【2024年版】所得税徴収高計算書とは?書き方や納付方法、注意点

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

会社を立ち上げたばかりだと、従業員から源泉徴収を行った後、どのように源泉徴収税を納付するのか詳しくないビジネスオーナーの方も多いでしょう。

この記事では、源泉所得税の納付に用いる「所得税徴収高計算書」の概要と種類、納期の特例、計算書の記入方法、税金の納付方法と注意点を解説します。

目次


所得税徴収高計算書とは?

所得税徴収高計算書(納付書)とは、源泉所得税および復興特別所得税を国に納めるときに作成・提出しなければいけない書類です。所得税徴収高計算書とひと口にいっても書式は9通りあり、どのような所得に対して源泉所得税を徴収し、納めるのかに合わせて適切なものを選びます。

少し噛み砕いてみましょう。所得税法では源泉徴収制度を採用しており、基本的に事業主は従業員などに給与を支払うとき、所得税として一定の割合の金額を差し引いて徴収する必要があります。この仕組みのことを源泉徴収と呼びます。徴収した源泉所得税は、徴収した月の翌月10日までに税務署に納付しますが、このとき使用する書類が「所得税徴収高計算書」です。

従業員や個人に給与・報酬を支払い、源泉所得税を徴収をしている事業主は、必ず提出することになる書類だと覚えておきましょう。

所得税徴収高計算書はどこで入手できる?

所得税徴収高計算書は、管轄の税務署窓口で入手します。郵送で取り寄せることも可能です。一番手間が少ないのは、e-Taxでの提出でしょう。納付がオンラインで完結するので、書類を取り寄せたり、取りに行ったりする必要がありません。e-Tax(国税電子申告・納税システム)にアクセスし、必要事項をすべて入力すると納付手続きが完了します。詳しい方法は「源泉所得税(徴収高計算書)についてよくある質問」にあるので、ご参考ください。

所得税徴収高計算書の種類

所得税徴収高計算書は全部で9種類あり、対象となる所得ごとに適切なものを選ぶ必要があります。ここではよく使うものを中心に紹介していきます。

1.給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書

従業員に支払う給与と、弁護士・司法書士など特定の資格をもつ個人に支払う報酬から徴収した源泉所得税および復興特別所得税を納めるときに用いる書類です。後述する「納期の特例」の適用を受けているかどうかにより、2種類に分かれています。

  • 一般用(納期の特例の適用を受けていない)
  • 納期特例用(納期の特例の適用を受けている)

2.報酬・料金等の所得税徴収高計算書

原稿料・デザイン料・翻訳料・講演料など、個人や法人に支払う報酬や料金から徴収した源泉所得税を納めるときに用います。「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」と「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」の2種類が最も使用頻度が高いでしょう。

3.非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書

海外に住む専門家や外国法人などに報酬などを支払った際はこの書類を用います。

その他6種類

上記のほかにも次の6種類の所得税徴収高計算書があります。

1.利子等の所得税徴収高計算書
2.配当等の所得税徴収高計算書
3.定期積金の給付補てん金等の所得税徴収高計算書
4.上場株式等の源泉徴収選択口座内調整所得金額及び源泉徴収選択口座内配当等の所得税徴収高計算書
5.割引債の償還金に係る差益金額の所得税徴収高計算書
6.償還差益の所得税徴収高計算書

それぞれの詳細については、国税庁の「所得税徴収高計算書(納付書)の記載のしかた」のページに記載されています。当てはまりそうなものがあれば、目を通しておくといいでしょう。

所得税徴収高計算書の提出方法・期限

記入した所得税徴収高計算書と納付金額を、金融機関か管轄の税務署窓口へと持参して納付します。e-Taxを利用する場合は、オンラインで書類の作成から納付までが完結します。e-Taxでの提出方法については国税電子申告・納税システムのページに記載されているので、目を通しておくといいでしょう。

提出期限は、原則、給与などを支払った日の翌月10日までですが、従業員が10人未満の場合は特例を受けることができます。詳しくは「従業員が10人未満なら「納期の特例」が受けられる」の章で後述します。

納付が遅れた場合

納付が1日でも遅れると、原則「不納付加算税」が課されます。

不納付加算税の課税割合は以下の通りです。

課税割合(通常時) 源泉所得税の10%
※5,000円未満であれば、支払は免除されます
課税割合(税務署から通知を受ける前に納めた場合) 源泉所得税の5%
※5,000円未満であれば、支払は免除されます

参考:加算税の概要(財務省)

上記の表にもあるように、税務署から通知を受ける前に納付できると、課税割合が半減します。また、期限内に納付できなかった理由が正当だと認められると、不納付加算税が課されないこともあります。たとえば災害や交通、通信が理由で間に合わなかった場合は正当だと認められる可能性があるようです。期限後の提出が認められる特別なケースは「源泉所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営指針)」に記載されています。

所得税徴収高計算書の書き方

ここでは、最もよく用いられる「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」の記入方法について解説します。

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参考:別紙3 給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(一般用)の様式及び記載要領(国税庁)

1.年度:納付日が属する会計年度を記入します。たとえば、2023年4月1日から2024年3月31日の場合は会計年度が令和5年(2023年)になるため、「05」と記入します。

参考:納付書の記載の しかた(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算(国税庁)

2.税務署名:管轄の税務署名を記入します。隣の「税務署番号」は空欄で構いません。

3.整理番号:税務署から割り振られている整理番号を記入します。不明な場合は、管轄の税務署に確認しましょう。

4.納期等の区分:給与や報酬などを支払った年・月を4桁の数字で記入します。たとえば、給与の支払日が令和5年3月25日なら「0503」です。

納期の特例を受けているケースでは、特例期間における最初と最後の支払月を記入します。たとえば、令和5年1月から6月分の給与を同年1月25日〜6月25日に支払っているケースでは、「自0501」「至0506」です。

5.俸給・給料等:従業員への給与なら支払年月日・人員・支給額・税額を記入します。10人に支払ったなら、人員は10、支給額と税額は10人分の合計額の記入となります。

納期の特例を受けているケースでは最大6カ月分の納付となるため、「人員」欄には支払った人数×支払った月数を記入する点に注意しましょう。

6.本税:項目ごとの税額を足した金額を記入します。

7.合計額:延滞税分がないなら、本税と同じ金額になります。延滞税分があるなら本税に加算しましょう。

8.徴収義務者:事業主の住所(納税地)と名称を記入します。

参考:納付書の記載のしかた(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書)(国税庁)

源泉徴収額の計算方法

ここであらためて、源泉徴収額の計算方法をおさらいしましょう。

給与所得の場合

従業員に月々支払う給与の源泉徴収額は「給与所得の源泉徴収税額表(月額表及び日額表)」、ボーナスなどの賞与は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」と呼ばれる表を使用します。どちらも毎年最新のものを国税庁が公表しています。

給与の源泉徴収額はおおむね以下のようなかたちで求めます。

①支給する給与額を算出する
②給与額から社会保険料を差し引く
③給与所得の源泉徴収税額表をもとに、扶養家族の人数に応じた源泉徴収額算出する

報酬の場合

個人事業主など、外部の人に報酬を支払った場合については、国税庁のページには以下のように記載されています。

  税率 計算式
支払金額が100万円以下の場合 10.21% ①手取額÷0.8979=支払金額
(※0.8979=1-10%×102.1%)
②支払額×10.21%=源泉徴収税額
支払金額が100万円を超える場合 支払金額が100万円を超える場合は、二段階税率が適用されます
100万円までは10.21%、100万円を超える部分は20.42%の税率になります。
①(手取額-102,100)÷0.7958=支払金額
(※0.7958=1-20%×102.1%)
②100万円までの支払額×10.21%=源泉徴収税額
③100万円を超えた支払額×20.42%=源泉徴収税額
④②の源泉徴収税額+③の源泉徴収税額=源泉徴収税額の合計額

上記にあわせて、国税庁のページには原稿料の報酬を手取契約10万円で支払った場合の例が挙げられています。

支払金額:100,000円÷0.8979=111,370円
源泉徴収税額:111,370円×10.21%=11,370円(1円未満の端数は切り捨てます。)
手取額:111,370円-11,370円=100,000円

参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは(国税庁)

源泉所得税の税額が「0円」の場合も提出は必須

源泉徴収を行ったが年末の還付により相殺されたり、個人事業主が青色専従者に少額の給与を支払ったりするケースなどでは、源泉所得税の税額が0円になることがあります。このような場合、提出は不要だと思うかもしれませんが、たとえ0円でも提出が必要です。源泉所得税の税額が0円でも忘れずに提出するようにしましょう。

参考:源泉所得税(徴収高計算書)についてよくある質問(国税電子申告納税システム)

従業員が10人未満なら「納期の特例」が受けられる

従業員から徴収した源泉所得税は、基本的には徴収した月の翌月10日までに納付します。しかし、人数の少ない企業などでは毎月の作業負荷が大きくなってしまいます。

そのため、従業員が10人未満の事業主は税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すれば、まとめて年に2回納付する特例を受けられます。

  • 1月から6月分:7月10日までに納付
  • 7月から12月分:翌年1月20日までに納付

申請は提出月の翌月末日までには承認されますが、却下の場合のみ通知が届きます。たとえば、5月に申請しても適用されるのは6月となるため、5月分の源泉所得税は6月10日までの納付が必要な点に注意しましょう。また、従業員が10人以上になった際には、速やかに特例に該当しなくなったことを届け出る必要があります。

参考:[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請(国税庁)

Squareで所得税徴収高計算書の記入・納付を楽にしよう

従業員に支払った支給額を所得税徴収高計算書に記入するうえで、勤務時間を簡単に管理できるツールを探している事業主もいるかもしれません。Squareには無料で使いはじめることができる「Square シフト」があります。

使い方は簡単で、Squareのアカウントを作成した後、スタッフの管理ページから従業員一人ひとりの個人情報、時給や残業代の割増率を登録するだけで利用をはじめられます。

従業員は出勤・退勤時にSquare スタッフのアプリまたはSquare POSレジアプリから出勤・退勤ボタンを押すだけで勤務時間がデータとして保存されます。

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期間を指定して従業員一人ひとりの勤務時間や支払額を確認したり、その内容をCSVとしてエクスポートしたりすることもできるので、あとは出力した内容をもとに全員分の支給額を算出して所得税徴収高計算書に記入するだけです。

詳しい使い方は「Square シフトの利用をはじめる」の記事にも記載しているので、実際に使いはじめる際にはご参考ください。

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この記事では事業主が源泉所得税を納付する際に提出する「所得税徴収高計算書」について説明してきました。給与を支払っている事業主が該当する期限までに税務署に提出しなければいけない書類であることが理解できたでしょう。雇用している従業員数によっては毎月行う作業となるので、Square シフトなど効率化を図れるツールを味方につけておくと、作業時間の短縮が叶えられるかもしれません。

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執筆は2020年3月18日時点の情報を参照しています。2023年12月19日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash