※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
給与を支払う側になった際に納めなければいけない、「源泉所得税」。しかし初めてのことだと、「源泉所得税はどのような所得にかかる税なのか」「いつ納めなければいけないのか」をはじめ、いろいろな疑問点が出てくるでしょう。今回は、給与を支払う側に立ったときに正しく理解しておきたい源泉所得税について、わかりやすく解説します。
📝この記事のポイント
- 源泉所得税は給与や報酬を支払う際に天引きして納付する税で、多くの給与所得者は年末調整で精算する
- 源泉徴収義務者は、従業員の有無に関わらず源泉対象の報酬を支払うすべての事業者
- 対象は給与のほか、利子・配当・退職金・年金・原稿料・専門家報酬など幅広い
- 納付は原則翌月10日で、小規模事業者は年2回の特例を利用でき、e-Tax等で納付可能
- 税率は所得の種類で異なり、給与は税額表、報酬は10.21%(一部20.42%)、利子等は15.315%
目次
- 源泉所得税とは?わかりやすく解説
・源泉所得税とは、源泉徴収制度によって給与などから差し引かれる税金
・所得税に関するおさらい
・所得税と源泉所得税の違い - 源泉徴収義務者について
・過不足は年末調整などで精算 - 源泉所得税を差し引かなければいけない所得の種類
・源泉徴収の対象となる主な所得(個人) - 源泉所得税の納期と納付方法
・源泉所得税の納税期限は、翌月10日が原則
・納期の特例
・納付方法 - 源泉所得税の計算方法
・計算方法1:給与から徴収する場合
・計算方法2:賞与から徴収する場合
・計算方法3:退職金から徴収する場合
・計算方法4:報酬などから徴収する場合
・2013年1月から復興特別所得税が加算されていることに注意 - 源泉所得税の税率は何パーセントか?
- 従業員管理にはSquare
- まとめ
- よくある質問
・所得税と源泉所得税の違いは何ですか?
・源泉所得税の納期はいつですか?
・源泉所得税の納付方法にはどのような方法がありますか?
・源泉所得税の税率は何パーセントですか?
源泉所得税とは?わかりやすく解説
源泉所得税とは、源泉徴収制度によって給与などから差し引かれる税金
源泉所得税とは、給与や報酬などの支払いをする側が、支払額からあらかじめ所得税を差し引き、受取人に代わって国に納める税金です。
「給与に対して行うもの」というイメージが強いですが、実際には原稿料、講演料、弁護士や税理士など専門家への報酬、利子・配当、公的年金、退職金など、法律で定められた幅広い所得が対象になります。
源泉徴収制度は、
- 税金の取り漏れを防ぐ
- 所得者自身の納税手続きを簡略化する
といった目的で設けられています。
国税庁の令和6年分の民間給与実態統計調査1によると、1年を通じて勤務した給与所得者(5,137万人)のうち、源泉徴収で納税している人は約3,753万人で、その割合は73.1%でした。
所得税に関するおさらい
そもそも「所得税」とは、個人の所得に対してかかる税金のことです。所得税法では、所得を次の10種類に分類しています2。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 給与所得
- 事業所得
- 退職所得
- 譲渡所得
- 山林所得
- 一時所得
- 雑所得
所得税額は、1月1日〜12月31日の1年間に得た所得から所得控除を差し引き、課税所得金額 × 税率で算出します。
所得税と源泉所得税の違い
「所得税」と「源泉所得税」は名前が似ています。税目としては同じ所得税です。違いは、「誰が納めるか」「どのタイミングで納めるか」です。
| 呼び方 | 誰が納める? | 納めるタイミング |
|---|---|---|
| 所得税(申告所得税) | 所得者本人 | 確定申告で1年分をまとめて納付 |
| 源泉所得税 | 支払者(給与支払者や報酬支払者) | 支払いの都度、所得者の代わりに納付 |
つまり、
- 確定申告で納めるのが「申告所得税」
- 支払者が天引きして納めるのが「源泉所得税」
という違いです。
給与所得者の場合、毎月天引きされているため、一定の条件を満たせば年末調整で精算され、確定申告が不要になるというメリットがあります。
前述の令和6年分の民間給与実態統計調査1によれば、1年を通じて勤務した給与所得者(5,137万人)のうち、年末調整を行ったのは4,721万人(対前年比1.9%増、87万人の増加)でした。給与所得のある人のうち、約9割が年末調整で所得税の精算をしていることが分かります。
源泉徴収義務者について
源泉所得税を天引きして国に納付する義務を負う人のことを「源泉徴収義務者」といいます。給与や賞与の支払い時には、税額の計算、控除内容の確認、税務署への納付、源泉徴収票の交付など、さまざまな事務作業を行う必要があります。
源泉徴収義務者になるかどうかは、源泉徴収の対象となる所得を支払うかどうかで決まります。 よく「従業員に給与を払っている企業だけが源泉徴収義務者になる」と誤解されがちですが、実際には次のような支払いをした場合にも源泉徴収義務が発生します。
- 外部ライターへの原稿料
- 講師への講演料
- 弁護士・税理士・司法書士などの専門家への報酬
- 芸能関係の出演料
など
つまり、従業員がいない個人事業主や法人でも、源泉徴収の対象となる報酬を支払えば義務者となる点に注意が必要です。
過不足は年末調整などで精算
給与から毎月、源泉徴収される所得税は、「その月の給与額」と「扶養親族数」に基づいて税額表から求める仕組みになっています。
しかし、年間を通じた正しい税額は、社会保険料控除や生命保険料控除、扶養状況の変動などによって変わるため、月々に天引きされた税額と最終的な税額の間に差が生じることがあります。
こうした過不足は、会社員は年末調整で精算されます。 一方、原稿料・講演料などの源泉徴収(報酬・料金)を受けている人は年末調整の対象外で、確定申告で精算します。
もし源泉徴収によって税額を多く納めていた場合は、確定した税額との差額が還付され、不足していた場合は追加で納税することになります。
源泉所得税を差し引かなければいけない所得の種類
源泉徴収の対象になる所得は、法律で定められています。 「給与だけが源泉徴収される」と思われがちですが、実際には幅広い所得が対象です。
源泉徴収の要否や税率は、支払いを受ける人の区分によって異なります。
- 個人(居住者)
- 個人(非居住者)
- 法人(内国法人=日本法人)
- 法人(外国法人)
源泉徴収の対象となる主な所得(個人)
個人に支払う場合、次の所得は源泉徴収の対象です。
- 利子所得(銀行預金の利子など)
- 配当所得
- 給与所得
- 退職所得
- 公的年金等
- 報酬・料金
- 原稿料、講演料
- 弁護士・税理士・司法書士など専門家への報酬
- デザイナー・カメラマン・イラストレーター等への報酬
- 芸能人・インフルエンサー・モデルの出演料
- プロスポーツ選手の契約金・報酬
- 医師の講演料・審査委員の謝金など
特に、事業者が外部委託するケースが多い「報酬・料金」は、支払う側が毎回判断する必要があるため、国税庁のタックスアンサー(No.2792)3を確認することがおすすめです。
国税庁の資料4では、「利子所得については明治32年から、給与所得については昭和15年から採用されている」など、源泉徴収は長い歴史のある制度として説明されています。
源泉所得税の納期と納付方法
源泉所得税は「納めるタイミング」が厳密に決められている税金です。原則の納付期限と、小規模事業者向けの特例、そして実際の納付方法について整理します。
源泉所得税の納税期限は、翌月10日が原則
源泉所得税は、所得を支払った月の翌月10日までに納付する必要があります5。
例:
8月に支払った給与・報酬の源泉所得税 → 9月10日までに納付
ただし、納付期限日が土日祝日の場合は翌営業日が納付期限です。納付が遅れると不納付加算税や延滞税が発生するため、期限の管理が重要です。
納期の特例
毎月納付を行うのが負担となる小規模事業者向けには、「納期の特例」が用意されています5。 給与の支払いを受ける人が常時10人未満の事業所は、税務署長の承認を受けることで、年2回まとめて納付できます。
納付スケジュールは次のとおりです。
| 対象期間 | 納付期限 |
|---|---|
| 1月〜6月に支払った源泉所得税 | 7月10日 |
| 7月〜12月に支払った源泉所得税 | 翌年1月20日 |
適用するには、「源泉所得税の納期の特例適用申請書」を提出し、税務署の承認を受ける必要があります。
納付方法
源泉所得税の納付方法には、以下の選択肢があります。
- e-Tax(電子納税)
インターネットバンキングやクレジットカード決済、ダイレクト納付(口座引き落とし)が利用できます。 - 金融機関または税務署窓口での納付
納付書(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書)を使用します。 - コンビニでの納付
税務署から交付されたバーコード付きの納付書、あるいは自身で出力したQRコードを使用します。納付額30万円以下の場合に利用可能です。

源泉所得税の計算方法
源泉所得税の計算は、支払う所得の種類によって方法が大きく異なります。ここでは、給与・賞与・退職金・報酬の4つの主要なケースを整理し、基本的な計算手順をまとめます。
計算方法1:給与から徴収する場合
給与の源泉所得税は、国税庁が毎年公表する「給与所得の源泉徴収税額表」6に基づいて計算します。
計算の流れ(一般的な手順)
- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出状況を確認する
- 提出している → 甲欄
- 提出していない → 乙欄
- 日雇い労働者 → 丙欄
-
当月の給与総額(残業代・手当含む)を集計する
-
社会保険料等を控除し、「社会保険料控除後の給与」を算出する
- 税額表の該当欄を参照して源泉徴収税額を確認
計算方法2:賞与から徴収する場合
賞与の源泉所得税は、給与とは別の計算方法が用いられます。
計算の流れ(概要)
- その人の前月までの給与から求められる「社会保険料控除後の給与」に対応する税率(乗ずべき率)を確認
- 賞与の金額から社会保険料等を控除する
- 控除後の賞与額 ×「乗ずべき率」=源泉徴収税額
この「乗ずべき率」は、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」6に掲載されています。
計算方法3:退職金から徴収する場合
退職金は、給与や賞与とは別の特例的な計算方式が採用されています。
計算の概要
- 退職所得控除額を計算
- 退職金 − 退職所得控除額を求める
- 差額を1/2にする(退職所得の特別ルール)
- その金額に所得税の速算表を適用
- 復興特別所得税(2.1%)を加算して源泉徴収額を決定
計算方法4:報酬などから徴収する場合
報酬・料金(原稿料・講演料・弁護士報酬など)については、所得税法で定められた定率の源泉徴収税率が適用されます7。
主な源泉徴収税率の例:
- 原稿料・講演料など:10.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%)
- 弁護士・税理士など専門家への報酬:10.21%
- 芸能人・モデル出演料:10.21%
2013年1月から復興特別所得税が加算されていることに注意
2013年1月から、すべての源泉所得税には復興特別所得税(所得税額 × 2.1%)が上乗せされています。東日本大震災からの復興財源として徴収が決まったものであり、2037年12月31日までの25年間は、源泉徴収される額が増えることを覚えておきましょう。
源泉所得税の税率は何パーセントか?
源泉所得税には「一律の税率」はなく、支払う所得の種類・受け取る人の区分(居住者・非居住者)によって計算方法や税率が大きく変わります。ここでは、実務でよく使う源泉税率の考え方を整理します。
給与:税率は「源泉徴収税額表」により決まる
給与の場合は、定額の税率ではなく、国税庁の税額表で金額が決まる仕組みです。
税額は以下で変わります。
- 当月の給与額(社会保険料控除後)
- 扶養親族の数
- 扶養控除申告書の提出状況(甲・乙・丙)
- 復興特別所得税の加算(2.1%)
給与には「●%という固定税率」は存在せず、月々の給与金額に応じて計算します。
報酬・料金:一律10.21%(または20.42%)が中心
報酬・料金に対しては、定率の源泉所得税が適用されます7。
主な税率:
- 10.21%
- 20.42%(1回に支払われる金額が100万円超の場合、超えた部分に適用)
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まとめ
源泉所得税は、給与や報酬などの支払い時に、支払者が所得税をあらかじめ天引きして国に納付する制度です。 給与だけでなく、原稿料・専門家報酬・出演料・利子・配当など、対象となる所得は幅広く、所得の種類ごとに計算方法や税率も異なります。
源泉徴収義務者となる事業者は、毎月または特例適用時の年2回、期限までに適切に納付すること、そして年末調整や確定申告で過不足を精算する流れを理解することが重要です。
源泉徴収の事務は複雑に見えますが、税額表を確認し、期限を守り、必要に応じて電子納税などを活用することで、正確かつ効率的に対応できます。
よくある質問
所得税と源泉所得税の違いは何ですか?
「所得税」は個人の所得に対して課される税金の総称であり、本来は確定申告により納税します。 一方「源泉所得税」はそのうち、支払者が給与や報酬から天引きして納付する部分を指します。
つまり、税目としてはどちらも「所得税」であり、違いは納付の方法とタイミングです。
源泉所得税の納期はいつですか?
原則として、所得を支払った月の翌月10日が納付期限です。
例:8月の給与・報酬 → 9月10日までに納付。
小規模事業者(給与の支払を受ける者が常時10人未満)が「納期の特例」の承認を受けている場合は、年2回にまとめて納付できます。
- 1月〜6月分 → 7月10日
- 7月〜12月分 → 翌年1月20日
源泉所得税の納付方法にはどのような方法がありますか?
主な納付方法は次のとおりです。
- e-Taxによる電子納税
- 金融機関や税務署窓口での納付
- コンビニでの納付
源泉所得税の税率は何パーセントですか?
源泉所得税には「一律の税率」はありません。所得の種類によって計算方法が異なります。
- 給与:税額表により決定(固定税率ではない)
- 賞与:乗ずべき率により決定
- 退職金:退職所得控除+累進税率で決定
- 報酬・料金:10.21%(100万円を超えた分には20.42%)
- 利子・配当:15.315%8
源泉所得税は「所得の種類」で税率が変わる点が重要です。
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執筆は2019年9月6日時点の情報を参照しています。2025年12月17日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。


