開店準備の12のステップとは?初めてでも失敗しない店舗開業のコツ

オーナーとして自分の店舗を開業しようと検討する際、準備すべきことの多さに戸惑うかもしれません。スムーズな店舗開業のポイントは、入念な事前調査と準備、余裕を持ったスケジュールです。今回は、ネットショップではなく、お客さまが足を運ぶ実店舗の開店準備にフォーカスし、開業に向けて検討することや、開店までの準備のステップを考えてみましょう。

目次


開店準備を始める前の5つの検討ポイント

初めての店舗開業では、ビジネスの基本や法規制など知らなかった知識が必要とされる可能性があります。開店準備に着手する前に、最低限検討しておきたい5点を押さえておきましょう。

(1) 店舗のコンセプト

店舗のコンセプトとは、何を売るかだけではなく、お客さまにどんな価値を提供するために開業するかを明確にしたものです。簡単にいえば、「こんな人のために開業したい」「店舗に来てこんな気持ちになってほしい」といったイメージを具体化することでもあります。

店舗のコンセプトを検討する具体的な方法としては、誰に(who)、何を(what)、いつ(when)、どこで(where)、どのように(how)提供するか、という5W1Hを書き出します。たとえば、おしゃれなカフェを開店したいというアイデアがある場合、以下のようなコンセプト案が考えられます。

誰に(who) : 多忙だが健康志向を持つ20代から30代の会社員女性
何を(what) : 仕事の疲れを癒すドリンクやヘルシーフード
いつ(when) : 通勤中やランチタイム、外回り営業の隙間の時間
どこで(where) : オフィス街の近隣のさわやかな内装の店舗
どのように(how) : 持ち帰りとイートイン

コンセプトが決まると、店舗開業のイメージがわき、開店に向けて準備するメニュー、内装、営業時間、マーケティング方法なども想定しやすくなります。

(2) マーケティング

マーケティングとは、宣伝だけでなく、店舗のイメージ作りと売上向上の取り組み全般を指します。高級志向の婦人服販売の店舗であれば、メンバー限定の特別招待セールはお客さまにプレミア感を与え、ラグジュアリーな内装は店舗のイメージ維持に役立ちます。しかし、量販店であれば、活気のある売り場作りや、お得さを強調した広告やメールマガジンで店舗のコンセプトを伝えます。

店舗のターゲット層(who)に応じて、異なるマーケティング方法が必要であることも覚えておきましょう。高齢者層がターゲットの店舗であれば、読みやすいサイズやフォントの文字を使った値札や広告を準備します。ソーシャルメディアを使ったマーケティングでも、10代から20代を中心とした若年層に人気のあるInstagramと、30代から60代の利用率が高いFacebookでは、店舗の事業内容によって広告効果が異なります。

マーケティング方法は開店後にも柔軟に変えていくことができますが、マーケティング方法の種類を事前に学んでおくことで、多忙な開店準備のタイミングに慌てずに済みます。

(3) 店舗物件の選定

店舗物件の選定は、ビジネスのコンセプトを表現する重要な要素です。物件探しや下見の前に、検討すべきポイントをリスト化しておきましょう。おしゃれなカフェ開業の例であれば、「多忙だが健康志向を持つ20代から30代の会社員女性(who)」が、「通勤中やランチタイム、外回り営業の隙間の時間(when)」にアクセスでき、「仕事の疲れを癒すドリンクやヘルシーフード(what)」を買うためにふさわしい店舗物件が必要です。

もちろん、店舗物件の契約費用の他、内装の施工費、賃貸の場合は月々の家賃など、店舗運営の予算も同時に考える必要があり、地域ごとの家賃相場をリサーチしておくと店舗物件探しがスムーズになります。居抜きタイプの店舗物件では、前テナントの残した設備や什器を使うことができ、店舗開業の初期費用を抑えることが可能です。

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(4) 開業前の資金調達

開店のために十分な軍資金を既に準備している場合を除き、店舗開業には資金調達が必要です。開店準備や店舗運営のための資金調達の代表的な方法として、融資と補助金・助成金があります。融資は、銀行や信用金庫などに事業計画書を提出し、審査を通過すると資金を借りることができるものです。一方、補助金・助成金は国の各省庁や地方公共団体が交付するもので、申請が採択されると返還不要の資金を受給できます。

他に、専用プラットフォームなどで寄付を募るクラウドファンディングも、店舗開業の資金調達の方法として考えられます。

(5) 資格・許認可の必要性

開店準備として、特定の資格や許可・認可が必要なケースがあります。店内飲食をする店舗の開業には、食品衛生責任者と防火責任者の資格保持者が不可欠です。食品衛生責任者は各地の保健所、防火責任者は消防署で講習に参加し、それぞれ1日か2日程度で取得できます。

また、飲食店や美容院、理髪店、ペットショップなどの場合、衛生や安全の観点から、保健所が指定する設備要件を満たすことが求められます。内装デザインの決定前に、保健所が定める規則を必ず確認し、完成予定図を保健所に持参して相談しましょう。申請しても店舗の営業許可が下りなかった場合は、保健所の指示に従って店内レイアウトの変更が必要です。

他の業種の店舗でも、開店前に公的機関の許認可が必要なケースがあるため、次章で詳説します。

開店までのスケジュールを12の開業ステップで計画

店舗運営がスムーズに滑り出すかは、開店準備の周到さに左右されます。開業まで余裕を持って計画を立て、予期せぬトラブルによる開店の遅れなどを避けるよう、スケジュールを以下の12のステップに分け、準備していきましょう。

開業ステップ1. コンセプトの決定

店舗開業の命運を握るコンセプトは、同業種の店舗なども参考にしながら、十分な時間をかけて準備しましょう。コンセプトが明確であると、資金調達の際に必要な事業計画書も作成しやすくなります。

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開業ステップ2. 市場調査や商圏調査の実施

開店準備としていつでも始められるのが、市場や商圏のリサーチです。同業種の店舗の経営状態やコンセプト、商品ラインナップ、評判などについての市場調査は、成功する店舗開業のヒントを掴むために有効です。

ターゲット層の生活スタイルや地域分布についてもリサーチを重ね、店舗を開業したいエリアの商圏調査を行いましょう。実際にそのエリアを訪れて人の流れを確認することはもちろん、自治体による人口の流出入データや、鉄道会社による駅の乗降客数の動向、店舗近隣の開発計画などの情報にも目を光らせましょう。

開業ステップ3. 店舗物件の選定や立地調査

エリアを絞ったら、不動産会社のウェブサイトなどで店舗物件の相場を調べましょう。気になる店舗物件の内見をする際は、もともと何の店舗だった物件であるかに加え、空き店舗の期間、前テナントの退去理由、周辺環境なども尋ねてみると、不動産会社が教えてくれる場合があります。

内見後、店舗開業時の営業日や時間帯を想定して物件の周辺環境を確認してみることで、人の流れや近隣店舗の営業状況など、新たな発見があるでしょう。

開業ステップ4. 事業計画書作成

店舗開業のために資金調達をする可能性があれば、ビジネスの内容や見通しをまとめた事業計画書を準備しましょう。出店エリアや店舗物件にかかる費用、売上予測、自身の給与額の予定など、現実的な数字や計画を提示するように心がけましょう。事業計画書の作成には、無料のテンプレートも利用できます。

開業ステップ5. 資金調達

民間の金融機関による融資を受けたい場合は、各機関に事前に問い合わせましょう。公的な補助金や助成金は、小規模事業者持続化補助金や地域創造的起業補助金などの他にも、経済産業省、環境庁、林野庁、厚生労働省など、さまざまな省庁が目的ごとに異なるサポートを用意しています。

経済産業省の専用サイト「ミラサポplus」では、様々な補助金や助成金の情報から条件を絞って簡単に検索ができます。

資金調達が必要なのは開業のタイミングだけではありません。設備が故障したり、追加の仕入れが必要になったりと、急な出費が発生する場合もあれば、新商品の開発や2店舗目の出店など事業拡大に資金が足りない場合もあるかもしれません。そのような事態に備えて、資金調達サービスも提供しているビジネスソリューションを検討してみましょう。たとえば、Squareならキャッシュレス決済から資金調達まで、ビジネスオーナーをサポートする多彩なサービスを提供しています。

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開業ステップ6. 店舗・看板デザイン

居抜きの店舗物件であっても、自店舗のコンセプトに合わせて内装などをアレンジするなら、床や壁の素材、照明、陳列棚やテーブルなどの什器、カウンターの配置など、検討すべきことは限りなくあります。一般的には、開店後のイメージを内装専門のデザイン・施工業者と相談し、コンセプトを具現化する設計を依頼し、施工をしてもらいます。看板を作る際は看板デザイン・製作の業者に依頼します。店舗ロゴは、デザイナーに依頼する、またはオンラインのロゴ作成サービスの利用も可能です。店舗の内装や看板、ロゴなどはマーケティング戦略の面でも重視すべき要素であるため、店舗のコンセプトとしっかりすり合わせましょう。

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開業ステップ7. 商品調達やメニュー開発

商品調達やメニュー開発でも、コンセプトが重要です。小売店であれば、店舗に陳列する商品を吟味し、仕入れ先を見つけ、発注または買い付けをして、在庫を確保する必要があります。飲食店などでは、店舗で使う材料や必要資材の仕入れ先の確保も進めつつ、開店までにメニュー開発と価格設定を行います。競合店舗や周辺ビジネスの価格相場なども参考にしましょう。

開業ステップ8. 開業の許認可や届出

許認可や届出無しでの店舗開業は違法であり、罰金や営業停止の対象となることがあります。店舗の事業ごとに、以下のような許認可取得や届出を開業前に必ず行いましょう。

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この他、各店舗が対象になる防火対象設備使用開始届(消防署)、人を雇用する場合は労災保険の加入(労働基準監督署)、雇用保険の加入(公共職業安定所)、社会保険の加入(日本年金機構)なども必要です。

開業ステップ9. 支払方法を選定する

現金、クレジットカードQRコード電子マネーなど、どの方法でお客さまからの支払いを受けるか決定します。買い物の利便性を考え、支払方法は幅広く設定しておくと良いでしょう。キャッシュレス決済の導入は、カード会社ごとに契約するより決済代行会社を使って一本化すると便利です。導入審査にかかる時間を考え、開店の最低1カ月前の手続き開始がお勧めです。

支払方法と合わせて、お店の運営をサポートするPOSレジについても検討しましょう。飲食店ならオーダーエントリーシステムが使えるPOSレジ、小売店なら高度な在庫管理機能を備えた小売業向けPOSレジがおすすめです。

開業ステップ10. オペレーションを考える

仕入れ、品出し、調理、接客、販売、売上管理在庫管理、清掃といった毎日の業務の他にも、店舗運営には商品買い付け、人材採用やトレーニング、防犯・防災対策、市場調査、宣伝やセール企画・商品企画などのマーケティング、棚卸し、設備点検、地域との交流など、不定期の業務も多数あります。

まずは日ごと、週ごと、月ごとの仕事の流れを大まかに決め、それぞれの業務の最適なオペレーションを考えることで、開店後の作業をスムーズにしましょう。売上管理ツールや専用のソーシャルメディアのアカウントなども準備し、使い方に慣れておくと、開業後に慌てずに済みます。

開業ステップ11. スタッフ募集、トレーニング

人を雇用する場合、求人誌やサイトに有料広告を出す、店頭に貼り紙をする、人づてに探すなどの方法で募集します。募集要項作成の前に、店舗でのスタッフの作業内容を決め、欲しい人材像やスキルを明確化しましょう。採用後、開店準備中にトレーニング期間を設ければ、開業すぐに即戦力として働いてもらうこともできるでしょう。

開業ステップ12. 開店

開業のタイミングに合わせて、告知や宣伝、メディアリリース、地域住民や近隣店舗への挨拶を行いましょう。開業したら、個人事業主の場合は税務署に「開業届」を提出します。または、会社法人を設立する方法もあり、個人事業主とは税制上の違いがあるため、開業形態が決定した段階でどちらにするか判断し、準備を進めておきましょう。

以上の12項目をエクセルなどに入力し、開始予定日、実際に開始した日、関係者の連絡先、関連情報、進捗状況などを記録することで、複数のステップが同時進行する多忙さの中でも、開店準備におけるミスや手間を減らすことができます。店舗開業まで、一歩ずつ着実に準備を進めていきましょう。

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執筆は2020年1月8日時点の情報を参照しています。2024年3月1日に一部情報を更新しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash