会社に勤めている会社員と自営業や個人事業主との一番の違いは「給与のある・なし」ではないでしょうか。会社員は会社に雇用され、労働の対価として「給与」が支払われます。個人事業主は自身が事業主のため、自分自身に「給与」を払うことはできません。ただし、法人になれば役員報酬として社長である自分自身に「給与」を支払うことができます。
会社員なら給与明細を見れば自分の収入がすぐに分かりますが、自営業や個人事業主はどのように年収を算出したら良いのでしょうか。独立を考えているけれど、会社員時代と同じように生活ができるのかどうか不安に思う人も多いのではないでしょうか。
本記事では、自営業・個人事業主の年収の実態や会社員との違い、手取りを増やすための節税や売上アップの工夫について詳しく解説します。自営業にまつわるお金の実態を知り、しっかりと備えていきましょう。
目次
- 自営業・個人事業主の年収はどれくらい?
・会社員とはどう違う?給与と報酬の考え方 - 個人事業主・自営業の年収平均は?
・統計データから見る年収の目安
・業種によって大きく異なる - 会社員との年収・手取り・保障の違い
・社会保険や税金の負担が大きい
・手取りベースで考えることが重要 - 個人事業主・自営業が年収アップのためにできること
・単価を上げる・専門性をを磨く
・リピーターを増やす・紹介をもらう
・複業・新サービス展開も検討する - 経費と節税で“手取り”を最大化するコツ
・経費を正しく計上する
・節税の基本を押さえる
・法人成りの検討も - 自営業・個人事業主の年収は“工夫次第”
- Squareが事業運営をサポート
- まとめ
自営業・個人事業主の年収はどれくらい?
自営業や個人事業主として独立する場合、基本的には収入が保証されていないため、勤め先を辞めて生活していけるかが気になります。自営業者や個人事業主の年収には幅があり、見えにくい部分も多いため、あらかじめその仕組みを理解しておくことが重要です。
会社員とはどう違う?給与と報酬の考え方
自営業や個人事業主として働く場合、会社員と異なり「給与」という形での収入はありません。会社員は雇用契約に基づき、毎月一定額の給与が支払われますが、自営業者や個人事業主は商品やサービスを販売したときの売り上げ、あるいは取引先からの報酬をもとに収入を得るため、販売数や仕事量によって変動が生じます。
また、個人事業主は確定申告を通じて「所得金額」を自ら計算し、税金を納める必要があります。つまり、この所得金額が、自営業における「年収」の基礎となる指標です。なお、法人化している場合には役員報酬として給与を得る形になりますが、それでも事業から得る収益がもとになっているため、事業が順調であれば年収も上がる傾向にあるといえます。
個人事業主・自営業の年収平均は?
自営業と聞くと「高収入」のイメージを持つ人もいれば、「不安定そう」と感じる人もいるでしょう。実際の年収は、どれほどの幅があるのでしょうか。ここでは、統計データをもとにその実態を確認してみましょう。
統計データから見る年収の目安
フリーランスで働く人の数はここ10年で増加傾向にあります。2025年初頭に国内3,000人弱のフリーランスを対象に実施された調査1によると、フリーランスの年収として以下のような結果が得られています。
10万円未満 | 37.6% |
10〜99万円 | 35.5% |
100〜299万円 | 14.3% |
300〜499万円 | 6.1% |
500〜699万円 | 3.0% |
700〜999万円 | 1.7% |
1,000万円以上 | 1.7% |
年収99万円以下のフリーランスが約7割を占めていて、特に「10万円未満」の層が最も多くなっています。一方、年収700万円以上の層も存在します。さらに、調査結果1からは、すきま時間を活用する副業系ワーカーは収入が少ない傾向にある一方で、自営業系ワーカーは比較的高い収入を得ていることが見受けられました。
これらのデータから、自営業者や個人事業主の年収に大きな幅があることが推測できます。会社員と両立できる副業や複業を選ぶのか、それとも独立して個人のスキルで勝負するのか、業種の選定も含めて年収はさまざまな要素によって大きく左右されるといえます。
業種によって大きく異なる
自営業・フリーランスの年収は、業種によって大きな差があります。一般的に、年収の水準が比較的高いとされるのは、以下のような専門性の高い業種です。
- IT・エンジニアリング(システム開発・アプリ開発)
- デザイン・クリエイティブ(Web制作・グラフィック)
- コンサルティング(経営・人事・マーケティング分野)
これらの分野は単価が高く、継続的な契約や企業との直接取引が成立しやすいため、安定した収入につながる傾向があります。
一方で、比較的参入しやすいとされる業種では、競合が多く単価が抑えられやすい傾向があります。
- ライティング
- 事務サポート
- 販売代行
そのため、一定の収入を得るには稼働時間を多く確保するか、差別化戦略を講じる必要があります。業種によって期待できる年収のレンジは異なります。自分のスキルや強みに合った分野で活動することが、年収アップの第一歩となります。
会社員との年収・手取り・保障の違い
自営業は自由に働けて収入が大きく伸びる可能性がある一方で、手取りや保障面で会社員と比べて不利になる点も少なくありません。表面的な年収額だけで比較すると見誤ってしまうこともあるため、実質的な差異を理解しておきましょう。
社会保険や税金の負担が大きい
会社員は厚生年金や健康保険などの社会保険料の一部を会社が負担していますが、自営業者は全額を自分で支払う必要があります。
たとえば、会社員であれば健康保険料と年金保険料の合計負担率は約15%前後2ですが、自営業者は国民健康保険と国民年金の両方を全額自己負担するため、所得によっては負担率が会社員時代を超えることがありえます。
また、自営業者は、所得税や住民税に加えて、課税事業者に該当する場合には消費税についても、自身で確定申告し、納税する必要があります。会社員のように年末調整で手続きが完了するわけではなく、すべてを自分で管理しなければならない点が大きな違いです。
加えて、業種によっては所得が一定額を超えると個人事業税の対象にもなります。こうした税負担や事務手続きは、自営業者にとって大きな負担になります。
手取りベースで考えることが重要
見かけの年収が同じでも、会社員と自営業者では手取りに大きな差が生じることがあります。たとえば、会社員が年収500万円であれば、厚生年金や健康保険などが控除されたうえで、安定した手取りを得ることができます。
一方、自営業者が同額の収入を得ても、社会保険料・税金をすべて自己負担しなければならないため、実質的な手取り額は会社員より少なくなるケースが多いようです。さらに、退職金や有給休暇といった福利厚生も基本的に存在しないため、自身で備えをしておく必要があります。
こうした違いを踏まえると、単純な年収ではなく、手取りベースの収入で比較することが重要です。
個人事業主・自営業が年収アップのためにできること
自営業の魅力は「収入を自分次第で伸ばせる」点にありますが、闇雲に働いても年収は簡単には上がりません。市場原理に目を向けると、需要に対して供給が多い業種では、価格競争が起こりやすく、単価は自然と抑えられがちです。そのため、レッドオーシャンではなく、競合の少ないブルーオーシャンを見つけることで、報酬の向上が期待できます。
以下で、年収アップのために役立つ具体的な方法を紹介します。
単価を上げる・専門性を磨く
収入を伸ばすうえで最も効果的なのが単価を上げることです。時間には限りがあるため、時給換算での価値を高めることが年収アップの近道です。
そのためには、専門性を深めて「この分野ならこの人」と認識される立場を目指すことが重要です。たとえば、ライターであれば特定業界に特化した専門記事、デザイナーであれば特定媒体や業種に特化したデザイン提案が挙げられます。
競合が多く価格競争に陥りやすい分野から抜け出し、ニッチな領域に自分のポジションを築くことで、高単価案件の受注がしやすくなります。
また、クラウドソーシングやポートフォリオサイトでは、プロフィールを充実させることも単価交渉力につながります。過去の実績やスキルを明確に示すことで、顧客の目に留まりやすくなり、信頼獲得にもつながります。
リピーターを増やす・紹介をもらう
収入を安定させるには、単発案件を追いかけるだけではなく、リピート受注や紹介によって継続的な仕事を得る仕組みをつくることが大切です。
まず意識すべきは、顧客満足度の向上です。納期厳守、丁寧な対応、細やかなフィードバックへの反応など、小さな積み重ねが信頼構築につながります。
また、継続案件や紹介につながりやすいフリーランスは「頼みやすさ」や「一緒に仕事がしやすい雰囲気」も兼ね備えています。必要があれば、取引の終盤に「何かあればいつでもご相談ください」「紹介もお待ちしています」とひと言添えるのも効果的です。
顧客からの信頼が広がれば、自然と営業の手間は減り、案件単価の交渉もしやすくなります。
複業・新サービス展開も検討する
本業以外の収益源を持つことも、年収アップを実現するうえで有効です。たとえば、現在のスキルを生かして講座や教材を作成したり、SNSを活用して自分の専門分野で情報発信したりすることが挙げられます。
こうした複業や新サービス展開は、収入の柱を増やすと同時に、一つの収益源に依存しすぎるリスクを軽減する効果もあります。また、別のチャネルから集まった顧客が本業に流入するなど、シナジーも生まれやすくなります。
すでに確立された市場で勝負するだけでなく、自分なりの新しい価値提供の形を模索する姿勢が、安定した収入と長期的な成長につながります。
経費と節税で“手取り”を最大化するコツ
売り上げがそのまま収入になるわけではないのが自営業の特徴です。たとえ年商が多くても、経費や税金の管理が甘ければ手元に残る金額は想像以上に少なくなります。ここでは、所得を“最大限残す”ための視点として、経費の考え方と節税の基本を押さえておきましょう。
経費を正しく計上する
経費とは、業務に必要な支出のことです。パソコンやソフトウェア、取材や打ち合わせ時の交通費、事業用の家賃・光熱費などが該当します。国税庁では、総収入を得るために直接必要だった費用や販売・管理に関する費用は経費に計上できるとしています3。
ただし、購入したものは何でも好きに経費にできるわけではありません。たとえばスーツや普段使いのスマートフォンなどプライベートと業務の境界が曖昧な支出は対象外とされることが多いため注意が必要です。
また、高額な機材(10万円以上)を購入した場合は「減価償却」として複数年に分けて計上する必要があるなど、ルールもあります。さらに、領収書やレシートなどの証憑類は、税務上5~7年間の保管義務がある点も覚えておきましょう。
節税の基本を押さえる
自営業者が利用できる主な節税策として「青色申告特別控除」があります。複式簿記で記帳し電子申請を行うなどの条件を満たせば、最大で65万円を所得から差し引くことができます。
また、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、小規模企業共済等掛金控除など、個人の事情に応じて適用できる控除制度が多数存在します。これらを活用することで課税対象となる所得を圧縮し、支払う税額が抑えられます。
節税は「脱税」ではありません。正しい知識をもとに、適切に制度を活用することが、自営業者の手取り最大化につながります。
法人成りの検討も
一定以上の売り上げや利益が見込めるようになったら、「法人成り(法人化)」を検討するタイミングかもしれません。法人にすることで、給与所得控除の適用や所得分散、消費税の免税措置(設立から最長2年間)など、節税の選択肢が広がります。
たとえば、法人であれば「役員報酬」として給与を受け取れるため、所得税の仕組み上、税負担を軽減できるケースがあります。また、家族に役員報酬を支払うことで、世帯全体の税負担を抑えるといった工夫も可能です。
ただし、法人化には設立費用や事務処理の増加、社会保険の強制加入などのデメリットもあります。利益額・経費構造・事業の成長性などを総合的に判断し、専門家に相談しながら進めるのが安心です。
自営業・個人事業主の年収は“工夫次第”
自営業や個人事業主としての収入は、固定給のある会社員と違い「努力と工夫の積み重ね」によって大きく変わります。市場を見極めたポジショニング、価値を伝える発信、リピートや紹介につなげる信頼構築など、自分の裁量で実践できる施策が数多くあります。
反面、戦略がなければ「仕事はしているのに収入が増えない」「忙しいのに手元にお金が残らない」といった事態にもなりかねません。大切なのは、“売り上げを増やす”だけでなく、“手取りを増やす”視点で動くことです。
今の仕事の延長線上に工夫できることはないか、経費や節税の余地はないか、一つひとつを見直すことで、安定性と成長性の両方を備えた働き方に近づくことができるでしょう。
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まとめ
自営業や個人事業主として安定した年収を得るには、単に仕事量を増やすだけでなく、単価アップ、経費管理、節税、ツール活用など、さまざまな視点から最適化することが大切です。市場を見極め、自分の強みを生かす領域で活躍する戦略を取り入れることで、価格競争を避けながら価値を正当に評価される環境を作ることも可能です。
また、売り上げを上げるだけでなく、手元に残す工夫をすることで、将来に向けた資産形成や事業の安定につながるため、Squareのサービス活用もおすすめです。日々の業務を効率化するツールを活用してムダな作業や漏れを減らしながら、持続的な収入アップを目指しましょう。
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執筆は2017年4月5日時点の情報を参照しています。2025年5月16日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash