スマートフォンを持つ多くの人が利用しているQRコード決済は、お客さまにも店舗にもメリットの多い決済方法です。2025年の大阪・関西万博を前にキャッシュレス決済の普及が推進される中、新規顧客の獲得にもつながるQRコード決済への対応は店舗などのビジネスにとって検討すべきテーマといえます。
今回は、QRコード決済とは何かという基本に加え、QRコード決済の仕組みや魅力、各サービスのシェア、決済手数料や導入の際に確認したいポイント、そして課題と利用率について解説します。
目次
- QRコード決済とは
- QRコード決済の魅力
- QRコード決済を導入するメリット
- QRコード決済の仕組みと種類
- QRコード決済の支払い方法
- QRコード決済に必要な端末
- QRコード決済の導入にかかるコストと審査にかかる日数
- QRコード決済の課題
- QRコード決済の利用率
- 国内の主要QRコード決済サービス
- PayPay決済の導入ならSquare
QRコード決済とは
QRコード決済はキャッシュレス決済の手法の一つです。スマートフォンを介したQRコードの読み取りによって利用金額などのデータをやり取りすることで、現金やクレジットカードに触れることなく店舗などでの決済を完了させることができます。
QRコード決済を利用するお客さまはスマートフォンに専用アプリをダウンロードしておきます。アプリにクレジットカード、電子マネー、銀行口座などの情報を紐づけておくことで、決済時にそこから支払いが行われるという仕組みです。その利便性から近年、ユーザーが急増しています。
QRコードは縦と横の二次元に情報をもつバーコードで、1994年に株式会社デンソーウェーブによって開発されました。QRとは「迅速な対応」を意味する英語「Quick Response」の略で、その名の通り、読み取りの速さが大きな特徴です。黒いバーを横方向に並べた、一次元情報しかもたないバーコードと比べ、より多くの情報を格納できます。一次元バーコードの容量は英数字で最大20字程度ですが、QRコードは数字が最大約7,000文字まで格納でき、漢字や記号などを扱うことも可能です。
当初は製造業の生産管理に用いられていましたが、携帯電話に内蔵されたデジタルカメラでも読み込めることから広く普及しました。現在ではQRコード決済をはじめ、航空券や処方せん、モバイルクーポンなどさまざまなシーンで活用されています。
QRコード決済の魅力
QRコード決済は、現金、クレジットカード、電子マネーと並んで多くの人に利用されている決済方法で、2023年のキャッシュレス決済額では全体の8%強をQRコード決済が占めており、電子マネーの5%を超えています。
男女500人を対象にした2022年の調査では、QRコード決済を利用していて良かった点として次のような回答が挙げられています。
- 割引やポイント還元の特典がある
- スマホだけで支払える
- お会計がスマート
- お財布を持ち歩かなくてよい など
決済ごとにポイントが発生する経済性や、会計時の手間が少ない効率性を重視する声が高く、QRコード決済はユーザーにとって魅力的な支払い方法であるといえます。
参考:
・2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました(経済産業省)
・QRコード決済に関するアンケート調査結果!一番利用されてるQRコード決済第1位は「PayPay」!第2位は?(2022年4月7日、保険マンモス株式会社)
QRコード決済を導入するメリット
ユーザー側の利用のメリットが目立ちやすいQRコード決済ですが、店舗などのビジネス側にも数多くのメリットがあります。
会計時間を短縮できる
現金決済と比較して、会計にかかる時間が短くてすむのがQRコード決済の特徴です。預かった金額や釣り銭の確認が不要なので、お客さま1人あたりの会計時間を効率化できます。お客さまを待たせる時間を減らすと同時に、会計業務の省人化にも貢献します。QRコード決済の利用が増えて現金の取り扱いが少なくなれば、レジの締め作業の効率にも影響するでしょう。
会計ミスを減らせる
現金のやり取りがなくなることで、入力した金額と実際のキャッシュドロワーの現金が合わないといったミスを劇的に減らすことができます。QRコード決済は操作が簡単なので、新しいスタッフでもミスをしにくく、スタッフのトレーニングが簡単であることもメリットです。
新規顧客の獲得につながる
QRコード決済でポイントを貯めたいといった要望を持つお客さまにとっては、店舗にQRコードを導入することで来店促進につながります。特に、近隣に競合店舗がある場合は差別化の一手としても有効です。ネットショップでも、QRコード決済を取り入れることで支払い方法の選択肢が増えれば、お客さまの利便性が向上します。
現金やクレジットカードを持たずに買い物ができるという面でも、スマートフォンだけで気軽に使えるQRコード決済を好むユーザー層を新規顧客として取り込める可能性があります。
初期導入コストが低い
QRコード決済を店舗に導入する際は、登録費用などの初期費用はかからないことがほとんどです。選択する決済の仕組みによっては、店舗側でQRコード専用の端末を用意する必要がありません。ひとまずQRコード決済をお試しで導入したいという店舗にとっても、最初のハードルの低さは大きなメリットといえます。
QRコード決済の仕組みと種類
QRコード決済の特徴の一つは導入の手軽さです。店舗がやるべきことは、「お客さま向けにQRコードを掲示する」または「お客さまのQRコードを読み込むための端末を準備する」だけです。数十万円することもある高額なCAT端末(クレジットカード決済端末機)なしにキャッシュレス決済に対応できるのは、事業者にとって大きなメリットです。
お客さまはQRコード決済アプリをダウンロードし、アプリを手持ちのクレジットカードや銀行口座と紐づけるか、現金をチャージしておきます。
店舗でのQRコード決済の仕組みは、ユーザースキャン方式とストアスキャン方式の2種類があります。
ユーザースキャン方式
店舗側が用意したQRコードをお客さま(ユーザー)が自身のスマートフォンのアプリで読み取る決済方法です。店舗はQRコードを印刷した紙を用意するか、スマートフォンやタブレット、専用端末などを使ってQRコードをお客さまに提示します。
ストアスキャン方式
お客さまがスマートフォンのアプリ上に自分のQRコードを表示し、店舗側が専用端末などを使って読み取る決済方法です。
QRコード決済の支払い方法
QRコード決済を利用したお客さまは、前払い、後払い、即時払いの3種類のいずれかの方式で支払いを完了させることになります。選択できる支払い方法はサービスによって異なりますが、それぞれの特徴を見てみましょう。
前払い方式
QRコード決済アプリに前もってチャージしておき、そこから支払うのが「前払い方式」です。銀行口座、クレジットカード、ATMなどからチャージできますが、注意点は残高がないと利用できないことです。
後払い方式
QRコード決済アプリにクレジットカードを紐づけ、利用額をクレジットカードから支払う方法を「後払い方式」といいます。通常のクレジットカード利用と同様に、利用月の次月などに請求が発生します。支払いの仕組みはクレジットカードそのものと同じですが、カードの持ち歩きが不要な点がQRコード決済のメリットです。
即時払い方式
QRコード決済アプリの利用額の引き落とし先として銀行口座を設定しておくと、支払いと同時に引き落としが完了する「即時払い」 となります。利用額が分かりやすいというメリットと、残高不足の場合は利用できないというデメリットがあります。なお、すべてのQRコード決済サービスが即時払いに対応しているわけではありません。
QRコード決済に必要な端末
ユーザースキャン方式の場合は、お客さまに向けてQRコードを表示するスマートフォン・タブレット、または専用端末が必要なことがあります。ストアスキャン方式のQRコード決済を導入する場合、お客さまがスマートフォン上に表示するQRコードを読み取るバーコードリーダー(スキャナー)費用などがかかります。スマートフォンで使えるアプリタイプのバーコードリーダーを利用することもあります。
QRコード決済の導入にかかるコストと審査にかかる日数
店舗がQRコード決済を導入するには、利用したいサービスに加盟店申請をして審査を通過する必要があります。加盟するサービスを選ぶ際には、コストや審査期間などに注目してみましょう。
決済手数料
クレジットカード決済と同じくQRコード決済には決済手数料がかかります。QRコード決済で販売した商品やサービスの代金の数パーセントを決済手数料として事業者が支払いますが、サービスごとに異なる手数料率を設定しているため、事前の確認が必要です。
導入費用
多くのサービスでは、登録費用などの導入費用は無料です。ユーザースキャン方式であれば、インターネットに接続できる環境と、QRコードを表示させたり読み込んだりできる端末があれば準備は完了です。
ストアスキャン方式ではバーコードスキャナーなどの端末のほかに、QRコード決済サービスとPOS端末を連携させたい場合は、POS端末をカスタマイズするなどの費用がかかります。
ランニングコスト
QRコード決済を受け付ける店舗が毎月負担するランニングコストについても把握しておきましょう。月額利用料は無料というサービスが多いものの、サービスが提携している金融機関以外の口座を希望する場合は振込手数料がかかることがあります。
また、ストアスキャン方式の場合はバーコードリーダーなどの端末の月額利用料がかかることもあると覚えておきましょう。
審査日数
サービス会社に加盟店申請後、審査が始まります。申請から審査完了までの日数は最短で1営業日という場合もあれば、追加書類の提出などが必要となって1カ月以上かかる場合もあります。
QRコード決済の課題
費用面でも機器面でも導入が容易で、店舗とユーザーの双方にメリットの多いQRコード決済ですが、以下のような課題もあります。
利用できる店舗
QRコード決済にはさまざまな種類があり、店舗が加盟しているサービスとお客さまが利用しているサービスが必ずしも一致するとは限りません。そのため、複数のサービスに対応しているお店も多く、その数だけ異なるQRコードをレジスタンドなどに提示することになります。
また、複数のQRコード決済サービスと個別で契約する場合、入金サイクルがサービスごとに異なるのでキャッシュフローの管理が煩雑になりがちです。契約や入金管理などを一本化するには、決済代行会社の利用を検討してみるといいでしょう。
支払いにかかるスピード
クレジットカードや電子マネーなどと比べると、QRコード決済は支払いから決済完了までに必要な動作がやや多いことが一般的です。特にユーザースキャン方式ではお客さま自身に金額を入力してもらうケースがあり、QRコード決済に慣れていないお客さまは支払いに時間がかかる可能性があります。
QRコードは、紙に印刷した「静的QRコード」と、スマートフォンやタブレットに表示される「動的QRコード」の2種類に分けられます。後者の動的QRコードを使ったユーザースキャン方式は、店舗が提示したQRコードを読み取るとお客さまのスマートフォンに金額が自動表示される仕組みで、お客さま自身で金額を入力する必要がありません。そのため、支払いにかかる時間の短縮とお客さまの負担軽減に効果的です。
不正対策
QRコード決済では、ユーザーが安心して利用できるように各社が安全対策に力を入れています。しかし、ユーザースキャン方式用に店舗が用意しておいたQRコードがすり替えられる、ユーザーが偽の決済完了画面を提示するなどのリスクは存在します。ユーザーと店舗の双方がセキュリティーへの意識を持ち、それぞれにできる対策を採ることで不正を防ぎましょう。
参考:QRコード決済を安心して利用するためのセキュリティー対策
QRコードの利用率
QRコード決済は2018年頃から普及し始めました。スマートフォンで決済が完了する手軽さや、ポイントやキャンペーンでお得に買い物できるメリットなどにより、QRコード決済の利用者数は年を追うごとに急速に増加しています。
経済産業省が2023年に実施したキャッシュレス決済の利用動向調査によると、QRコード決済の利用額は2022年に電子マネーを抜き、クレジットカードに次ぐ存在となりました。民間の調査でも、QRコード決済の利用率は2023年に66%と過去最高を記録し、つまり5人中3人以上が利用していることが分かっています。さまざまなビジネスにとって、QRコード決済はいっそう見過ごせない存在になっているといえるでしょう。
参考:
・2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました (経済産業省)
・QRコード決済の利用率が66%と調査開始以降で最高 約9割が物価上昇を実感し、物価高によるキャッシュレス化が加速(インフキュリオン)
国内の主要QRコード決済サービス
QRコード決済では、どんなサービスが普及しているか理解しておきましょう。それぞれの特徴を検討し、店舗で加盟するサービスを選択する際の参考にしてみてください。
PayPay
2023年10月時点で利用者数が6,000万人を超えた「PayPay」。前払いまたは後払い方式で利用でき、電気・水道などの公共料金の支払いにも利用できます。ストアスキャン方式、ユーザースキャン方式の両方に対応可能で、大手チェーン以外の店舗やネットショップでも利用が拡大中で、店舗経営者にとって注目すべきQRコード決済サービスです。ソフトバンクとLINEヤフーが共同で設立したPayPay株式会社が運営しています。
参考:
・「PayPay」の登録ユーザーがサービス開始から5年で6,000万人を突破!(2023年10月5日、PayPay株式会社)
・QRコード決済(実店舗)の使用方法 加盟店様向けヘルプ(PayPay for Business)
LINE Pay
メッセージアプリのLINEが提供する「LINE Pay」は、2021年よりPayPayとのQRコード連携が開始され、PayPay加盟店で利用可能です。また、新規でLINE PayのQRコード決済を導入するには、LINE PayではなくPayPayに加盟店申し込みをするかたちになります。前払いでの利用の他、提携クレジットカードと併用することで「チャージ&ペイ」という後払い方式が使える仕組みもあります。
参考:
・PayPayとLINE Pay、加盟店でのQRコード連携を開始(2021年3月1日、PayPay株式会社)
・LINE Payの決済サービス(LINE Pay)
楽天ペイ
「楽天ペイ」は、ポイントを貯める・使う場合の利便性の高さが人気です。楽天市場など関連サービスとポイントが共通していることも特徴といえます。前払い、後払いの他に、ポイントでの即時払いにも対応し、ストアスキャン方式とユーザースキャン方式の両方を利用できます。
d払い
NTTドコモによるQRコード決済サービスの「d払い」は、ストアスキャン方式とユーザースキャン方式の両方に対応しています。ユーザーは前払いと後払いで支払いが可能です。ドコモユーザーの場合は、月々の電話料金との合算で支払うこともできます。
メルペイ
ストアスキャン方式、ユーザースキャン方式に対応した「メルペイ」は、フリマアプリ「メルカリ」のグループ会社が提供するサービスです。前払いまたは後払いのほか、メルカリの売上金から支払いができるなど便利な機能を搭載しています。
au PAY
携帯通信キャリアのauを運営するKDDIによるau PAYは、ストアスキャン方式、ユーザースキャン方式に対応しています。前払いまたは後払いで利用可能で、月々の携帯電話料金と合算したキャリア決済も可能です。公共料金やネットショッピングの支払いにも使うことができます。
参考:au PAYでも後払い可能!お店から見たメリットとは(au Pay magazine)
PayPay決済の導入ならSquare
元々普及率の高かったクレジットカードや電子マネーといった決済手段に加え、利用率が急速に伸びているQRコード決済を店舗に導入することで、お客さまの利便性も高まります。決済代行会社のSquareなら、低コストかつ短期間で、クレジットカード・QRコード・電子マネーと複数のキャッシュレス決済を一気に導入できることが魅力です。Squareで対応しているQRコード決済はPayPayです。
Squareの導入に必要なコストは、決済端末の代金と決済ごとにかかる3.25%の決済手数料です。アカウント作成費用や月額利用料は発生しません。審査に通過すれば最短で即日から利用でき、決済手数料を引いた売上金額が最短で翌営業日に振り込まれます。
また、対面でのキャッシュレス決済以外にも請求書発行機能(Square 請求書)やPOSレジといった日々の業務に役立つ便利な機能も無料で利用できます。一つのSquareアカウントを作成するだけで多くの機能が使えるので、複数の個別のサービスを申し込んで管理する手間がかからないこともメリットです。
ここまで解説してきたように、QRコード決済サービスにはさまざまな種類や仕組みがあり、加盟店が負担する決済手数料はそれぞれ異なります。QRコード決済サービスの導入を検討する場合、初期費用や決済手数料といったコストに加え、売上入金までのキャッシュフローやシステムの管理のしやすさも比較のポイントです。これからQRコード決済への対応を進める店舗はコストと利便性の両面でメリットが大きいSquareを導入し、QRコード決済をはじめとするキャッシュレス決済を始めてみてはいかがでしょうか。
Squareなら、PayPay決済も最短翌営業日入金
SquareのPayPay決済は、お店が表示したQRコードをお客さまがスマートフォンで読み込むだけで完了。クレジットカードでも交通系電子マネーでも、PayPayでも、売上金の入金タイミングはすべて同じ、最短翌営業日。キャッシュフローも安心です。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2019年5月14日時点の情報を参照しています。2024年6月5日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash