美容室の独立開業、必要な手続きと成功のコツを解説

美容師としての経験を積んで、いずれは独立して自分の美容室を持ちたいと考えている人も多いのではないでしょうか。美容室の開業には、資金はもちろんのこと、さまざまな届出が必要になります。この記事では、美容師が独立、新規に開業する際に必要な手続きなどを解説します。

目次



美容室の開業に必要なもの

美容室を開業するにあたって必要な資格と資金について紹介します。

資格

美容室の開業には、美容師免許と管理美容免許が必要です。

  • 美容師免許
    厚生労働省指定の美容師養成施設で課程を修了し、実技試験と学科試験から成る国家試験に合格すれば取得できます。美容師免許を持たない人が美容室のオーナーとなる場合は、美容師免許を持つ人を雇用する必要があります。開業届を提出する際にも必要になります。

  • 管理美容師
    美容室で2名以上が施術を行う際に必要となる資格です。管理美容師免許の取得には、美容師免許取得後3年の実務経験と管理美容師講習会の受講が必須となります。オーナーが美容師資格しか持っていない場合は、管理美容免許を持つ人を雇用するか資格を取得する必要があります。

資金

美容室の開業に限らず、新しいビジネスをスタートさせる際には資金が必要となります。手持ち資金が十分でなければ金融機関などで借入れます。必要となる資金は大きく分けて開業資金と運転資金があります。一般的に、美容室の開業には1,000万円ほど必要だといわれています。

参考:新たに美容業を始めるみなさまへ 創業の手引き+(日本政策金融公庫)
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  • 開業資金
    開業のために必要となる資金で、敷金・礼金を含む物件の取得費用、内装工事費用、椅子や洗面台、スチーマー、タオル、バックルームの洗濯機や冷蔵庫、パソコンなどの什器や備品なども開業にあたって用意する必要があります。また、美容室のロゴやショップカード、ホームページなどの初期販促費用もここに含まれます。

  • 運転資金
    美容室を運営していく上で、保険料やテナント費用、材料費、光熱費、人件費が必要となります。また、そのほかに宣伝広告費などが必要になることもあります。運転資金をうまく回すためには、キャッシュフローが重要になります。クレジットカードなどのキャッシュレス決済を導入するのであれば、決済代行会社の入金サイクルも検討事項に入れるとよいでしょう。

美容室開業までの流れ

美容室の開業を決めたら、何から始めればいいのでしょうか。大まかな流れを解説します。

事業計画書の作成

事業計画書は、資金調達を行う際にも必要になるもので、「どのような美容室を作るのか」「どうやって、いくらの売り上げを作っていくのか」と明文化するものです。事業計画書には、以下のような事柄を記入します。

  • コンセプト:顧客ターゲットと提供するサービス、美容室の方向性を明確にします。
  • 投資計画:開業にあたっていくら必要なのか、資金をどこから調達するのかを計画します。
  • 損益計画:具体的な売上目標や利益目標を立てます。
  • 販促戦略:売り上げを達成するために必要な施策を考えます。

物件選定

事業計画書で考えた、実現したい美容室を叶えるための物件を選定します。商圏の特徴やターゲットが店舗前をどれだけ往来するか、交通量などを考慮した導線、物件が路面なのかビルの空中階かなど、さまざまな点を考慮し、物件を選定していきます。物件の選定にあたっては、自分だけで内見するのではなく、内装業者に現地調査を依頼し、電気や水道などの設備のスペックについての意見も参考にしたほうがよいでしょう。

資金調達

物件の敷金・礼金など、開業に必要なものの見積もりを集め、おおよその開業資金を試算します。自己資金で足りない場合には、出資を募る、補助金や助成金を利用する、クラウドファンディングを行う、金融機関からの融資を受けるなどの資金調達方法を検討します。政府系金融機関の日本政策金融公庫は積極的に創業支援を行っており、創業前から創業時、創業後まで、さまざまな融資の相談をすることができます。

物件契約

入居日、解約の条件、支払期限、支払い方法、原状回復などを確認し、物件の契約を行います。契約時に必要となる経費は、前家賃、敷金、礼金、仲介手数料、さらに借主に連帯保証人がいない場合は家賃保証会社に支払う保証料が必要となります。

内装工事

内装工事は、その物件が新築なのか、居抜きなのか、改築なのかによって金額が変わります。また、内装工事の費用の中には、以下のようなものが含まれます。

  • デザイン、設計費
  • 仮設、造作、建具、サインなどの工事費
  • 空調、防災、電気、水道などの設備工事費

内装工事は、複数の業者と打ち合わせを行い、施工期間と費用をじっくり検討した上で決定するとよいでしょう。

営業準備

内装工事が終わり、設備が整ったら、いよいよ開店の準備です。開店までにはお店のウェブサイトやInstagram、Facebookをはじめとするソーシャルメディアでの情報発信、ショップカードやチラシなどで販促活動を行いましょう。また、お客様が美容室で快適な時間を過ごせるよう、BGMや雑誌の準備も必要です。さらに、お客様の利便性を考慮して、予約システムやキャッシュレス決済も検討するとよいでしょう。
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美容室開業に必要な手続き

美容室開業にはさまざまな書類を関係各所に提出する必要があり、許可が下りるまでに時間がかかることもあるので、準備には余裕をもって臨みたいものです。

保健所に美容所開設届を提出

内装工事などを終えて店舗の準備が整ったら、管轄の保健所に「開設届」「施設の平面図」「構造・設備の概要」「従業者名簿と美容師免許状」「結核や皮膚疾患の有無に関する医師の診断書」などを開業の10日前までに提出し、施設検査を受ける必要があります。施設検査で追加工事が発生すると、費用負担が増えるだけでなく、開業が遅れてしまいかねません。できれば、工事着工の前に、内装工事の設計図面や事業計画書を持って保健所に相談に行き、不安な部分は確認をしておきましょう。

税務署に開業届を提出

「個人事業の開業・廃業等届出書」と、必要であれば「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。開業届は、開業後1カ月以内に届け出なくてはいけないので、注意が必要です。これらの書類は、所轄の税務署を直接訪れて受け取るか、国税庁のホームページから書式をダウンロードして作成します。

労災保険、雇用保険関係の書類を提出

従業員を雇用する場合、労働保険に加入しなくてはいけません。労働保険は労災保険と雇用保険の総称で、労災保険は労働基準監督署、雇用保険は公共職業安定所で手続きを行います。

消防署に防火対象物使用開始届出書を提出

美容室を開業するには、消防設備の基準を満たしているかを確認するために、消防署への手続きが必要となります。テナント物件などを使用する際には、使用の7日前までに「防火対象物使用開始届出書」を提出します。また、美容室の規模が、従業員とお客様を含めて30人以上収容可能であれば、防火管理者を選任しなくてはなりません。保健所同様、工事の着工前に必要な消防設備について消防署へ相談・確認を行うことをおすすめします。内装工事の内容によっては、工事前に「防火対象物工事等計画届出書」の提出も必要です。

美容室を成功させるコツ

美容室を人気の繁盛店にするためには、どのようなことが必要になるのでしょうか。

コンセプトをしっかり決める

自店のコンセプトをしっかりと決めることは、美容室にとって欠かせません。ターゲットとするお客様の属性を想定し、お客様に選んでもらうためのサービスの特徴を決めます。たとえば、「小さな子どもと一緒に行ける」「遅い時間まで営業しているので、仕事終わりでもパーマの施術を受けられる」などのコンセプトが決まると、それをもとに美容室の雰囲気や立地などを決めることができます。また、美容室のコンセプトがしっかり決まっていれば、従業員も店の方向性を理解しやすく、安定したサービスの提供が行えます。

集客と販促活動に力を入れる

美容室の集客や販促に欠かせないのが、お店のウェブサイトやソーシャルメディアの活用です。特にInstagramは、写真や動画が中心となっているプラットフォームであることから、施術の前後比較や、仕上がりを伝えやすく、美容室の販促にはおすすめです。施術のビフォーアフターやヘアアレンジの方法などを写真や動画で投稿し、お客様と双方向のコミュニケーションを取るように心がけましょう。

接客とオペレーションに注意する

せっかく来店してくれたお客様に「また来たい」と思ってもらえるよう、接客には細心の注意を払いたいものです。その際に活用できるのが、お客様カルテなどの顧客管理台帳です。カウンセリングなどで記入してもらった内容をもとに接客できれば、たとえば「施術中は静かに雑誌を読みたい」と考えているお客様に対して必要以上に話しかけてしまうようなミスマッチを防ぐこともできます。

また、売り上げを考えるがあまりにキャパシティーオーバーの予約客を取ってしまい、お客様を待たせてしまうと、お客様は気分を害するかもしれません。オペレーションには余裕を持ちましょう。

実現可能な収支計画を立てる

ひとたび美容室がオープンすれば、家賃、人件費、光熱費など、売り上げに関係なく固定費がかかります。しっかりとした収支計画を立て、持続可能な店舗運営を行いましょう。収支のシミュレーションには、以下の項目を考慮します。

項目 内容
売上高 お客様に提供したサービスの対価
売上原価 薬剤など、サービスを行うのに必要な原材料費
粗利益 売上高から売上原価を引いたもの
販売管理費 人件費、家賃、水道光熱費、広告宣伝費など
営業利益 粗利益から販売管理費を引いたもの
現金収支 手元に残る現金

キャッシュフローを意識する

営業利益が黒字でも、手元に残る現金が少ないと資金繰りがうまくいかずに黒字倒産を起こすことも考えられます。手元に現金がない事態を避けるためにも、「代金回収はできるだけ早く、支払いはできるだけ遅く」を意識しましょう。キャッシュレス決済を検討するときには、決済手数料や導入費用に加えて、キャッシュフローの観点から、売上額の入金サイクルも重視すべき項目です。

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お客様の利便性を考慮する

美容室の開業にあたり、お客様の利便性は考慮すべき項目です。特に、ネット予約機能のある予約システムは、24時間予約を受け付けられるだけでなく、予約と同時に予約管理画面に情報が反映されるので、予約管理にかける労力を簡略化するだけでなく、ダブルブッキングなどミスやトラブルの防止効果も期待できます。予約管理は、美容室成功のためのキーポイントといえるでしょう。

たとえば、予約システム「Square 予約」では、ネット予約に対応した予約ページを無料で作成できます。さらに、顧客管理機能、事前決済機能、スタッフ管理機能、InstagramやFacebook、「Google で予約」との連携まで無料で利用できるので、コストを抑えて予約管理システムを導入したい美容室におすすめです。

美容室の開業に必要な手続きや資金、成功させるコツを紹介しました。独立・開業の道のりはけして簡単ではありませんが、開業を楽にしてくれるクラウド会計ソフトや予約管理システムなど、無料もしくは安価で使えるサービスを活用し、成功店になるための工夫を重ねていきましょう。

予約管理はSquare 予約で

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Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2022年5月17日時点の情報を参照しています。
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