※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
個人事業主としての所得が増えてくると、ある日「予定納税」の通知書が送られてくる場合があります。「確定申告を行ってちゃんと納税もしたのに、何か問題があったのか?」と慌てるかもしれませんが、予定納税は罰金の類ではありません。税金の一つであるため、個人事業主であれば内容を正しく把握しておく必要があります。今回は、予定納税の基礎知識についてわかりやすく解説します。
目次
予定納税は「税期の前払い」
簡単に説明すると、「税金を分割して前払いすること」です。
国税庁では以下のように説明しています。
その年の5月15日現在において確定している前年分の所得金額や税額などを基に計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上である場合、その年の所得税及び復興特別所得税の一部をあらかじめ納付するという制度があります。この制度を予定納税といいます。
つまり、前年の所得などからあらかじめ納税額を計算し、15万円以上になると推定された個人事業主には、その年の税金を事前にある程度納めてもらうというものです。
具体的には、予定納税基準額の3分の2の金額を、2回に分けて納付します。イメージとしては、1年分の税金を
- 第1期
- 第2期
- 確定申告時
の3回に分けて払う、と考えましょう。第1期と第2期のタイミングが「予定納税」と呼ばれるものです。
納付すべき税金を分割して支払うことで、個人事業主にとっても支出負担が減る、というメリットがあります。ちなみに、申告納税額が15万円未満のときは対象外となります。
覚えておくべきことは、予定納税は、通知書が送られてきた個人事業主にとって必ず支払わなければならない税金であるということです。税務署から通知が届いたならば、納期までに指定金額を納付しなければなりません。忘れずに税金を納付するためにも、納税準備預金(納税を目的とした専用口座)などを活用するのもおすすめです。
予定納税の仕組み
前述のとおり、予定納税は2回行われます。第1期の支払い期間は7月1日から7月31日まで、第2期は11月1日から11月30日までとなっており、それぞれの期日までに納付する必要があります。
流れとしては、まず前年の確定申告を基に税額が計算され、6月15日までに税務署から予定納税額の通知書が送られてきます。支払いについては特に難しいことはなく、納付書に記載された金額をそのまま納付すれば大丈夫です。
納付方法は3パターン
予定納税額の代表的な納付方法は以下のとおりです。
-
直接納付
納付書を税務署や金融機関に持参して、現金を支払うやり方です。なお、納税額が30万円以下の場合は、コンビニエンスストアで納付することもできます。目の前でお金をやりとりしてくれるため、安心感があります。住まいから支払い可能な場所が近い人におすすめです。 -
振替納付
指定した金融機関の預金口座から納付するやり方です。あらかじめ口座振替の手続きを済ませておけば、自動的に納税額を引き落としてくれます。納付のために外出する手間が省けるほか、支払い忘れをも防げるのがメリットです。 -
電子納付
ダイレクト納付とも呼ばれます。インターネット(e-Tax)を通じて納付するやり方です。自宅のパソコンから手続きできるため、支払いに出向く必要がなく、24時間いつでも納付できるのがポイントです。なお、電子納付をするには、事前に税務署へe-Taxの利用開始手続きを行う必要があります。
払いすぎた場合・予定納税額が少なかった場合の対処法
いざその年の所得などを計算した結果、本来の納税金額が思ったより少なく、予定納税で払いすぎてしまった、というケースがあり得ます。
その場合は、確定申告において還付を受けることができます。その際、その際、「税金を払いすぎていた」ということで、還付加算金という利息に当たるものが加算されます。
一方、金額が少なかった場合は、確定申告のタイミングで納税することになります。
いずれにせよ、確定申告を行うことで、払った予定納税額が多くても少なくても最終的には精算されます。「損をする」ということはないため、不安になる必要はありません。なお、注意点としては、予定納税の金額は確定申告書に忘れずに書くようにしましょう。
予定納税を滞納するとペナルティー(延滞税)がかかる
期限までに支払いを行わないと、ペナルティーとして延滞税がかかります。税率は、延滞期間の長さによって変わります。具体的には、以下のとおりです。
・延滞が2カ月未満の場合:「年率7.3%」または「特例基準割合+1%」のいずれか低いほう
・延滞が2カ月以上の場合:「年率14.6%」または「特例基準割合+7.3%」のいずれか低いほう
特例基準割合とは、銀行の貸出平均金利をもとに計算されるものです。延滞が長くなるほど、それだけ延滞税が高くなってしまいます。無駄な支出を抑えるためにも、納付期限は必ず守りましょう。
予定納税額の減額申請について
個人事業主によっては、何らかの理由により、前年より所得が大きく下がってしまうケースが考えられます。たとえば、廃業・休業、業績不振、盗難や災害にあった、などです。本来払うべき税額が予定納税額を下回ると判断できる場合、減額申請ができます。
「予定納税額が大きすぎる」と判断するタイミングは、その年の6月30日時点です。減額申請を行う場合は、その年7月1日から7月15日までに、税務署長宛てに「予定納税額の減額申請書」を提出しましょう。
参考:[手続名]所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続(国税庁)
承認されれば、その年の予定納税額を減らしてもらえます。なお、第2期分だけ減額したい場合は、10月31日時点で見積もり、11月15日までに申請を行いましょう。
申請するときは、「申告納税見積額の計算の基礎となる事実を記載した書類」が必要です。また、申請したからといって100%確実に減額してもらえる、というわけではないので、注意が必要です。
なお、事業の調子が悪くても資金に余裕があるならば、あえて予定納税してしまう、という選択肢もあります。前述したとおり、予定納税を本来より多く支払っていた場合は、還付加算金がプラスされてお金が戻ってくるためです。判断に迷った場合は、税理士に相談するのがおすすめです。
予定納税は、その年の税を事前に分割して払うものです。前年の確定申告書から計算され、その年の納税額が15万円以上と見込まれる個人事業主が行うものです。滞納すればペナルティーが課されてしまうため、忘れずに期限までに支払うようにしましょう。
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執筆は2019年8月8日時点の情報を参照しています。2023年6月27日に記事の一部を更新しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash