スモールビジネスを​始めたら、​所得控除に​ついて​よく​理解しておこう

フリーランスや​副業、​パラレルキャリアなど、​働き方改革が​進むに​つれて、​得意分野や​持ち味を​生かして​スモールビジネスを​始める​人が​増えてきています。

収入を​得る​ことで、​気になるのは​税金です。​一定のまと​まった​収入には​所得税が​かかります。​納税は​義務ですが、​できるだけ​賢い​納め方を​していきたい​ものです。

今回は、​フリーランスや​自営業などスモールビジネスで​活躍している​人向けに​「所得控除とは​何か」​「所得控除には​どんな​種類が​あるか」​「所得控除を​活用するには​どうすれば​よいか」に​ついて​解説します。

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所得控除制度とは

まずは、​そもそも​所得控除が​どんな​ものなのか、​制度の​概要を​みていきましょう。

ある​程度の​収入を​得ると、​所得に​対する​税金が​かかり、​これが​所得税です。

所得控除は、​所得税を​納める​ことになる​納税者の​個別事情を​考慮し、​実際に​税金を​負担できる​力に​応じた​税額となるように​調整する​ために​設定されています。

所得控除は、​納税者の​「応能負担」を​図る​ために​設けられている

所得控除は、​納税者が​個別の​事情の​中で​担税力​(税金を​負担できる​力)に​応じた​納め方が​できるよう、​納税者本人と​扶養親族の​状況や、​医療費などの​事情、​生命保険などの​社会的事情など、​次の​負担を​考慮する​ものです。

・担税力への​影響の​考慮​(医療費など)
・社会政策上の​要請​(保険や​寄付など)
・個人的事情の​考慮​(障害者や​寡婦・寡夫、​勤労学生の​有無など)
・課税​最低限の​保証​(配偶者や​扶養家族など)

たとえば、​同じ​年収だったとしても、​扶養している​家族が​たく​さんいる、​長期に​渡って​医療を​受けているなど、​人に​よって​生活に​かけている​出費が​異なっています。​このような​個別の​事情を​「控除」と​して​収入から​差し引く​ことに​よって​税金の​負担の​不均衡を​解消するよう、​「応能負担」と​いう​考えが​反映されているのです。

参考:税務大学校講本 所得税法​(平成30年度版)​第5章 所得控除​(国税庁)

控除には、​所得控除と​税額控除の​2種類が​ある

所得税に​関する​控除は​2種類あります。

大雑把に​いうと、​所得は​「売上-経費」で​求められ、​所得税率は​「所得-所得控除」の​額に​掛けられます。​その後、​算出された​額に​対する​税額控除と​いう​控除を​差し引いた​ものが、​所得税に​なります。​計算式に​すると​次のようになります。

納税額=​(売上-経費-所得控除)​×所得税率-税額控除

このように、​所得税を​算出する​際、​税率を​掛ける​前に​差し引く​所得控除と、​税率を​掛けた後で​差し引く​税額控除との​二つの​体制で、​課税の​負担を​下げています。​控除は​自己申告なので、​どの​控除を​使うのが​最も​適切なのかを​よく​見極めておく​必要が​あります。

参考:No.1200 税額控除​(国税庁)

たとえば、​認定NPO法人や​公益社団法人などへ​寄付した​場合、​寄附金控除の​制度が​使えますが、​実は​この寄付金控除は、​所得控除にも​税額控除にも​存在し、​どちらで​控除を​受けても​よいと​されています。

参考:寄附金を​支出した​とき​(国税庁)

所得控除の​種類

では、​所得控除には、​具体的に​どのような​ものが​あるでしょうか。

所得税は​現在、​14種類に​分かれており、​目的別に​みると、​次のように​分けられます。

担税力への​影響の​考慮:雑損控除、​医療費控除
社会政策上の​要請:社会保険料控除、​小規模企業共済等掛金控除、​生命保険料控除、​地震保険料控除、​寄附金控除
個人的事情の​考慮:障害者控除、​寡婦​(寡夫)​控除、​勤労学生控除
課税​最低限の​保証:配偶者控除、​配偶者特別控除、​扶養控除、​基礎控除

日本に​住所等が​ある​居住者の​場合は​14種類

日本国内に​住所などが​ある​居住者の​場合は、​14種類の​所得控除を​活用できます。

所得控除は、​関係者の​状況に​係る​「人的控除」と、​社会的な​出費などの​「その他の​控除」とに​分ける​ことができます。

下表に、​基本的な​人的控除、​特別な​人的控除に​ついて、​控除の​対象と​控除額を​整理しました。​当ては​まる​ものを​確認し、​確定申告の​ときに​確実に​控除できるようチェックして​おきましょう。

基本的な​人的控除

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特別な​人的控除

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人的控除以外の​所得控除に​ついて、​どう​いう​状況で​適用されるかの​概要を​整理しました。​それぞれの​控除額の​計算式に​ついては、​国税局の​ホームページなどで​確認してください。

その他の​所得控除制度

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参考:所得控除に​関する​資料​(財務省)

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日本に​住所等が​ない​非居住者の​場合の​控除は​3種類

参考までに、​日本国内に​住所などが​ない​非居住者の​場合、​適用される​所得控除は、​人的控除では​本人に​係る​「基礎控除」、​その他の​控除では​「雑損控除」​「寄附金控除」の​みに​なります。

参考:No.1100 所得控除の​あらまし​(国税庁)​国税庁 

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2020年からは​フリーランス減税も​始まる

税制度は、​社会情勢などを​合わせて​変化しています。​税に​関する​情報は、​常に​最新の​ものを​確認するようにしましょう。

2020年1月に​行われる​所得税の​見直しに​より​実施される​「フリーランス減税」に​ついて​簡単に​整理して​おきましょう。

この​所得税の​見直しは、​働き方改革の​一貫で、​給与所得者と​フリーランスとの​働き方の​違いに​よる​税の​負担の​差を​なく​すために​行われる​もので、​年収が​850万円を​超える​会社員や​1,000万円以上の​年金を​受け取っている​人は​増税となる​一方、​個人事業主や​フリーランスは​減税される​見通しです。

基礎控除額の​変更

所得控除の​一つの​基礎控除に​ついて、​現在38万円が​48万円に​引き上げられると​されています。​一方、​高所得者の​場合、​所得が​2,400万円を​超えた​段階から​基礎控除の​額が​減りは​じめ、​2,500万円を​超えると​控除がなくなる​見込みです。

給与所得控除額の​変更

給与に​よる​収入が​ある​人に​関係する​話です。

給与所得控除が​10万円引下げられ、​給与所得控除の​上限額も​現在の​1,000万円から​850万円に​なり、​増税になる​範囲の​人が​増えます。​また​控除の​限度額も​220万円から​195万円に​下がります。​高額所得の​人は​増税となる​見込みです。

青色申告特別控除額の​引き下げ

フリーランス、​個人事業主が​青色申告を​すると、​現在65万円の​控除が​ありますが、​55万円に​引き下げられます。​ただし、​これに​ついては、​e-Taxを​使った​申告に​すると​65万円の​ままの​見込みです。

公的年金控除額の​引き下げ

年金収入が​ある​個人事業主や​フリーランスに​関係​ある​話で、​控除額が​10万円引き下げられます。​また、​年金の​収入が​1,000万円以上の​場合に​控除額の​限度が​195万5,000円と​なり、​年金収入と​給与の​両方を​受け取っている​場合、​控除が​片方に​制限されます。​この​ため、​年金収入が​1,000万円以上の​人や、​給与などの​所得が​1,000万円以上の​人は​増税と​なります。

小規模企業共済等掛金控除は​節税にもなる​所得控除

フリーランスや​自営業の​サービス内容に​よっては、​経費が​あまり​発生しないうえに​所得控除が​適用される​条件も​あまりないと​いう​人も​少なく​ありません。​そのような​人には、​小規模企業共済等掛金控除の​対象となる​小規模共済や​個人型確定拠出年金​(iDeCo、​イデコ)に​加入する​ことを​検討してみては​いかがでしょうか。

小規模企業共済等掛金控除の​メリット

小規模企業共済等掛金控除は、​社会保険料控除と​よく​似た​所得控除で、​小規模企業共済、​確定拠出年金などが​対象と​なります。

この​制度の​メリットは、​年間に​支払った​掛金の​全額が​所得控除されると​いう​ところです。​小規模企業共済や​個人型確定拠出年金を​活用する​ことで、​退職時の​資金や​年金の​積立が​できる​上に、​掛金を​全額控除できる​ため、​大きな​節税に​なります。​小規模企業共済と​個人型確定拠出年金は​併用する​こともできます。

参考:No.1135 小規模企業共済等掛金控​(国税庁)

小規模企業共済とは

フリーランスや​個人事業主、​小規模企業の​役員などが​事業を​やめたり​退職したりする​際に、​資金を​準備しておく​ための​積み立てを​行う​共済制度で、​いわゆる​個人事業の​退職金代わりになる​制度のような​ものです。

掛金は​月1,000円から​70,000円まで​500円きざみで​選べ、​途中で​増額が​できます​(減額の​場合は​制限が​あります)。​半年払いや​年一括払いのしく​みも​あります。

共済金は、​退職・廃業時に​受け取ります。​受け取り方法は​一括も​分割も​選べます。​一括の​場合は​退職所得、​分割の​場合は​公的年金等の​雑所得扱いとなり、​税制の​メリットも​あります。​ただし、​短い​期間で​解約した​場合は​元本割れします。

小規模企業共済の​もう​一つの​特徴と​して、​掛金の​範囲内で​事業資金の​貸付けを​してくる​制度が​あります。​経営安定や​傷病災害、​新規事業展開など、​いろいろな​貸付けが​あります。​低金利で、​即日貸付も​可能と、​心強い​制度です。

参考:小規模企業共済 制度の​概要​(中​小機構)​中​小機構 

個人型確定拠出年金​(イデコ)とは

確定拠出年金は、​資産形成方法の​一つである​私的年金で、​企業型と​個人型が​あります。​個人型確定拠出年金​(iDeCo、​イデコ)は​2017年から​原則と​して​20歳以上​60歳未満の​すべての​人が​加入できるようになりました。

個人型確定拠出年金は、​月5,000円から​1,000円単位で​掛金を​設定でき、​自営業の​場合は​国民年金基金または​国民年金付加保険料との​合算で​月68,000円まで​増額できます。

個人型確定拠出年金の​運用方法は​自分で​商品を​組み合わせます。​リスクと​利回りを​みながら運用商品を​変更するなど、​自分で​資産を​増やしていく​ことができます。​一般の​金融商品だと​運用の​際に​課税されますが、​個人型確定拠出年金は​非課税です。

また、​60歳で​老齢給付金を​受け取る​ことができるのですが、​そのときに​年金か​一時金かの​受け取り方法を​自分で​決める​ことができます。​年金と​して​受け取る​場合は​公的年金等控除、​一時金の​場合は​退職所得控除の​対象となる​ため、​節税に​なります。

参考:iDeCoってなに?​(iDeCo公式サイト)

執筆は​2019年8月8日​時点の​情報を​参照しています。
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