入を得ることはなかなか難しいかもしれません。このような場合は、一定の条件を満たしている場合に限り、免除が受けられます。詳しくは日本年金機構のウェブサイトを確認する、または国民年金担当窓口でご相談ください。

退職日から14日を過ぎてから切り替えの手続きを行なった場合、どうなるの?

手続き自体は行えます。場合によっては離職票など、退職を証明する書類をすぐに手配してもらえないケースもあるでしょう。その際は、その旨を役所の窓口で伝えましょう。

実質忘れてしまっても、会社が厚生年金の喪失手続きをすれば、自動的に国民年金に加入される仕組みになっています。たとえば手続きを行なわなかった場合、納付書は「未納分の納付書」として退職数カ月後に住民登録をしている住所に送付されます。期限内に支払わなければ催告状や催促状が届き、延滞金が発生する可能性もあるので注意しましょう。

余裕を持って期日までに納付できるよう、必要な書類と時間を確保し14日以内に手続きを済ませておくことが望ましいでしょう。

ステップ2. 会社の健康保険から国民健康保険に切り替える

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覚えておきたいこと:
社会保険に「任意継続」という制度があることをご存知でしょうか。この制度を活用すると、退職した後2年間は継続して会社の健康保険に加入できます。メリットとしては、下記が挙げられます。

  • 任意継続制度を活用した保険額には、上限がある
    ▶︎保険額は退職時の標準報酬月額に基づいて計算されますが、標準報酬月額には上限(※)が設けられており、平成31年度時点では30万円に設定されています。つまり前職で30万円以上の月収をもらっていた場合でも、標準報酬月額を基に保険料が計算されます。フリーランスになった後も月収が30万円を超えるようであれば、国民健康保険への加入と比べて保険料を抑えられる可能性があります。
    ※上限は、年によって変更される可能性があります

  • 保険額は原則2年間変わらない
    ▶︎通常保険額は前年の所得を基に算出されますが、任意継続制度を活用すると、原則2年間は保険額が変わりません。そのため、前職よりも報酬が高くなるようであれば、納付額を節約できる可能性があります。まずは市区町村の国民健康保険課に相談してから決めるのが賢明でしょう。

弱点としては、下記が挙げられます。

  • 会社と折半していた保険額は、フリーランスになると全額自己負担になる

参考:【健康保険】平成31年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について(全国健康保険協会)

加入するには条件が二つあります。

・資格喪失日までに健康保険の被保険者期間が継続して2ヵ月以上あること
・資格喪失日(退職日の翌日等)から20日(20日目が土日・祝日の場合は翌営業日)以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること

引用:任意継続の加入条件について(全国健康保険協会)

月収額にもよりますが、このような制度を活用するとフリーランス二年目を終えるまでは保険料を抑えることができるでしょう。

退職日から14日を過ぎても、国民健康保険への加入はできるの?

加入自体は可能ですが、退職日から届出日までに支払った医療費はやむを得ない理由と承認されない限り、全額自己負担となる場合があります。そのため、持病などがある場合は特に注意が必要です。「健康保険資格喪失証明書」などの必要書類の発行が間に合わないようであれば、事前に役場の窓口に相談をしましょう。

また、加入手続きを忘れてしまった場合は、加入した月から支払いが開始するのではなく、雇用保険を受ける資格を喪失した月まで遡って納めなければいけません。つまり原則、申請を忘れていた期間の分も納めることとなります。あまりにも長い間放置していると未納分が多額となる可能性があるので、注意しましょう。

参考:
よくある質問Q&A(北見市役所)
国民健康保険の加入・脱退の届出など(豊橋市役所)

ステップ3. 個人事業の開業届の提出する

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「個人で事業を始めます」と税務署に伝える役割を持つ開業届「フリーランスでも提出は必須なの?」 と疑問を持つ人も少なくないのではないでしょうか。提出期間は事業開始日から一カ月以内とされていますが、実質提出をしなくても罰則はないそうで、期限後も提出は可能です。

参考:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続(国税庁)

開業届を提出すると、以下の二つのメリットが受けられます。

1. 青色申告ができるようになる
個人事業主の確定申告は、青色申告と白色申告の二種類に分かれます。節税をしたい場合は、最大65万円の控除が受けられるうえ、赤字を三年繰り越せる青色申告が望ましいでしょう。ただし、その際には青色申告承認申請書とともに、開業届の提出が必要となります。

2. 屋号で銀行口座が作れる
フリーランスとして新たな門出を迎える人のなかには、「クライアントに覚えやすい名前でビジネスをしたい」「個人名を伏せてビジネスをしたい」と考える人もいるかもしれません。このような場合に活用できるのが、ビジネス名にあたる屋号です。屋号をつけることは義務ではありませんが、開業届に屋号を記入しておくと、プライベートの口座とはまた別に屋号名義で銀行口座を開設できる、というメリットがあります。

ステップ4. 青色申告承認申請書を提出する

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参考:[手続名]所得税の青色申告承認申請手続(国税庁)

前述のように、フリーランスであれば最大65万円の控除が受けられ、赤字を三年繰り越せる青色申告への申請も考慮したいところでしょう。青色申告承認申請書の提出は必須ではありませんが、フリーランス一年目から適用されるには表に記載されている通り、提出期限が定められているので注意が必要です。

ステップ5. フリーランス保険に加入する

最近では、フリーランス特有の事故の補償が受けられる「フリーランス保険」が登場しています。

フリーランス協会が提供している保険に加入すると、仕事先に向かっている最中に事故に遭ってしまった、コワーキングスペースの使用物を誤って壊してしまった、というときの補償から、情報漏えいや著作権侵害などの業務過誤からも守ってもらえたりします。さらに福利厚生が自動付帯されていたり、契約トラブルに関して初回は無料で弁護士に相談ができたりします。詳しい入会方法や年間費用などはフリーランス協会のウェブサイトからご確認ください。

また、顧客の請求書(売掛債権)を買い取ることでフリーランスの即日払いを実現する「フリーナンス」も保険を提供しています。現時点では無料でアカウントを開設するだけでフリーランス特有の事故の補償も行なってくれるそうです。

フリーランスになると、責任を負うのは他の誰でもなく自分です。何かあったときのためにフリーランス用の保険も視野に入れてみるといいでしょう。

自分が望む働き方を手に入れる方法でもある、会社員からフリーランスへの転身。ただし、手続きに関しては金銭面で損をしてしまわないためにも、必要な書類は早めに揃えて、可能な限り期限内に行うことを目指しましょう。

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執筆は2019年11月6日時点の情報を参照しています。2023年6月27日に記事の一部を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash