「お客さまの声」を反映した商品やお客さまからの手書きのコメントが貼られたコーナーは、スーパーマーケットなど多くの小売店で展開されています。ネットショップでもお客さまの声が掲載されたページは珍しくありません。
お客さまの声はレストランやカフェ、美容院やEコマースなど業態に限らず、さまざまなジャンルのビジネスの成長に欠かせない要素です。
お客さまの声から得られるメリットや、お客さまの声の集め方、社内での共有方法、効果的な公開方法などを考えてみましょう。
目次
- なぜ「お客さまの声」が重要なのか?
- お客さまの声を集めるときの重要なステップ
- お客さまの声の集め方
- 「お客さまの声」の載せ方・書き方
- お客さまの声は社内で共有する
- お客さまの声はネットショップに掲載しよう
なぜ「お客さまの声」が重要なのか?
商品やサービスを利用したお客さまの声は、なぜビジネスにとって重要なのでしょうか。お客さまの声を集めて公開することには、四つのメリットがあります。
1. 商品の魅力が伝わりやすくなる
「この商品を使ったら料理が楽になった」「このサービスのおかげで仕事の能率が上がった」といったお客さまの声は、商品・サービスの魅力を分かりやすく伝えてくれます。
お客さまの声は実際の買い物や商品利用の体験がベースになっており、客観性・中立性があることから他のお客さまにとって信頼できる判断基準となります。
2. ユーザーの疑問が解決される可能性がある
ユーザー目線で見ると、買おうとしている商品が本当に自分のニーズや用途に合うか迷う時、お客さまの声は参考になる情報です。
たとえばアパレルのネットショップなら、「画面で見た通りの色合いだった」「写真の雰囲気より高級感のある生地だった」「3回洗濯しても型崩れしていない」といったお客さまの声がユーザーの疑問解消に役立つことがあります。疑問が解消されれば、安心して商品を購入できます。
ビジネスサイドから見れば、商品説明だけでは伝えきれないディテールや客観的な情報を、お客さまの声によってカバーできると捉えると良いでしょう。
3. 購入意欲が高まる
ある商品やサービスについて「ポジティブなお客さまの声が多く寄せられた」と示すことは、人気の証にもなり得ます。人気や話題性は購入意欲を刺激し、さらに多くのお客さまを引き付ける可能性があります。
「お客さまの声を取り入れました」と書かれた商品は、売り場で目を引く効果も十分です。それだけでなく、商品開発の裏側でお客さまの声が重要な役割を果たした事実が垣間見えることで、顧客目線を重視したビジネスであることが分かり、商品とビジネスに親しみを感じることにもつながります。
4. 商品・サービスの改善に生かせる
集めたお客さまの声は、社内での商品改善や業務改善のための材料となります。商品の改善はもちろん、お客さまの声からニーズを分析し、新商品の開発に役立てることも可能です。
商品だけでなく、顧客対応や配送などサービス面のレベルアップにもお客さまの声は重要です。「商品選びの際に親身に相談に乗ってくれたのでまた来店したい」といったポジティブなフィードバックは、従業員のモチベーションを上げ、人材教育の方針を考える上でも参考になります。逆に、「待ち時間が長かった」「希望の商品がなかった」といったネガティブなお客さまの声は、現場のオペレーションや商品構成、コミュニケーションなどの課題の存在を教え、ビジネスの成長の起点となる改善ポイントを明らかにしてくれます。
改善の元になったお客さまの声を改善後の商品紹介に添えれば、ユーザーの視点を重視したビジネスだと伝えることにもなります。
お客さまの声を集めるときの重要なステップ
お客さまの声を元にビジネスを成長させるためには、お客さまの実態を正しく反映した声を、正しい手順で集めることが肝心です。
目的や対象者を明確にする
一番のキーポイントは、「どんな目的で、どんなお客さまの声を集めるか」という指針が明確になっていることです。購入促進と商品改善では目的が異なり、したがってお客さまの声を集める対象者の属性にも違いが生じます。
たとえば購入促進を目的としているなら、実際に購入したお客さまを対象に、お客さまの声の公開を前提として意見を集めます。一つの商品をリピート購入しているお客さまを対象として意見を聞いてみるのも良い方法です。商品の性質にもよりますが、すぐ使うタイプの商品なら購入後すぐ、使用感の確認が必要な商品なら購入後一定の時間が経過してからのタイミングでお客さまの声を集めると効果的です。
商品改善を目的とするお客さまの声の収集なら、商品を愛用している人の他に、購入した商品に不満やリクエストがある人、または商品を気に入らず返品をした人なども対象になります。どんな問題点があり、何を要望しているかを詳しく教えてもらい、同時に変更すべきでない点や気に入っている点もヒアリングできると理想的です。お客さまの声を集めるには、不満や要望が出てすぐが最適なタイミングといえます。
お客さまの声の「集め方」を選定する
適切なお客さまの声を集めるためには、情報収集の方法を吟味することも大切です。お客さまの声の集め方は、購入促進か商品改善かなどの目的、対面か非対面かというビジネスのスタイル、対象とするお客さまの層などに合わせて選択します。
接客中のコミュニケーションやオンラインなど、お客さまの声の集め方は次章で解説します。
お礼を用意する
「お客さまの声をお寄せください」というお願いに応えてもらうための施策として、フィードバックへのお礼を検討してみましょう。あらかじめお礼が提示されていると、お客さまの声を集めるアンケートなどに回答するモチベーションになります。
次回の買い物に使える割引クーポンやメンバー向けの特別ポイント、商品サンプルのプレゼントなどがお礼として一般的です。
締め切りを設定
お客さまの声を集める際は、必ず締め切り日を設定しましょう。特にアンケート回答を募る場合に締め切りがないとなかなか回答が集まらず、早く寄せられた回答だけを商品開発・改善などに利用することになり、幅広いお客さまの声を採用しにくくなります。「◯日までの回答」をお礼の条件とするのも有効な方法です。
公式サイトやネットショップへの掲載許可を取る
有効なお客さまの声が寄せられたら、公式サイトやネットショップに掲載しても良いか許可を取りましょう。その際、個人情報の扱いには十分注意し、お客さまにとって安心な形で掲載することが重要です。また、「同じニーズを持つ他のお客さまの参考になる」など、お客さまの声を掲載する「理由」を説明することで納得感が生まれます。
お客さまの声を募る時点で「掲載の可能性があります」と伝えておくのも一つの方法です。ただし、掲載への拒否感を持つお客さまにとっては回答を避ける理由になる可能性もあるため、より多くのお客さまの声を集めたい場合は検討が必要です。
お客さまの声の集め方
お客さまの声を集める方法は対面と非対面の2種類に大別でき、次のような手段があります。
接客中に直接聞く
お客さまから意見を聞く手段として真っ先に考えられるのが、対面での接客中やレジでの会計中に「いかがでしたか?」と直接聞くことです。たとえば、顧客リストを作成し、お客さまのコメントを都度リストに入力し保存することで、お客さまの声を集めることができます。美容院やエステサロン、レストランなどの業種に向いている方法といえるでしょう。
ただ、この場合はお客さまの負担にならないような上手な接客が求められる点に注意が必要です。中には静かに過ごしたいお客さまもいれば、急いでいるのですぐに帰りたいお客さまもいます。
従業員を目の前にして、お客さまが「良い点を褒めるのは簡単だけど、文句はなかなか言いにくい」と感じることもあります。また、店舗を持たずオンラインでのみ展開している場合は対面で直接意見を聞くのは難しいのが実情です。
そこで、非対面でお客さまの声を聞く場合、どんな方法が自分のビジネスに合うか考えてみましょう。
アンケートで聞く
文章でお客さまの声を表現してもらうアンケートは、間接的に意見を聞くために有効な方法です。店舗ならアンケート用紙をテーブルやレジの横に設置する、ネットショップなら発送時にアンケートハガキを同封する、または商品到着後のタイミングでメールでアンケートを送ると良いでしょう。比較的低価格で利用できるアンケート集計サービスもあります。
アンケートの記入には時間も手間もかかります。文章で記入する部分を少なくして、選択式回答も導入すれば、かかる時間を短縮して回答のハードルを下げることができます。回答してくれたお客さまにお礼として次回から使える割引クーポンなどのプレゼントを提供する仕組みにすると、回答率アップに効果的です。
また、アンケートで寄せられたコメントのうち他のお客さまにとって参考になるものがあれば、ウェブサイト・店頭で「お客さまの声」を公開することもマーケティング効果があります。お客さまの声を公開する際は、回答者の同意を得て個人情報に配慮した上で行いましょう。
SNSで聞く
お客さまによってはアンケートは画面入力やポストへの投函が手間と感じるケースもあるため、より手軽にお客さまの声を集める方法としてSNS(ソーシャルメディア)も活用してみましょう。
X(旧Twitter)には簡単なアンケートが取れるX投票という機能があります。投稿の作成ボックスに140文字以内で質問内容を記入し選択式の回答を設定すれば、投稿を見た人はクリックするだけでアンケートに回答できます。
Instagramは「ストーリーズ」の投稿で選択投票式のアンケートを発信可能です。回答は2〜4択ですが、質問BOXを設けることもできます。ストーリーズ投稿は24時間で消えてしまうためアンケート回答の保存が必須ですが、ビジュアルを印象付けながらお客さまの声を収集できることがメリットです。
次のようなケースでは、SNSを使ってお客さまの声の集める方法が役立ちます。
- 好きなメニューに投票してもらう
- 新商品の名前を候補の中から選んでもらう
- 新サービスのニーズをチェックする
SNSの投票機能を上手に活用することで、商品やサービスの開発にお客さまを巻き込むことも可能です。ただ、あくまでも投票機能なので詳細に意見を聞きたい場合には向かないことを覚えておきましょう。
座談会を開く
お客さまの声を詳しく意見を聞く方法としては、複数のお客さまを招いて開く座談会があります。座談会の開催方法は対面またはオンラインミーティングの形式が考えられます。対面の場合は商品を目の前に置き、使用感を確かめながら話してもらうことで、使いやすい点や不便な点を具体的に聞くことも可能です。
製品やサービスの開発・改善の過程で、座談会は効果を発揮します。実際に製品やサービスを購入し使用するお客さまの声を座談会を通して取り入れることで、より市場のニーズにマッチした開発が可能になるからです。
既存の商品やサービスについてお客さまがどう感じているのかを聞く時にも、座談会は有効な手段です。毎年安定した利益を生み出している商品にも実は「もう少し◯◯だったら」という要望があるかもしれません。お客さまの声に耳を傾け、ニーズに合わせてマイナーチェンジを加えていくことが、長く愛される製品になる秘訣です。
レシートを使って聞く
会計時に渡すレシートは購入明細としての役割を超え、同時にクーポンやキャンペーン情報を印刷して渡すことも可能です。
キャッシュレス決済サービスSquareが提供する電子レシートは、お客さまの声を聞くコミュニケーションツールとしても活躍します。使い方は、お客さまのメールやSMS宛に電子レシートを送付し、受け取ったお客さまはレシートをタップして製品やサービスの感想を送るだけと簡単です。受け取った感想に対して、お店側から返信をすることも可能です(※)。
※お客さまへの返信に関しては、事前にお客さまからの承諾が必要です。詳しくはこちらをご確認ください。
お客さまの声として、お褒めの言葉は経営者や従業員にとって日々のモチベーションの源になる大切な意見ですが、同時に苦情やクレームも真摯に受け止めなければいけません。重要なのは、受け取った苦情やクレームをそのまま放置しないことです。
不満を伝えたにも関わらず、店側の姿勢に真剣さが見られなかったり改善が行われなかったりすると、せっかくのお客さまの声の価値がなくなってしまいます。逆にお客さまの不満が募り、商品やサービスの利用中止や、口コミサイトやSNSへのネガティブな評価の書き込みにつながるリスクも考慮しておきましょう。
レシートをコミュニケーション手段として利用することで、お客さまの声が店に届きやすくなり改善につながれば、ビジネスに良い循環をもたらすことができます。
「お客さまの声」の載せ方・書き方
お客さまの声をウェブページ、カタログ、チラシなどに掲載する際、求める効果が出やすくなるよう次のような点に注意しましょう。
効果的な「お客さまの声」の載せ方
お客さまの声を掲載する際のポイントは、「情報の信頼性」です。仮に、商品ページにたった1件のお客さまの声だけが載っていて、どんな購入者か分からず、抽象的な内容だとしたら、他のお客さまから見て参考になるとはいえません。
嘘がなく信用でき、かつ参考になるお客さまの声を届け、購入促進などにプラスの効果をもたらすために、以下の5点のチェックポイントに合致する掲載方法を心がけましょう。
- 1件ではなく、3〜10件を載せる
- お客さまの属性(年齢、性別、地域、職業など)を一緒に載せる
- 具体性があり、他のお客さまの参考になるコメントを選ぶ
- 内容はできる限り編集・改変せずそのまま使用する
- 掲載順は、購入促進などの目的によりマッチするものを先頭に載せる
この5点のポイントを満たすようにお客さまの声を掲載すると、信頼度が高く、読んだ人の心に訴えかける力があるため、掲載の価値を最大化できます。
NGな「お客さまの声」の例
お客さまの声には、掲載する効果が低い内容、またはビジネスにマイナス効果をもたらす掲載方法も存在します。ウェブサイトやチラシに掲載するお客さまの声として、「NG」な例と「OK」な例を比較してみましょう。
NG例 | OK例 | |
A | 自分用に買いました。手入れが必要みたいです。 | 手入れ方法が簡単ということだったのでこちらの靴を仕事用に購入しました。さっそく毎日履いています。説明通り週1回10分ほどの手入れだけで済むので、これなら長く愛用できそうです。値段に見合う良い買い物だったので友達にもおすすめしました。 (30代女性/大阪府、化粧品販売員) |
B | 品質は最高!でも届くのが遅かったです。 | 妻への誕生日プレゼントにしたかったので希望日までに間に合うか問い合わせたところ、とても丁寧にご対応いただきました。商品はデザインも素材も上質で、妻に喜んでもらえました。箱はもう少し高級感があると嬉しかったですが、価格を考えれば不満はないです。 (50代男性/東京都、学習塾経営) |
C | パーソナルトレーニングの回数券は初めて購入しました。 | 持病の手術後に筋力低下を防ぎたくてお試し体験をしました。若いトレーナーさんでしたが悩みに真剣に向き合ってくれて、私に合うメニューを提案してくれたので、これなら頑張れそう!と思って回数券を買いました。毎週通っていて、筋力が付いて楽しくなってきました。 (60代女性/札幌市、パート勤務) |
D | オンライン英会話はモチベーション維持が大変です。あとオプションが高い。 | オンライン英会話はモチベーション維持が大変で、講師の方に相談したところ、私の趣味に関するトピックを用意してくれました。時間の融通も利くので、留学という目標のために1年近く続けられています。オプションの発音専門レッスンも良さそうで…もう少し安かったら試したいです。 (20代男性/福岡県、学生) |
NG例は具体性に欠け、対象者の属性も記載されていないことから、「他のお客さまにとって参考になりにくい」という難点があります。
一方、OK例は「仕事(化粧品販売)」「妻へのプレゼント」「筋力低下」「留学」などの具体的なキーワードから、商品やサービスの利用背景をイメージできます。対象者の属性に近い人が共感しやすい点もポイントです。さらにサービス内容にも触れてあることで、読んだ人は自分が利用した場面を想像しやすい点が優れています。
「手入れが必要」「希望日までに間に合うか」「箱の高級感の不足」「モチベーション維持の大変さ」「オプション料金」などは、一見するとネガティブな要素です。しかし、ポジティブな情報だけより公正さが感じられ、丁寧に書かれていれば読んだ人は納得した上で購入を検討できます。全体を通して読んだ時にポジティブな印象が残ることも大切です。
お客さまの声は社内で共有する
さまざまな手段を使って集めたお客さまの声は、社内で共有し次の製品開発や改善、サービス提供時に生かしましょう。
社内にお客さまからのコメントを貼るスペースを設ければ、従業員のモチベーションアップに寄与します。
受け取ったお客さまの声を、早急な対応が必要なものと社内で検討が必要なものに仕分け、前者は担当者にすぐに伝え、後者は関係者で話し合いの場を設けます。結論が出るまで時間がかかりそうな場合は、お客さまの声を元に検討・改善する姿勢をまず伝えましょう。早めのリアクションと同時に、お客さまの声をシェアしてくれたことに対するお礼の言葉も欠かせません。
お客さまの声はネットショップに掲載しよう
お客さまの声を集めたら、購入時の参考になると思われる内容を自社サイトやネットショップに掲載しましょう。特に、ネットショップの商品ページやスタッフ紹介ページにお客さまの声が載っていると、購入や予約の判断材料になります。アイテムが少数のビジネスの場合は、「お客さまの声」の専用ページをサイト内に設けるのも良い方法です。
「Square オンラインビジネス」では、無料で自分のネットショップを始められます。ショップデザインを複数のテンプレートの中から選び、フォントや色などをアレンジして、商品の画像や説明を掲載するというシンプルな方法でネットショップを始められることが魅力です。
Square オンラインビジネスのネットショップは無料で始められ、売り上げがあった時にかかる決済手数料だけで運用できるので初めてのEコマースにも適しています。他にも、飲食店、小売店、美容院などの実店舗を持ちつつオンライン販売や予約、店頭受取のオーダー受け付けを開始したい場合にもおすすめです。
ネットショップのデザインによっては、お客さまの声の一部を引用してキャッチコピーのようにトップページに掲載するといったインパクトのある見せ方も可能です。ネットショップから最新情報を届けるメールマガジンに登録してもらい、メールマガジンにお客さまの声を含めるなど、ビジネスのスタイルに応じてさまざまな使い方が広がります。
お客さまの声はより良い製品やサービスの提供、そしてビジネスの成長には欠かせないものです。それぞれのビジネスタイプに合わせた手段でお客さまの声を集め、企業活動に生かしましょう。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2017年8月17日時点の情報を参照しています。2024年3月8日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash