起業や事業拡大のタイミングなど、まとまったお金が必要になったときの資金調達方法として、銀行からの融資があります。融資を受ける際に求められる書類はさまざまありますが、中でも代表的なものが事業計画書です。
今回は、銀行などの金融機関から融資を受けることを念頭に置いた、事業計画書作成のためのヒントを紹介します。
事業計画書がなぜ大切か
事業計画書は、経営方針や事業戦略、財務計画などをまとめたもので、銀行が融資を検討する際にその実現性を客観的に判断するための重要な資料です。事業計画書のクオリティが高ければ、説得力も増し、融資決定を後押してくれる資料にもなります。
では、事業計画書の作成に際してどのような点に気をつければよいのか、要点をチェックしていきましょう。
事業計画書作成の要点
わかりやすさ
金融機関向けの資料として、見やすさや読みやすさはもちろんのこと、誰にでもすぐに理解できる「わかりやすさ」が大切になってきます。「あれもこれも伝えようとしてポイントが分からない」「専門用語が多すぎる」「根拠があいまい」など、伝えたいことが伝わらないものにならないように気を配りながらも、できるだけシンプルな資料にしましょう。
端的に内容が伝わるように見出しを付けたり、項目ごとに要約を設けたりするのも有効です。また、金融機関によっては独自の事業計画書のフォーマットを用意しているところもあるので、必要に応じて利用するのもよいでしょう。プレゼンテーションソフトを使用して作成する場合は、不必要にフォントや色、図形をたくさん使って見にくくならないようにすることが大切です。
実現性
実際の経営では、常に売り上げが伸び続ける右肩上がりの状況ばかりとは限りません。融資を受けたい気持ちが強すぎて、理想の数字だけを並べた事業計画書は説得力の乏しいものになってしまいます。融資する側が知りたいのは、融資の返済が確実になされるかどうかです。裏付けのある数字を根拠に、計画的に返済できることが伝わるようにしましょう。
また、計画が予定通り進められなかった場合の代替案を考えているかなども重要です。これらは借り入れ後の報告に必要となる場合が多いので、できるだけ盛り込んでおくとよいでしょう。
融資金額をよく考える
金融機関の担当者から希望額を聞かれた際に「大体300万円」といったあいまいな数字を伝えることは、相手の不安を募らせ、融資の可能性を狭める結果につながります。事業計画書を綿密に作成し、「何のために、いつまでに、いくら」必要なのか、「何を根拠に、いつまでに、どのように」返済できるかを具体的に答えられるようにしておきましょう。
また、融資を受ける金額を読み違えると、損益計算上では利益が出ている黒字の状態でありながら、実際のキャッシュフローが追い付かずに事業が立ち行かなくなるという、いわゆる黒字倒産を招く恐れがあります。時系列で現金の出入りをしっかりと追って、融資を受けるタイミングと金額を見極めることが必要です。
さらに注意すべき点として挙げられるのは、追加融資の難しさです。資金が足りなくなっても、追加融資を受けられないこともあるので、ゆとりをもった金額で融資を受けられるような事業計画を立てましょう。
想いや熱意を伝える
相手の心をつかむ事業計画書は、経営者の想いや熱意がしっかりと届くものでなくてはなりません。自社の経理担当者や顧問税理士などにすべてを委ねずに、経営者自身が主体となって作成するようにしましょう。
事業の行き先を誰よりも考えている経営者だからこそ、想いを込めた将来像が描け、それを実現するために必要な従業員の行動を具体的に考えられます。細かい部分を挙げれば、記載する文体も「○○したい」「○○の予定です」といった期待を込めた表現ではなく、「○○します」「○○を達成します」といった意志のこもった表現を用いて、意志の強さや自信が伝わるように工夫しましょう。
単に見込みの数字を計算しただけの内容ではなく、構想実現に向けて建設的な計画を記し、熱意の伝わる事業計画書を作成しましょう。
人としての信頼も大切
融資を依頼するにあたって、窓口になるのは金融組織の融資担当者です。融資担当者が上司などに対して、あなたの事業計画を説明し、融資するかどうか検討することになります。どんなに説得力のある事業計画書を作っても、担当者にあなた自身を信頼してもらえないことには始まらないので、まず人として信頼を得られるように気を配ることが大切です。
基本的なことですが、面談の時間や提出書類の期限など、約束したことは必ず守りましょう。信頼は、ひとつひとつの約束を守ることの積み重ねによって得られます。一方、コツコツと築き上げた信頼も些細なことがきっかけで失われ得るものです。常に誠実であることを念頭に行動するよう心がけることが大切です。
また、事業計画書の内容について何か質問された場合は、調べるのに戸惑って相手を待たせたり、はっきりしない返答で融資担当者の不安を招いたりすることのないように、すぐに自分の言葉で明快に答えられるようにしておきます。そういった意味でも、事業計画書は経営者自身が作成することが重要であるといえます。
迷ったときは
銀行から融資を受けるための事業計画書作成にあたって、気をつけるべき点はさまざまあり、何を書くべきか、どう書くべきか迷うことも出てくるでしょう。その際は「何のために必要な事業計画書なのか」という原点に立ち返って、「融資の返済を証明できるかどうか」という点を拠り所として判断してみるのも方法のひとつです。
最後に、事業計画書が仕上がったら、問題のない範囲で、友人や知人、税理士など第三者に確認してもらうようにしましょう。根拠なく書かれている部分や疑問を招く点を指摘してもらい、修正を加えることで、より精度の高い事業計画書ができます。
質の高い事業計画書は、銀行の融資担当者との交渉を首尾よく進められるだけでなく、銀行の融資担当者が自信を持って上司や幹部に掛けあえるという点でも強力な後ろ盾となります。
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執筆は2018年4月11日時点の情報を参照しています。
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