居酒屋を経営する方法とは?開業までの8ステップと成功のポイント

おいしいお酒や料理を提供し、人々の憩いの場となる居酒屋を経営するには、コンセプトの決定や事業計画の立案など開業までの準備が不可欠です。これから居酒屋を経営したい人に向け、開業までの手順を8ステップに分け、各ステップでやるべきことを詳しく解説します。さらに、居酒屋経営を成功させるために考えておきたいポイントや、経営を効率化するツールも取り上げます。

目次



居酒屋開業までの8ステップ

居酒屋を開きたいと考えたら、まずは以下の8ステップを開業までに進める必要があります。居酒屋を含む飲食店全般の経営には同様のステップに沿ったプランニングが有効です。

  1. コンセプトの決定
  2. 具体的な事業計画の立案
  3. 資金確認・調達
  4. 物件の確保、設備の準備
  5. 資格取得と手続き
  6. メニュー考案
  7. 従業員採用や広告宣伝などの手配
  8. レジや決済システムの導入

各ステップで具体的に何をどう進めるのか、以下、詳しくみていきましょう。

ステップ1. コンセプトの決定

第一に着手すべきは、居酒屋のコンセプトを決定することです。コンセプトとは、誰に、どのような商品・サービスを、どのように提供するかを指し、経営のテーマであり方針ともいえます。

コンセプトの異なるAとBの二つの居酒屋の例を考えてみると、居酒屋の経営がコンセプトにいかに左右されるかがよくわかります。

  メインターゲット 商品・サービスの特徴 雰囲気
A店 50代のビジネスマン 日本各地の日本酒と、味・素材にこだわった料理 ゆったりと落ち着いて飲食できる
B店 50代のビジネスマン 「仕事帰りに軽く一杯」を楽しむリーズナブルなメニュー 活気があり、すぐにアルコールと料理が出てくる

このようにコンセプトを明らかにすると、店名、店舗の立地、内装、メニュー、食器、従業員の制服なども自然とビジョンが浮かびやすくなります。したがって必要な開業資金なども異なり、経営判断の基準も違ってきます。

A店の例なら、ビジネス街や主要駅からアクセスしやすい立地、シックな色合いのインテリアや照明、会話の邪魔をしない静かなBGMなどがふさわしく、それに見合う価格帯が想定されます。B店の例は、同じターゲット層でありながら利用目的が異なるため、駅前など利便性の高い立地で、カウンター席など気軽に立ち寄りやすいスタイルが肝要です。

このように居酒屋のコンセプトを具体的に決めることで、店作りがスムーズになるだけでなく、事業計画や資金計画も立てやすくなります。経営判断に迷いそうなときも、コンセプトに立ち返って考えることが可能です。

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トレンドや利用動向に注意

コンセプトは居酒屋の経営者としての趣向や希望だけで決めるのでなく、飲食業界のトレンドや利用客の動向も調べてみることをおすすめします。

時代に合うメニューやサービスを提供する居酒屋は、情報感度の高い人から受け入れられやすくなります。逆に、ニーズはあっても他店がまだ手掛けていないサービスを経営に取り入れた居酒屋は、意外な人気や話題性を獲得できることもあります。

ステップ2. 具体的な事業計画の立案

事業計画とは、希望的観測ではなく具体的な数字を含むプランとして、これから始める事業経営の在り方を明文化したものです。居酒屋の事業計画を立てる際は、以下のような点を中心に考えます。

  • なぜ開業するのか
  • どんな店にするのか
  • 会社名、店名
  • どれくらいの資金があるのか
  • 開業前の投資計画、借入計画
  • 開業後の売上計画や資金繰り

これらを明確にすると居酒屋の「事業計画書」が作成しやすくなります。金融機関からの融資を受ける場合は審査のために事業計画書の提出が必ず求められるため、現実的な経営ビジョンを基に事業計画を立てましょう。

ステップ3. 資金確認・調達

居酒屋の開業に向け、経営者は開業資金と運転資金を調達します。

  • 開業資金……店舗物件の取得費、設備の導入費、広告宣伝費など、開業準備に関連する資金
  • 運転資金……開業直後から当面の間の出費(賃料、水道光熱費、材料費、人件費、宣伝費など)をまかなうための資金

居酒屋の開業資金は平均で約600万円といわれ、コンセプトや経営のこだわりのポイント次第では1,000万円を超えるケースもあります。その中でも特に店舗物件と内装・設備にかかる費用が大きくなります。

運転資金は居酒屋の経営が軌道に乗るまでの間に必要な費用として、6カ月分ほどを準備しておくことが推奨されます。

居抜き物件とスケルトン物件

居酒屋のための賃貸物件には大きく分けて「居抜き物件」と「スケルトン物件」の2種類があります。前テナントの設備・内装などの造作が残っている居抜き物件を居酒屋経営に利用すると、何もない状態のスケルトン物件を借りることに比べて大幅に開業資金をセーブでき、経営のメリットとなります。

資金の調達方法

多くの場合、居酒屋の開業資金は自己資金と融資の組み合わせとなるため、自己資金をコツコツと貯めておけば融資の調達額が少なくて済みます。自治体などの創業向けの助成金・補助金を居酒屋経営に活用するという手段もありますが、開業後に入金を受けるタイプのものがほとんどなので注意してください。

ステップ4. 物件の確保、設備の準備

居酒屋の物件を選定する前に、出店したい地域とその周辺の店舗物件の家賃相場を調べておきましょう。経営コンセプトと予算という二つの条件を満たす物件は決して多くなく、居抜き物件であればなおさら件数が絞られます。

また、実際に不動産情報のリサーチや下見に行く前に、検討すべきチェックポイントをリスト化していくと効率的です。厨房の広さやレイアウト、店舗周辺の環境など、経営のコンセプトによって譲れないポイントも明らかにしておきましょう。「ステップ1」で決めた経営のコンセプトが明確だと、物件探しや設備の準備もスムーズです。

設備導入のポイント

居抜き物件の場合は賃貸契約に造作譲渡料が加算されますが、それを加味してもスケルトン物件に一から内装や設備を入れるより低コストであるため、居酒屋の経営を考える人にも人気が高いのが実情です。

しかし、スケルトン物件を借りると全てコンセプトにぴったりの内装や設備を導入でき、経営者として思い描いた居酒屋を実現しやすいというメリットもあります。経営方針に合わせて作業台や冷蔵庫、食器洗浄機などの設備は中古品やレンタルを活用する方法もあり、柔軟に検討することで予算の使い方の可能性が広がります。

物件によっては電気工事などが必要なケースもあるため、工事費用なども設備導入コストの一部と考えてプランに含めておくと良いでしょう。従業員の動線、食品衛生法の基準を満たす手洗い専用設備などにもあらかじめ配慮しておくことで、計画修正などの手間を防止できます。

ステップ5. 資格取得と手続き

居酒屋の経営には、国や自治体が定める資格や許可の取得・申請が必要です。以下の三つは多くの居酒屋で開業前に必要となるもので、地域にもよりますがそれぞれ1日から数日で取得・申請できます。

  • 食品衛生責任者資格
  • 防火管理者資格
  • 飲食店営業許可

これらの資格や許可を取得しないまま居酒屋を経営することは違法であるため、注意してください。

食品衛生責任者の資格

食品衛生責任者は、居酒屋を含め飲食店には1店舗あたり1人が常駐していることが定められ、店長や料理長などが取得することの多い資格です。居酒屋でも重要な、安全な食品を提供するために正しい衛生知識を持って調理や販売にあたることを目的としています。

都道府県ごとに決められた会場で講習を受けることで食品衛生責任者の資格を取得でき、一度取得すれば他の都道府県でも使える資格です。なお、栄養士、調理師、製菓衛生師、船舶料理士などの有資格者は、講習を受けずに食品衛生責任者になることができます。

防火管理者の資格

建物全体の収容人数30人以上の場合は、火災の未然防止と火災発生時の対応にあたる「防火管理者」が必要で、もちろん居酒屋も例外ではありません。客席の数ではなく、従業員も含めて建物の中に収容可能な人数を想定して計算します。

防火管理者の資格には「甲種防火管理者」と「乙種防火管理者」の2種類があります。甲種防火管理者は2日間、乙種防火管理者は1日間の講習を受けて資格を取得でき、対象とする建物の床面積や扱う防火対象物の大きさなどによってどちらを取るかが違ってきます。

飲食店営業許可

居酒屋の経営には保健所への「飲食店営業許可」の申請も必須で、無許可での営業は法律で罰せられます。

飲食店営業許可の申請にあたっては、まず保健所に事前相談を行い、店舗の工事完了予定日の約10日前に書類を提出します。その後、保健所が施設検査を実施し、営業許可証が交付されるという流れです。

さらに、深夜0時以降もアルコールを提供する居酒屋の場合は、「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を管轄の警察署に提出する必要もあるので、忘れずに手続きしましょう。

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ステップ6. メニュー考案

お酒や食べ物のメニューは、居酒屋の「顔」ともいえる要素です。コンセプトを体現してお客様の心を捉えるだけでなく、経営としての利益率の向上も考慮したメニュー作りを考えましょう。

居酒屋の利益率に貢献するアルコール飲料はもちろんのこと、食べ物はお客様がメインで注文する看板メニューだけでなく、箸休めとなるようなサイドメニューや追加注文用のメニューも充実していると売り上げにプラスになります。

居酒屋を含め飲食店では食中毒の発生は営業停止処分のリスクに直結するため、提供する飲食物の安全性は経営の絶対条件です。メニュー作りと同時進行で食材の衛生管理体制も検討し、流通経路や保管方法、従業員への衛生安全指導なども経営者として考えておくと良いでしょう。

ステップ7. 従業員採用や広告宣伝などの手配

居酒屋の営業には、キッチン(調理)とホール(接客)の従業員が必要です。従業員の採用は募集開始から1カ月から3カ月を要すると想定し、開店予定日から逆算して求人広告を出す、店のSNSアカウントを作って募集するなどしましょう。

居酒屋の規模にもよりますが、ホールの従業員数は「収容人数÷テーブル数÷4」が目安といわれています。収容客数30人の居酒屋でテーブルが5台なら、曜日や時間帯により1人から2人となります。キッチンはメニューにもよりますが、同規模の居酒屋で焼き物、揚げ物、刺し身、サラダなどのセクションがあればピーク時に2人から3人は必要です。

従業員は居酒屋のコンセプトを体現する役割を担う存在でもあり、貴重な人材を確保しておくために働きやすい環境を用意することも経営手腕の見せどころです。

宣伝・マーケティングは計画性が鍵

居酒屋の経営を円滑に進めるには宣伝やマーケティングも重要です。公式ウェブサイトやSNSアカウントは開店前に開設し、メニューなど店の魅力を発信してお客様を惹きつけましょう。開店日が確定したら、新聞の折り込みやタウン誌などの広告、ポスティングなどで周辺地域への集客施策も計画します。

一度来店したお客様に常連になってもらうために、ポイントカードやクーポン、キャンペーンなど継続利用を促進するマーケティング施策も経営の一環として計画的に進めましょう。店の前を通りがかって入店するお客様を待つだけでは、他店に勝つ経営は難しい時代です。

店内で使うテーブル用のメニューやおすすめメニューのボードも、居酒屋経営の重要なツールとして忘れずに準備しましょう。

ステップ8. レジや決済システムの導入

お客様が会計をする際の決済方法については、遅くとも開店1カ月前の時点でプランを固めておくのが得策です。クレジットカードやQRコード決済などキャッシュレスの決済方法を導入する場合、決済サービスを利用する加盟店になるための審査に数週間から1カ月程度かかります。

居酒屋の経営にレジを導入するなら、オーダーエントリーシステムが使えるPOSレジアプリがおすすめです。注文から会計までのフローを一気通貫して行うことができ、スマートフォンやタブレットで扱うことができる気軽さも魅力といえます。閉店後に行うレジ締めも、POSレジなら集計が簡単なのでミスが減り、作業時間も短縮されるなど、忙しい居酒屋の経営を一つのシステムで大幅に効率化することができます。また、売上管理や在庫管理などもPOSレジで行うことができ、経営全体にとってメリットの多いツールです。何より、多くの決済手段に対応したPOSレジがあればお客様の利便性が上がり、来店機会を逃さない居酒屋経営が可能です。

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成功する居酒屋経営のポイント

無事に居酒屋の開業に漕ぎ着けても、経営を軌道に乗せて成功しないことにはビジネスの継続が難しくなります。そこで、居酒屋経営の成功のポイントを再確認しておきましょう。

店のコンセプトは慎重に決める

居酒屋のおいしいお酒と料理は、それを引き立てる店作りによっていっそう価値が高まります。経営者として「こんな料理を食べてほしい」「こんなふうに楽しんでほしい」という思いを基に、コンセプトを作り込みましょう。

コンセプトからブレることなく経営を進めていくことも重要です。たとえば「中高年向けの、日本酒がおいしい高級居酒屋」が、店に合わない若者向けの流行のドリンクを低価格で提供したら、お客様に違和感を与え、店のコンセプトに共感していた従業員のエンゲージメントも低下するおそれがあります。

このように、コンセプトは居酒屋に関わる全ての人に影響し、経営の骨格となるものです。

出店場所の決定前にリサーチを行う

居酒屋の出店場所も、コンセプトと等しく経営にとって重みのあるものです。一度物件を決めて設備投資の経営判断をしたら、たやすくは後戻りできません。

出店地域の検討段階では、同エリアの競合として居酒屋に限定せずお酒を提供する店のリサーチを行うと良いでしょう。新たな駅や商業施設など今後の都市計画の情報も、居酒屋の立地決めと経営に欠かせません。

気になる物件を見つけたら、居酒屋の営業時間帯に物件の周辺を経営者目線で見て回るのもおすすめです。夕方以降に閑散としているエリアなら、居酒屋には適していない可能性もあります。居抜き物件の場合は、以前の借り主の退去理由も聞いてみましょう。

綿密な資金計画を立てる

居酒屋の開業資金と運転資金は、余裕を持って計画しておくことが基本です。物件にかかる費用が想定よりかさむ、気候や周辺環境の変化で内装工事が長引くなど、予期せぬ事態で資金が尽きて開業できないことがないよう注意しましょう。

資金計画を立てる段階で設備の入手方法や出店地域をある程度絞っておくと、必要な資金額の予測がつきやすくなります。明確なコンセプトと事業計画を打ち立てることが、資金計画、そして経営の要といえます。

集客施策は工夫して打つ

居酒屋の集客のための継続的な施策は、経営安定のポイントでもあります。ただお金をかければ良い施策かというとそうではなく、成功する施策の秘訣は「目的に合っているか」です。

対象が新規顧客とリピーターでは打つべき施策が異なるため、SNSを使ったマーケティングとチラシの配布など、複数のターゲットを対象にした複数の施策を用意すると良いでしょう。

広告を出稿する媒体も居酒屋のコンセプトに合わせ、ターゲット層がよく見るメディアを選ぶことで効果が出やすくなります。集客は経営を左右する重大要素と考えて施策を打ちましょう。

Squareでコストを抑えて効率的な居酒屋経営

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居酒屋の経営には、伝票管理や顧客管理従業員の勤怠管理などさまざまな作業があり、どれも多忙な中でも正確さと迅速さが求められます。前述のPOSレジ(POSシステム)の中には、こうした作業を効率化し、経営をサポートする機能を持つものもあります。

Square レストランPOSレジは、1日の売上高、客数、客単価、忙しい時間帯など経営に役立つ情報を自動で記録します。手作業によるの計算を省くことができるため、業務の効率化が期待できるでしょう。伝票管理、レジ締め、勤怠管理など、従来の居酒屋経営で大きなマンパワーを割いていた業務の助けてくれるPOSレジです。

Square レストランPOSレジは導入が無料で、Squareのアカウントを作成し、iPadにアプリをダウンロードするだけで使い始めることができます。オーダーエントリーシステムはもちろん、メニューやテーブル管理など豊富な機能が利用できます。プランは、月額利用料が無料のフリープランのほか、座席管理やコース管理など高度な機能が利用できる有料のプラスプランが用意されています。

さらに、Squareではキッチンディスプレイシステムも提供しています。ホールで受けた注文内容がキッチンに設置したタブレット端末に送信され、一つのスクリーンで管理することができます。Square レストランPOSレジのフリープランでは月額3,500円、プラスプランでは追加費用なしでキッチンディスプレイシステムを利用できます。

また、Squareの決済端末も合わせて導入すれば、決済ごとの手数料だけでクレジットカードなどさまざまなキャッシュレス決済に対応可能です。明瞭でリーズナブルな手数料体系なので、居酒屋の経営が軌道に乗るまで出費を抑えたいという状況にも適しています。

飲食店での利用が進んでいるPOSレジを導入することで、居酒屋の営業時間内外の業務負担を減らし、経営者も従業員も余裕を持って働きやすくなります。作業の効率化を図り、店のコンセプトと経営本来の面白さを追求してみてはいかがでしょうか。

飲食店ならSquareにおまかせ

Square レストランPOSレジなら、店内、オンライン、デリバリーのオーダーを1か所で管理して飲食店の運営をもっと効率化できます。メニューごとの売上レポートやシフトレポートなど、リピート率アップとコスト削減に役立つ機能が使える有料プランも。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2022年11月29日時点の情報を参照しています。2023年1月31日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash