売上原価とは、その年度に売れた商品の仕入れや製造にかかった費用のことを指し、商品が売れたときに計上する原価のことを意味します。注意点は「売れた商品」に限った原価なので、売れ残った商品の原価は売上原価に含まれない点です。主に粗利である売上総利益を算出するために用いられ、損益計算書のいちばん上に表記されます。
売上原価の計算方法
売上原価の求め方は次の通りです。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
具体例:1個500円でペンケースを販売している店があるとします。この店では、期首に10個のペンケースがあり、期中に100個のペンケースを1個あたり300円で仕入れました。この際、仕入れにかかった費用は「300円 × 100個 = 30,000円」でした。そして、期末には20個のペンケースが売れ残りました。従って、期中に売れたペンケースは、「10個 + 100個 - 20個 = 90個」となり、この期のペンケースの売上高は「500円 × 90個 = 45,000円」となります。このときの売上原価はいくらになるかというと、仕入れにかかった30,000円ではありません。売上原価は「売れた商品」にかかった費用なので、「300円 × 90個 = 27,000円」となります。従って、ペンケースの売上総利益は、売上高から売上原価を引いた金額の「45,000円 - 27,000円 = 18,000円」となります。
このように、売上原価は売れた商品にかかった費用なので、1年間の売上原価は期末になってどれだけ売れ残った商品(在庫)があるかを確認することで確定します。
売上原価の仕訳方法
売上原価の仕訳方法は4種類あります。
1. 三分法
仕入れ、売上、繰越商品の3つの勘定科目を使って商品売買を記録する仕訳方法です。決算整理の際に在庫商品を繰越商品勘定として処理し、決算整理後の仕入勘定が、売上原価の金額を直接表します。最も広く使われている仕訳方法です。
2. 売上原価対立法
商品、売上、売上原価という勘定科目を用いて仕訳を行う方法です。期中でも売上原価がすぐに確認できるメリットがありますが、売上を計上するたびに売上原価を算定するため、仕訳が煩雑になる欠点があります。
3. 分記法
商品、商品販売益という勘定科目を使って、期中から原価管理を行う仕訳方法です。期中に商品の在庫原価を商品勘定に直接表示することができるので、現在の粗利を把握しやすいというメリットがあります。ただし、取引ごとの記帳が煩雑になるという欠点があるため、商品数の多い企業には不向きでしょう。
4. 総記法
商品、商品販売益という勘定科目を用いて期末にまとめて仕訳を行う方法です。期中や期末の売上原価を直接表示する勘定科目がなく、商品勘定の中に仕入れ原価と売価が混ざってしまうため、財政状態を把握することが難しい方法です。
売上原価と製造原価の違い
売上原価が、その年度に売れたサービスや商品の仕入れや製造にかかった費用のことを指し、商品が売れたときに計上する原価のことを意味するのに対して、製造原価は製品やサービスを製造する際にかかる原価を意味します。よって購買活動、製造活動、販売活動が行われる製造業で使用される勘定科目のことを指します。たとえば製造業では、製造工程でかかった費用を算出するために製造原価報告書を作成します。
その際に記載する費用の項目は、下記の3種類です。
* 製造する際に仕入れた「材料費」
* 工場で働く従業員の「人件費」
* 工場で使う機械の購入費と減価償却費、製造に使用した水道光熱費、外注費などの「諸経費」
これらを期首の仕掛中の製品に加え、そこから期末時点において仕掛中の製品を差し引いたものが年度の製造原価になります。
【関連サイト】
国税庁|No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)
国税庁|第5章 損金の額の計算(その1)