確定申告還付金とは?受取時期や遅い場合の対処方法

確定申告は、1年間の収支を確定させ、ビジネスの成果をまとめる大きな区切りとなるものです。その結果として所得税の納税額が決定しますが、このときに納付額がマイナスになって返金されることがあり、これを確定申告の還付金といいます。

本記事では、個人事業主やフリーランス、副収入のある給与所得者が還付金を受け取る場合を想定し、還付金の対象となるケースや計算方法、受け取るタイミングや手続き方法について解説します。併せて、還付金の計算が間違っていた場合の修正方法や還付金の仕訳方法、確定申告や還付金の申請を簡単にすませるコツも紹介します。

目次


確定申告還付金とは?

確定申告の還付金とは、払い過ぎていた税金を返金してもらうことを指します。

確定申告では、給与や事業の報酬などの収入と経費や各種控除を差し引きして、所得を確定させ、1年間の所得税額を算出します。このとき、あらかじめ納めていた源泉徴収税額や予定納税額などが確定した所得税額を超えると、差額分が還付金として返金されます。

参考:確定申告期に多いお問合せ事項Q&A【確定申告・還付申告】(国税庁)

個人事業主が確定申告で還付金をもらえるケース

個人事業主やフリーランスでは還付金を受け取ることのできる場合が多くみられます。いくつかのケースをみていきましょう。

予定納税が確定税額を上回った場合

予定納税とは、前年の所得を踏まえて所得税(復興特別所得税の一部を含む)を事前に納めておく制度です。一度に多額の所得税を納付することによる納税者の負担を減らすためと、国の歳入を一時期に偏らせないために設けられたしくみです。

基本的には、5月15日時点で確定した前年分の申告納税額が予定納税基準額となります。基準額が15万円以上になると予定納税が必要とされ、基準の3分の1の金額を7月と11月の2期に分割して納付します。確定申告時には、確定した所得税額から納付済みの予定納税額を差し引いて過不足を精算するわけです。

予定納税は前年の所得に基づいて算出されるため、今年の所得が前年を下回るなどして確定した所得税額が予定納税で納めた金額より低くなれば、差額が還付金として返金されます。

参考:No.2040 予定納税(国税庁)

源泉徴収額が所得税の確定税額を上回った場合

源泉徴収は、取引時に支払い側が一定額を税として天引きし、納税者本人の代わりに納付する制度です。一般的には給与所得者の源泉徴収がイメージされやすいところですが、個人事業主やフリーランスの場合でも、次のような報酬・料金は源泉徴収の対象となり、確定した所得税を上回った場合、差額が還付されます。

  • 原稿料、講演料(懸賞応募の賞金などの場合は1人1回5万円を超えるもの)
  • 士業などの資格をもつ人に支払う報酬
  • スポーツ選手、芸能活動による報酬、契約金
  • 広告宣伝のための賞金

参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは(国税庁)

純損失の繰戻し還付を受ける場合

繰戻し還付とは、大きな赤字が出た場合に過去に遡って前年の黒字を本年の赤字で相殺する制度です。これに対し、次年度以降の黒字と相殺する場合は繰越控除といいます。

前年分(事業の譲渡や廃止時の場合は前々年分も)の青色申告書を提出していて、純損失の金額(全部または一部)を前年分の所得金額から控除して税額を再計算して確定させたとき、支払済の税額を上回った差額分が繰戻し還付されることになります。

参考:A1-4 純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求手続(国税庁)

還付金をもらうために確定申告が必要な給与所得者

給与所得者は年末調整で1年間の収支と所得税額を確定させるため、基本的には確定申告を必要としませんが、確定申告をすることにより還付金を受け取ることのできる場合もあります。いくつかのケースをみておきましょう。

副業をしている

給与所得者でも、副業で給与以外の収入があるなど、以下のような場合は確定申告をして所得税額を確定させる必要がありますから、事前に源泉徴収された税額などが確定後の所得税額を上回れば差額が還付されます。

  • 給与所得や退職所得以外の所得の合計が20万円を超える
  • 2カ所以上から給与を受け取っている(給与の全部が源泉徴収の対象となり、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える場合。ただし各所得控除を差し引いた金額が150万円以下の場合を除く)
  • 同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている
  • 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている
  • 給与の年間収入金額が2,000万円を超える
  • 源泉徴収義務のないところから給与などを受けている

参考:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(国税庁)

医療費控除・寄附金控除などの所得控除がある

所得控除とは、所得税額を計算するときに、納税者の一人ひとりの個人の事情を加味するために設けられた制度です。所得控除には基礎控除や配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除などさまざまなものがあり、これらの控除額が積み上がり所得税額が減ると還付金を受け取れる可能性があります。以下の控除に該当するかどうかを確認しておくとよいでしょう。

  • 医療費控除(支払った医療費から保険金などで補填される金額を引いた額のうち10万円を超えた分)
  • 寄付金控除(特定寄附金の合計額または総所得金額の40%のいずれか低い金額から2,000円を引いた分。ふるさと納税も寄付金控除の対象)
  • 雑損控除(災害による損害額と災害等関連支出の合計から保険金を差し引いた額の10%または5万円を差し引いた分のいずれか多い方)

参考:
No.1100 所得控除のあらまし(国税庁)
No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)(国税庁)
No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)(国税庁)
No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)(国税庁)

年末調整を受けていない

年末調整は、給与などからあらかじめ源泉徴収された分と、実際の所得で納めるべき所得税との差額を年末に精算するしくみで、1年を通じて雇用されている給与所得者や、年の途中から年末まで雇用された給与所得者が対象となります。

年の途中で退職するなどして年末調整を受けていない場合や、期限までに会社へ書類が提出できなかったなど年末調整を受けそびれた場合は、確定申告によって各種控除や事前に納めた源泉徴収分を引き所得税額を確定させる必要があります。このとき実際に納めるべき所得税額が事前に納めた分より少なかった場合、差額分が還付されます。

確定申告還付金の計算方法、確認方法

還付金の額は、確定申告時に計算・確認ができます。

確定申告還付金の基本的な計算方法

所得税の還付金は、あらかじめ納めた税額から本来納付すべき所得税額を差し引いた額がプラスになれば発生します。このため、次の流れで年間の課税対象額を確定させ、所定の税率を掛け合わせて税額を算出し、最終的な納税額を確定させます。

  1. 所得金額の計算(収入金額から経費などを差し引いた額)
  2. 課税所得金額の計算(所得金額から所得控除を差し引いた額)
  3. 所得税額の計算(課税所得金額に所定の税率を掛け合わせて算出した額)
  4. 基準所得税額の計算(所得税額から税額控除などを差し引いた額)
  5. 復興特別所得税額の計算(基準所得税額に2.1%をかけた額)
  6. 申告納税額の計算(基準所得税額と復興特別所得税額を合計した額から源泉徴収税額や予定納税額などあらかじめ納付済みの額を差し引いた額)

参考:No.1000 所得税のしくみ(国税庁)

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還付金の有無を確定申告書で確認する方法

国税庁では、確定申告書の作成サイト「確定申告書等作成コーナー」を運営しています。画面の案内に従い入力するだけで確定申告書などの必要書類が自動的に作成できるため、誤計算の心配がありません。データを保存し何度でも再計算させることができ、前年のデータを読み込むことも可能です。

還付金が発生する場合、出力された確定申告書第一表の「申告納税額」と「還付される税金」の欄にマイナス表示で金額が表示されます。

確定申告還付金はいつ振り込まれる?

確定申告還付金の受け取りまでの基本的な流れをイメージしておきましょう。

確定申告から還付金受け取りまでのスケジュール

原則として、確定申告による所得税の納付は2月16日から3月15日までが受付期間となっています。また、消費税の納付は3月31日、所得税の延納は5月31日が期限(いずれも休日の場合は翌週の月曜が期限)です。税務署が還付処理を行うのは、確定申告をしたあとです。

提出方法によって還付金の受け取り時期は異なる

基本的に、確定申告の方法によって税務署での確認や還付処理にかかる時間が異なるため、受け取り時期が違ってきます。

たとえば、税務署に直接提出した場合や郵送した場合は、確定申告書を提出した日(郵送の場合は消印の日)より1カ月から1カ月半ほどかかるようです。

これに対し、e-Taxを利用した電子申告の場合は、直接提出や郵送に比べて処理期間が短く、申告内容に問題なければ3週間程度と比較的早く受け取ることができます。さらに、e-Taxのサイト上で還付金の処理状況も確認できるため安心です。

参考:確定申告期に多いお問合せ事項Q&A【税金の還付】(国税庁)

確定申告還付金を最短で受け取るには?

確定申告の受付期間は、基本的に翌年の2月16日から3月15日までです。手続きが早ければ早いほど還付金の受け取りも早くなります。とくに、3月に入ってからは確定申告書の提出数が増えるため、還付金の処理にも時間がかかるようになります。還付金の受け取りを最短にしたい場合は、受付期間の初期(2月16日から2週間まであたり)に提出すると処理が滞りなく進む可能性が高まります。

なお、給与所得者の医療費控除など還付申告のみの場合は翌年1月1日から申告できるため、さらに早めに提出し、受け取り時期を早めることが可能です。

確定申告の期限後でも還付申告はできる?

確定申告による納税は翌年の受付期間内に行う必要がありますが、還付の申告であれば5年間は手続きが可能です。

たとえば、令和5年(2023年)分の還付申告は、令和6(2024)年1月1日から令和10(2028年)年12月31日までが期間となります。

確定申告還付金の受け取り方法

確定申告の還付金は、主に銀行口座への振込と、ゆうちょ銀行での窓口受取の二つの方法で受け取ることができます。

銀行口座への入金

還付金の受け取り方法で手軽なのは口座振込です。確定申告書に口座情報を記載するだけで指定でき、あとは待っているだけですみます。公金受取口座を登録済みの場合は公金受取口座を指定することも可能です。

金融機関は、都市銀行、地方銀行、信用金庫、労働金庫、農業協同組合、ゆうちょ銀行など各種機関を指定できます。ネット銀行は対応していない場合があるため、銀行に確認しましょう。申告者本人名義であることが条件となるため、姓が変わった場合などは口座の名義変更を行う必要があります。屋号が含まれる名義も振り込みできない場合があり、個人名義の口座にするのが無難です。

金融機関名や口座番号、預貯金の種別、名義などの記載に不備があると振込できなくなります。とくにゆうちょ銀行の口座は他の金融機関との間で使用する店名・店番や口座番号ではなく、貯金通帳の記号番号を記載する必要があるため注意が必要です。

ゆうちょ銀行の窓口での受け取り

ゆうちょ銀行に限り、窓口で直接還付金を受け取ることもできます。この場合、受け取りに出向く郵便局の名前(支店名または郵便局名)を記載して申告します。指定以外の場所で受け取ることはできないため、確実に足を運べるところを選びましょう。

税務署での処理後、国庫金送金通知書が送付されてきます。指定した支店または局の窓口に通知書と身分を証明できるものを持参し、還付金を受け取ります。

参考:還付される税金の受取場所(確定申告コーナー)

確定申告還付金の振り込みが遅い原因と対処方法

還付までの目安として申告から1カ月~1カ月半は様子をみておきたいところですが、それ以上に時間がかかっている場合、書類の不備などの事情で処理が進んでいない可能性があります。以下の方法で還付金の手続状況を確認するとよいでしょう。

ハガキによる通知の時期を確認しよう

還付金の処理が進むと、税務署から還付金振込通知書が届きます。入金日が詳細に記載されているわけではないものの、書面に記載された手続き日から、振込時期の予測がある程度は可能でしょう。

e-Tax上で「還付金処理状況」を確認しよう

e-Taxを利用した場合、還付金の振込通知をe-Tax上で確認することができます。書面よりも早く通知が届き、紛失するおそれもありません。また、サイトにアクセスしていつでも進捗状況を確認できるため、安心です。

参考:還付金振込通知の電子化について(国税庁)

税務署に問い合わせてみよう

書面による通知も届かず、e-Tax上でも進捗が思わしくない場合、管轄の税務署に直接問い合せてみるのも一つの方法です。問合せの際には、申告書の控えを手元において、申告日や通知書の着・未着、e-Taxの状況など、わかっていることを正確に伝えて調べてもらうとよいでしょう。

確定申告還付金が多すぎる、または少なすぎる場合

確定申告は間違えずに行うのが大前提ではあるものの、誤りが生じないとも限りません。還付金の額を間違えてしまった場合は、できるだけ早く修正の手続きを行いましょう。

確定申告期限内の修正の場合は、還付金の過不足に関係なく、改めて正しい金額で申告書を作成し、再提出します。

確定申告期限後の修正であれば、所得税を少なく申告し還付される額が多すぎた場合は「修正申告」、所得税を多く申告し還付される額が少なすぎた場合は「更正の請求」を行います。

還付される税金が多すぎる場合

納付すべき税金を少なく申告し、還付される金額が多くなった場合は、修正申告を行います。税務署の調査を受けた後の修正申告だと、過少申告加算税や重加算税がかかる場合があります。

修正申告の期間、手続き方法

正しい税額を計算した確定申告書を作成し、所轄の税務署に提出します。国税庁のサイト「確定申告書等作成コーナー」に修正申告書を作成するためのリンクが案内されているので、必要事項を入力し、作成するとよいでしょう。

修正申告は気づいた時点でいつでも可能ですが、過少申告加算税や重加算税、延滞税がかかる可能性もあるため、間違いに気づいたらできるだけ早く手続きをとりましょう。

還付される税金が少なすぎる場合

納付すべき税金を多く申告し、還付金が少なかった場合は更正の請求を行います。税務署内で調査し、正当と認められた場合は減額更正が行われて通知が届き、納めすぎた額が還付されます。

更正の請求の期間、手続き方法

更正の請求の場合、更正の請求書を所轄の税務署に提出します。修正申告同様に、国税庁のサイト「確定申告書等作成コーナー」に更正の請求書を作成するためのリンクが案内されているので、必要事項を入力し、作成しましょう。

更正の請求書には、取引記録や経費・控除を証明する書類など、請求の理由となる事実を証明する書類を添付します。e-Taxによる提出の場合は本人確認書類の提示・添付は不要です。

更正の請求の場合は、法定申告期限より5年以内と期限が定められているため、期限内に申告しましょう。

参考:申告が間違っていた場合(国税庁)

確定申告還付金の仕訳

確定申告の還付金もお金のやりとりになりますから、仕訳の必要があります。ここからは、個人事業主が還付金を受けた場合の仕訳例をみておきましょう。

還付金を受ける個人事業主の仕訳例

税の支払いが経費とならないのと同様に、還付金は売り上げにはなりません。このため、還付金が事業用の口座に入金された場合は、事業主借の勘定科目に計上します。

(例)還付金5万円が振り込まれた場合

借方 金額 貸方 金額 摘要
普通預金 50,000円 事業主借 50,000円 所得税還付金

(例)確定申告で3万円が還付されることがわかり、その後入金を確認した場合

借方 金額 貸方 金額 摘要
未収金 30,000円 事業主借 30,000円 所得税還付金
借方 金額 貸方 金額 摘要
普通預金 30,000円 未収金 30,000円 所得税還付金

会計ソフトを活用すると仕訳が楽に

確定申告に必要な日々の経理は、手作業で行っていると負担が大きく、記載間違いや誤計算などが生じるリスクも高まります。自動的に計算してくれる会計ソフトをうまく活用したいところです。

たとえば、freeeの場合、勘定科目「事業主借」で還付額を登録するだけです。マネーフォーワードの場合も同様に、「簡単入力」を選択し、用途と金額の欄に勘定科目「事業主借」と還付額を入力するだけですみます。

Squareと会計ソフトを連携して、確定申告を楽にしよう

正しく収支と税額を確定させ、過不足なく還付金を受け取れるよう、スマートな確定申告を目指しましょう。

キャッシュレス決済サービスのSquareでは、Squareで受け付けた売上データと会計ソフトを連携させることができ、確定申告に必要な帳簿の作成が手間なく行えます。日頃の売上管理の効率を上げるだけでなく、確定申告の負担軽減にもつながるので、ぜひ導入を検討してみてください。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2024年2月7日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash