パラダイムシフトとは?意味・例・使い方をわかりやすく解説

AIの急速な進化や地政学リスクの高まりにより、「パラダイムシフト」という言葉を耳にする機会が増えました。では、パラダイムシフトとは、どんな意味で、具体的には何を指すのでしょうか?本記事で、パラダイムシフトの由来、意味、具体例、ビジネスのパラダイムシフトを乗り切るのに役立つツールなどを押さえましょう。

📝この記事のポイント

  • パラダイムシフトとは常識や価値観が根本から覆る大きな転換を指す
  • 歴史的にも科学や社会で繰り返し起こり、人々の生活様式や考え方を大きく変えてきた
  • サブスク、キャッシュレス、AI活用は現代のビジネスを変える新たなパラダイムシフト
  • パラダイムシフトはイノベーションやトランスフォーメーションよりも広く深い変化を意味する
  • 変化に備えるには柔軟性が不可欠で、Squareなどのデジタルツール活用が有効である。
目次


パラダイムシフトとは?

「パラダイムシフト」(英語ではparadigm shift)とは、「常識や価値観の転換」を意味します。これまで当然だと考えられていた物の見方や考え方が劇的に変化することを指すだけでなく、そこから派生して「定説を覆す」「ステレオタイプを捨てる」「革新的なアイデアによって時代を変える」といった広い意味で使われる場合もあります。

パラダイムとパラダイムシフトの違い

「パラダイム(paradigm)」とは、ギリシャ語で範例を意味するparadeigmaに由来し、ある時代や分野において広く共有されている考え方や価値観、物事の捉え方を指します。

もともと語形変化の一覧表などを指す際に使われていましたが、1962年にアメリカの科学史家トーマス・クーンが著書『科学革命の構造』において、科学的研究の土台となる前提を「パラダイム」と呼び「広く人々に受け入れられている業績で、一定の期間、科学者に、自然に対する問い方と答え方の手本を与えるものである」と新しい意味を与えました。そこから「ある時代に特徴的な思想、価値観」「常識」などと解釈が拡大され、現在では科学だけでなく経済やビジネスなどきわめて広い範囲で使われる言葉となっています。

パラダイムシフトの具体例

人類は、長い歴史のなかでパラダイムシフトを何度も経験してきました。いずれもその時代の常識を覆す発見や説が唱えられたことで、前提や価値観が大きく移り変わったという点が共通しています。ここでは、科学、ビジネス、社会の分野におけるパラダイムシフトの例を見てみましょう。

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科学の例

自然界における法則の発見は、人類史に大きなパラダイムシフトをもたらした出来事です。中世ヨーロッパでは、地球が宇宙の中心に静止し、太陽や月、星が地球の周りを回っているという天動説が信じられていました。しかし、16世紀にコペルニクスが地動説を唱え、17世紀にガリレオやケプラーなどの科学者がこの説を裏付け、ニュートンが万有引力の法則を発見したことにより、天動説という常識が覆されたのです。この一連の流れにより、宗教的世界観から科学的世界観への大転換が起こり、近代科学の発展への道筋が生まれました。

ビジネスの例

ツールの進化がパラダイムシフトを起こすこともあります。たとえば写真撮影のための製品は、フィルムカメラ、デジタルカメラ、スマートフォンへと変遷してきました。これは単に撮影手段や技術が進化しただけではありません。撮影そのものが「特別な瞬間を記録して長く残す」だけでなく、「即時的に状況を伝える」「画像から情報を読み取る」という役割も担うことで、まったく新しいコミュニケーション方法を生み出し、支払いや本人確認など、生活のさまざまなプロセスを変えたのです。

2023年にMMD研究所と日本フォトイメージング協会の共同調査によれば、写真撮影できる端末の所有に関してはスマートフォンが約5割で最も多く、フィルムカメラは1割以下でした1

写真撮影できる端末の所有率(複数回答)

端末 所有率
スマートフォン(Androidなど) 50.8%
スマートフォン(iPhone) 49.7%
コンパクトデジタルカメラ 34.7%
タブレット 28.0%
デジタル一眼レフ/ミラーレス 16.1%
ガラケー 10.1%
フィルムカメラ 8.4%
インスタントカメラ 6.8%

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デジタル技術の進化は、買い物の方法も大きく変えました。現在は家から出ずともパソコンやスマートフォン上で必要なものを購入できます。かつて店頭販売が中心だった時代は、「特定の物理的な場所」に行って買い物をするのが一般的で、店舗がない地域の住民や、交通手段が限られている人、また身体が不自由な人には購入の機会自体が限られていました。Eコマースは、そんな買い物の常識を覆し、場所や身体的な制約にかかわらず平等な買い物の機会を実現したのです。

ネットショッピング利用世帯の割合の推移(二人以上の世帯)2

2014年 25.1% ██████████
2015年 27.6% ████████████
2016年 27.8% ████████████
2017年 34.3% ████████████████
2018年 39.2% ███████████████████
2019年 42.8% █████████████████████
2020年 48.8% ████████████████████████
2021年 52.7% ██████████████████████████
2022年 52.7% ██████████████████████████
2023年 53.5% ███████████████████████████
2024年 55.3% ████████████████████████████

社会の例

テレワークの浸透も、従来の価値観や常識を覆した出来事です。それまで企業にはオフィスがあるのが当たり前であり、「仕事はオフィスでするもの」でした。

しかしコロナ禍を経てテレワークが珍しくなくなった現在、小規模企業のなかには自前のオフィスを持たないところもあるほか、大企業でも毎日の出社を不要とする例があります。その結果、従業員はオフィスの通勤圏内に住む必要がなくなり、地方に住みながら都市部の会社で働くことが可能になりました。これは、首都圏への一極集中や地方の人口減少という社会課題を解決しうる変化です。実際に内閣府ではテレワークを地方創生施策の一つに位置づけ、地方へのサテライトオフィスの設置などを支援しています。

ビジネスにおけるパラダイムシフトとは

ビジネスにおけるパラダイムシフトとは、これまでのアプローチを大きく転換することともいえます。上でカメラやEコマースの例を取り上げましたが、ここではもう少し最近のパラダイムシフトを見ていきましょう。

サブスクリプション型ビジネスモデルの台頭

「所有」を重視しない風潮もパラダイムシフトの一つです。2000年代以降、特に2008年の金融危機や環境問題への意識の高まりを背景に、「所有することが豊かな生活の象徴である」という従来の価値観が揺らぎ、利用すること自体に価値を置く考え方が広がりました。

こうした背景のなかで生まれたのがサブスクリプション型ビジネスモデルです。ソフトウェアや音楽だけでなく、かつては購入が当たり前だった車や洋服、家具、家電などといった製品まで定額料金で使えるサービスが登場し、「所有せずに利用する」という消費行動は今や多くの場面で定着しつつあります。

日本のサブスクリプション型Eコマース市場規模は2024年に約164.4億米ドルに達し、2033年には約3,722億3,000万ドルにまで拡大すると予測されています3

利用を重視する風潮によって、商品やサービス設計における思考も大きく変わりました。定額利用料で収益を上げるには「使い続けてもらう」ことが事業継続の鍵となるため、企業は顧客との長期的な関係を重視するようになったのです。製品そのものよりも体験に価値を置く考え方は、現在ではサブスクリプション型ビジネスを提供する企業以外にも広がっています。

キャッシュレス決済の普及

キャッシュレス決済の広がりも大きなパラダイムシフトです。かつて買い物とは現金と品物を交換することでしたが、現在はキャッシュレス決済によって現金をやり取りする必要がなくなりました。モバイルウォレットやQRコード決済を利用すればスマートフォン一つで買い物を済ませられるため、財布を持たずに外出する人も珍しくありません。

日本のキャッシュレス決済比率(%)2010年〜2024年4

2010年 13.2% ████▌
2016年 20.0% ████████
2021年 32.5% ████████████████
2022年 36.0% ██████████████████
2023年 39.3% ████████████████████▌
2024年 42.8% ██████████████████████

キャッシュレス決済が普及した要因の一つは、利用できる店舗が増えたことです。その背景には、中小企業や個人事業主でも導入しやすい決済サービスの存在があります。従来は、クレジットカードなどのキャッシュレス決済の導入には高額な端末などへの投資が必要なうえに手続きが煩雑で、中小企業や個人商店にはハードルの高いものでした。しかし現在普及しているような決済サービスが、審査のプロセスをシンプル化し、低コストで手間なく導入できるようにしたおかげで、小規模店舗でも手軽にキャッシュレス決済を受け付けることが可能になりました。

キャッシュレス決済を利用できる店舗が増えたことで、今では「現金しか使えない店は避ける」といった人もいます。以前なら存在しなかった「決済手段によって買う場所を決める」という新しい基準が生まれたこともまた、パラダイムシフトといえるでしょう。

AIとデータ活用

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最近特に注目されているパラダイムシフトといえば、AIとデータの活用かもしれません。かつて人間にしかできないと思われていた思考や創造といった領域さえも機械が担いつつある今、経済、労働、医療、芸術、教育など多岐にわたる分野の仕組みが大きく変わろうとしています。OpenAI社が開発したAIモデルのChatGPTは公開後、わずか5日で100万人ユーザー5を突破し、さらにFortune 500企業の92%がOpenAIの製品を導入しているそうです6

たとえば、従来価値があるとされてきた専門知識や経験の豊富さは、今後は以前ほど重視されなくなる可能性があります。法律の分野ではAIが過去の判例などをすぐに探し出せるようになり、医療の分野ではAIが画像診断や手術をサポートする例が登場しました。

また、デザインや執筆、イラストやアートの制作といった分野でも、AIがアイデアを生成してアウトプットを自動化できることで、人間の創造活動そのものの価値が問われるとともに、それを享受する側の受け取り方や感性にも影響が出始めています。さらに、ビジネスでも業界を問わず、データを持ちAIを活用できる企業が圧倒的に有利になる構図へと変化しています。経験や勘に頼る事業は後れを取り、データを活用した予測分析を行える企業が競争で優位に立つ時代になりつつあるのです。

AIとデータによって、社会が今後どのような変化を遂げるのかについては、さまざまな予測がなされています。しかしどんな未来になろうとも、テクノロジーの進化を受け入れて既存の前提や従来のやり方を柔軟に見直す姿勢が必要なのは間違いないでしょう。

パラダイムシフトの使い方と注意点

ここまでパラダイムシフトについて見てきましたが、似たような言葉に「イノベーション」や「トランスフォーメーション」があります。

イノベーションとは、技術や仕組みの革新を意味します。これは、新しいアイデアや製品を生み出すことであり、たとえば「スマートフォンはイノベーションの結果である」という使い方ができます。

トランスフォーメーションは、プロセスや組織、戦略、枠組みなどの構造的な変革です。たとえば、社内連絡をFAX送信からスマートフォンを利用したメッセージ共有に変えることはトランスフォーメーションの一つです。

これらに対してパラダイムシフトとは、社会の前提や人間の価値観の根本的な転換を指します。技術や仕組みの変化ではなく、「物事に対する捉え方や考え方が大きく変わるかどうか」が焦点です。そのため、「スマートフォンの登場によってパラダイムシフトが起こった」という使い方はありますが、「スマートフォンはパラダイムシフトである」「スマートフォンを利用したパラダイムシフト」などという表現は焦点がずれてしまうかもしれません。

単なる変化をむやみにパラダイムシフトと呼ぶのではなく、その変化が社会全体の前提を覆すほどのものかどうかを考慮したうえで、慎重に使いましょう。

Squareで備える、ビジネスのパラダイムシフト

パラダイムシフトが起こっても生き残るビジネスであり続けるには、新たな社会に対応できるツールの導入が欠かせません。今回はキャッシュレス決済やデータ活用、Eコマースに対応するツールとしてSquareを紹介します。

キャッシュレス化への対応

Squareは、無料でキャッシュレス決済を導入できるサービスです。アカウントを作成すれば、最短で当日のうちに申し込みが完了し、キャッシュレス支払いを受け付けられるようになります。

初期費用や月額利用料は発生せず、必要なのは決済端末の代金と決済手数料のみ。「iPhoneのタッチ決済」または「Tap to Pay on Android」機能を利用して自身のスマートフォンを決済端末として利用すれば、端末費用もかかりません。

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決済手数料は基本的には3%台ですが、年間キャッシュレス決済額が3,000万円未満の中小企業が新規にSquareを利用する場合は、クレジットカードの対面決済手数料が2.5%となります。

Squareなら今すぐキャッシュレス決済導入できる

カード決済、タッチ決済、電子マネー決済、QRコード決済が簡単に始められます

POSレジと売上管理の進化

Squareのアカウントを作成すれば、​Square POSレジも利用できます。Square POSレジの特長は、データに基づく事業運営を簡単に行える点です。会計や支払いの処理だけでなく、販売した商品名や価格、個数、顧客といったデータが自動で集計および分析されるため、売れ行きの傾向などを手間なく把握し売上アップに向けた打ち手を実行できます。

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また、在庫管理予約の受け付けと管理スタッフ管理などの機能とも連携するため、データをあわせて活用すれば、在庫の補充や混雑状況にあわせたスタッフの配置管理など、効率的な店舗運営を実現できるでしょう。

オンラインとオフラインの統合

Squareには、洗練されたウェブサイトを簡単なステップで開設できるSquare オンラインビジネスという機能もあります。事業のタイプごとに用意されたテンプレートを選んで文章や写真を追加するだけで、店舗のホームページや予約サイト、ECサイトが完成します。また、売上管理、在庫管理、顧客管理などの機能とも連携してオンライン・オフラインを問わずデータを1カ所に集約できるため、事業運営の効率が上がります。

まとめ

パラダイムシフトは何度も起こるものであり、長く事業を続けるには柔軟に対応する姿勢が必要です。時代の流れを読んで必要な対策を見極めれば、価値観の大転換に直面しても大きな打撃を受けずに済む可能性があります。まずは今回見たキャッシュレス決済、EC、データ活用などへの対応が済んでいるかどうかを見直し、Squareなどのツールを活用して変化に対する早めの備えを心がけましょう。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2019年4月22日時点の情報を参照しています。2025年9月1日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash