オムニチャネルコマースの基本
優れたツールと戦略で、お客さまにとってなじみ深い場所で、効果的なプローチをめざしましょう。
オムニチャネルコマースの台頭により、あらゆる規模のビジネスにおける、マーケティング活動の手法や、製品・サービスの販売方法が変わりつつあります。しかし「オムニチャネル」とは、そもそもどんなものなのかご存じですか?最近よく耳にするこの言葉。理にかなったビジネス戦略なのでしょうか?そこで、このガイドでは「オムニチャネル」の基本を説明し、個人事業主の方から複数店舗を運営する大規模ビジネスにいたるまで、どんなビジネスでもオムニチャネルを効果的に組み込むことができる方法をご紹介します。
オムニチャネルとは?
オムニチャネルとは、お客さまがあなたのビジネスとやり取りを行う場所・時間・頻度などの要因に影響を受けることなく、常に一貫した体験を創出できる方法のことです。オムニチャネルは、既存のお客さまや見込み客がどんな場所にいるときでも、的確にアプローチして売上につなげることができるビジネス戦略です。
これまでオムニチャネル方式のアプローチは、大手小売業者がいち早く採用してきました。しかし消費者の行動は絶えず変化しており、このようなアプローチに消費者が慣れてきたため、ほぼすべての業界のあらゆる規模のビジネスでも、この手法が導入されはじめています。
あなたのビジネスに最適なオムニチャネルツール
ビジネスにオムニチャネル戦略を組み込むためには、まずカスタマージャーニーを理解し、購入プロセスに存在するあらゆる接点を洗い出すことが必要になります。詳細なジャーニーマップを作成することで、目標を達成するためにはどのようなツールが必要になるのかが明確になるはずです。
ここでは、カスタマージャーニーを段階ごとに詳しく見て、それぞれの段階でどのような対応をすればスムーズな顧客体験を生み出せるのか考えてみましょう。
どなたでも製品・サービスを見つけられるようにする
お客さまは、場所や時間にしばられることなく、かんたんにビジネスを見つけて商品を購入できることを期待しています。このため、オムニチャネル戦略ではまず、「オンラインチャネル(オンラインの販売経路)」を追加することからはじめます。たとえば小売業なら、事業の規模にかかわらず自社サイトで商品を販売し、世界中どこへでも発送することができます。飲食業なら、メニューを公開することで注文をオンラインで受け付けできます。サービス業なら、オンラインスケジュール管理ソフトを活用して、24時間365日予約を受け付けできます。
商品販売・決済受付を行う
オムニチャネル戦略がマーケティング戦略として本領発揮するのがこの段階です。ここで理解しておくべきポイントは、見込み客のいるところで製品・サービスを効果的に宣伝することと、見込み客が購入したいと思っているときにすぐさま購入してもらえるようにすることは異なるということです。
効果的なマーケティングを行い、お客さまにとって最適のタイミングで購買行動をとれるようにするには、商品や売上データをすべて一元管理できる中枢ハブ的な存在が必要です。Squareでビジネスを運営している場合は、POSレジを使って、対面販売とオンライン販売をスムーズに連携させることができ、すべての情報を一か所で管理することができます。
ソーシャルメディア(SNS)は、商品やサービスを宣伝する場として幅広く利用されていますが、最近では多くの企業がSNSのビジネスプロフィールを活用して商品販売や決済受付をはじめています。SNSで販売を展開することで、ECサイトをすでに運営しているビジネスはもちろん、ECサイトを持たないビジネスでも気軽にオンライン販売をはじめることができます。オムニチャネル戦略に特化したビジネスシステムがあれば、かんたんにSNSのプロフィールを販売チャネルとして活用できるようになります。
コンサルタントや、写真家、会計士などのサービス業では、見込み客とやり取りを繰り返して、案件やプロジェクトに関する詳細について同意を得ることが求められます。そこで、見積もり・請求書の送信、支払いの受付など、業務の一部をオンラインで行うことで、オムニチャネル戦略的なアプローチが可能になります。事務的な作業にかける時間を大幅に短縮できるため、無駄のないスムーズなサービスをお客さまにお届けできます。
さまざまな場所からの注文に対応する
オムニチャネル型のビジネス運営を行うことで、いつでも、どこでも販売が可能になります。ここで重要なポイントになるのが、オムニチャネルの複雑なプロセスに特化したテクノロジーを活用すること。Squareのビジネスツールを使えば、お店での対面注文はもちろん、ウェブサイトや、電話、オンラインマーケットプレイスなど、さまざまな方法で受注した注文を、POSレジやSquare データですべてまとめて確認・管理することができます。
オムニチャネル戦略が必要である理由
消費者は、商品に関する情報を検索したり、他の商品と比較したりすることが多いため、あるチャネルで商品を見つけても、実際に商品を購入するのは別のチャネルであることがよくあります。またある調査によると、オムニチャネルの購入者は、1つのチャネルのみを使用する購入者に比べて、1回あたりの支出額が多く、ブランドのリピーターになる可能性も高いことがわかっています。
小売業や飲食業など、どんな業種のビジネスでも、消費者はすばやく手軽に商品を購入できる方法を求めています。これまでになく消費者の関心を引くのがむずかしくなっている今こそ、消費者が最もよく利用するチャネルで効果的にアプローチすることが重要なのです。
「オムニチャネル」と「マルチチャネル」
より良い顧客体験をつくり出すにはどうすればよいか、さまざまな議論が行われています。「オムニチャネル」と「マルチチャネル」は2つの異なるアプローチですが、混同されることがよくあります。
マルチチャネルコマースとは、企業が複数のチャネル(メール、SNS、ウェブサイトなど)を使って集客や販売を行う方法のことですが、お客さまとのやり取りや在庫管理などの分野では一貫性に欠けています。より多くのチャネルで、より幅広い顧客層にアプローチするためにはマルチチャネルは役立ちますが、各種チャネルが独自に機能しているため、お客さまやビジネスにとっての使いやすさを追求して、各種チャネルをスムーズに連携させることはできません。
一方オムニチャネルコマースとは、常に「お客さま」を中心に捉える統合型アプローチです。マーケティングや商品販売に利用するあらゆるチャネルを連携させることができるため、的確にお客さまにアプローチできるほか、顧客情報をより正確に把握して、さらに優れたサービスを提供できます。
オムニチャネル型の顧客体験を理解する
製品・サービスを見つけ、購入するのに利用されるチャネルは、文字通り無限に存在しますが、顧客体験を基本的なカテゴリに簡略化すると、よりかんたんに管理できるようになります。
- 実店舗
- ウェブサイトおよびSNS
- ダイレクトメッセージ
- マーケットプレイス
ビジネスの業種によっては、より頻繁に使用するチャネルや、あまり使わないチャネルなど、ばらつきがあるかもしれません。ただし、顧客層の拡大とビジネス成長にそれぞれのチャネルがどのように貢献しているかを必ず把握しておきましょう。ここでは、それぞれのチャネルについてさらに詳しく見ていきましょう。
1. 実店舗
オンラインチャネルへの注目がますます高まる現在でも、多くのビジネスでは、対面でのサービス提供をいまだに重要視しています。ここで重要なポイントとなるのは、オンラインと実店舗での体験を一体化させる方法を見つけることです。
「実店舗」を販売経路としている例として、店舗やレストラン、オフィスに加え、ポップアップストアやマーケットなどの臨時出店、さらにはフードトラックや出張サービスといった移動店舗などがあります。
数多くのビジネスが、物理的スペースの活用法を再検討して、競合他社と差をつけるチャンスを模索しています。たとえば、ある小売業者は店舗を在庫をほとんど持たないショールームに変え、店舗で商品を見て、商品の購入はオンラインで行うという方法を導入しています。また多くのレストランでは、テーブルで飲食する従来のサービスに加えて、テイクアウトオーダーやデリバリー受け渡し専用のステーションを作り、顧客のさまざまなニーズに応えています。
2. ウェブサイトおよびSNS
オムニチャネル戦略では、ウェブサイトはメインの販売経路として捉えます。その理由は何といっても、消費者のウェブを利用する頻度にあります。新しい製品・サービスについて調べる際、大半の消費者がまずウェブ検索を行います。また前述のとおり、対面販売からはじめたビジネスがオムニチャネル戦略を打ち立てる際には、まずウェブサイトを作成することも、ウェブを重視する一因となっています。
「オンライン」を販売経路とする例として、カスタムアプリやソーシャルメディア(SNS)などがあります。これまでSNSは、ビジネスを宣伝するための場所として長年利用されてきましたが、最近では販売や決済を行う場所としても注目されています。
これまで対面でのサービス提供を行ってきたビジネスでは、オンライン上に記録されているさまざまな情報が、実店舗でのサービスを正確に反映しているか、しっかり確認する必要があります。たとえば、会計士、弁護士、コンサルタントといった専門サービスを検索する場合を考えてみましょう。このようなサービスの利用者は、サービスの利用を決めるうえで、レビューなどの社会的証拠(ソーシャルプルーフ)を調べます。さらに、サービスに関する質問や内容の交渉など、利用者とビジネスの間で行うやり取りはメールなどを使ってオンラインで行われることが大半です。
3. ダイレクトメッセージ
オムニチャネル型の顧客体験の中でも特に、お客さまお一人おひとりに合わせてカスタマイズしたダイレクトメッセージを送信する手法が急速に増えてきています。これまでお客さまとやり取りをするための方法といえば、電話とメールのみでした。現在では、ショートメール(SMS)をはじめ、Facebook MessengerやWhatsAppなどのSNSツールに加え、AlexaやGoogle Homeなどのスマートスピーカーを使ってビジネスを検索し、ビジネスに関する情報を得るという手法も一般的になっています。
このようなアプローチは大企業にしか当てはまらないと思われるかもしれませんが、消費者は小規模ビジネスからも同じような方法で情報を入手できることを期待するようになっています。対話型コマースなど、新しいアプローチに対する人気が高まるにつれ、今後さらなる技術革新がおきることが予測されます。
4. マーケットプレイス
提供する商品・サービスの種類によって、販売に役立つさまざまなオンラインマーケットプレイスが存在しています。「マーケットプレイス」を販売経路とする例として、Square以外で作成したECサイトや、フードデリバリーサービス、利用者がサービス提供者を検索できるサイトなどがあります。オンラインマーケットプレイスでは、商品やサービスをかんたんに購入できるのはもちろん、他の利用者によるレビューやおすすめ情報なども手軽に調べられるのが魅力です。利用者による高評価の効果は絶大で、今後のさらなる信頼度アップにもつながります。各種マーケットプレイスとビジネスを連携させることで、新しい顧客層を開拓できるため、さらなる売上アップも期待できます。