パン屋を開業するときに必要な準備とは?基礎知識や開業資金も紹介

焼き立てのパンの香りに、甘いパンから惣菜パンまで目移りするような品ぞろえ。パン屋に行くのを楽しみにしている、地元にお気に入りのパン屋がある人もいるのではないでしょうか。

開業に特別な資格が必要ないことから、転職や退職をきっかけにパン屋の開業を考える人もいるかもしれません。実際、国内のパン市場はコロナ禍で少し落ち込んだものの、矢野経済研究所の調査では、
2024年度にコロナ禍前である2019年度の市場規模を上回ることが予測されています。今回は、パン屋を開業する流れや、パン屋をはじめるメリットやデメリット、成功のコツなどを紹介します。

参考:パン市場に関する調査を実施(2023年)(2023年4月25日、株式会社矢野経済研究所)

目次


パン屋を開業する流れ

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コンセプトを考える

まずはパン屋のコンセプトづくりからはじめましょう。

  • テイクアウトだけを提供する
  • イートインも提供する
  • 手作りのパンを販売する
  • 仕入れたパンを販売する

思い描いているパン屋はどれに当てはまるでしょうか。基本的な特徴を固めていくと、コンセプトも描きやすくなるかもしれません。

ある程度内容が整理できたら、事業計画書の作成に取り掛かります。特に決まった形式はありませんが、事業内容や市場、競合に対する優位性、マーケティング計画など、実現に向けた具体的な内容をまとめます。事業計画書は融資を受ける際には必ず提出することになるため、これらの項目をじっくりと考える時間を押さえておくといいでしょう。

開業資金を確保する

次に開業資金を確保します。お店の規模にももちろんよりますが、パン屋の開業資金は1,000万円から3,000万円ほどが相場だといわれています。

おおまかな内訳は以下です。

  • 物件取得費
  • 内装工事費
  • 厨房設備費
  • 資格や許認可の取得費
  • 広告宣伝費
  • 人件費
  • 備品費
  • 原材料費

オーブンやミキサー、ホイロ、モルダー、フライヤー、冷蔵庫などパンづくりには欠かせない厨房機器がたくさんあるため、厨房設備費はふくらみやすいものです。コストを抑えるには10坪以下の物件や居抜き物件を見つけたり、厨房設備は中古にしたりするのが賢い選択かもしれません。

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続いて運転資金の内訳も見てみましょう。目安は、月々100万円から300万円ほどです。

  • 人件費
  • 賃貸料費
  • 原材料費
  • 水道光熱費
  • 広告宣伝費

開業資金は以下の方法で集めることができるでしょう。

  • 自己資金でまかなう
  • 融資を受ける
  • 補助金・助成金を活用する
  • クラウドファンディングで資金を募る

店舗を決めて、工事に取り掛かる

開業資金の調達と同時に進めたいのが物件探しです。コンセプトをもとにターゲット層が多く集まる場所を選びましょう。物件が決まったら、次は内装・外装の工事に取り掛かります。複数の業者から見積もりをもらい、相場をつかんだうえで業者を決めるのが最善策です。

もう一つ、大事な点があります。工事着工前に、管轄の保健所に図面を必ず確認してもらいましょう。なぜなら営業許可を取得するには、保健所の基準を満たす必要があるからです。工事後に基準が満たせていないことが発覚すると、追加で工事を行うことにもなりかねません。施設の基準は保健局のウェブサイトに公開されていることもあるので、事前に確認しておくといいでしょう。

許認可の取得、手続きを済ませる

パン屋の開業には専門的な資格は必要ありません。ただし、以下の取得は必須です。

  • 食品衛生責任者の資格
  • 菓子製造業の営業許可
  • 飲食店営業の許可

食品衛生責任者の資格

飲食店をはじめる場合、1施設につき1名以上の食品衛生責任者を設置しなければいけない、という決まりがあります。これはパン屋にも当てはまることです。

食品衛生責任者とは従業員の衛生教育、施設や食品の衛生管理を行う人で、各都道府県で開催されている講習会を受ければ、誰でもなることができます。講座は会場で受けることもできますが、最近ではオンラインでも受講できるそうです。講座の所要時間は約6時間です。

菓子製造業の営業許可

菓子製造業とは、パンや菓子を製造して販売する場合に必要な営業許可です。製造したパンをテイクアウト販売する場合には、必ず申請しましょう。

また、2021年の改正施行に伴い、以前までは許可の範疇から外れていた調理パン(サンドイッチなど)も菓子製造業で製造・販売できるようになりました。

さらに店内飲食を提供する場合、以前は基本的に飲食店営業許可が求められていましたが、パンに飲料を添えた店内飲食の提供は菓子製造業だけでも認められるようになったそうです。

参考:
菓子製造業(厚生労働省)
営業許可業種の解説(厚生労働省)
改正食品衛生法の営業許可と届出(東京都福祉保健局)

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飲食店営業の許可

飲食店営業とは店内飲食を提供する場合に取得しなければいけない許可です。レストランやカフェなどが当てはまるでしょう。前述のように、菓子製造業でも一部の店内飲食が可能になるまでは、基本的に飲食店営業の許可が必要でした。ただし、菓子製造業に含まれる店内飲食は、パンと飲料のみです。スープやサラダなども提供したい場合は、以前と同様に飲食店営業の許可が必要になります。

レジを準備する

店舗の開業までにはさまざまな作業や手続きが発生することからレジの準備は意外と忘れがちです。ところが支払いを受け付けるレジなしにはオープン日を迎えることはできないでしょう。レジまわりには、おおまかに以下のものが必要です。

  • キャッシュレス決済端末
  • POSレジシステム
  • キャッシュドロワー
  • コイントレー
  • 釣り銭
    など

特にキャッシュレス決済端末やPOSレジはコストのかさむところですが、すでに膨らみがちなパン屋の開業資金を少しでも節約するには低コストで導入できる方法も模索したいところです。

たとえばSquareなら決済端末は4,980円から手に入ります。初期費用も導入費用も決済端末の代金のみ。月額利用料はキャッシュレス決済が発生した際の決済手数料のみです。さらにSquareでは無料のPOSレジアプリを提供しています。つまり導入時にかかるコストは、たったの4,980円です(※)。

※Square リーダーを導入した場合。決済端末によって価格は異なります。

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導入には無料アカウントを作成し、決済端末を手に入れるだけ。導入が簡単なのも、ばたばたする開業時にはうれしい点です。

キャッシュレス決済の導入を迷う事業主もまだいるかもしれませんが、株式会社リクルートが2023年に発表した調査結果によると、「飲食店ではキャッシュレス派」と答えた人が7割以上もいたそうです。2019年の調査と比べると、2割弱も増加しています。さらにキャッシュレス決済を「積極的に利用したい」「まあ利用してもよい」と答えた人はあわせて9割近くもいた そうです。現金を多く持ち歩かないお客様にとって、キャッシュレス決済が使えないことは来店を諦めることにもつながりかねません。このような機会損失を防ぐためにも、キャッシュレス決済には対応しておきたいところです。

参考:飲食店では「キャッシュレス派」が71.5%。2019年3月の調査時の52.9%から大幅に増加 。「ポイントやキャンペーン」が魅力、「通信障害・停電」が不安(2023年1月26日、株式会社リクルート)

商品開発と仕入れに取り組む

どんなパンを店頭に並べるかを決めたら、仕入れに取り掛かりましょう。思い描いているパンをつくるには以下のような原材料が必要になるはずです。

・薄力粉
・強力粉
・砂糖
・塩
・バター
・卵
など

仕入れ先には専門卸業者や製菓材料店、卸売専用のネット通販など選択肢が複数あるので、価格などを比較しながら検討を進めましょう。

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集客に取り組む

店舗の準備が整ってきたら、新しいパン屋がオープンすることをいろんな人に認知してもらえるよう宣伝に取り組みましょう。最近では、たくさんの人の目に留まりやすいSNSのアカウントから積極的に発信していくことが宣伝にも集客にも効果的だといわれています。そのほかにもお店のコンセプトなどをわかりやすくまとめたウェブサイトの開設、周辺店舗へのチラシの配布などもするといいでしょう。

このとき余計なコストをかけないためにもウェブサイトなどは無料ツールを活用するのがおすすめです。たとえばSquareなら、簡単に、かつ無料でウェブサイトを作成することができます。ネットショップ機能も備わっているので、希望するタイミングでパンのオンライン販売も気軽にはじめることができます。

店舗オープン!

オープン日を無事迎えたら、忘れずに行いたいのが開業届の提出です。届けを出すのは必須ではありませんが、節税にもつながる青色申告ができたり、屋号付きの銀行口座を開設できたりするのは開業届を提出した人のみです。国税庁のウェブサイトによると提出時期は開業日から1カ月以内だそうです。パソコンからe-Taxソフトでの提出が推奨されていますが、管轄の税務署に持参、あるいは送付も可能です。

参考:手続名 個人事業の開業届出・廃業届出等手続(国税庁)

パン屋を開業するメリット

パン屋をはじめるメリットは大きく以下の三つです。

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需要が安定している

矢野経済研究所の調査によると、2021年度の国内のパン市場規模は前年度比101%の1兆5,354億円(メーカー出荷金額ベース)で、この先も少しずつ伸びていくことが予測されています。同調査によるとコロナ禍の2020年度には市場規模が前年度比で3%ほど落ち込んだものの、行動制限が緩和されはじめた2021年度には回復しはじめ、2024年度にはコロナ禍前である2019年度の市場規模を上回ることが予測されています。また、2021年度にはマリトッツォやフルーツサンドなどのブームも手伝って、パン業界も盛り上がりを見せていたようです。

参考:パン市場に関する調査を実施(2023年)(2023年4月25日、株式会社矢野経済研究所)

自分で思い描いた店舗が作れる

自分だけのパン屋を開業するメリットとしては、使う素材やパンの種類など自分のこだわりを反映したパンを多くの人に届け、食べてもらえるように工夫できることです。値段やメニューも自分で決められるため、季節に合わせてパンの種類を変えたり、内装や装飾もコンセプトに合わせてアレンジしたりできます。

未経験でもはじめられる

経験のない分野で開業をするには資格などが必要なことも少なくありませんが、パン屋は特別な資格がなくてもはじめられる業態です。基礎的なことを学ぶうえで学校に通う、パン職人の指導を受けるなどが理想的ではありますが、そのほかにもパン職人を雇う、あるいはフランチャイズではじめるという道もあります。

フランチャイズだと加盟金やロイヤリティを支払う代わりに経営や技術のノウハウを教えてもらうことができるので、何もわからないところから1人ではじめるのと比べると、負担も不安も少ないかもしれません。

パン屋を開業する際の注意点

開業するうえで念頭に置いておきたいことは以下の3点です。

初期費用が高い

飲食店の開業費用の相場は1,000万円ほどですが、パン屋の開業費用はそれを上回る可能性が高いといわれています。前述のように厨房機器にかかるコストがかさんでしまう点が大きく影響しているようです。コストをできるだけ抑えるには中古品やリース品を検討したり、外装や内装の工事を最小限にとどめたり、まずは小さなスペースではじめたり……などある程度の工夫が必要になるでしょう。

競争が激しい

パン屋は需要がある分、競合も多いです。パン自体は、パン屋に限らず、スーパーやコンビニエンスストアでも手に入る食べ物です。後者のほうが安く買えるなか、どのような価値を提供していくかは事業計画を立てるタイミングで考えておく必要があるでしょう。

食材の価格高騰

近年、パンの原材料である小麦や卵、塩、砂糖などの価格高騰が続いています。思い切って値上げに踏み込むところもあれば、たとえばおかずパンの具材を増やすなどして価格は据え置きする、などさまざまな工夫が見られます。仕入れ値が下がる傾向が近年あまり見られていないことは、ビジネスをはじめるうえで念頭に置いておくといいかもしれません。

パン屋の開業を成功させるには?

パン屋を成功に導くために、日頃から取り組んでおきたいことを以下に紹介します。

運転資金を十分確保しておく

原材料の仕入れや店舗の家賃などに充てる運転資金は、十分確保しておかないと支払いが遅れたり、結果として取引先から信用を失ったりと、ビジネスが機能不全に陥ることも考えられます。パン屋の運転資金は月々おおよそ300万円だといわれています。軌道に乗るまでは3カ月から半年ほどかかることを想定して、開業時にはその分の運転資金を用意しておくことが理想です。

適切な商品開発を行う

パン屋を開業するエリアにはどの年代の人が多く住んでいるでしょうか。一人暮らしの人が多い場所ですか。それともファミリー層が大多数を占めていますか。このような情報をしっかりと調査したうえで、商品開発に取り組むといいでしょう。たとえばファミリー層が多いのであれば、子どもが喜びそうなパンを豊富に取り揃えておくといいかもしれません。

このようにはじめのうちは客層と相性のよさそうなパンの種類も考慮しながら開発を進めましょう。オープン後は売上分析ツールなどを活用しながら売れ行きのいい商品、悪い商品を把握したうえで再び新商品を練っていくと、お客様のニーズをつかむのが得意なパン屋さんになれるでしょう。

売上分析ツールは有料のものも多くありますが、SquareのPOSレジを利用すれば無料で分析ができます。それぞれのパンの売れ行きが確認できる商品別売上も、もちろん無料で見ることができます。また、メニューの数を上限なしに登録できるのも、なるべくコストを抑えたい事業主にはうれしい点でしょう。

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適切な製造量を分析する

パンはロス率の高い食品の一つだといわれています。ロスが多く発生すると、原価率が上がり、利益が下がることになります。利益を最大化するためにも前述のような売上分析ツールから商品別の売り上げや、来店客が多い時間帯や曜日などを見ながら、適切な製造量を見極めていきましょう。さらに最近では売れ残ったパンを販売するフードシェアリングサービスも登場しています。ロスを出さないことが一番ですが、いざとなったときにはこのようなサービスを活用してみてもいいかもしれません。

ネットショップでも販売する

パンはどうしても単価が安くなりがちな商品です。ところがパン屋は開業費用が高く、回収するのに十分な売り上げを出せるだろうか……と不安を感じる人もいるかもしれません。そこで準備しておきたいのが、もう一つの販路にもなるネットショップです。ネットショップで全国にパンを配送するようになれば、実店舗を訪れたくても訪れることのできない遠くに住むお客様にもパンを購入してもらえるようになります。さらにパンをセットで販売すれば、単価アップも叶えられます。このように客層も売り上げも拡大できるのは、ビジネスにおいて喜ばしいことではないでしょうか。

ネットショップには無料作成ツールを活用すると、コストの節約にも取り組めます。たとえばSquareだと無料でネットショップがはじめられます。月々のコストとしてかかるのは、決済手数料のみです。さらに売り上げは最短翌営業日に振り込まれるので、資金繰りにも安心です。

ネットショップをはじめたいけれど、時間がなかなか見つけられずにいる人もいるでしょう。このような場合は、ネットショップより簡単にオンライン販売をはじめる方法があります。決済リンクを活用する方法です。決済リンクは聞き慣れない機能かもしれませんが、わかりやすくいうとネットショップの商品購入ページだけを作成できるものです。商品ごとにリンクを作成していきます。

たとえばSquareなら難しい設定なしに決済リンクを作ることができます。手順は商品名と価格を入力するだけで、必要に応じて画像も追加できます。お客様はリンクにアクセスすると商品購入ページに遷移する、という流れです。

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使い方は以下の記事で詳しく説明しているので、気になった際にはぜひ読んでみてください。

▶︎ECサイトなしにオンライン販売をはじめよう!Square オンラインチェックアウトのススメ

SNSを活用しながら他店と差をつける

新しいお客様を獲得し続けるには、ファンになってもらう仕組みが大切でしょう。そのためにはSNSの活用が効果的です。たとえばInstagramのストーリー機能を活用して、焼き上がり時間をお知らせしているパン屋もあります。または、まるでパンが話しているかのような口調で投稿文を作っていくなど、ほかではあまり見ないような工夫を凝らすと、ユニークな試みに興味を持って情報をフォローしてくれる人が増えるかもしれません。たくさんパン屋があるなか、どのように差別化していくかこそが勝負どころです。他店舗に負けない点をしっかりと把握し、全面的に押し出していきましょう。

ネットショップを無料で開始するならSquare

EC作成から、オンライン決済、店舗連動の在庫管理まで、便利な機能が無料で簡単に始められます。

パン屋は資格がなくてもはじめられますが、競合の海に埋もれてしまわないためには強みを明確に打ち出し、日々ビジネスに磨きをかけていかなければいけません。オープン日を無事に迎えられたら、無料かつ機能性の高いSquareの売上分析ツールなどを活用しながら店舗の売上状況を隅々まで把握し、お客様に愛され続けるパン屋を目指して、臨機応変に戦略を調整していきましょう。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2018年3月27日時点の情報を参照しています。2023年6月27日に記事の一部情報を更新しました。 当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
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