介護タクシー開業のための12のステップとは?保険適用、必要資金、補助金を解説

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

高齢化が進む日本では、通院や外出といった日常の移動に不安を抱える人が年々増えています。 そうした中で注目されているのが、介護や介助が必要な人の移動を支える「介護タクシー」です。

介護タクシーは、単なる移動手段ではなく、高齢者や障害者の生活を支える重要な社会インフラの1つです。一方で、介護保険の適用有無によってサービス内容や開業要件が異なり、制度の理解が不十分なままでは、開業準備でつまずいてしまうケースも少なくありません。

この記事では、介護タクシーの基本的な仕組みから、介護保険との関係、ビジネスとして開業する方法、そして介護保険タクシーを法人として始めるまでの具体的なステップまでを、順を追って分かりやすく解説します。

📝この記事のポイント

  • 介護タクシーは、介護や移動支援を必要とする人の外出を支える、地域インフラとして重要性が高まっている
  • 介護タクシーには、介護保険が適用される「介護保険タクシー」と、適用されない「福祉タクシー」がある
  • 介護保険タクシーを運営するには法人化が必須で、訪問介護事業所の指定と運輸局の営業許可が必要
  • 開業には資格取得、車両準備、営業所・車庫の確保など複数の手続きがあり、約4カ月の準備期間を要する

目次



介護タクシーとは?

介護タクシーは、介護や介助が必要で、移動手段に制限のある人などを目的地まで輸送するタクシーサービスです。一般的に、介護タクシーには車いす利用者のためのリフトやスロープなどが車両に付帯し、以下のような人にサービスを提供します。

  • 要介護や要支援の認定を受けている人
  • 障害や特定疾病を持ち、公共交通での移動が困難な人
  • けがや病気で歩行が一時困難な人

日本では、65歳以上の高齢者が総人口の約3割1を占める超高齢社会が続いており、通院や外出時の移動支援に対するニーズは今後も高まると見込まれています。こうした背景から、介護タクシーは単なる移動手段にとどまらず、高齢者や障害者の生活を支える地域インフラの1つとして、その重要性が年々増しているサービスといえるでしょう。

介護タクシーの種類

介護タクシーには、「介護保険が適用されるサービス」と「介護保険が適用されないサービス」の大きく2種類があります。どちらの形態で運営するかによって、開業に必要な資格や提供できるサービスも異なります。

介護保険が適用される介護タクシー(介護保険タクシー)
介護保険が適用される介護タクシーは、「介護保険タクシー」と呼ばれることもあります。要介護1〜5の認定を受けた人のうち、介護保険タクシーの利用がケアプランに含まれる人が対象で、その用途も通院、通所、行政や銀行手続き、選挙の投票など「日常生活上または社会生活上必要な行為に伴う外出」と介護保険制度で厳格に定められています。趣味や観光、買い物のみを目的とした外出は原則として対象外となり、また、家族など介助者は同乗できません。

介護保険タクシーでは、利用者が車いすやストレッチャーを使用するケースが多く、ドライバーは単なる運転にとどまらず、乗降介助や移動介助、訪問先での簡易的な支援(会計補助など)を行うことが認められています。そのため制度上は、介護保険タクシーは「訪問介護サービスの一部」として扱われ、ドライバーには介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)修了が必須とされています。

なお、介護保険適用の有無を問わず「介護タクシー」と呼ぶこともあれば、介護保険適用のタクシーのみを「介護タクシー」と呼ぶこともあり、厳密に名称は定められていません。

介護保険が適用されない介護タクシー(福祉タクシー)
介護保険が適用されないサービスは、一般的に「福祉タクシー」と呼ばれます。福祉タクシーではドライバーは利用者の乗降や訪問先でのサポートは行えないものの、介助者の同乗が可能で、利用対象者も用途も限定されないため、趣味、観光、仕事などにも使えるという特徴があります。一般のタクシーに限りなく近い存在でありながら、車いす用のリフトなどの設備を備えたものが福祉タクシーと呼ばれます。

「介護タクシー」という呼び方は、

  • 介護保険が適用されるタクシーのみを指す場合
  • 福祉タクシーを含めた総称として使われる場合

の両方があり、法律上、名称の使い分けが厳密に定められているわけではありません。そのため、利用者や開業希望者にとっては、名称だけで判断せず、介護保険が適用されるかどうか、提供できるサービス内容は何かを確認することが重要です。

介護タクシーのはじめ方

介護タクシーをビジネスとして開業するには、①個人運営、②フランチャイズ(FC)加盟、③法人運営の3パターンがあります。

①個人運営(個人事業主として開業)
個人運営では、個人事業主として営業許可を取得し、介護タクシーを開業します。法人設立が不要なため、比較的手続きが少なく、スピーディーに事業を始められる点がメリットです。ただし、個人運営で提供できるのは、介護保険が適用されない福祉タクシーに限られます。

②フランチャイズ(FC)加盟による運営
介護タクシー事業を展開する企業に加盟し、フランチャイズとして開業する方法もあります。
この場合、

  • 企業名による一定の社会的信用が得られる
  • 開業ノウハウや業界情報を共有してもらえる
  • 集客や運営面のサポートを受けられる

といったメリットがあります。特に、初めて介護タクシー事業に取り組む人にとっては、事業の立ち上げハードルを下げやすい選択肢です。

一方で、

  • 加盟時のフランチャイズ加盟費
  • 研修費用
  • 月々のロイヤリティ
    といったコストが発生します。また、必要な資格や法人要件を満たせば、FC加盟であっても介護保険タクシーとしての運営は可能です。

③法人運営(自社で法人を設立)
自ら法人を設立して開業する方法では、必要な資格取得や各種手続きを経て、介護保険タクシーとして運営することが可能になります。

介護保険が適用されることで、利用者の自己負担額は原則1〜3割に抑えられるため、継続的に利用されやすく、安定した需要につながりやすいという特徴があります。その結果、地域の医療機関や介護事業所、ケアマネジャーとの連携が進み、事業としての基盤を築きやすくなります。

一方で、法人設立や指定申請など、開業までの準備には一定の時間と手間がかかる点は理解しておく必要があります。

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介護タクシー(介護保険タクシー)開業の12ステップ

介護保険が適用される介護タクシー(介護保険タクシー)を法人として開業する場合、一般的なタクシー事業とは異なり、介護保険制度と運送事業の両方に関わる手続きが必要になります。そのため、開業までには主に次の4つの手続きを段階的に進めることが求められます。

  • 法人を設立する
  • 介護保険法に基づき、訪問介護事業所として指定を受ける
  • 運輸局から、介護タクシーの営業許可(一般乗用旅客自動車運送事業〈福祉輸送事業限定〉)を取得する
  • 開業時に、運輸開始届を提出する

これらは互いに関連しており、すべてを並行して進められるわけではありません。申請書類の準備、審査期間、要件確認などを含めると、スムーズに進んだ場合でも開業までに最低4カ月程度を要するのが一般的です。

以下では、介護保険タクシーを開業するまでに必要な12のステップを、順を追って解説していきます。

1. 開業資金を用意

介護タクシー(介護保険タクシー)の開業には、一般的に250万〜450万円程度の資金が必要だといわれています。この金額には、車両取得費用だけでなく、開業に必要な各種手続きや設備投資、開業後すぐに発生する運転資金も含まれます。

開業要件を満たしていれば、中古車両の活用や自宅を営業所とすることで、初期費用を抑えることも可能です。一方で、車両設備や営業所要件は厳格に確認されるため、コスト削減を優先しすぎると、後の許可申請でやり直しが発生するケースもあります。

また、介護タクシーの営業許可(経営許可)を運輸局から取得する際には、事業を継続できるだけの資金力があることを示すため、金融機関の残高証明書の提出を求められるのが一般的です2。このため、自己資金を含めた開業資金は、許可申請の前段階までに確実に準備しておく必要があります。

2. 二種免許を取得

普通自動車免許または大型自動車免許のうち、自家用車を運転する一種免許とは別の、二種免許(第二種運転免許)を取得することで、人を乗せて運転し、運賃をもらうことが可能になります。

二種免許の教習にかかる費用は30万円前後で、合格後に応急救護講習と旅客車講習も受けます。

3. 介護職員初任者研修を修了

介護保険が適用される介護タクシー(介護保険タクシー)を運営する場合、ドライバーには
介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)の修了が求められます。

これは、介護保険タクシーが制度上、「訪問介護サービスの一部」として位置づけられているためです。単なる移送ではなく、利用者の移動や乗降に伴う身体介助を行うことが前提となるため、介護に関する基礎的な知識と技術を身につけている必要があります。

実習はなく、自主学習と通学を合わせた130時間(15日程度)のカリキュラムを受講後、筆記試験を受けます。受講料は4万から12万円と開催元により異なります。

4. 営業所・車庫を決定

法人を設立するためには営業所の所在地が必要です。賃貸物件を利用する他、自宅住所を所在地とすることも可能ですが、後の介護タクシーの営業許可の取得で求められる条件をクリアしていなくてはいけません。

介護保険タクシーを法人として開業するには、営業所および車庫の所在地をあらかじめ確定させておく必要があります。営業所や車庫は、単に「場所があればよい」というものではなく、道路運送法や関係法令で定められた要件を満たしていなければなりません。

求められる主な要件
一般的に次のような条件が求められます2

  • 営業所の住所は、ビジネスの営業を行う都道府県内にある
  • 事務所、休憩・仮眠施設がある
  • 最低3年の使用権限がある
  • 車庫が併設されている(※半径2キロ圏内でも可)

この他にも、さまざまな開業要件が設けられているため、事前に確認してから営業所と車庫を決定するといいでしょう。

5. 法人を設立(届出先:法務局、税務署)

介護保険が適用される介護タクシー(介護保険タクシー)を開業するためには、法人格の取得が必須です。

法人設立時に行う主な手続き
法人設立にあたっては、次のような手続きを行います。

  • 定款の作成・認証(株式会社の場合)
  • 法務局での法人登記申請
  • 法人印鑑の作成
  • 税務署への法人設立届出書の提出
  • 法人名義の銀行口座の開設

定款には介護タクシー開業の目的として「介護保険法に基づく訪問介護事業、介護予防・日常生活支援総合事業」と記載することを忘れないようにしましょう。

6. 車両を用意

介護タクシーを開業するためには、福祉輸送に対応した専用車両を用意する必要があります。車両は、運輸局の営業許可審査および、実際のサービス提供の両面で重要な要素となります。

車いすやストレッチャーを乗せるリフトやスロープ、回転式のシートなどの設備がついた車両を調達します。中古なら100万円以下の車両もあり、初期費用を抑えたい場合に有効です。新車・中古車のいずれの場合も、営業許可申請時に使用予定車両として審査対象になるため、事前に要件を満たしているか確認しておくことが重要です。

7. 営業許可(経営許可)を取得

介護タクシーを事業として運営するには、運輸局から「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)」の営業許可(経営許可)3を取得する必要があります。

申請の過程では、道路運送法などに関する法令試験を受験するのが一般的で、事前に制度の概要を把握しておく必要があります。審査には、申請からおおむね3〜4カ月程度かかります。

8. 車両登録(届出先:運輸局)

営業許可(経営許可)が下りた後、介護タクシーとして使用する車両を事業用自動車として登録します。手続きは、運輸局で行います。

9. 訪問介護事業所の指定申請(届出先:都道府県)

介護保険が適用される介護タクシーを運営するためには、介護保険法に基づく「訪問介護事業所」としての指定を受ける必要があります。

指定申請は、事業所所在地を管轄する都道府県や指定都市に対して行います。指定要件や申請方法は自治体ごとに異なり、事前説明会や研修の受講が必須となる場合もあります。申請から指定までには一定の期間を要するため、開業スケジュールに余裕を持って準備を進めることが重要です。

10. 損害賠償保険に加入

介護タクシーでは、事故やトラブルに備えて、対人・対物賠償を含む任意保険または共済への加入が必要です2。運輸局の許可基準では、一定額以上の補償内容が求められるため、条件を満たしているか事前に確認しておきましょう。

11. ウェブサイト、名刺、チラシなどを作成

開業に向けて、ウェブサイトや名刺、チラシなどの情報発信ツールを整えます。
あわせて、車両には事業所名(屋号)や「福祉輸送車両」などの法令で定められた表示を行います。

12. 開業し、 運輸開始届を提出(届出先:運輸局)

すべての準備が整ったら、運輸局へ運輸開始届を提出します。この届出をもって、介護タクシーとして正式に運行を開始できます。

まとめ

要介護者や障害者の足となる介護タクシーを開業することは、当事者のニーズを満たすだけでなく、その家族や地域社会にも貢献することになります。提供したいサービスのタイプに合わせた介護タクシーの開業準備を進め、生活インフラの1つとして役立つビジネスを育てていきましょう。

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執筆は2021年12月15日時点の情報を参照しています。2026年1月30日に記事の一部を更新しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。