所得税徴収高計算書とは?​書き方や​提出方法、0円の場合も解説

※本記事の​内容は​一般的な​情報提供のみを​目的に​して​作成されています。​法務、​税務、​会計等に​関する​専門的な​助言が​必要な​場合には、​必ず​適切な​専門家に​ご相談ください。

事業主が従業員の給与や外部への報酬を支払う際には、源泉所得税を差し引いて国に納める義務があります。そのとき必要となるのが「所得税徴収高計算書」です。本記事では、この計算書の種類や書き方、提出期限、注意点をわかりやすく解説し、効率化に役立つツールも紹介します。

📝この記事のポイント

  • 所得税徴収高計算書は源泉所得税(復興特別所得税含む)の納付に必須の書類
  • 提出・納付期限は原則「翌月10日」、納期の特例なら「7/10・翌年1/20」
  • 0円でも提出が必要(e-Taxで0円データ送信可)
  • 特例対象は給与・退職金+一定の士業報酬、原稿料・講演料は対象外で通常納付
  • Square シフトで勤務時間・支払額を自動集計する流れを取り入れると、記入作業が効率化できる
目次


所得税徴収高計算書とは?

所得税徴収高計算書​(納付書)とは、​源泉所得税および復興特別所得税を​国に​納める​ときに​作成・提出しなければいけない​書類です。​所得税徴収高計算書と​ひと​口に言っても​書式は​9通り​あり、​どのような​所得に​対して​源泉所得税を​徴収し、​納めるのかに​合わせて​適切な​ものを​選びます。

所得税徴収高計算書は源泉所得税の納付に使う書類

日本の所得税法では「源泉徴収制度」が導入されており、事業主は従業員に給与を支払う際や、個人に報酬を支払う際に、所定の税率に基づいて所得税を差し引き、あらかじめ徴収する義務があります。これが「源泉徴収」です。

徴収した源泉所得税は、原則として翌月10日までに所轄の税務署へ納付しなければなりません。その際に必要となるのが「所得税徴収高計算書」です。この書類を通じて、税務署に対して正しく徴収額を報告し、納付を行います

つまり、従業員や外部の個人に対して給与・報酬を支払い、源泉所得税を控除している事業主にとっては、必ず提出すべき重要な書類であることを理解しておきましょう。

所得税徴収高計算書はどこで入手できる?

所得税徴収高計算書は、管轄の税務署窓口で入手します。郵送で取り寄せることも可能です。一番手間が少ないのは、e-Taxでの提出でしょう。納付がオンラインで完結するので、書類を取り寄せたり、取りに行ったりする必要がありません。

e-Tax(国税電子申告・納税システム)にアクセスし、必要事項をすべて入力すると納付手続きが完了します。詳しい方法は「源泉所得税(徴収高計算書)についてよくある質問」にあるので、ご参照ください。

給与や報酬によって異なる所得税徴収高計算書は全部で9種類

所得税徴収高計算書は​全部で​9種類​あり、​対象となる​所得ごとに​適切な​ものを​選ぶ​必要が​あります。​ここでは​よく​使う​ものを​中心に​紹介していきます。

1.給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書

従業員に​支払う​給与と、​弁護士・司法書士など​特定の​資格を​もつ個人に​支払う​報酬から​徴収した​源泉所得税および復興特別所得税を​納める​ときに​用いる​書類です。「納期の​特例」の​適用を​受けているかどうかに​より、​2種類に​分かれています。

  • 一般用​(納期の​特例の​適用を​受けていない)
  • 納期特例用​(納期の​特例の​適用を​受けている)

2.報酬・料金等の所得税徴収高計算書

原稿料・デザイン料・翻訳料・講演料など、​個人や​法人に​支払う​報酬や​料金から​徴収した​源泉所得税を​納める​ときに​用います。​「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」と並んで使用頻度が高いものです。

3.非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書

日本国外に居住する専門家やコンサルタント、あるいは外国法人に対して報酬や料金を支払う場合には、この区分の所得税徴収高計算書を用います。たとえば、海外在住のデザイナーに業務を依頼した場合や、外国法人にライセンス料を支払った場合などが該当します。

非居住者や外国法人への支払いについては、国内の居住者への給与や報酬と異なり、適用される税率や計算方法が特殊なケースも多いため、正しい様式での申告が欠かせません。国際取引に関連する源泉所得税の処理を誤ると、税務調査で指摘を受けたり、余分な税負担を招く可能性もあるため、慎重に対応する必要があります。

その他6種類

上記の​ほかにも​次の​6種類の​所得税徴収高計算書が​あります。

1.​利子等の​所得税徴収高計算書
2.​配当等の​所得税徴収高計算書
3.​定期積金の​給付補てん金等の​所得税徴収高計算書
4.​上場株式等の​源泉徴収選択口座内調整所得金額及び源泉徴収選択口座内配当等の​所得税徴収高計算書
5.​割引債の​償還金に​係る​差益金額の​所得税徴収高計算書
6.​償還差益の​所得税徴収高計算書

それぞれの​詳細に​ついては、​国税庁の​「所得税徴収高計算書​(納付書)の​記載のしかた」の​ページに​記載されています。該当しそうなものがあれば目を通しておくと安心です。

所得税徴収高計算書の書き方【記入例あり】

ここでは、​最も​よく​用いられる​「給与所得・退職所得等の​所得税徴収高計算書」の​記入方法に​ついて​解説します。

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1.年度:納付日が​属する​会計年度を​記入します。​たとえば、​2025年4月​1日から​2026年3月31日の​場合は​会計年度が​令和7年​(2025年)になる​ため、​「07」と​記入します。

2.​税務署名:管轄の​税務署名を​記入します。​隣の​「税務署番号」は​空欄で​構いません。

3.​整理番号:税務署から​割り振られている​整理番号を​記入します。​不明な​場合は、​管轄の​税務署に​確認しましょう。

4.​納期等の​区分:給与や​報酬などを​支払った年・月を​4桁の​数字で​記入します。​たとえば、​給与の​支払日が​令和7年3月25日なら​「0703」です。

納期の​特例を​受けている​ケースでは、​特例期間に​おける​最初と​最後の​支払月を​記入します。​たとえば、​令和7年1月から​6月分の​給与を​同年1月25日〜6月25日に​支払っている​ケースでは、​「自0701」​「至0706」です。

5.俸給・​給料等:従業員への​給与なら​支払年月日・人員・支給額・税額を​記入します。​10人に​支払ったなら、​人員は​10、​支給額と​税額は​10人分の​合計額の​記入と​なります。

納期の​特例を​受けている​ケースでは​最大6カ月分の​納付となる​ため、​「人員」欄には​支払った​人数×支払った​月数を​記入する​点に​注意しましょう。

6.​本税:項目ごとの​税額を​足した​金額を​記入します。

7.合計額:延滞税分が​ないなら、​本税と​同じ​金額に​なります。​延滞税分が​あるなら​本税に​加算しましょう。

8.徴収義務者:事業主の​住所​(納税地)と​名称を​記入します。

源泉徴収額の計算方法

ここであらためて、​源泉徴収額の​計算方法を​おさらいしましょう。

給与所得の場合

従業員に​月々支払う​給与の​源泉徴収額は​「給与所得の​源泉徴収税額表​(月額表及び日額表)」、​ボーナスなどの​賞与は​「賞与に​対する​源泉徴収税額の​算出率の​表」と​呼ばれる​表を​使用します。​どちらも​毎年​最新の​ものを​国税庁が​公表しています。

給与の​源泉徴収額は​おおむね以下のようなかたちで​求めます。

①支給する​給与額を​算出する
②給与額から​社会保険料を​差し引く
③給与所得の​源泉徴収税額表を​もとに、​扶養家族の​人数に​応じた​源泉徴収額算出する

報酬の場合

個人事業主など、​外部の​人に​報酬を​支払った​場合に​ついては、​国税庁の​ページには​以下のように​記載されています。

  税率 計算式
支払金額が100万円以下の場合 10.21% ①手取額÷0.8979=支払金額
(※0.8979=1-10%×102.1%)
②支払額×10.21%=源泉徴収税額
支払金額が100万円を超える場合 支払金額が100万円を超える場合は、二段階税率が適用されます
100万円までは10.21%、100万円を超える部分は20.42%の税率になります。
①(手取額-102,100)÷0.7958=支払金額
(※0.7958=1-20%×102.1%)
②100万円までの支払額×10.21%=源泉徴収税額
③100万円を超えた支払額×20.42%=源泉徴収税額
④②の源泉徴収税額+③の源泉徴収税額=源泉徴収税額の合計額

上記にあわせて、国税庁のページには原稿料の報酬を手取契約10万円で支払った場合の例が挙げられています。

支払金額:100,000円÷0.8979=111,370円
源泉徴収税額:111,370円×10.21%=11,370円(1円未満の端数は切り捨てます。)
手取額:111,370円-11,370円=100,000円

源泉所得税が0円であっても、所得税徴収高計算書の提出は必要

源泉徴収を行った結果、還付によって相殺されたり、青色申告をしている個人事業主が家族従業員(青色専従者)に少額の給与を支払ったりするケースでは、最終的に源泉所得税の金額が0円になることがあります。

「納める税額がないのだから、提出の必要もないのでは?」と思うかもしれません。源泉所得税の計算結果が0円であっても、所轄税務署への所得税徴収高計算書の提出は必須です。提出を怠ると「未提出」と扱われるため、余計な指摘や手続きの遅れにつながる恐れがあります。税額が発生しない場合でも、忘れずに提出しておきましょう。

源泉所得税が0円になるのはどんな時?

源泉所得税が0円になる代表的な例として、以下のようなものがあります。

  • 年末調整や還付によって差し引かれた場合:一時的に源泉徴収を行ったものの、年末調整で過不足が精算され、結果として0円になるケース
  • 青色専従者給与を支払った場合:個人事業主が家族に少額の給与を支払い、所得税がかからない水準である
  • 給与や報酬の額が非課税の範囲に収まった場合:支払額が少なく、源泉徴収の基準額を下回るケース

こうしたケースでは納税額そのものは0円ですが、帳簿や税務署への報告のために「手続き自体は必要」である点を押さえておくことが重要です。

源泉所得税が0円の場合の書き方と注意点

源泉所得税徴収高計算書は、税額が0円の場合でも通常と同じように記入し、正しく提出する必要があります。ここでは、主な記入欄と注意点を整理しておきましょう。

  • 本税:納付すべき源泉所得税額から年末調整による超過分を差し引いた金額を記載します。もし差し引きの結果がマイナスになった場合は「0」と記入します。
  • 合計額:0円を申告する場合は、この欄に「¥0」と明記しましょう。

要点として、0円申告のときでも「本税」の欄には必ず「0」と記入し、その他の項目は通常の納付と同じように正しく記入することが大切です。不明点がある場合は、そのまま放置せず、税務署に確認してから提出するようにしましょう。

所得税徴収高計算書の提出方法・期限

記入した​所得税徴収高計算書と​納付金額を、​金融機関か​管轄の​税務署窓口へと​持参して​納付します。​e-Taxを​利用する​場合は、​オンラインで​書類の​作成から​納付までが​完結します。​e-Taxでの​提出方法に​ついては​国税電子申告・納税システムの​ページに​記載されています。

提出期限は、​原則、​給与などを​支払った​日の​翌月10日までですが、​従業員が​10人未満の​場合は​特例を​受ける​ことができます。​詳しくは​「従業員が​10人未満なら​「納期の​特例」が​受けられる」の​章で​後述します。

所得税徴収高計算書の提出と納付の流れ

源泉所得税は、給与や報酬を支払った際に差し引いた金額を取りまとめ、税務署へ報告・納付する仕組みです。その際に使用するのが「所得税徴収高計算書」です。

提出から納付までの基本的な流れは次のとおりです。

1.給与・報酬の支払いと源泉徴収
2.所得税徴収高計算書の作成
3.提出と納付

この流れを毎月繰り返すことで、税務署に対して適正に源泉徴収した税金を納付することになります。

提出・納付期限は給与や報酬を支払った月の翌月10日まで

「給与所得・退職所得等」に関する一般用の所得税徴収高計算書は、原則として給与や報酬を支払った月の翌月10日が提出期限です。源泉所得税の納付も同じく翌月10日までと定められているため、期日までに計算書を作成し、税金を納めなければなりません。

たとえば、4月に給与を支払った場合には、5月10日までに書類提出と納付を済ませる必要があります。万が一期限が土日祝日にあたる場合は、翌営業日が期限となります。

また、従業員が10人未満の小規模事業者は「納期の特例」を申請することで納付期限を年2回にまとめることが可能です。この特例が認められれば、下記のように期限が延長され、事務負担を軽減できます。

  • 1月~6月分は7月10日まで
  • 7月~12月分は翌年1月20日まで

なお、「報酬・料金等」の所得税徴収高計算書についても基本的な提出・納付期限は翌月10日までです。報酬や料金の支払いが発生した場合は、給与と同様に期日を意識して処理する必要があります。

納付が遅れた場合は「不納付加算税」が徴収される

納付が​1日でも​遅れると、​原則​「不納付加算税」が​課されます。

不納付加算税の​課税割合は​以下の​通りです。

課税割合(通常時) 源泉所得税の10%
※5,000円未満であれば、支払は免除されます
課税割合
(税務署から通知を受ける前に納めた場合)
源泉所得税の5%
※5,000円未満であれば、支払は免除されます

上記の​表にも​あるように、​税務署から​通知を​受ける​前に​納付できると、​課税割合が​半減します。​また、​期限内に​納付できなかった​理由が​正当だと​認められると、​不納付加算税が​課されない​ことも​あります。​たとえば​災害や​交通、​通信が​理由で​間に​合わなかった​場合は​正当だと​認められる​可能性が​あるようです。​期限後の​提出が​認められる​特別な​ケースは​「源泉所得税の​不納付加算税の​取扱いに​ついて​(事務運営指針)」に​記載されています。

従業員が10人未満なら「納期の特例」で毎月納付から年2回に

源泉徴収した所得税や復興特別所得税は、原則として「給与や報酬を支払った月の翌月10日まで」に納付しなければなりません。たとえば4月に給与を支給した場合、その翌月10日(5月10日)が納付期限となります。

しかし、従業員数が常時10人未満の小規模事業者であれば、この毎月の納付を半年ごとにまとめて行える「納期の特例」という制度を利用できます。特例が適用されると、1月~6月分は7月10日まで、7月~12月分は翌年1月20日までに一括納付する形となり、毎月の手続き負担を大きく軽減できます。

特例の対象となるのは、給与や退職金から徴収した所得税および復興特別所得税のほか、税理士・弁護士・司法書士など特定の士業への報酬から源泉徴収した税金です。

納期の特例を受けるための条件

特例を利用するためには、いくつかの条件と手続きがあります。

まず、適用を希望する事業者は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を所轄の税務署長へ提出する必要があります。申請書を提出した月の翌月末までに却下の通知がなければ承認されたものとみなされ、申請の翌々月以降の源泉徴収分から特例が適用されます。

ただし、給与の支給人員が常時10人以上となった場合には、もはや特例の要件を満たさなくなるため、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出しなければなりません。この届出を行った時点から、通常の毎月納付に切り替わります。

申請書の書き方と提出方法

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は、各欄を正確に記載する必要があります。特に間違いや記入漏れがあると承認が遅れることもあるため、以下のポイントを押さえて記入しましょう。

1.住所又は本店の所在地:申請者の住所(個人の場合は居所)、または法人の本店所在地を記入します。

  • 「氏名又は名称欄」には、申請者の氏名または法人名を記載
  • 法人番号欄は法人のみ記入し、個人事業主は不要です
  • 法人の場合は「代表者氏名」欄に代表者名も記載します

2.給与支払事務所等の所在地:本店所在地と実際の給与支払事務所の所在地が異なる場合にのみ記載します。

3.直近6カ月の人員と支給額:申請日の前6カ月間について、各月末の従業員数と支給総額を記載します。臨時雇用がある場合は、その人数と支給額をそれぞれ外書きで加えます。

4.国税の滞納や納付遅延の有無:過去に納付遅延や滞納があり、それがやむを得ない理由による場合は、その詳細を記載します。また、申請日前1年以内に特例承認を取り消されたことがある場合は、その年月日を記載する必要があります。

5.税理士署名:税理士または税理士法人が申請書を作成した場合は、その署名が必要です。

6.「※」欄:この欄は記入不要です。空欄のまま提出します。

法人課税信託に関して申請を行う場合は、通常の法人名や氏名に加えて、当該法人課税信託の名称も併せて記載する必要があります。

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「Square シフト」で支払額を自動集計し、記入作業を効率化

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まとめ

この​記事では​事業主が​源泉所得税を​納付する​際に​提出する​「所得税徴収高計算書」に​ついて​説明してきました。​給与を​支払っている​事業主が​該当する​期限までに​税務署に​提出しなければいけない​書類である​ことが​理解できたでしょう。​雇用している​従業員数に​よっては​毎月​行う​作業となるので、​Square シフトなど​効率化を​図れる​ツールを​味方に​つけておくと、​作業時間の​短縮が​叶えられるかもしれません。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2020年3月18日時点の情報を参照しています。2025年9月30日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。