この記事では黒字倒産を招かないための経営手法でもある「キャッシュフロー経営」について説明しています。キャッシュフロー経営を見直すには、在庫数を把握することも欠かせない点の一つです。SquareではSquare POSレジから在庫管理機能が無料でご利用いただけます。
黒字経営なのに倒産を招いてしまう、いわゆる「黒字倒産」という事例があります。手元の資金がショートしてしまい、支払いができなくなってしまうことによるもので、裏を返せば赤字であっても手元に資金があれば回避することが可能です。そんな黒字倒産を招かない経営手法として「キャッシュフロー経営」という考え方があります。
今回はビジネスを手堅く進めていくうえで知っておきたいキャッシュフロー経営の概要やメリット、デメリット、実践方法などを紹介します。
キャッシュフロー経営とは、 キャッシュフローに重点を置いた経営手法
「キャッシュフロー経営」という言葉に明確な定義はありませんが、一般的には資金(現金)の出入りを最重視した経営手法のことを指します。
事業を進めていくうえでのお金の流れのことを「キャッシュフロー」といいます。入ってくるお金は「キャッシュイン」、出ていくお金は「キャッシュアウト」と呼ばれることがあり、「キャッシュイン」から「キャッシュアウト」を差し引いた残額をいかに手元の資金として残すかということを意識するのがキャッシュフロー経営のポイントです。
書面上の利益よりも現実のお金を重視
たとえば、掛け販売をしたとします。
会計処理上、損益計算書では売掛金が発生した時点で計上するため、売り上げが立ったことの把握はできますが、それが回収できたかどうかなどの現金の動きまでは把握しきれません。掛け販売では売り上げから回収までにタイムラグが生じるので、売り上げが立ったとしても、その間は代金の回収ができていない状態となります。実際のお金の動きを把握しないまま、「損益計算書上では利益が出ているから」と安心して販売を続けていると資金がショートし、黒字倒産を招いてしまう危険があります。
キャッシュフロー経営では、売掛金の発生時ではなく回収時を基準としてお金の動きを把握します。会計上の利益を重視するのではなく、手元にある実際のお金にゆとりを持つことを重視する手法であるため、黒字倒産の回避につながります。
キャッシュフロー経営のメリット
キャッシュフロー経営のメリット
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安定性の高い経営が進められる
赤字でもすぐには倒産しませんが、資金が不足すると倒産のリスクが高まります。資金を残すことを何よりも重視したキャッシュフロー経営の企業は、倒産するリスクが大きく抑えられるので、安定性の高い経営を続けていくことができます。取引先の倒産など、不測の事態に見舞われたとしても、潤沢な資金が手元にあれば大きな痛手を負わずに済みます。 -
対外的な信用が高められる
融資を申し込む際、金融機関はまず債務の返済能力をチェックするので、常に手元に現金があるかどうかも重要な評価ポイントになります。将来的な資金不足の対策として借り入れを申し込む場合でも、キャッシュフローがしっかりと管理できていて、早期にきちんと対策が打てる経営体制として評価される可能性があります。 -
経営資源を資金繰り以外に割り振ることができる
運転資金の確保は企業経営の生命線です。常に資金繰りが困難な状態では、これを何とかするために人・モノ・金といった経営資源を充当せざるを得なくなってしまいがちです。その点、キャッシュフロー経営の企業であれば、資金繰りの安定を優先させているため、その部門に充てる経営資源は最低限で済み、営業や開発などの事業を拡大させていく部門に割り振っていけます。
キャッシュフロー経営の実践方法
現状のキャッシュフローを把握
まず一定の期間を設定し、時間軸に沿ってすべてのキャッシュインとキャッシュアウトを洗い出して現状を把握する必要があります。ある程度事業規模が大きいようであれば、「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」とカテゴリーを分けて確認するのがおすすめです。
「営業キャッシュフロー」とは、営業活動における資金の支出で、キャッシュインとしては回収した売上代金など、キャッシュアウトとしては仕入れ代金や人件費などが挙げられます。
「投資キャッシュフロー」は投資活動にかかわる資金で、設備投資や固定資産の取得費用などがキャッシュアウトとなり、それらを売却した場合などがキャッシュインとなります。事業の拡大を進めている企業ではマイナスになることが一般的です。
「財務キャッシュフロー」は資金の調達と返済の動きであり、資金を調達したときはキャッシュイン、返済したときはキャッシュアウトとなります。
資金繰り表を使ってキャッシュフロー計画を作成
前のステップで行う現状把握にも活用できますが、視覚的にキャッシュフローを把握、計画するために「資金繰り表」を作成しましょう。
計画のポイントとなるのは、「回収はできるだけ早く、支払いはできるだけ遅く」ということです。これを心がけることによって、手元に残る資金を大きくすることができます。仕入れの内容によってはクレジットカードを利用するのも効果的です。クレジットカードで決済すれば、場合によって支払いを1カ月ほど後に送ることも可能です。
これとは逆に、回収のタイミングが遅く、支払いのタイミングが早くなると、手元に現金を残せる期間が短くなり、資金ショートを起こすリスクが高くなってしまいます。
キャッシュフロー計画の作成に不安がる場合は、税理士などの専門家にみてもらうとよいでしょう。
月次の検証と計画の見直し
キャッシュフロー経営を着実に進めていくには、計画が順調に進んでいるかどうかの定期的なチェックが欠かせません。基本的には毎月検証を行い、もし予定通りに進んでいないようであれば、その問題点を洗い出し、計画を修正する必要があります。特にどのような点に注意したらよいのでしょうか。主だったところを紹介します。
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売上回収の徹底
前述のとおり、売り上げの回収はできる限り早くするのが理想です。期日を過ぎても代金が回収できない場合には、速やかに督促をしましょう。一般的に対応が遅くなるほど回収が難しくなるといわれています。忙しいとおろそかになってしまいがちなので注意してください。 -
在庫を減らす
必要以上に在庫があるという状況は、本来資金になるものが物として手元にあるという状態です。物では支払いに充てることができないので、過剰な在庫は早く販売、回収し、現金化しなくてはなりません。一方、在庫は少なければ少ないほど良いというものではありません。出荷のタイミング、数量を計りながら、適切な時に適切な量の在庫を持つようなマネジメントが求められます。
キャッシュフロー経営は倒産を避けるために非常に効果的な方策です。ただし、一つの手法にのみとらわれると経営の本質から逸れていってしまう懸念もあります。キャッシュフローをしっかりと把握するとともに、利益を着実に生み出していけるような経営を意識することも大事です。
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執筆は2020年4月28日時点の情報を参照しています。
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