介護タクシー開業のための12のステップとは?保険適用、必要資金、補助金を解説

要介護者や体の不自由な人の外出をサポートする介護タクシーをビジネスとして開業するためには、提供するサービス内容に応じた準備が必要です。介護タクシーの種類や介護保険適用の有無の他、開業に必要な資格や許認可も理解しておく必要があります。この記事では、介護タクシーの開業資金の目安額や、利用可能な補助金・助成金について合わせて解説します。

目次



介護タクシーとは?

介護タクシーとは、介護や介助が必要で移動手段に制限のある人などを目的地まで輸送するタクシーサービスです。一般的に、介護タクシーには車いす利用者のためのリフトやスロープなどが車両に付帯し、以下のような人にサービスを提供します。

  • 要介護や要支援の認定を受けている人
  • 障害や特定疾病を持ち、公共交通での移動が困難な人
  • けがや病気で歩行が一時困難な人

介護タクシーは、事業形態により対象利用者が異なります。とはいえ、65歳以上の人が総人口の3割近くを占める超高齢社会の日本で、介護が必要な高齢者も増加中であることから、介護タクシーを開業する重要性は今後ますます高まっていくことが予想されます。

「介護保険適用」から考える介護タクシーの種類

介護タクシーには、「介護保険が適用されるサービス」と「介護保険が適用されないサービス」の大きく二種類があります。どちらの形態で運営するかによって、開業に必要な資格や提供できるサービスも異なります。

介護保険が適用される介護タクシーは、「介護保険タクシー」と呼ばれることもあります。要介護1から5の認定を受けた人のうち、介護保険タクシーの利用がケアプランに含まれる人が対象で、その用途も通院、通所、行政や銀行手続き、選挙の投票など「日常生活上または社会生活上必要な行為に伴う外出」と介護保険制度で厳格に定められています。原則として、家族など介助者は同乗できません。

介護保険タクシーの利用者は車いすやストレッチャーなどを使うことがほとんどで、ドライバーは利用者のタクシーまでの移動や乗降の介助、病院など訪問先での会計などのサポートも行うことが認められています。そのため介護保険タクシーは、法律上は訪問介護サービスの一部とみなされ、ドライバーには介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)という資格の取得が求められます。

なお、介護保険適用の有無を問わず「介護タクシー」と呼ぶこともあれば、介護保険適用のタクシーのみを「介護タクシー」と呼ぶこともあり、厳密に名称は定められていません。

介護保険が適用されないサービスは、一般的に「福祉タクシー」と呼ばれます。福祉タクシーではドライバーは利用者の乗降や訪問先でのサポートは行えないものの、介助者の同乗が可能で、利用対象者も用途も限定されないため、趣味、観光、仕事などにも使えるという特徴があります。一般のタクシーに限りなく近い存在でありながら、車いす用のリフトなどの設備を備えたものが福祉タクシーと呼ばれます。

介護タクシーのビジネス運営方法

介護タクシーをビジネスとして開業するには、個人運営、個人FC(フランチャイズ)、法人運営の3パターンがあります。

個人運営の場合、個人事業主として営業許可を取得して開業するため、法人設立などの手続きが不要で比較的早く介護タクシーのビジネスをスタートできるというメリットがあります。しかし、介護保険タクシーとしての運営には法人格が必要であるため、個人事業主では不可となります。

介護タクシー事業を営む企業に加盟し、フランチャイズとして開業する方法では、企業の知名度による社会的信用の獲得と集客、業界情報の入手がしやすい点がメリットです。加盟時に支払うFC加盟費や研修費、月々数万円のロイヤリティなどのコストが発生するものの、FC加盟店として開業するためのサポートもあります。必要な資格を満たせば、介護保険タクシーのサービスも提供可能です。

自分で法人を設立して開業する方法では、必要な資格取得や手続きを経て、介護保険タクシーとして運営できます。保険適用により利用者の負担額が小さくなることで、利用してもらいやすくなるという好循環が生まれます。

ただし、FC加盟以外の介護タクシーの運営には、集客という大きな課題が存在します。介護タクシーを開業する際は、新聞に折り込みチラシを入れる、リーフレットを施設や店舗に設置してもらうといった地域に根差した方法で認知度を高めていきましょう。同時に、ウェブサイトの存在も、介護タクシーの信用を大きく左右します。親しみやすさだけでなくプロフェッショナルな印象のウェブサイトで、初めての利用者にも良いイメージを与えることが可能です。Square オンラインビジネスのような無料でネットショップを制作できるサービスを活用すれば、ビジネスやサービス内容の紹介はもちろん、サイト内で決済させる仕組みも開業までに簡単に導入できます。

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介護タクシー(介護保険タクシー)開業までの12のステップ

介護保険タクシーを法人として開業する場合、大きく分けて四つのビジネス上の手続きが求められ、同時進行したとしても開業まで最低でも4カ月ほどを要します。

  • 法人を設立
  • 訪問介護の事業所として指定を受ける
  • 介護タクシーの営業許可(経営許可)を取得
  • 運輸開始届を提出

これらの手続きに求められる条件を満たし、開業に至るまでのステップを、一つずつ確認しておきましょう。

1. 開業資金を用意

介護タクシーの開業には、一般的に250万から450万円程度の資金が必要だといわれています。開業要件の範囲内であれば、中古車両や自宅を使うなどして開業資金を抑えることもできます。

介護タクシーの経営許可を運輸局から取得する際に、金融機関の残高証明も求められるため、資金はそれまでに確実に用意しておきましょう。

参考:一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定) 経営許可申請書作成の手引き(中部運輸局)

2. 二種免許を取得

普通自動車免許または大型自動車免許のうち、自家用車を運転する一種免許とは別の、二種免許(第二種運転免許)を取得することで、人を乗せて運転し、運賃をもらうことが可能になります。

二種免許の教習にかかる費用は30万円前後で、合格後に応急救護講習と旅客車講習も受けます。

3. 介護職員初任者研修を修了

介護保険タクシーのドライバーに必要な介護職員初任者研修を修了し、介護の初歩の知識を身につけます。実習はなく、自主学習と通学を合わせた130時間(15日程度)のカリキュラムを受講後、筆記試験を受けます。受講料は4万から12万円と開催元により異なります。

4. 営業所、車庫を決定

法人を設立するためには営業所の所在地が必要です。賃貸物件を利用する他、自宅住所を所在地とすることも可能ですが、後の介護タクシーの営業許可の取得で求められる条件をクリアしていなくてはいけません。

  • 営業所の住所は、ビジネスの営業を行う都道府県内にある
  • 事務所、休憩・仮眠施設がある
  • 最低3年の使用権限がある
  • 車庫が併設されている(※半径2キロ圏内でも可)

この他にも、さまざまな開業要件が設けられているため、事前に確認してから営業所を決定するといいでしょう。

5. 法人を設立(届出先:法務局、税務署)

個人でなく法人として介護タクシーを開業するために、株式会社や合同会社などの法人として法務局で登記し、法人用口座を作って税務署に届け出ます。登記申請の際は、法人の印鑑を用意し、定款には介護タクシー開業の目的として「介護保険法に基づく訪問介護事業、介護予防・日常生活支援総合事業」と記載することを忘れないようにしましょう。

6. 車両を用意

介護タクシー車両として、車いすやストレッチャーを乗せるリフトやスロープ、回転式のシートなどの設備がついた車両を調達します。中古なら100万円以下の車両もあります。

7. 営業許可(経営許可)を取得

介護タクシーは運送事業の一種として、運輸局から「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)」の経営許可を取得することで開業できます。多くの要件を満たし、法令試験に合格するなど、トータル4カ月前後の期間をかけて許可が降ります。許可取得後、登録免許税を支払います。

8. 車両登録(届出先:運輸局)

経営許可が降りる際に「事業用自動車等連絡書」をもらい、運輸局で車両登録を行います。

9. 訪問介護事業所の指定申請(届出先:都道府県)

介護保険法に基づく「訪問介護事業」として指定を受けることで、介護保険適用の介護タクシーを開業することが可能になります。この申請には、人員や設備などの詳細な要件のクリアが必要です。要件や手続き方法は都道府県ごとに異なります。たとえば、東京都では新規で指定を受けたい事業者には研修の受講が求められています。なるべく余裕を持って、開業を予定している地域の要件を確認しましょう。

10. 損害賠償保険に加入

対人8,000万円以上かつ対物200万円以上の任意保険か共済に加入します。

11. ウェブサイト、名刺、チラシなどを作成

開業に向け、ウェブサイトなどマーケティングツールを用意します。介護タクシーの利用者をイメージしながら、デザインや使いやすさを意識して作ると良いでしょう。

また、介護タクシーに使う車両には、事業所名(屋号)の他、「限定」や「福祉輸送車両」などの車体表示が義務付けられているため、決められたサイズや仕様で必ず開業前に表示します。

12. 開業し、 運輸開始届を提出(届出先:運輸局)

折り込みチラシなどで告知の上、開業したら「運輸開始届」を提出します。以上をもって介護保険タクシーの開業手続きは完了です。

介護タクシー開業に使える補助金・助成金

介護タクシーの開業にあたり、国や自治体の補助金・助成金を申請することも可能です。開業後にも使えるものがほとんどです。

  • 地域公共交通確保維持改善事業
    車両や設備のバリアフリー化のための補助金。介護タクシー車両の購入にも利用可。
  • 小規模事業者持続化補助金
    介護タクシーの車椅子・酸素などの購入、新サービス販促チラシやウェブサイトの作成にも利用可。
  • キャリアアップ助成金
    有期雇用労働者を正規雇用労働者として雇用した場合や、従業員の健康診断費用を事業所が負担した場合などに利用可。
  • 地域雇用開発助成金
    求人の少ないエリアで、地元人材を長期雇用した場合に利用可。
    この他、都道府県によっては「介護タクシー向けに交付される補助金」もあるので、開業予定の自治体の補助金について調べてみましょう。

要介護者や障害者の足となる介護タクシーを開業することは、当事者のニーズを満たすだけでなく、その家族や地域社会にも貢献することになります。提供したいサービスのタイプに合わせた介護タクシーの開業準備を進め、生活インフラの一つとして役立つビジネスを育てていきましょう。

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執筆は2021年12月15日時点の情報を参照しています。2023年6月27日に記事の一部を更新しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash